仕訳帳は、会社のすべての取引を起きた順に、借方と貸方へ仕訳して書き並べる帳簿です。4月3日に商品を掛けで仕入れ、4月10日に掛けで売り上げたなら、その2本の仕訳が日付順に1冊へ並びます。この記事では、法令が仕訳帳に求める記載事項、日付・摘要・元丁・借方・貸方の5つの欄の書き方と記入例、相手科目が複数あるときの諸口やページの繰越を整理しました。後半では、手書き・Excel・会計ソフトでの作り方の違いと、会計ソフトが出力する仕訳帳を月次の点検や税務調査でどう読むか、他のシステムとつなぐときの判断を扱います。
まとめ:仕訳帳は取引を発生順に並べる主要簿で、会計ソフトなら入力した仕訳がそのまま仕訳帳になる
仕訳帳は総勘定元帳と並ぶ主要簿で、青色申告の法人と、複式簿記で記帳する青色申告の個人事業主が備える帳簿です。書く内容は、取引の年月日・内容・勘定科目・金額の4つに尽きます。手書きの様式では、これを日付・摘要・元丁・借方・貸方の5つの欄に振り分けます。
実務での結論は単純です。会計ソフトに仕訳を入力していれば、その入力履歴を日付順に出力したものが仕訳帳になり、別に作り直す必要はありません。手書きやExcelで作るのは、取引が月に数十件までの小規模な事業に限るのが無難です。仕訳1本の書き方や訂正の方法は仕訳とは?書き方の5手順と1行の記載項目で扱っているので、本稿は帳簿としての仕訳帳の形と使い方に絞ります。
仕訳帳の意味と帳簿体系での位置、主要簿と補助簿の中で取引を最初に記録する帳簿
帳簿には、決算書を作るのに必ず要る主要簿と、主要簿の内訳を補う補助簿があります。仕訳帳はその入口に当たる帳簿です。
仕訳帳とは全取引を発生順に記録する帳簿、施行規則55条が定める4つの記載事項
法人税法施行規則の第54条は、青色申告法人が備える帳簿として「全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿」を挙げ、これを仕訳帳と呼んでいます。書き方は続く第55条にあり、仕訳帳には取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載するとされています。
条文が求めるのは、発生順という並べ方と、年月日・内容・勘定科目・金額の4項目だけです。様式や用紙の指定はありません。手書きの帳面でも、Excelでも、会計ソフトのデータでも、この4項目が取引の順に記録されていれば仕訳帳として成り立ちます。個人事業主については所得税法施行規則の第58条と第59条が、ほぼ同じ文言で青色申告者の仕訳帳を定めています。
総勘定元帳・補助簿との関係、仕訳帳から科目別と取引先別へ書き写す帳簿の流れ
仕訳帳は時間の順に並ぶため、「今月の普通預金の残高はいくらか」といった科目ごとの数字は読み取れません。そこで仕訳帳の各行を勘定科目ごとの口座へ書き写し、科目別に集計し直した帳簿が総勘定元帳です。この書き写しを転記と呼びます。
補助簿は、主要簿だけでは追いにくい内訳を記録する帳簿です。現金の出入りを1件ずつ残す現金出納帳、得意先ごとの掛け残高を追う売掛金元帳などがこれに当たります。手書きの時代は「取引→仕訳帳→総勘定元帳→補助簿」と人が順に書き写していました。会計ソフトでは仕訳を1回入力すると、すべての帳簿が同じデータから同時に作られます。
仕訳帳を備える義務がある人、青色申告法人と65万円控除を受ける個人事業主の違い
法人で青色申告をしている会社は、規模にかかわらず仕訳帳を備える義務があります。日本の法人の多くは青色申告を選んでいるため、会社であれば仕訳帳は必要と考えて差し支えありません。
個人事業主は、選ぶ控除で変わります。国税庁のNo.2072 青色申告特別控除(令和8年4月1日現在法令等)では、55万円の控除に正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)による記帳が求められています。65万円の控除は、その要件に加えて、仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件を満たして保存するか、確定申告書等をe-Taxで送信することが条件です。10万円の控除で足りる場合は、現金出納帳や経費帳などの簡易な帳簿でよく、仕訳帳までは求められません。
仕訳帳の書き方、日付・摘要・元丁・借方・貸方の5つの欄と4取引の記入例
手書きやExcelで仕訳帳を作るときの標準的な様式を、記入例と一緒に見ていきます。会計ソフトの画面も、この様式を横1行に並べ替えたものと考えると読みやすくなります。
標準的な仕訳帳の様式、5つの欄に書く内容と勘定科目の下に添える小書きの役割
