RFQ(Request for Quotation)は、発注する物やサービスの仕様と数量を発注側が決めたうえで、価格・納期・支払条件を出してもらう見積依頼書です。似た略語のRFI(情報提供依頼書)は候補企業の情報を集める文書、RFP(提案依頼書)は解決策そのものの提案を求める文書で、尋ねる対象が「価格」「情報」「提案」と分かれます。この記事では3文書の違いと出す順番、RFQの記載項目と記入例、受け取った見積書の法的な扱い、取適法・電子帳簿保存法で発注側が守るべき点まで、条文などの一次情報に当たりながら整理します。
まとめ:RFQ・RFI・RFPの違いと使い分けの要点
- RFQは「この条件でいくらか」を聞く文書。仕様・数量・納期・保守範囲を発注側が固定できていないと、各社の見積は比べられない
- RFIは発注前の市場調査。回答は参考情報で、そのまま発注できる見積ではない
- RFPは「どう解決するか」を聞く文書。要件が固まりきらないシステム開発ではRFPが主役になり、見積はRFPの中で求めることが多い
- 順番は「RFI→RFP→RFQ」と「RFI→RFQ→RFP」の2通りの説明が出回っている。違いはRFQを概算の把握に使うか、最終の価格確定に使うかで、どちらの意味で出すのかを依頼書に書けば混乱しない
- 見積書を受け取っただけでは契約は成立しない(民法522条は申込みと承諾で契約が成立すると定める)。発注書と請書、または契約書で成立させる
- 製造委託や、自社が業として提供するソフトウェア・サービスの開発や作業を外部に出す取引で、相手が資本金・従業員数の基準で中小受託事業者に当たるなら、取適法の買いたたき・協議に応じない代金決定の禁止がかかる。メールで受け取った見積書のPDFは電子取引データとして電子のまま保存する
RFQ・RFI・RFPの意味と違い
3つとも発注側が相手に出す依頼文書で、何を答えてもらうかが違います。まず全体を表で並べます。
| 観点 | RFQ | RFI | RFP |
|---|---|---|---|
| 正式名称 | Request for Quotation | Request for Information | Request for Proposal |
| 日本語 | 見積依頼書 | 情報提供依頼書 | 提案依頼書 |
| 尋ねる対象 | 価格・納期・条件 | 会社・製品・実績 | 解決策・体制・費用 |
| 発注側が固めるもの | 仕様・数量・納期 | 知りたい項目 | 課題・要件・評価基準 |
| 主な回答 | 見積書・単価明細 | 会社資料・回答票 | 提案書・概算見積 |
| 比べるもの | 同条件での価格差 | 候補の適否 | 提案の優劣 |
RFQ(見積依頼書):条件を固定した価格・納期の比較
RFQは、やることが決まっている案件で「この仕様・この数量なら、いくらで、いつまでに納められるか」を複数の相手に同じ条件で聞く文書です。比べたいのは価格差なので、発注側が仕様・数量・納期・納品場所・保守範囲を固定して渡す責任を負います。条件を1つでも相手任せにすると、各社が違う前提で見積もり、最安値の見積が実は作業範囲を欠いていた、という比較になります。図面が確定した部材調達、型番が決まった機器の購入、範囲が決まった保守契約がRFQの典型です。
RFI(情報提供依頼書):発注前の候補と相場の把握
RFIは、何を誰に頼めるかがまだ見えていない段階で、候補企業に会社概要・製品・導入実績・対応範囲・費用感を答えてもらう文書です。米国連邦調達規則(FAR)15.201(e)は、RFIを「契約を結ぶ予定がまだ無いが、計画のために価格・納期・市場の情報や能力を得たいとき」に使えるものとし、RFIへの回答は申込み(offer)ではなく、それを承諾して契約を結ぶことはできないと定めています。日本の民間取引に直接かかる規定ではありませんが、RFIの回答に載る費用はあくまで参考値として扱う、という線引きは国内でも同じです。国の情報システム調達では、デジタル庁のデジタル・ガバメント推進標準ガイドライン(DS-100)が、要件定義に先立って「専門的な知見を広く取得するため、必要に応じてRFIを実施」すると定め、説明書に調達の概要・その時点の要件定義案の概要・資料提供を求める内容・提出期限などを書くとしています。民間のRFIでは次のような質問を用意します。
- 会社概要:資本金・従業員数・拠点・開発体制(自社開発か再委託か)
- 実績:同業種・同規模での導入件数と代表事例
- 対応範囲:要件定義から保守まで、どの工程を受けられるか
- 製品・技術:標準機能で賄える範囲とカスタマイズの方式
- 費用感:初期費用と月額の目安(参考値として回答を求める旨を明記)
- セキュリティ:取得している認証、データの保管場所
RFIを省いてよいのは、候補も相場も把握済みのときです。社内に発注経験が少ない案件や、初めて扱う領域では、ここで候補を広げておかないと後段のRFPの送付先を選べません。
