未収入金とは、本業以外の取引で受け取る権利が確定したのに、まだ入金されていない代金を記録する勘定科目です。「未収金」と呼ぶ会社もあり、中身は同じです。この記事では、売掛金との線引きを財務諸表等規則の定義から確かめ、未収収益・未払金・立替金との違い、車両や土地を売却した場合と助成金の支給が決まった場合の仕訳例を示します。後半では、1年を超えて残る長期未収入金の振替、決算書での表示、貸倒引当金の対象になる未収金とならない未収金、相殺と消滅時効、会計システムで消込漏れを防ぐ仕組みまで扱います。
まとめ:未収入金は本業以外の未回収代金、発生源と入金予定日で管理する
未収入金は、固定資産の売却代金、保険金、助成金、子会社への費用請求など、本業の売上以外から生じた「まだ受け取っていないお金」です。売掛金との違いは発生原因だけで、どちらも流動資産に載る金銭債権です。
実務で迷うのは仕訳よりも残高の管理です。売掛金は請求書と販売管理のデータで追えますが、未収入金は請求書を発行しない入金が多く、入金予定を誰も記録していないまま残ります。発生源ごとに補助科目を切り、入金予定日を一緒に残すだけで、決算での洗い出しは大きく軽くなります。
1年を超えて回収されない分は長期未収入金へ振り替え、回収の見込みが薄いものは貸倒の判断に進みます。未収入金が月に数件なら会計ソフトの補助科目で足ります。グループ会社への請求や不動産の賃貸など本業以外の取引が毎月数十件ある会社は、入金予定の管理を会計システムに組み込むほうが確実です。
未収入金の意味と勘定科目、本業以外の取引で生じた未回収代金の扱い
未収入金は「何の取引から生じたか」で決まる科目です。まず定義と、帳簿・決算書での位置を押さえます。
未収入金とは営業外の取引で確定した未回収の代金、典型的な5つの発生源
未収入金が発生するのは、代金を受け取る権利は確定したものの、入金が後日になる取引です。実務で多い順に挙げると次のとおりです。
- 固定資産の売却:社用車・機械・土地・建物を売り、代金が翌月以降に振り込まれる
- グループ会社への請求:子会社に貸している事務所の家賃以外の費用や、出向者の給与負担分を請求した
- 保険金:事故や災害の損害保険金の支払額が保険会社から通知された
- 助成金・補助金:支給決定の通知を受け、振込を待っている
- 有価証券の売却:株式を売却し、受渡日が決算日の後になる
どれも会社の本業の売上ではありません。製造業が工場の機械を売れば未収入金、中古機械の販売業者が商品として機械を売れば売掛金です。同じモノでも、本業の取引かどうかで科目が変わります。
売掛金との違い、財務諸表等規則が定める営業上の未収金という線引き
売掛金と未収入金の線は、法令の定義で確かめられます。財務諸表等規則(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則)の15条三号は、売掛金を「顧客との契約から生じた債権その他の通常の取引に基づいて発生した営業上の未収金」と定めています。
つまり売掛金は「営業上の」未収金です。営業外の未収金は売掛金に入らず、同条十二号の「その他の資産で一年内に現金化できると認められるもの」に含まれます。帳簿上はこれを未収入金や未収金という科目で記録します。財務諸表等規則は上場企業などの開示のための規則ですが、中小企業の決算書も同じ区分に倣って作るのが一般的です。
売掛金の仕訳と回収期日の管理は売掛金の仕訳と回収期日60日ルールを扱った記事にまとめています。両者を混ぜると、売掛金回転期間などの営業の指標に本業以外の債権が入り、数値がぶれます。
未収収益・未払金・立替金との違い、取引の継続性と向きで見分ける比較表
未収入金と取り違えやすい科目は3つあります。見分ける軸は「取引が単発か継続か」と「お金の向き」です。
| 勘定科目 | 区分 | 発生する場面 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 未収入金 | 資産 | 単発の営業外取引の代金 | 社用車の売却代金 |
| 未収収益 | 資産 | 継続契約で期間が経過した分 | 決算日までの貸付金利息 |
| 未払金 | 負債 | 営業外の支払いが未済 | 備品の購入代金 |
| 立替金 | 資産 | 他人の支払いを肩代わり | 顧客負担の送料 |
未収収益は、利息や家賃のように契約が続いている取引で、決算日までに経過した期間分を見越して計上する経過勘定です。受け取る権利は期日が来るまで確定していません。未収入金は権利が確定している点が違います。
