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ソフトウェア仮勘定とは?消費税の控除時期・仕訳・建設仮勘定との違い【2026年版】

ソフトウェア仮勘定とは?消費税の控除時期・仕訳・建設仮勘定との違い【2026年版】

ソフトウェア仮勘定とは、制作途中のソフトウェアにかかった費用を、完成するまで集計しておく無形固定資産の勘定科目です。完成したら本勘定の「ソフトウェア」へ振り替え、事業に使い始めた日から減価償却を始めます。経理で迷うのは、消費税の仕入税額控除をいつ行うか、建設仮勘定で処理してよいか、の2点です。消費税は振替の日ではなく、外注した開発を引き渡された日(段階ごとに報酬が確定する契約なら段階ごと)に控除します。建設仮勘定は財務諸表等規則で有形固定資産の建設に限られているため、ソフトウェアには使いません。2026年10月1日からは、免税事業者への外注費に使う経過措置の控除割合も80%から70%に下がりました。以下、会計基準・通達・省令の条番号を添えて整理します。

まとめ:ソフトウェア仮勘定の要点

ソフトウェア仮勘定は、資産計上の要件を満たしたソフトウェアの制作費を、完成までためておく無形固定資産の科目です。集計を始める日と終える日は、要件定義や設計といった工程ではなく、収益獲得・費用削減の確実性と制作作業の実質的な完了を、稟議書や最終テスト報告書などの証憑で裏付けて決めます。消費税は、仕入税額控除を課税仕入れを行った日の属する課税期間で行い、本勘定への振替日を基準にはしません。一括請負の開発委託なら全部完成して引き渡された日、作業段階ごとに報酬が確定する契約ならその都度が「行った日」です。社内人件費は不課税なので控除できません。建設仮勘定との一括控除の特例(消費税法基本通達11-3-6)は建設工事等が対象で、ソフトウェアを名指しした取り扱いはありません。完成後は自社利用なら税務上5年で定額法償却です。2026年10月1日以後に行った課税仕入れからは、免税事業者等への外注費の経過措置が70%になり、同じ相手からの年間の対象額の上限は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から税込1億円になります。

ソフトウェア仮勘定とは|制作途中のソフトウェアを集める無形固定資産

ソフトウェアの開発は数か月から数年かかります。その間の外注費や社内人件費を、完成前に「ソフトウェア」として償却し始めるわけにはいきません。そこで完成までの受け皿として置くのがソフトウェア仮勘定です。仮勘定の段階では減価償却しません。

ソフトウェア仮勘定の根拠となる実務指針とQ&A

「ソフトウェア仮勘定」という科目名は、法令にも会計基準本文にもほとんど出てきません。企業会計基準委員会(ASBJ)の移管指針第8号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」の第10項が、製品マスターの制作原価について「制作仕掛品についてはソフトウェア仮勘定などの勘定科目により」無形固定資産として計上すると定めています。同じ扱いは移管指針第11号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」のQ14でも説明されています。この指針は2024年7月1日に日本公認会計士協会(JICPA)からASBJへ移管され、旧来の「会計制度委員会報告第12号」から「移管指針第8号」へ番号が変わりました。社内規程の参照名称・番号を更新する際は、参照している版からの改正内容も確認します。

同指針は第6項でソフトウェアの範囲を、コンピュータに一定の仕事を行わせるプログラムと、システム仕様書・フローチャート等の関連文書と定めています。第7項はコンテンツ(動画や楽曲などのデータ)をソフトウェアとは別個のものとし、両者が経済的・機能的に一体不可分と認められる場合に限って一体で扱えるとしています。配信基盤を作る案件では、コンテンツの制作費を仮勘定に混ぜない線引きがまず必要です。

自社利用・市場販売目的・受注制作の集計科目の違い

ソフトウェア仮勘定を使うのは、資産に計上するソフトウェアを作っている間だけです。制作目的によって次のように分かれます。

制作目的 完成前の集計先 完成後 根拠
自社利用 ソフトウェア仮勘定 ソフトウェア 移管指針第8号 11〜13項
市場販売目的(製品マスター) ソフトウェア仮勘定 ソフトウェア 移管指針第8号 8〜10項
市場販売目的の研究開発段階 研究開発費(費用) ― 移管指針第8号 8項
受注制作(顧客向け) 仕掛品等の棚卸資産 売上原価 収益認識基準