RFP(提案依頼書):解決策・体制・費用の提案依頼
RFPは、課題と実現したいことを示して、解決方針・システム構成・体制・スケジュール・費用を提案してもらう文書です。RFQとの違いは、やり方を相手に考えてもらうかどうか。主役がRFPになるのは、業務システムの開発のように要件が固まりきらない案件です。前述のDS-100も、総合評価落札方式で調達するときに提案依頼書を作成すると定めています。RFPの記載項目と目次はRFPとは?提案依頼書の意味・目的・記載項目と目次テンプレートを解説、章立てのサンプルと作り方はRFPの書き方とは?記載項目・章立てサンプルと作成手順を発注者目線で解説で扱っているので、ここではRFQ・RFIとの違いに絞ります。
RFQとRFP・RFIとRFQ・RFIとRFPを見分ける基準
RFQとRFPの見分け方は「答えが価格だけで済むか」です。提案書にも概算費用は載るため境界があいまいになりますが、相手に解決策を考えさせる必要があるならRFP、方法が決まっていて値段と納期だけ比べたいならRFQです。米国連邦調達規則のFAR 2.101も、RFPへの回答(proposal)は申込み(offer)、RFQへの回答(quotation)は申込みではないと区別しています。RFIとRFQは、回答で発注先を決められるかどうかで分かれます。RFIの費用感は参考値なので、それだけで1社に決めるとRFQで条件を揃えた比較を飛ばすことになります。RFIとRFPの違いは、発注側が要件を示すかどうか。RFIは質問を並べるだけで、RFPは課題・要件・評価基準まで書きます。
RFI・RFP・RFQの順番:解説によって逆になる理由
RFI・RFP・RFQの出す順番を調べると、「RFI→RFP→RFQ」と書く解説と、「RFI→RFQ→RFP」と書く解説が混在しています。調達購買システムを提供する企業の解説には後者も見られ、RFQで概算費用を確かめてからRFPで提案を求める流れとして説明されています。どちらかが誤りというより、RFQという語を2つの目的で使っているのが原因です。
| 順番 | RFQの役割 | 向く案件 |
|---|---|---|
| RFI→RFP→RFQ | 最終の価格・条件の確定 | システム開発・業務委託 |
| RFI→RFQ→RFP | 予算化のための概算把握 | 機器購入・購買の定型案件 |
| RFQのみ | 相見積もりで単価比較 | 図面確定の部材・消耗品 |
前者のRFQは、RFPで絞った2〜3社に最終条件で見積を出させる確定見積です。後者のRFQは、社内で予算を取るために相場をつかむ概算見積で、RFIの費用感をもう一段詳しく聞く役割に近いものです。混乱を避けるには、依頼書の冒頭に「本依頼は予算策定のための概算見積です」「本依頼の回答をもって発注先を決定します」のどちらかを書きます。相手にとっても、概算なら前提を広めに置き、確定なら作業範囲を詰めて出す、と見積の作り方が変わるためです。
RFIやRFPを省略してよい条件
3文書を全部出すことが目的ではありません。判断の基準は「次の文書で新しく得たい情報があるか」です。
- RFIを省く:発注先の候補が3社以上すでに見えていて、相場も把握している
- RFPを省く:仕様が図面・型番・作業範囲表で確定していて、やり方の提案が要らない
- RFQを省く:RFPの中に見積様式を入れて、提案と価格を一度に比べる(システム開発で多い)
省いてはいけないのは、要件も候補も固まっていない案件でいきなりRFPを出す場合です。提案の前提が各社でばらつき、比較できずに選定をやり直すことになります。評価表の配点を先に決めてから候補を絞る手順はベンダー選定とは?システム開発の発注先を決める流れと評価表の配点設計で詳しく説明しています。
RFQの記載項目と記入例
RFQで書くべきなのは、各社が同じ前提で見積を作れるだけの条件です。自社サーバーの保守を委託する場合を例に、項目と記入例を並べます。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 依頼の目的 | 保守委託先の決定(確定見積) |
| 対象と仕様 | 別紙の機器一覧(サーバー12台) |
| 数量・期間 | 2027年4月から3年間 |
| 作業範囲 | 監視・障害対応・月次報告(別紙) |
| 対応時間 | 平日9時〜18時、重大障害は24時間 |
| 納品・作業場所 | 本社データセンター(東京都) |
| 支払条件 | 月末締め翌月末払い |
| 見積の様式 | 指定Excelの単価×数量の内訳 |
| 前提条件 | 部品代・出張費・為替変動の扱い |
| 見積有効期限 | 提出日から90日以上 |
| 提出期限・提出先 | 2026年12月4日、購買部宛メール |