市販の仕訳帳の用紙や簿記の教科書で使われる様式は、次の5つの欄でできています。
- 日付:取引が起きた月と日。同じ月の2行目以降は日だけを書く
- 摘要:勘定科目を( )で囲んで書く。借方の科目を左寄せ、貸方の科目を1行下げて右寄せにし、その下に小書きを添える
- 元丁:転記先の総勘定元帳の口座番号やページ番号。転記を済ませた印を兼ねる
- 借方:借方科目の金額
- 貸方:貸方科目の金額
小書きは、取引の中身を一言で残す説明文です。「東京商事から商品仕入」のように相手と内容を書いておくと、後で請求書や納品書と照らし合わせるときの手がかりになります。元丁欄は、転記漏れを見つけるための欄です。元丁が空いている行は、まだ総勘定元帳へ書き写していないと一目で分かります。
記入例の表、商品の掛け仕入・掛け売上・経費の支払・売掛金の入金の4取引
4月に起きた4つの取引を仕訳帳に書くと、次の表のようになります。金額は消費税を除いた本体価格で、元丁の数字は総勘定元帳の口座番号の例です。
| 日付 | 摘要 | 元丁 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|---|---|
| 4/3 | (仕入) | 51 | 150,000 | |
| (買掛金) | 21 | 150,000 | ||
| 東京商事から商品仕入 | ||||
| 10 | (売掛金) | 12 | 280,000 | |
| (売上) | 41 | 280,000 | ||
| 大阪物産へ商品売上 | ||||
| 15 | 諸口 (現金) | 1 | 12,000 | |
| (通信費) | 61 | 8,800 | ||
| (消耗品費) | 62 | 3,200 | ||
| 電話代と事務用品を支払 | ||||
| 25 | (普通預金) | 3 | 280,000 | |
| (売掛金) | 12 | 280,000 | ||
| 大阪物産から売掛金入金 |
1つの取引ごとに、借方の行、貸方の行、小書きの行がひとまとまりになります。取引と取引の間に区切り線を引く様式もあります。どの取引も借方の合計と貸方の合計が同じ金額になっている点を確かめてください。科目を左右どちらに書くかの判断は借方と貸方の増減ルールで整理しています。
相手科目が2つ以上ある仕訳の書き方、諸口を使う場面と科目ごとに行を分ける規則
4月15日の取引は、現金12,000円を払って通信費と消耗品費の2つの費用が生じています。このように借方か貸方の一方に科目が2つ以上並ぶ場合、その側の科目の上に「諸口」と書きます。諸口は「相手の科目が複数ある」という意味の見出しで、金額は書きません。
科目が複数あっても、1つの行に2つの科目をまとめて書かないのが規則です。通信費と消耗品費を「(通信費・消耗品費)12,000」と1行にすると、総勘定元帳へ転記するときに科目ごとの金額が分からなくなります。科目ごとに1行ずつ分け、それぞれに金額と元丁を記入する決まりです。会計ソフトでは同じ取引を「複合仕訳」として1つの伝票番号の中に複数行で入力し、仕訳帳にも同じ番号の行がまとまって出力されます。
ページの締め切りと繰越、借方合計と貸方合計を一致させて次ページへ送る手順
手書きの仕訳帳は、ページの最終行まで書いたら締め切って次のページへ金額を送ります。手順は次のとおりです。
- そのページの借方欄と貸方欄をそれぞれ合計する
- 2つの合計が一致することを確かめる
- 最終行の摘要に「次ページへ」と書き、合計額を借方・貸方の両方に記入する
- 次ページの1行目の摘要に「前ページから」と書き、同じ合計額を記入する
ページごとの合計が一致しないなら、そのページの中に貸借の合わない仕訳があります。月末や期末に作る試算表で貸借が合わないときも、仕訳帳のページ合計まで戻ると誤りの場所を数ページに絞り込めます。Excelや会計ソフトでは合計が自動で出るため、繰越の行を書く必要はありません。
仕訳帳の作り方3通り、手書き・Excel・会計ソフトの手間と誤りの出方の比較
仕訳帳を何で作るかは、取引の件数と、決算書や申告書まで自分で作るかどうかで決まります。3つの方法を比べます。
手書きとExcelと会計ソフトの比較表、転記・集計・65万円控除への対応の差
3つの方法の違いを、作業の手間と誤りの出やすさで並べると次のとおりです。
| 比較項目 | 手書き | Excel | 会計ソフト |
|---|---|---|---|
| 元帳への転記 | 手で書き写す | 関数や集計表で自作 | 自動 |