市場販売目的では、「最初に製品化された製品マスター」が完成するまでが研究開発で、その後の制作費が資産になります。第8項はその完成時点を、製品性を判断できる程度のプロトタイプの完成、プロトタイプを作らない場合は販売に必要な重要な機能の完成と重要な不具合の解消、の2点で判断するとしています。受注制作は顧客に納める成果物の原価なので、受託側は仮勘定を使いません。受託開発会社の原価の集め方は別の論点です。

前渡金・ソフトウェア仮勘定・ソフトウェアの3区分

同じ開発案件の支出でも、置き場所は3つに分かれます。成果物をまだ受け取っていない着手金・中間金は流動資産の前渡金、引渡しを受けて制作中の分は無形固定資産のソフトウェア仮勘定、使い始めた後はソフトウェアです。前渡金の明文は研究開発の委託について置かれており、移管指針第8号の第3項は外部に研究開発を委託した場合「契約金等は前渡金として処理しなければならない」としています。対象は研究開発ですが、成果物を受け取る前の支払いを資産の集計勘定に載せないという考え方は、開発委託にもそのまま当てはまります。監査や税務調査で問われるのは、この3区分の境目に置いた検収書や納品書の日付です。

ソフトウェア仮勘定の計上開始・終了の要件と証憑

「要件定義までは費用、基本設計からは資産」という説明をよく見かけますが、日本の会計基準にこの線引きはありません。移管指針第8号の第37項は結論の背景で、制作段階により区分する方法は「ソフトウェア制作には多様な制作実態が存在し、それらを明確に区分することは困難」であるため「採用していない」と明言しています。アジャイル開発のように工程が繰り返す案件では、工程基準そのものが当てはまりません。

自社利用ソフトウェアの計上開始・終了を裏付ける証憑

代わりに指針が置いているのが証憑の基準です。移管指針第8号の第12項は、自社利用ソフトウェアの資産計上の開始時点を、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる状況になった時点とし、証憑の例に「ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書」と「制作番号を記入した管理台帳」を挙げています。第13項は終了時点を、実質的に制作作業が完了したと認められる時点とし、例に「ソフトウェア作業完了報告書、最終テスト報告書等」を挙げています。

集計開始日は収益獲得又は費用削減の確実性を立証できる時点、終了日は制作作業が実質的に完了した時点とし、それぞれ証憑で裏付けます。例示された書類がなくても、開始・終了の要件を立証できる別の証憑があれば説明できます。開発プロジェクトの立ち上げ時に、経理が制作番号の採番を条件にしておくのが確実です。要件定義やPoC(概念実証)の扱いを含む判定全体はシステム開発費の資産計上と費用処理|判定基準・PoC・要件定義の扱いで掘り下げています。

研究開発費との線引きと、会計・税務の逆向きの基準

自社利用で資産計上できるのは、将来の収益獲得又は費用削減が「確実」と認められる場合だけです。移管指針第8号の第11項は、確実と認められない場合と、確実かどうか不明な場合は、いずれも費用処理するとしています。不明なものは資産にしない、という向きです。

税務は逆を向いています。法人税基本通達7-3-15の3の(2)は、自社利用ソフトウェアの研究開発費を取得価額に算入しないでよい場合を「将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかな場合」に限っています。会計で「不明」として費用にした支出が、税務では「ならないことが明らか」とまでは言えずに資産扱いとなり、申告調整が生じるのはこのためです。研究開発費に回した支出は、研究開発税制の税額控除の対象になる場合もあります。対象範囲は研究開発税制とは:令和8年度改正の控除率とソフトウェア開発費が対象になる条件で確認できます。

建設仮勘定・未成工事支出金との違い|資産区分と消費税の取扱い

「ソフトウェアの開発費を建設仮勘定に入れてよいか」という問いには、条文で答えが出ます。

財務諸表等規則第22条第9号による建設仮勘定の範囲

財務諸表等規則第22条は有形固定資産の範囲を定め、第9号で建設仮勘定を「第一号から第七号までに掲げる資産で営業の用に供するものを建設した場合における支出」と定義しています。第1号から第7号は、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両運搬具、工具器具備品、土地です。ソフトウェアはここに入らないので、ソフトウェアの制作支出は定義上、建設仮勘定になりません。