| 質問の受付 | 11月20日まで、回答は全社に共有 |
| 評価方法 | 総額と作業範囲の充足で評価 |
この中で比較の成否を分けるのは「見積の様式」と「前提条件」の2つです。様式を自由にすると、一式表記の見積と単価明細の見積が混ざり、どこで金額差が出ているのか分かりません。発注側がExcelの様式を配り、作業項目ごとに単価・数量・金額を埋めてもらうと、横並びの比較表がそのまま作れます。部品代・出張費・夜間対応の追加料金、製造業なら原材料価格や為替の変動をどう扱うかも、前提条件として書いておかないと見積総額の差が条件の差なのか価格の差なのか判別できません。
質問への回答を全社に共有するのは、1社だけに追加情報を渡すと前提が揃わなくなるためです。見積書の見方と相見積もりの比べ方はシステム開発の見積もりとは?見積書の見方・依頼方法・相見積もりの比較を発注者視点で解説にまとめています。
製造業の部材RFQで追加する項目
図面で発注する部材では、上の項目に加えて次を明記します。どれも見積の金額を大きく動かすのに、書き漏らしやすい項目です。
- 図面番号と版数(設計変更の記号):見積書の品番・版数と一致しているかを受領時に照合する
- 年間数量とロット:1回の発注数量と年間の総量で単価が変わる
- 型・治具の費用:単価に含めるか、別建てで払うか
- 品質要求:検査成績書の要否、適用する規格
- 供給の継続:量産期間と、供給が止まったときの代替手段
見積書の法的な位置づけと契約の成立時点
RFQへの回答として見積書を受け取った時点では、まだ契約は成立していません。この点を曖昧にしたまま進めると、「見積どおりの価格で発注したのに受けてもらえない」「見積を出しただけなのに発注扱いにされた」という食い違いが起きます。
民法の契約成立と見積書
民法522条1項は、契約は「契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)」に相手が承諾したときに成立すると定め、2項で書面などの方式は原則として要らないとしています。民法には見積書そのものを扱った条文は無く、見積書が申込みに当たるかは書き方次第です。トラブルを避けるには、RFQに「見積書の提出をもって契約は成立せず、当社の発注書に対する請書の受領をもって成立する」と書き、発注書と請書、または契約書で成立の時点をはっきりさせます。見積有効期限は、期限内の発注には見積の価格・条件で応じてもらう約束として指定します。ただし請書で成立させる書き方なら、期限内でも受注を強制はできません。期限内の発注を確実に受けてほしいなら、見積書を承諾期間付きの申込みとして扱い、発注をもって契約が成立する条項にします。民法523条1項は、承諾の期間を定めてした申込みは原則として撤回できないと定めています。
国の調達の見積書徴取(予算決算及び会計令99条の6)
国の調達では、相見積もりが努力義務として定められています。予算決算及び会計令99条の6は「契約担当官等は、随意契約によろうとするときは、なるべく二人以上の者から見積書を徴さなければならない」と定めています。民間企業に法的な義務はありませんが、購買規程に「一定金額以上は2社以上から見積を取る」と定めれば、同じ考え方を社内ルールにできます。入札で価格と技術を点数化する方式は総合評価落札方式とは?情報システム調達の加算方式と技術点の取り方を解説で解説しています。
米国連邦調達規則(FAR)のquotation
FARは米国連邦政府の調達に適用される規則で、米国企業同士の民間取引に直接かかるものではありませんが、英文RFQで使われる用語の整理には参考になります。FAR 13.004は「見積(quotation)は申込み(offer)ではなく、政府が承諾して契約を成立させることはできない」とし、見積を受けて政府が出す注文書のほうを申込みと位置づけています。英文のRFQでは、見積がofferなのか、注文(order)で何が確定するのかを条件として書いておくと、日本の取引慣行との食い違いを防げます。
見積を集めたあとに守るルール:取適法と電子帳簿保存法
RFQは見積を集めて終わりではありません。相手との価格の決め方と、受け取った見積書の保存に、それぞれ法令がかかります。
取適法:買いたたきと協議に応じない代金決定の禁止
2026年1月1日に下請法を改正して施行された中小受託取引適正化法(取適法)は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託(ソフトウェア開発を含む)・役務提供委託などで、相手が中小受託事業者に当たる取引に適用されます。ただし情報成果物作成委託と役務提供委託は、委託する側が業として提供・作成しているものに限られ(2条3項・4項)、社内で使う業務システムの開発を自社で業として行っていない会社が外部に出す場合や、上の記入例のような自社サーバーの保守を委託するだけの場合は対象外です。相手が中小受託事業者に当たるかは、双方の資本金または従業員数の区分で決まります。RFQの運用に直接かかるのは次の2つです。
