SpamBrain(スパムブレイン)は、Googleが検索スパムの検出に使っているAIベースのスパム防止システムです。2018年にリリースされ、名前が公になったのは2022年4月公開の年次報告「Webspam Report 2021」でした。Googleが公表しているのは役割と成果の数値までで、モデルの構造や判定に使う特徴量は明かされていません。この記事では、Google検索セントラルの公式文書と年次報告の記述を年代順にたどり、公表数値をどう読むべきか、手動による対策とどう違うか、順位が下がったときに何を確認すればよいかを整理します。
まとめ:SpamBrainについて公式文書で確認できること
- SpamBrainは、Googleが「AIをベースにしたスパム防止システム」と説明する検出システムです。ランキングシステムのガイドでは「SpamBrainなどのさまざまなスパム検出システム」と書かれており、スパム対策を担うシステムはSpamBrainだけではありません。
- リリースは2018年です。2021年版の年次報告(2022年4月公開)で名前と実績が初めてまとめて示されました。
- 公表数値は、2021年にスパムサイトの検出が前年の約6倍、2022年に前年の5倍、リンクスパムサイトの検出が前回のリンクスパムアップデートの50倍などです。いずれも倍率と割合で、検出件数そのものは出ていません。
- 「検索の99%以上がスパムなし」という数字はSpamBrainの名前が公表される前の報告から載っており、SpamBrainだけの成果として示された数字ではありません。
- SpamBrainによる評価の変化は通知されません。順位が下がったら、まずSearch Consoleの[手動による対策]レポートを確認し、何も無ければスパムアップデートの時期とスパムポリシーを照合します。
SpamBrainの公式定義とランキングシステムでの位置づけ
ランキングシステムのガイドでの記述
Googleは、検索順位を決める主なシステムをGoogle検索のランキング システム ガイドで公開しています(英語版の最終更新は2025年12月10日)。SpamBrainはこの中の「スパム検出システム」の項に登場し、日本語版では「Googleは、スパムポリシーに違反するコンテンツや行為に対処するために、SpamBrainなどのさまざまなスパム検出システムを導入しています」と書かれています。続けて、これらのシステムは継続的に更新され、進化する最新のスパム手法に対応できるようになっていると説明されています。
つまりSpamBrainは独立したランキング要因ではなく、スパムポリシーへの違反を見つける検出側の仕組みです。クエリと文書の関連性を理解するAIシステムとして同じガイドに載っているRankBrainとは役割が異なり、公式ガイドではスパムポリシーに違反するコンテンツや行為に対処するシステムとして説明されています。ガイド全体の構成は検索アルゴリズムとは?主要アルゴリズムの仕組みとGoogleのランキング要因を解説【2026年版】で扱っています。
スパムアップデートとの関係
Googleのスパムアップデートの解説ページは、検索スパムを検出する自動システムは常に稼働していて、その機能が大きく改善されたときを「スパム アップデート」と呼ぶと定義しています。SpamBrainはそこで「たとえば、SpamBrainはAIをベースにしたGoogleのスパム防止システムです」と例示されているだけです。スパムアップデートがすべてSpamBrainの更新を指すとは限りません。ただし、2022年12月のリンクスパムアップデートでは、SpamBrainの使用と検出対象の拡大が明示されています。各回の開始日と所要時間はスパムアップデートとは?Google公式の定義と実施履歴・リンクスパム分の評価が戻らない理由にまとめています。
なお、スパムポリシーのページ(英語版の最終更新は2026年8月28日)にはSpamBrainという語が一度も出てきません。ポリシー側では、違反は「自動システムと、必要に応じて行われる人間による審査」で検出すると説明されています。
導入から現在までの公式発表の年表
SpamBrainについてまとまった数値が出ているのは、Google検索セントラルブログの年次報告(Webspam Report)と、2022年12月のリンクスパムアップデートの告知です。年次報告は、2023年4月公開の2022年版より後のものが検索セントラルブログの一覧に見当たりません(2026年10月時点)。