一方、無形固定資産の範囲を定める第27条は第11号に「ソフトウエア」を置いていますが、ソフトウェア仮勘定の号はありません。制作途中のソフトウェアは、科目名こそ仮勘定でも、区分としては無形固定資産のソフトウエアの側に属します。

例外は機器組込みソフトウェアです。移管指針第8号の第17項は、機械や器具備品に組み込まれ「有機的一体として機能する」ソフトウェアを独立の科目にせず、機械等の取得原価に算入して「機械及び装置」等の科目で処理するとしています。制御装置に書き込むファームウェアの制作が設備工事の一部として進むなら、その支出は機械の建設仮勘定に入ります。

通達11-3-5と11-3-6の継続適用条件の違い

消費税で完成時に一括して控除する取り扱いは、消費税法基本通達に2本あり、条件が同じではありません。

通達 経理する科目 一括できる時点 継続適用 タックスアンサー
11-3-5 未成工事支出金 目的物の引渡しをした日 条件として明記 No.6487
11-3-6 建設仮勘定 目的物の完成した日 文言なし No.6483

11-3-5は「継続適用を条件として、これを認める」で終わり、11-3-6は「これを認める」で終わります。起点も違い、11-3-5は請け負った側が引き渡す「引渡しをした日」、11-3-6は発注した側から見た「完成した日」です。国税庁タックスアンサーNo.6483はこれを「工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の属する課税期間」と言い換えています。

そして2本とも、対象を「建設工事等に係る目的物」に限っています。消費税法基本通達の第11章第3節(課税仕入れ等の時期、11-3-1から11-3-11)を通して読んでも、ソフトウェアの制作を名指しした一括控除の取り扱いは置かれていません。ソフトウェア仮勘定で完成時一括を採ると、根拠を問われたときに建設工事等への類推しか示せません。原則どおり課税仕入れを行った日ごとに控除するのが安全で、一括を採るなら事前に顧問税理士か所轄税務署へ確認してください。

ソフトウェア仮勘定の消費税|仕入税額控除のタイミング

仮勘定に集計する費用のうち、消費税の控除に関係するのは外部への支払いだけです。費目と時期を分けて押さえます。

課税仕入れになる費目・ならない費目

開発の外注費、ライセンス料、開発用に買ったサーバーやツールは課税仕入れで、仕入税額控除の対象です。社内の給与・賞与・法定福利費は不課税で、控除の対象になりません。社内人件費を仮勘定に含めること自体は正しく、法人税基本通達7-3-15の2は自己製作ソフトウェアの取得価額を「原材料費、労務費及び経費の額並びに当該ソフトウエアを事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額」としています。したがって、仮勘定の残高全額に税率を掛けても、控除対象の消費税額は求められません。

契約形態別の控除日|一括請負は引渡しの日

仕入税額控除は、課税仕入れを行った日の属する課税期間で行います。消費税法基本通達11-3-1はこの日を「資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日」とし、それがいつかは第9章(資産の譲渡等の時期)の取り扱いに準ずるとしています。発注側は、売り手側の譲渡等の時期を定めたこの第9章の基準で、課税仕入れの日を判定します。

契約の形 控除できる日 根拠
一括請負(成果物の納品あり) 全部完成して引き渡された日 消基通9-1-5
作業段階ごとに報酬を確定・支払 各段階の報酬が確定した日 消基通9-1-11(2)
着手金(後日精算で返還あり) 支払時は控除しない 前渡金として処理

9-1-5は、物の引渡しを要する請負は「その目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日」としています。1本の請負契約で開発を発注し、途中で中間金を払っている場合、その中間金は引渡し前なので控除できず、前渡金に置きます。一方、9-1-11は設計などの技術役務について、基本設計と部分設計の報酬が区分されている場合のように「報酬の額が作業の段階ごとに区分され」、段階が完了する都度金額を確定させて支払う契約なら、確定した日にその分の役務提供があったとしています。工程ごとに個別契約や検収を切っている案件は、検収のたびに仮勘定と仮払消費税を立てることになります。