- 5条1項5号(買いたたき):同種の給付に通常支払われる対価に比べて著しく低い代金を不当に定めること
- 5条2項4号:費用の変動などを理由に相手が代金の協議を求めたのに、協議に応じない、または必要な説明・情報提供をせずに一方的に代金を決めること(2項柱書により、これによって中小受託事業者の利益を不当に害することが禁止の対象)
相見積もりで最安値を示して値下げを迫ること自体は直ちに違反ではありませんが、原材料費や労務費の上昇を理由に相手が値上げの協議を求めたとき、相見積もりの結果だけを示して協議に応じず代金を据え置くと、5条2項4号の問題になりえます。協議の経緯は記録に残しておきます。協議記録の残し方は価格転嫁とは?意味・できない理由と取適法で必要になる協議記録の残し方、発注時に交付する書面の必須記載事項は下請法の発注書とは?取適法の必須記載事項8項目と書き方・ひな形、電子交付の条件を参照してください。
電子帳簿保存法:メールで受け取った見積書は電子のまま保存
RFQの回答をメール添付のPDFやWebの購買システムで受け取ると、税法上は「電子取引」になります。電子帳簿保存法2条5号は、電子取引を「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項」の授受を電磁的方式で行う取引と定め、見積書を明記しています。7条により、所得税・法人税の保存義務者は電子取引の取引情報を電磁的記録のまま保存しなければならず、紙に印刷して保管するだけでは足りません。ただし国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問2は、書き損じのある見積書、事業の検討段階の「正式な見積書前の粗々なもの」、取引を希望する会社から一方的に送られてくる見積書は保存の必要がないとしています。概算見積のRFQへの回答がこれに当たるかは中身で判断し、迷うものは残しておくのが安全です。購買システムやRFQの管理ツールを選ぶときは、受け取った見積書を取引日・金額・取引先で検索できる形で残せるかを確認します。
見積の比較で起きる失敗と回避策
RFQの失敗は、文書の形式より運用で起きます。多いものを3つ挙げます。
- 条件が揃わないまま比べる:様式を自由にして一式見積が混ざる。回避策は、様式の配布と、質問への回答の全社共有
- 最安値の見積の欠落に気づかない:作業範囲の一部や保守費が抜けた見積が最安になる。回避策は、作業項目ごとに「含む/含まない」を回答させること
- 評価の基準を後から決める:価格以外の差を見たくなって、見積を開いてから基準を足す。回避策は、RFQの段階で評価方法を書いておくこと
システム開発では、RFQを独立させずRFPに見積様式を同封し、提案と価格を同じ評価表で採点すると、提案内容と金額の対応がずれません。要件の固め方は機能要件とは?非機能要件・業務要件との違いと定義する5つの事項が参考になります。RFPやRFQを書く前の要件整理から外部の手を借りたい場合は、要件定義・RFP作成・PMO支援のように発注側に立つ支援を使う方法もあります。
よくある質問
RFQは何の略で、どう読みますか?
RFQはRequest for Quotationの略で、日本語では見積依頼書または見積要求書と呼びます。読み方はアルファベットのまま「アールエフキュー」です。英文の書類ではRequest for Quoteと書かれることもあります。
RFPと相見積もりはどう違いますか?
相見積もりは、複数の相手から見積を取って比べる行為を指します。RFPは提案を求める文書なので、複数社にRFPを出せば提案と概算費用の相見積もりになります。価格だけを同じ条件で比べたいなら、RFPではなくRFQを複数社に出します。
RFCや建設業のRFIとは何が違いますか?
RFC(Request for Comments)はインターネット技術の仕様文書や意見募集を指す語で、発注の文書ではありません。建設プロジェクトでは、施工中に設計図書の不明点を設計者へ問い合わせる質疑書をRFIと呼ぶことがあり、発注前の情報提供依頼書とは使う場面が違います。
RFQに予算額を書くべきですか?
価格を競わせたい確定見積のRFQでは、予算額は書きません。書くと見積が予算額に寄りやすくなります。一方、仕様の幅が広く、予算に合わせた構成を考えてほしい場合は、RFPで予算の上限を示したほうが提案の的が絞れます。
RFIの回答に載っていた費用で発注してよいですか?
RFIの費用は参考値なので、そのまま発注の根拠にはしません。前提となる仕様や数量が決まっていない段階の数字だからです。発注先を決める前に、条件を固定したRFQかRFPの見積で金額を確定させます。