| 公開日(米国時間) | 文書 | SpamBrainに関する記述 |
|---|---|---|
| 2018年 | (後年の報告で言及) | リリース |
| 2021年4月 | Webspam Report 2020 | 名前なし。「AIに支援された自動システム」 |
| 2022年4月21日 | Webspam Report 2021 | 名前と実績を公表。検出は前年の約6倍 |
| 2022年12月14日 | リンクスパムアップデート告知 | リンクの購入側と提供側を検出 |
| 2023年2月8日 | AI生成コンテンツの解説 | 自動化スパム対策の一例として言及 |
| 2023年4月11日 | Webspam Report 2022 | 検出は前年の5倍、リリース当初の200倍 |
2021年版の報告にある「2018年」の文字には、2019年版の報告(2020年6月公開)のスパムの傾向を扱う節へのリンクが張られています。その節に書かれているのは「2019年の最優先事項の一つは機械学習によるスパム対策能力の向上だった」という内容で、SpamBrainという名前は出てきません。これらの報告には機械学習やAIによる対策が記載されていますが、そのすべてがSpamBrainを指すか、いつ命名されたかは明示されていません。
SpamBrainの公表数値と比較基準
2021年版と2022年版の数値
2021年版(執筆はプリンシパルエンジニアのCody Kwok氏)は、SpamBrainが2021年に特定したスパムサイトが2020年の約6倍になり、その結果、ハッキングスパムが70%、ホスティングプラットフォーム上の中身のないスパム(gibberish spam)が75%減ったと書いています。2022年版(検索品質アナリストのDuy Nguyen氏)は、SpamBrainが検出したスパムサイトは2021年の5倍、リリース当初の200倍、リンクスパムサイトの検出は前回のリンクスパムアップデートの50倍、ハッキングされたサイトの検出は10倍に改善したとしています。
どの数字も比較の倍率と減少率です。何サイトを検出したかという絶対数は、どちらの年にも公表されていません。「SpamBrainは年間◯億件を検出」と件数を書いている解説があれば、出典を確かめる必要があります。
2021年版と2022年版の「200倍」の比較基準
同じ「200倍」でも、2つの報告は比べている相手が違います。2021年版の英語原文は「20年近く前にスパム対策を始めたときと比べて、2021年は200倍のスパムサイトを捕捉した。これは一部SpamBrainのおかげ」という書き方で、基準はGoogleのスパム対策全体の開始時点です。2022年版は「リリース当初の200倍」で、基準はSpamBrain自体の2018年時点です。両年の「200倍」は比較対象が異なるため、連続した成長率としては扱えません。
「99%以上スパムなし」はSpamBrainの名称公表前からの指標
2021年版と2022年版はどちらも、SpamBrainによって99%以上の検索(2022年版では検索からの訪問)がスパムのない状態を保てていると書いています。ただ、同じ水準は名前が出る前から報告されていました。2019年版(2020年6月公開)は「検索結果からの訪問の99%以上がスパムのない体験につながっている」、2020年版(2021年4月公開)は「AIに支援された自動システムが検索からの訪問の99%以上をスパムから守っている」と書き、2018年版(2019年3月公開)もスパムページへの訪問は1%を大きく下回るとしています。
ただし、これらは2018年の導入以降の報告なので、名称公表前という理由だけでSpamBrainの寄与を否定することはできません。SpamBrainの導入効果を示す根拠としては、前年比の倍率のほうが内容に即しています。母数も「検索」と「訪問」で年ごとに表現が揺れているので、数値を引用するときは年と言い回しをそのまま書くのが安全です。
1日に発見されるスパムページ数
規模の目安として、2019年版は毎日発見するページのうち250億ページ超、2020年版は400億ページがスパムだと書いています。これはGoogleが日々発見したスパムページの総数として公表した値で、SpamBrain単独の検出数として示されたものではありません。2022年版はSpamBrainによってクロール時点でのスパム検出が改善し、最初にページを訪れた段階でスパムと判断してインデックスに入れずに済むようになったと説明しています。