どちらの契約でも、本勘定への振替だけを理由に控除時期を決めることはできません。ただし、引渡しと振替が同日なら、控除時期と振替日が一致することはあります。振替は資産の付け替えで、新たな課税仕入れではありません。減価償却資産になるからといって控除を償却期間で按分することもなく、11-3-3は減価償却資産でも課税仕入れ等を行った日の属する課税期間で控除すると念押ししています。

免税期間中の外注費と本勘定振替後の仕入税額控除

設立間もない会社で、免税事業者の期間に開発を始め、課税事業者になってから完成するケースがあります。消費税法第30条第1項は、仕入税額控除を行う事業者から「第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者」を除いています。免税事業者だった課税期間に引渡しを受けた外注費は、課税事業者になった期に仮勘定から本勘定へ振り替えても控除できません。

免税期間中の仕入れを課税事業者になった期で控除できる調整(消費税法第36条)はありますが、国税庁タックスアンサーNo.6491が示すとおり対象は課税事業者となる日の前日に所有する棚卸資産に限られ、無形固定資産のソフトウェア仮勘定には使えません。結論を分けるのは引渡しの日です。一括請負で、引渡しが課税事業者になった後なら、着手が免税期間中でも引渡しの日の課税期間で控除できます。免税期間をまたぐ開発では、契約の引渡し日がどちらの期に入るかを先に確認してください。

2026年10月1日からのインボイス経過措置|70%控除と年間1億円の上限

免税事業者のフリーランスエンジニアや、インボイスの登録をしていない小さな開発会社へ外注している場合、2026年10月1日を境に控除できる額が変わりました。仮勘定は集計期間が長いため、同じ案件の中に割合の違う課税仕入れが混ざります。

適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除ができません(消費税法30条7項)。ただし平成28年改正法附則52条・53条の経過措置により、一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できます。国税庁のインボイスQ&A問113(令和8年4月改訂)が示す期間と割合は次のとおりです。

課税仕入れを行った期間 控除できる割合
令和5年10月1日~令和8年9月30日 仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日~令和10年9月30日 仕入税額相当額の70%
令和10年10月1日~令和12年9月30日 仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日~令和13年9月30日 仕入税額相当額の30%

改正前は2026年10月から50%に下がる予定でしたが、令和8年度税制改正で期間が2年延び、70%・50%・30%の3段階になりました。割合を決めるのは課税仕入れを行った日です。前の章のとおり、一括請負なら引渡しの日なので、2026年9月に作業がほぼ終わっていても、引渡しが10月1日以後なら全額が70%側に入ります。9月末に引渡しが集中する案件は、契約上の引渡し日を確認しておく必要があります。

金額の上限も下がりました。一の免税事業者等から行う経過措置対象の課税仕入れの合計額が、その年又はその事業年度で一定額を超えると、超えた部分には経過措置を使えません。一定額は、令和6年10月1日から令和8年9月30日までの間に開始する課税期間が税込10億円、令和8年10月1日以後に開始する課税期間は税込1億円です。大型の開発を未登録のベンダー1社に任せている場合は届きうる水準なので、発注先ごとの年間累計を台帳で持っておきます。

帳簿の書き方も見直しが要ります。経過措置の適用には、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を書く必要があり、Q&Aの記載例は「80%控除対象」「免」などです。「※は80%控除対象」のように記号で示す方法も認められていますが、10月1日以後の取引にそのまま使うと実態と食い違います。会計システムの税区分マスタと摘要テンプレートを70%用に分けてください。発注先ごとの年間累計や検収日による割合の自動判定まで既存の会計システムで持てない場合は、会計・経理システム開発で税区分と発注管理をつなぐ選択肢もあります。制度全体は適格請求書(インボイス)とは?2026年10月の控除変更と企業のシステム対応、仕入計上側の実務は買掛金とは?未払金との違い・仕訳と2026年10月70%控除への対応【2026年版】で扱っています。

ソフトウェア仮勘定の仕訳|着手から完成振替まで

工程ごとに検収を切る開発委託を例に、着手から稼働後までの仕訳を並べます。一括請負なら、引渡しまでの支払いはすべて前渡金に置き、引渡しの日に仮勘定(完成していれば直接ソフトウェア)と仮払消費税を計上します。