未払金は未収入金の裏返しで、営業外の取引で自社が払う側に回ったときの科目です。仕訳例は買掛金と未払金の違いを仕訳で示した記事にあります。立替金は他人が負担すべき支払いを一時的に払ったときの科目で、代金の受取ではなく返金を待つ点が違います。詳しくは立替金の仕訳例と仮払金との違いを扱った記事を参照してください。
未収入金の仕訳例、車両売却・土地売却・助成金の支給決定の3場面
未収入金の仕訳は、権利が確定したときに借方へ未収入金を立て、入金されたときに貸方で消します。仕訳の基本の形は仕訳の書き方の5手順を扱った記事で説明しています。ここで示すのは、消費税の扱いが異なる3つの場面です。
帳簿価額60万円の社用車を税込88万円で売却し翌月に入金される仕訳
帳簿価額60万円の社用車を税込88万円で中古車業者へ売り、代金は翌月末に振り込まれる場合です。建物や車両の売却は消費税の課税取引なので、売却代金から仮受消費税を分けます。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売却時 | 未収入金 880,000円 | 車両運搬具 600,000円 |
| 固定資産売却益 200,000円 | ||
| 仮受消費税 80,000円 | ||
| 入金時 | 普通預金 880,000円 | 未収入金 880,000円 |
売却益は税抜の80万円から帳簿価額60万円を引いた20万円です。税込の88万円で計算すると、消費税の分だけ売却益が過大になります。間接法で減価償却している場合は、車両運搬具の取得価額と減価償却累計額をそれぞれ貸方と借方で消します。
土地を3,000万円で売却した場合の仕訳、消費税が非課税になる理由
帳簿価額2,500万円の土地を3,000万円で売却し、代金が決済日に支払われる場合は、仕訳に消費税が出てきません。国税庁のタックスアンサーNo.6201(非課税となる取引)が、土地の譲渡を非課税取引に挙げているためです。
仕訳は「未収入金 30,000,000円/土地 25,000,000円・固定資産売却益 5,000,000円」、決済日に「普通預金 30,000,000円/未収入金 30,000,000円」です。土地と建物を一括で売るときは、売却代金を土地分と建物分に分け、建物分にだけ仮受消費税を立てます。契約書に内訳が無いと、この按分で税務上の争いが起きやすくなります。
同じNo.6201は、株式などの有価証券の譲渡も非課税としています。有価証券の売却代金を未収入金で受けるときも、仮受消費税は立てません。
雇用関係の助成金60万円の支給決定通知を受けたときの仕訳と計上時期
助成金は、申請しただけでは受け取る権利が確定しません。支給決定の通知を受けた時点で未収入金を立てるのが一般的です。60万円の支給決定通知が3月に届き、振込が4月になる場合は次のとおりです。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 支給決定通知の受領時 | 未収入金 600,000円 | 雑収入 600,000円 |
| 振込時 | 普通預金 600,000円 | 未収入金 600,000円 |
助成金は国から一方的に受け取るお金で、何かを売った対価ではないため、消費税の課税対象外です。決算月に通知を受けたのに入金を待って計上すると、収益の期がずれます。3月決算の会社なら、3月中に届いた通知の分は当期の雑収入です。保険会社から支払額の通知を受けた損害保険金も、同じ考え方で「未収入金/受取保険金」と記録します。
決算書での未収入金の表示、1年基準による長期未収入金と5%基準
未収入金は、回収までの期間と金額の大きさで決算書の載せ方が変わります。期末に確かめる順番どおりに説明します。
流動資産に載る未収入金、総資産の5%を超えたら独立した科目で表示
決算日から1年以内に入金される未収入金は流動資産です。金額が小さければ「その他」にまとめて表示されます。ただし財務諸表等規則19条は、その他の流動資産のうち未収収益や短期貸付金、その他の資産で金額が資産総額の100分の5を超えるものは、名称を付けた科目で掲記しなければならないとしています。
総資産10億円の会社が、決算直前に工場の土地を売って未収入金が6,000万円残った場合は、6%なので「未収入金」の科目で独立して表示します。帳簿の勘定科目と決算書の表示科目の関係は、勘定科目の5分類と表示科目の違いを整理した記事で扱っています。
1年を超えて回収される分は長期未収入金、投資その他の資産への振替