SpamBrainが対象にしているスパムの範囲
リンクスパム:購入する側と提供する側の両方
2022年12月14日の「2022年12月のリンクスパム対策アップデート」の告知は、SpamBrainがスパムを直接検出するだけでなく、リンクを購入するサイトと、アウトバウンドリンクを渡す目的で使われるサイトの両方を検出できるようになったと述べています。告知では展開に約2週間かかる見込みとされ、スパムリンクが無効化されて不自然なリンクから受けていた評価が失われると掲載順位が変わることがある、と説明されています。
ここで重要なのは、スパムアップデートの解説ページにある但し書きです。サイトの掲載順位の上昇にスパムリンクが寄与していた場合、そのリンクの影響が取り除かれると効果もなくなり、サイトを改善しても回復しないとされています。戻らないのはスパムリンクが生んでいた分の評価であり、順位全般が戻らないという意味ではありません。リンクの集め方そのものはSEO外部対策・被リンクとは?質の高いリンクの獲得方法とNG施策を解説で扱っています。
ハッキングスパム・中身のないスパム・詐欺サイト
2021年版で数値が出ているのは、ハッキングスパムとホスティングプラットフォーム上の中身のないスパムです。2022年版では、ハッキングスパムについてSpamBrainに学習させた結果、ハッキングされたサイトの検出が10倍に改善したとしています。詐欺については、2021年版が詐欺的な検索結果の40%減、2022年版が詐欺サイトへのクリックの50%減を挙げていますが、どちらの文書も詐欺対策の数値をSpamBrainの成果として書いてはいません。SpamBrainの実績として引用できるのは、文書がSpamBrainの名前で書いている部分だけです。
スパム以外への拡張:ハラスメントと名前の検索
2021年版には、ユーザーの安全を守るためにSpamBrainをオンラインハラスメントへの対処に広げ、人名の検索では不当な削除方針を持つサイトの表示を抑えるようにした、という記述があります。SpamBrainは「あらゆる種類の不正行為に対処するため、常に進化するプラットフォームとして作られた」とも書かれており、Googleは単一の判定器ではなく、複数の対策を載せる基盤として説明しています。
仕組みについて公表されていないこと
SpamBrainの内部構造について、Googleが公表しているのは「AIベース」「機械学習による学習能力を持つ」「クロール時にも判定できる」という程度です。教師あり学習か教師なし学習か、どんな特徴量を見ているか、サイト単位かページ単位かは、ここまでに挙げた公式文書のどこにも書かれていません。「SpamBrainはE-E-A-Tを評価している」「SpamBrainは文章のAIらしさを判定する」といった説明は、公式文書の裏付けがない推測として扱うべきです。
AI生成コンテンツについてGoogleが示している基準は、作り方ではなく目的です。2023年2月の解説は、検索結果のランキング操作を主な目的として自動化(AIを含む)でコンテンツを生成することはスパムポリシーに違反するとし、その対抗策の一例としてSpamBrainの開発を挙げたうえで、スパムがどのような方法で生成されようと対策を続けると書いています。現行の生成AIコンテンツのガイダンスも、価値を付加せずに大量のページを生成すると「大量生成されたコンテンツの不正使用」のポリシーに違反する可能性があると説明しています。AIで書いたかどうかを隠す工夫は意味がなく、問うべきは各ページが読者にとって価値を足しているかどうかです。
判定ロジックが公開されていない以上、「SpamBrainを回避するSEO」は成り立ちません。対策として取れるのはスパムポリシーに書かれた行為をしないことだけで、ポリシーに沿わない手法の一覧はブラックハットSEOとは?Googleが禁じる手法とペナルティ・回復手順【2026年】に整理しています。
SpamBrainによる評価と手動による対策の違い
Googleのスパム対策には、SpamBrainなどの自動システムによるものと、担当者が審査して適用する手動による対策の2系統があります。手動による対策のヘルプは、対策が行われた場合は[手動による対策]レポートとSearch Consoleのメッセージセンターで知らせると説明しています。自動システムの評価にはこうした通知も再審査の窓口もありません。
| 項目 | 自動システム(SpamBrainなど) | 手動による対策 |