段階 取引 借方 貸方
着手時 着手金の支払(成果物の受領前) 前渡金 普通預金
開発中 設計工程の検収 ソフトウェア仮勘定・仮払消費税 買掛金
開発中 着手金の充当 買掛金 前渡金
開発中 社内人件費の振替(不課税) ソフトウェア仮勘定 給与手当
完成時 最終テスト完了・稼働 ソフトウェア ソフトウェア仮勘定
稼働後 決算時の減価償却 減価償却費 ソフトウェア

この例では、着手金を後日精算し、剰余金を返還する契約を前提とするため、支払時に仮払消費税を立てません。後日精算する着手金を支払時に仮勘定・仮払消費税で処理すると、控除が早すぎることになります。社内人件費の振替は、いったん給与手当で計上した費用を資産へ移す仕訳で、通常の経費処理と向きが逆になるため起票漏れが起きやすい箇所です。完成時の振替仕訳は消費税の対象外(不課税)の区分で起票し、仮払消費税を二重に立てないようにします。減価償却の計算方法そのものは減価償却とは?仕組み・計算方法・対象資産と会計システムで自動化できる範囲を解説にまとめています。

仮勘定に入れる費用・入れない費用とシステム開発の勘定科目

どの支出を仮勘定に積むかは、その支出でソフトウェアの資産価値が増えるかで切り分けます。

外注費・社内人件費・ライセンス料の集計ルール

外注費は、資産計上の要件を満たしてから制作作業が実質的に完了するまでの対象額を、移管指針第8号第12・13項に沿って集計します。契約に保守や操作研修が含まれていれば区分して費用にします。社内人件費は、開発に直接従事した時間に対応する給与・賞与・法定福利費が対象で、制作番号ごとの工数記録が前提です。開発専用のツールやミドルウェアのライセンス料は仮勘定に含められますが、他業務と共用するライセンスは合理的に按分するか、少額なら費用にします。

取得価額に入れなくてよい費用|法基通7-3-15の3の3%基準

すべてを積み上げなくてよいと明文で認めているのが、法人税基本通達7-3-15の3です。次の費用は取得価額に算入しないことができます。

  • 製作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用
  • 研究開発費(自社利用ソフトウェアは、将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかな場合に限る)
  • 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その費用の額の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内)であるもの

3つ目の数値基準は、間接部門の費用をどこまで配賦するかに効きます。製作原価5,000万円の案件なら、対象となる間接費・付随費用等の合計がおおむね150万円以内の場合に、税務上の取得価額に算入しないことができます。全社共通費を案件ごとに細かく配賦している会社は、この基準で配賦計算を簡素にできる余地があります。仕様変更で捨てた実装分も、1つ目の「仕損じ」として資産に残さずに済みます。

システム開発費・利用料・カスタマイズの勘定科目早見表

支出の内容 取り扱い 根拠
新規開発・機能追加の外注費 ソフトウェア仮勘定→ソフトウェア 法基通7-3-15の2
購入ソフトの設定作業・自社仕様への修正 取得価額に算入 法基通7-3-15の2(注)1
既存ソフトの仕様を大幅に変える新規制作 新ソフトの取得価額 法基通7-3-15の2(注)2
SaaSの月額利用料 費用(支払手数料等) 資産の取得に当たらない
旧システムのデータコンバート費用 発生年度の費用 移管指針第8号 16項(1)
操作トレーニング費用 発生年度の費用 移管指針第8号 16項(2)
稼働後のバグ修正・機能維持 修繕費 法基通7-8-6の2
機器と一体で動くファームウェア 機械及び装置等の取得原価 移管指針第8号 17項

データコンバートと操作トレーニングは、移管指針第8号の第16項が発生した事業年度の費用と明記しているので、仮勘定に混ぜると監査で外されます。税務上の取得価額と耐用年数は国税庁タックスアンサーNo.5461「ソフトウエアの取得価額と耐用年数」にもまとまっています。