土地の売却代金を3年の分割で受け取る契約のように、決算日から1年を超えて入金される分は流動資産に置けません。財務諸表等規則31条七号の「流動資産、有形固定資産、無形固定資産又は繰延資産に属するもの以外の長期資産」として、投資その他の資産に表示します。帳簿では長期未収入金という科目に振り替えます。
3,000万円を3年で均等に受け取る契約なら、初年度末の残高2,000万円のうち、次の1年で入る1,000万円が未収入金、その翌年の1,000万円が長期未収入金です。翌期末には、長期未収入金のうち1年以内に入金される分を未収入金へ戻します。分割の入金予定表が無いと、この振替を毎期手で計算することになります。
期末に未収入金の残高を洗い出して中身と回収見込みを確かめる5つの手順
決算で問題になるのは、誰から何の代金なのか分からない未収入金の残高です。期末月に次の順で確認します。
- 未収入金の残高を補助科目ごとに出し、前期末から動いていない残高を抜き出す
- 各残高を売買契約書・支給決定通知・保険会社の通知など発生の根拠書類と突き合わせる
- 入金予定日を過ぎたものは相手先に入金日を確認し、回収の見込みを記録する
- 決算日から1年を超えて入金される分を長期未収入金へ振り替える
- 回収の見込みが薄いものを抜き出し、貸倒引当金か貸倒損失かの処理方針を決める
この確認は決算整理の一部です。振替や貸倒の見積りを含む期末の仕訳の全体は、決算整理仕訳の主な9項目を一覧にした記事にまとめています。
回収できない未収入金の処理、貸倒引当金の対象範囲と相殺・時効
未収入金は売掛金よりも督促の仕組みが弱く、気づいたときには回収が難しくなっていることがあります。回収できない場合の処理と、回収の手段を整理します。
貸倒引当金の対象になる未収金とならない未収金、国税庁No.5500の線引き
未収入金も金銭債権なので、貸倒引当金の計算に含められる場合があります。ただし、法人税で一括評価の対象になるのは、一部の未収金だけです。国税庁のタックスアンサーNo.5500は、対象に「未収の譲渡代金」「未収請負金」「未収手数料」「未収地代家賃等」で益金の額に算入されたものを挙げています。
一方で、同じページは「法令の規定に基づき交付を受ける給付金等の未収金」と「仕入割戻しの未収金」を対象外としています。固定資産の売却代金は対象ですが、助成金の未収金は対象になりません。同じ未収入金の科目に両方を入れていると、期末に1件ずつ仕分けることになります。引当金の計算方法と法定繰入率は貸倒引当金の計算方法と法定繰入率を扱った記事で説明しています。
同じ相手への買掛金と相殺する条件、民法505条の弁済期と合意書
未収入金の相手が自社の仕入先でもあるなら、買掛金と相殺して回収する方法があります。民法505条は、互いに同種の債務を負い、双方の債務が弁済期にあるときに、対当額で相殺できると定めています。
未収入金50万円と買掛金80万円がある相手なら、「買掛金 500,000円/未収入金 500,000円」と記録し、差額の30万円だけを支払います。相手との契約で相殺を禁止している場合は使えません。実務では相殺の金額と対象の債権を書いた相殺合意書か相殺通知書を残し、相手の帳簿とも金額を合わせておきます。
未収入金の消滅時効は知った時から5年、放置した残高が消える仕組み
民法166条は、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年行使しないと、債権が時効で消えると定めています。2020年4月1日施行の改正後の規定で、それより前に生じた債権は改正前の規定が適用されます。
売却代金の入金がないまま督促もせず5年が過ぎると、相手が時効を主張した時点で回収の道が閉ざされます。督促の記録を残すこと、相手に残高を確認してもらって債務を承認してもらうことが、時効の更新につながります。督促から貸倒処理までの運用を確認できるのが、年齢表での検知から督促・貸倒処理までを扱った滞留債権の記事です。
未収入金の消込漏れを防ぐ管理、会計システムに入金予定を持たせる判断
未収入金の管理が売掛金より崩れやすいのは、請求と入金予定の記録を持たない取引が多いからです。どこまで仕組みにするかは件数と発生源の種類で決まります。
未収入金が消込されずに残る原因、請求書を発行しない入金の多さ
売掛金は、販売管理システムで請求書を発行した時点で入金予定が記録され、入金消込で自動的に消えます。未収入金は違います。固定資産の売却は売買契約書、助成金は支給決定通知、保険金は保険会社の通知が根拠で、自社から請求書を出さないことが多い取引です。