|---|---|---|
| 判定する主体 | 機械学習を含む自動システム | Googleの担当者 |
| サイトへの通知 | なし | レポートとメッセージセンター |
| 再審査リクエスト | 対象外 | 修正後に送信できる |
| 回復までの目安 | 学習に数か月かかることがある | 再審査の結果による |
スパムアップデートの解説ページは、スパムポリシーを守るよう変更した場合、それを自動システムが学習するのに数か月かかることがあり、それが掲載順位の改善につながる可能性があると書いています。手動による対策が出ている場合の手順はGoogleの再審査リクエストの書き方|理由の記載例と手動による対策の解除手順を参照してください。
順位が下がったときにサイト運営者が確認する順序
SpamBrainの影響を直接確かめる方法はありません。そのため、まず通知のある手動による対策を確認し、次に更新時期や技術的問題を調べて原因を絞り込みます。
- Search Consoleの[手動による対策]レポートを開く。対策が記載されていれば、該当する問題をすべてのページで直してから再審査をリクエストする。
- レポートに問題が無ければ、Google検索ステータスダッシュボードのランキングの履歴で、順位が動いた日がスパムアップデートやコアアップデートの展開期間に重なるかを見る。2026年は3月24日、6月24日、8月18日、9月24日にスパムアップデートが始まっており、9月の回は告知で最大2週間かかるとされている。
- スパムアップデートと重なっていれば、スパムポリシーの各項目と自サイトを照合する。順位操作のために購入したリンクや、価値を足さずに量産したページ、既存サイトのランキングシグナルを利用することを主目的に第三者コンテンツを公開しているディレクトリなどを見直す。
- 直した後は、自動システムが学習し直すまで数か月単位で推移を見る。購入リンクで上がっていた分は戻らない前提で、コンテンツ側の改善を続ける。
コアアップデートと時期が重なる場合は、コンテンツの評価変化も確認します。ただし、時期の一致だけでは原因を特定できないため、インデックス登録やサーバーの問題も切り分けます。スパムポリシーに抵触する行為が見当たらないのにスパム対策を疑って被リンクを大量に否認するのは、原因と処方が合っていない典型的な失敗です。
SpamBrainについてよくある質問
SpamBrainはいつ導入されましたか?
Googleの2021年版Webspam Report(2022年4月21日公開)に、SpamBrainは2018年にリリースされたと書かれています。名前とまとまった実績が公表されたのはこの報告が最初で、それ以前の報告にSpamBrainの名前は無く、「機械学習」「AIに支援された自動システム」による対策として書かれていました。
SpamBrainとRankBrainの違いは何ですか?
どちらもGoogleのランキングシステムのガイドに載っているAIシステムですが、役割が違います。RankBrainは単語とコンセプトの関係を理解し、検索語がすべて含まれていなくても関連するコンテンツを表示するためのシステムです。SpamBrainはスパムポリシーに違反するコンテンツや行為を検出するスパム検出システムの一つです。
SpamBrainの影響を受けたかどうかを確認する方法はありますか?
直接確認する方法はありません。自動システムの評価は通知されないため、Search Consoleの[手動による対策]レポートで手動の対策が無いことを確かめたうえで、順位が動いた日とスパムアップデートの展開期間を照合するのが現実的な確認手順です。
AIで書いた記事はSpamBrainにスパムと判定されますか?
AIを使ったこと自体は違反ではありません。Googleは、ランキング操作を主な目的として自動化(AIを含む)でコンテンツを生成することをスパムポリシー違反としており、価値を付加せずに大量のページを生成すると「大量生成されたコンテンツの不正使用」に当たる可能性があるとしています。判定に使う特徴量は公表されていません。
SpamBrainで下がった順位は回復しますか?
スパムポリシーに沿うよう直した場合、自動システムが学習するのに数か月かかることがあり、それが掲載順位の改善につながる可能性があるとGoogleは説明しています。ただし、スパムリンクによって上がっていた分は、リンクの影響が取り除かれると効果がなくなり、サイトを改善しても回復しません。