会計と税務がずれやすいのが「著しい改良」です。移管指針第8号の第33項は、製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化費用を原則資産計上とし、著しい改良と認められる場合は研究開発費とします。例示は、主要なプログラムの過半部分を再制作する場合と、動作環境(オペレーティングシステム、言語、プラットフォームなど)の変更・追加に大幅な修正が必要な場合です。この項は市場販売目的の節に置かれており、自社利用ソフトウェアの改修に当然には及びません。税務でも、法人税基本通達7-3-15の3(2)に該当する研究開発費は取得価額から除外できるため、会計で研究開発費にしただけで申告調整が生じるとは限りません。耐用年数やアジャイル開発・SaaSの費用判定はソフトウェアの資産化と耐用年数|5年を超えられる条件とアジャイル・SaaS費用の判定で扱っています。

決算書でのソフトウェア仮勘定|貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書

決算書では、貸借対照表の表示区分とキャッシュ・フロー計算書の支出区分を確認します。

貸借対照表では無形固定資産、原則はソフトウェアに含めて表示

財務諸表等規則第28条は、無形固定資産を「ソフトウエア」「その他」などの項目に区分して表示するよう定めており、ソフトウェア仮勘定という項目はありません。移管指針第8号の第10項も、制作仕掛品と完成品を区分せず一括して「ソフトウェア」等の科目で掲げるのを原則とし、制作仕掛品に重要性がある場合に区分表示が望ましいとしています。決算書にソフトウェア仮勘定の行がある会社は、制作途中の残高に重要性があると判断して分けて見せている、と読めます。逆に行が無くても、ソフトウェアの残高に制作途中の分が含まれていることがあります。

キャッシュ・フロー計算書では投資活動の区分

ソフトウェア仮勘定に積んだ外注費の支払いは、営業活動ではなく投資活動のキャッシュ・フローです。連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の注解(注4)は、投資活動の区分に記載する例の1番目に「有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出」を挙げています。2026年7月7日に最終改正された移管指針第6号の第8項も、投資活動の区分に「有形固定資産及び無形固定資産の取得及び売却」に係るキャッシュ・フローを記載するとしています。

仮勘定から本勘定への振替は現金が動かないので、キャッシュ・フロー計算書には出てきません。前期末にソフトウェアがあり当期末にソフトウェア仮勘定が増えている場合、当期の取得による支出として拾うのは当期に支払った仮勘定分とソフトウェア分で、振替額を足し込むと二重計上になります。間接法の組み方はキャッシュフロー計算書の作り方:間接法の5手順を精算表の設例で解説、会計システムの科目設計まで【2026年版】で設例とともに解説しています。

完成・稼働時の本勘定振替と耐用年数

制作が完了したら仮勘定を本勘定の「ソフトウェア」へ振り替え、事業の用に供した日から償却を始めます。振替は科目の付け替えにとどまらず、償却の起算日と耐用年数を決める手続きです。

本勘定への振替時点と償却の起算日

本勘定への振替時点と税務上の償却開始時点は区別して確認します。会計上の資産計上の終了は移管指針第8号第13項にいう実質的な制作完了の時点ですが、税務の償却は事業供用日から始まるため、両者の間に移行期間があるなら日付を分けて記録します。旧システムとの並行稼働がある場合にどちらの日を稼働日とするかは、会計方針で定めて継続します。リリース通知や稼働報告書で日付を残し、固定資産台帳への登録日をそろえておけば、後の監査で説明できます。台帳運用は固定資産管理システムとは?機能・固定資産台帳と減価償却の関係・選び方を解説も参考になります。

税務は5年、会計は利用可能期間で原則5年以内

税務上の耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第三が定め、ソフトウエアは「複写して販売するための原本」3年と「その他のもの」5年の2区分だけです。自社利用は5年です。開発研究の用に供するソフトウエアは別表第六で3年になります。

会計上は移管指針第8号の第21項が、自社利用ソフトウェアは定額法による償却が合理的とし、耐用年数は利用可能期間によるが原則5年以内、5年を超えるときは合理的な根拠が要るとしています。3年で刷新する予定なら会計は3年、税務は5年で計算し、差額を申告調整します。同項は、当初の耐用年数がその時点の合理的な見積りに基づいていなかった場合、後から改めるのは見積りの変更ではなく過去の誤謬の訂正になるとしています。当初の年数を決めた根拠資料は残しておいてください。