根拠書類は総務や経営企画の手元にあり、経理には仕訳の依頼だけが届きます。その結果、入金があっても雑収入で受けてしまい、未収入金が残ったまま収益が二重に計上されるという誤りが起きます。期末に残高を洗い出して、前期の助成金が2回計上されていたと気づくのはこの典型です。
会計ソフトの補助科目で管理が回る条件、未収入金が月に数件の会社
未収入金が月に数件で、発生源が固定資産の売却や年に数回の助成金に限られる会社は、会計ソフトの補助科目で十分に回ります。補助科目を「固定資産売却」「助成金」「保険金」「グループ会社」のように発生源別に切り、摘要に入金予定日を書いておけば、月末に残高一覧を見るだけで遅れが分かります。
この規模で専用の債権管理の仕組みを作っても、設定と保守の手間が管理の手間を上回ります。補助科目と摘要の運用で回るなら、システム化は見送ってかまいません。
未収入金の発生源別の補助科目と入金予定日を会計システムに持たせる条件
本業以外の取引が毎月数十件ある会社では、手入力の仕訳と摘要だけでは追い切れません。次のいずれかに当たるなら、未収入金の入金予定を会計システムの中で管理する仕組みに切り替えるほうが確実です。
- グループ会社への費用請求や出向者の給与負担分の請求が毎月10件を超える
- 本業と別に不動産の賃貸や設備の貸付けがあり、相手先が20社を超える
- 固定資産の売却代金や補助金を分割で受け取り、長期未収入金への振替を毎期手で計算している
- 期末の未収入金の洗い出しに毎回2日以上かかっている
未収入金の仕訳を起こすときに発生源の区分と入金予定日を必須の項目にし、銀行の入金明細と突き合わせて消込の候補を出せれば、残高の中身は毎日確かめられます。貸倒引当金の対象かどうかの区分を発生源と一緒に持たせれば、期末の仕分けも不要です。市販の会計ソフトでは入金予定の管理や長期未収入金の自動振替まで組めない場合、当社の会計・経理システム開発でご相談いただけます。科目と補助科目の設計から、入金消込と既存の会計システムとの連携の開発までが当社の対応範囲です。
よくある質問
未収入金について寄せられる質問を5つ取り上げます。
未収金と未収入金は違う勘定科目ですか?
同じ意味で使われる勘定科目です。会計ソフトや会社によって「未収金」と「未収入金」のどちらかの名前を使っていますが、本業以外の取引で受け取る権利が確定した未回収の代金を記録する点は変わりません。財務諸表等規則は売掛金を「営業上の未収金」と定めており、未収金という言葉自体は売掛金を含む広い意味でも使われます。社内では1つの名前に決めて科目マスタに登録し、2つの科目を併用しないようにしてください。
未収入金に消費税はかかりますか?
未収入金という科目に消費税がかかるわけではなく、元になった取引が課税かどうかで決まります。建物や車両、機械の売却は課税取引なので、売却代金から仮受消費税を分けて計上します。土地や有価証券の売却は非課税取引で、仮受消費税は立てません。助成金や保険金は対価を受け取る取引ではないため課税対象外です。入金されたときの「普通預金/未収入金」の仕訳には、消費税は関係しません。
未収入金はいつ計上すればよいですか?
代金を受け取る権利が確定した時点です。固定資産の売却なら物件を引き渡した日、助成金なら支給決定の通知を受けた日、保険金なら保険会社から支払額の通知を受けた日が目安になります。入金を待ってから計上すると、決算日をまたいだ取引で収益の期がずれます。申請しただけの助成金や、支払額が決まっていない保険金は、権利が確定していないので未収入金にしません。
未収入金が貸借対照表に残り続けるのは問題ですか?
中身を説明できない残高が前期から動いていないなら問題です。入金済みなのに消し忘れているか、回収できない債権が残っている可能性があります。金融機関は回収見込みの薄い未収入金を資産から差し引いて評価することがあり、融資の審査にも響きます。期末に発生の根拠書類と突き合わせ、入金済みのものは消し、回収できないものは貸倒損失や貸倒引当金の処理に進めてください。
個人事業主が事業用の資産を売ったときも未収入金を使いますか?
使います。事業用の車両などを売却し、代金を後日受け取るなら未収入金で記録します。ただし個人事業主の場合、事業用の固定資産の売却益は事業所得ではなく譲渡所得として扱うのが原則です。そのため、法人のように固定資産売却益の科目で受けず、帳簿価額との差額は事業主借(損が出たら事業主貸)で処理する方法が一般的です。入金時には、法人と同じく「普通預金/未収入金」の仕訳で残高を消します。
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