| 貸借の一致確認 | ページごとに手計算 | 関数で確認できる | 不一致は登録できない |
| 試算表・決算書 | 手で作る | 自作の集計が要る | 自動で出力 |
| 修正の履歴 | 二重線で残る | 上書きで消える | 製品により残る |
| 65万円控除の電子帳簿 | 対象外 | 要件を満たしにくい | 対応製品なら可 |
実務上の重みが大きいのは、転記と修正の履歴の2行です。手書きは転記の手間が最も重く、Excelはセルを上書きすると元の数字が残りません。月の取引が数十件を超えるなら、会計ソフトに切り替えたほうが転記と集計の誤りがまとめて消えます。
Excelで仕訳帳を作るときの列設計、仕訳番号と貸借チェック列を足す理由
Excelで作る場合は、手書きの様式をそのまま写すより、1行に1つの科目と金額を持たせる縦長の表にしたほうが集計しやすくなります。列は「仕訳番号・日付・借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額・摘要」の7つを基本にします。
手書きの様式に無い列として、仕訳番号を必ず足してください。諸口の仕訳は複数行にまたがるため、同じ番号を振っておかないと、どの行が1つの取引か分からなくなります。そのうえで、仕訳番号ごとに借方金額と貸方金額を合計し、差額が0でない番号を表示する列を作ってください。ピボットテーブルで科目別に集計すれば、総勘定元帳の代わりの残高表も作れます。ただし行を消したり並べ替えたりすると履歴が残らないため、月の締めごとにファイルを別名で保存し、確定した月は編集しない運用にします。
会計ソフトの仕訳帳は出力帳票、仕訳日記帳など名称が違っても記載事項は同じ
会計ソフトでは、仕訳帳は入力画面ではなく、入力済みの仕訳を日付順に並べて出力する帳票の1つです。製品によって「仕訳帳」「仕訳日記帳」など名前が違いますが、どれも全仕訳を発生順に並べ、日付・科目・金額・摘要を表示するもので、第55条の記載事項を満たします。
入力画面の形式もさまざまです。銀行明細から取り込む画面、振替伝票の形で入力する画面、出金伝票や入金伝票の形で入力する画面など、どこから入れても仕訳帳には同じ形で並びます。入力の画面が違っても帳簿は1つ、という点を押さえておくと、複数の担当者がそれぞれ別の画面から入力している会社でも、仕訳帳1本で全体を確かめられます。
会計ソフト時代に仕訳帳を読む場面、月次の点検と税務調査で確認される箇所
会計ソフトを使うと、仕訳帳を自分で書く機会は無くなります。それでも仕訳帳を開くべき場面が2つあります。
月次で仕訳帳を日付順に読む点検、二重計上と入力漏れを見つける3つの見方
総勘定元帳は科目ごとに分かれているため、同じ取引が別々の科目で2回入力されていても気づきにくい帳簿です。仕訳帳は全仕訳が1本に並ぶので、月の締めの前に次の3つの見方で読むと、元帳では見えない誤りが見つかります。
- 金額で並べ替え、同じ日付・同じ金額の仕訳が2本ないかを見る。銀行明細の取り込みと手入力が重なった二重計上がここで出る
- 摘要で並べ替え、毎月あるはずの家賃や社会保険料が今月も入っているかを見る。入力漏れはこの見方でしか見つからない
- 摘要が空欄か略称だけの仕訳を拾い、証憑と照らして内容を書き足す
優先度が高いのは1つ目です。銀行やカードの明細を自動で取り込む設定にしている会社ほど、手入力との重複が起きやすくなります。3つ目の照合に使う請求書や領収書の扱いは証憑の種類と保存方法で整理しています。
税務調査で仕訳帳の提示を求められたとき、データのまま見せられる状態の条件
税務調査では、調査官が仕訳帳や総勘定元帳を見ながら、気になる取引について証憑の提示を求めるのが一般的な進め方です。このとき仕訳帳を印刷して渡すか、画面やデータで見せるかは、帳簿の保存方法によって変わります。
会計ソフトのデータのまま保存している場合、電子帳簿保存法では、税務職員からデータのダウンロードを求められたら応じられることが保存の要件の1つになっています。仕訳帳をCSVで書き出せる会計ソフトなら、この求めには通常応じられます。注意が要るのは、会計ソフトを乗り換えた会社です。帳簿の保存期間は、国税庁のNo.5930 帳簿書類等の保存期間のとおり法人で原則7年、青色欠損金が生じた事業年度は10年あります。旧ソフトの契約を解約する前に、過去の年度の仕訳帳をCSVとPDFで書き出して保管しておいてください。
仕訳帳のデータを他の業務システムとつなぐ判断、入力元と元データの番号の持たせ方
仕訳帳の中身が、販売管理や給与計算などの別のシステムから流れてくる仕訳で占められている会社では、仕訳帳の作り方そのものを見直す余地があります。