開発中止・凍結時の仮勘定残高と損失処理の判断

開発を中止した場合は、成果物の転用・売却の見込みを確認します。将来の利用が見込めない部分について、処分見込価額も考慮して損失処理を判断します。仕様変更で一部の成果物を捨てた場合も、捨てた分は7-3-15の3(1)の仕損じとして取得価額から外せます。

税務で損金とするには、中止の事実を書面で示せることが要ります。参考になるのが、稼働後のソフトウェアの除却を定めた法人税基本通達7-7-2の2です。物理的な廃棄がなくても「今後事業の用に供しないことが明らかな事実」があれば帳簿価額を損金に算入できるとし、市場販売用の原本については、販売を行わないことが「社内りん議書、販売流通業者への通知文書等」で明らかな場合を挙げています。この通達は事業に使っていたソフトウェアを前提にしており、未完成の仮勘定を名指ししてはいませんが、中止の決裁書や関係者への通知を残す、という証憑の考え方はそのまま使えます。

会計上は減損も検討します。固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第6号)の第69項は自社利用のソフトウェアを減損の対象資産とし、第13項(7)は建設仮勘定について「計画の中止又は大幅な延期が決定されたことや当初の計画に比べ著しく滞っていること」を減損の兆候に挙げています。ソフトウェア仮勘定を名指しした項はありませんが、開発の凍結や大幅な延期を決めた時点でこの例に当てはめて兆候の有無を判断し、回収可能価額を見積もるのが整合的です。凍結した案件を「いずれ再開する」として仮勘定に置き続けるのが、最も説明に困る状態です。

消費税の扱いは別に考えます。開発を中止して資産計上をやめても、すでに引渡しや段階完了を受けた外注費は課税仕入れとして成立しているので、控除した処理を取り消す必要はありません。仮勘定の残高処理と仕入税額控除は連動しません。

よくある質問

ソフトウェア仮勘定の消費税はいつ仕入税額控除しますか?

課税仕入れを行った日の属する課税期間です。消費税法基本通達11-3-1により、その日は資産の譲渡等の時期を定めた第9章の取扱いに準じて決まります。一括請負なら全部完成して引き渡された日(9-1-5)、作業段階ごとに報酬を確定させて支払う契約なら各段階の確定日(9-1-11)です。本勘定への振替日ではなく、課税仕入れを行った日を基準に控除する課税期間を判定します。社内人件費は不課税なので控除できません。

ソフトウェアの開発費を建設仮勘定で処理してもよいですか?

使いません。財務諸表等規則第22条第9号は、建設仮勘定を建物・構築物・機械及び装置・船舶・車両運搬具・工具器具備品・土地を建設した場合の支出と定義しており、ソフトウェアは含まれません。ソフトウェアの制作途中の支出は、無形固定資産のソフトウェア仮勘定で集計します。機械に組み込まれて一体で機能するソフトウェアだけは、移管指針第8号の第17項により機械等の取得原価に入れます。

2026年10月1日から免税事業者への外注費の控除はどう変わりましたか?

経過措置で控除できる割合が、仕入税額相当額の80%から70%に下がりました(平成28年改正法附則52条・53条、令和8年度税制改正)。判定は課税仕入れを行った日で決まり、一括請負なら引渡しの日です。あわせて、一の免税事業者等からの経過措置対象の課税仕入れの上限が、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から税込10億円から税込1億円に下がりました。帳簿の「80%控除対象」などの表記も見直しが要ります。

仮勘定と本勘定の違いは何ですか?

仮勘定は完成前の支出を一時的に集める科目、本勘定は完成後の資産を表す科目です。ソフトウェアでは、制作中の支出をソフトウェア仮勘定に集め、制作が完了したら本勘定の「ソフトウェア」へ振り替えます。償却は事業の用に供した日から始まり、仮勘定の段階では償却しません。

ソフトウェア仮勘定の耐用年数は何年ですか?

仮勘定の段階では償却しないため、耐用年数はありません。本勘定に振り替えた後の税務上の耐用年数は、耐用年数省令 別表第三で自社利用を含む「その他のもの」が5年、「複写して販売するための原本」が3年です。会計上は移管指針第8号の第21項により利用可能期間で原則5年以内とし、税務と年数が違えば申告調整します。

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