仕訳1行に入力元と元データの番号を残す設計、仕訳から販売管理の伝票へ戻れる状態
他のシステムのデータをCSVで会計ソフトへ取り込むと、仕訳帳には「売上 280,000」と並ぶだけで、どの請求書から来た数字かが摘要の文字列頼みになります。月末に販売管理の売上と会計の売上が合わないとき、原因の請求書を探すのに半日かかるのはこのためです。
連携を作るときは、仕訳1行ごとに2つの値を残す設計にします。1つは入力元で、手入力か、販売管理からか、給与からかの区別です。もう1つは元データの番号で、請求書番号や給与の支給月です。会計ソフトの多くは摘要とは別に、メモやタグ、伝票番号などの項目を持っているので、そこへ機械的に入れます。この2つがあれば、仕訳帳を入力元で絞り込み、元のシステムの合計と突き合わせる照合が数分で終わります。
会計システムの開発を検討すべき会社と、会計ソフトの仕訳帳出力で足りる会社
月の仕訳が数百本までで、大半を銀行とカードの明細から起こしている会社は、既製の会計ソフトの仕訳帳出力で足ります。仕訳帳のために新たにシステムを作る理由はありません。
開発を検討すべきなのは、販売管理・購買・給与・経費精算など3つ以上のシステムから仕訳が生まれ、毎月CSVの加工と取り込み、合わない差額の調査に担当者が丸数日使っている会社です。この場合は会計ソフトを替えても手間は減りません。元のシステムの取引から入力元と元データ番号つきの仕訳を自動で起こし、会計側へ渡す連携の層を作るほうが締めは早まります。業務システムと会計をつなぐ仕訳連携の設計や会計システムの刷新は、一創の会計・経理システム開発でご相談いただけます。
よくある質問
仕訳帳について、経理を始めたばかりの方や個人で事業を営む方から出やすい質問をまとめました。
仕訳帳は手書きで作ってもよいですか?
手書きでも問題ありません。法令が求めるのは、取引の発生順に年月日・内容・勘定科目・金額を記載することで、様式や作成方法の指定はないためです。ただし手書きの帳簿は、65万円の青色申告特別控除の要件の1つである優良な電子帳簿の保存には当たりません。個人事業主が手書きで65万円の控除を受けるには、確定申告書等をe-Taxで送信する方法を選ぶことになります。取引が月に数十件を超えるなら、転記の手間を考えて会計ソフトに切り替えるほうが現実的です。
仕訳帳と総勘定元帳はどちらを先に作りますか?
仕訳帳が先です。取引をまず仕訳帳に発生順で記録し、そこから勘定科目ごとに総勘定元帳へ転記するのが手書きの順序になります。総勘定元帳の各行には相手の勘定科目と仕訳帳のページ(仕丁)を書き、仕訳帳の元丁欄には転記先の口座番号を書くことで、2つの帳簿を行き来できるようにします。会計ソフトでは仕訳を入力した時点で両方が同時に更新されるため、順序を意識する必要はありません。
白色申告でも仕訳帳は必要ですか?
白色申告の個人事業主には、仕訳帳を備える義務はありません。白色申告でも記帳と帳簿の保存は義務ですが、売上や経費を日付順に記録する簡易な方法でよいとされています。保存期間は、収入や経費を記載した帳簿が7年、それ以外の任意の帳簿が5年です。白色から青色に切り替えて55万円や65万円の控除を受ける年からは、複式簿記による仕訳帳と総勘定元帳が必要になります。年数の区分は個人事業主の帳簿の保存期間で一覧にしています。
振替伝票を使っていれば仕訳帳は不要ですか?
振替伝票は、1枚に1つの仕訳を書く票です。伝票で起票する会社でも、伝票を綴っただけでは発生順に全取引を並べた帳簿にならない場合があり、仕訳帳として扱えるかは運用によって変わります。会計ソフトに伝票の形式で入力しているなら、入力した伝票がそのまま仕訳帳として出力されるため、別に仕訳帳を作る必要はありません。紙の伝票だけで帳簿を済ませている場合は、仕訳帳の代わりとして認められる形になっているかを税理士に確認してください。
仕訳帳の保存期間は何年ですか?
法人は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年です。青色欠損金が生じた事業年度の保存期間は10年です。会社法では会計帳簿を帳簿の閉鎖の時から10年保存することとされているため、株式会社は10年を目安に保管しておくと両方を満たせます。青色申告の個人事業主は、仕訳帳を含む帳簿を7年保存します。会計ソフトのデータで保存する場合は、ソフトを解約しても読み出せる形で残しておくことが前提です。
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