電力会社やガス会社に支払う工事負担金は、供給を受けるための支出か、売電するための支出かで資産区分が変わります。最初につまずきやすいのが圧縮記帳です。「工事負担金は圧縮記帳できる」と説明する記事は多いものの、法人税法第45条の主語は工事負担金を受け入れた電気・ガス・水道・鉄道の事業者で、支払った側ではありません。支払った側には別の条文があります。この記事では支払側と受入側を分けて、勘定科目・償却期間・消費税・仕訳・別表の欄まで条文と国税庁資料で確認します。
まとめ:工事負担金の支払側・受入側の処理と根拠条文
同じ「工事負担金」という言葉でも、金銭が出ていく側と入ってくる側では適用される制度が別です。まずこの一覧で自社がどちらの立場かを確定してください。
| 項目 | 支払う側(便益を受ける者) | 受け入れる側(電気・ガス・水道等の事業者) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 法令13条8号、法令14条1項6号 | 法人税法45条 |
| 資産区分 | 無形固定資産または繰延資産 | 受入額は益金、取得資産を圧縮 |
| 代表的な勘定科目 | 電気ガス供給施設利用権、長期前払費用 | 工事負担金受入額、固定資産圧縮損 |
| 償却・繰延 | 15年、6年、耐用年数の10分の7など | 圧縮記帳で課税を繰り延べ |
| 消費税 | 利用権の設定対価なら課税仕入れ | 利用権の設定対価なら課税売上 |
| 申告書 | 無形固定資産:別表16(1)、繰延資産:別表16(6) | 別表十三(一)Ⅱ |
- 引き込み工事の負担金(供給を受ける側)は無形固定資産で、電気・ガス・水道はいずれも15年の定額法で償却する
- 売電のための連系工事負担金は繰延資産で15年。太陽光発電設備の取得価額に含める処理は国税庁が否定している
- 下水道の受益者負担金は繰延資産で6年。土地の価格上昇に基因して土地所有者が納める負担金は土地の取得価額に入る
- 圧縮記帳を使えるのは受け入れた事業者だけで、届出は不要だが確定申告書への明細の記載が要件
圧縮記帳そのものの考え方を先に押さえたい場合は圧縮記帳とは?当初申告要件と損金経理の要件を参照してください。
工事負担金とは:託送供給等約款で決まる設備工事費の負担額
工事負担金(電力会社の約款では「工事費負担金」)は、電気・ガス・水道などの事業者が、特定の需要者や発電者のために供給設備を新設・増強するとき、その工事費の一部を需要者側に負担させる金銭です。設備の所有者は事業者のままで、負担した側の資産にはなりません。この「払ったのに自分の設備にならない」点が、支払側の会計処理を難しくしています。
請求額は事業者の約款で決まります。東京電力パワーグリッドの託送供給等約款(令和8年10月1日実施)の第Ⅷ章70(1)イ(イ)では、低圧・高圧で新たに施設する供給側接続設備のこう長が架空1,000m、地中150mまでは工事費負担金がかからず、超えた部分に1mあたり架空3,520円、地中27,830円がかかります。負担金の有無は市街地・郊外という立地だけでは決まらず、新設する設備のこう長や約款上の工事条件によって判断します。同約款の71では、工事費負担金は原則として工事着手前に支払います。工事完成後の精算は、こう長の変更など同条所定の条件に該当する場合に行います。
特別高圧になると金額の桁が変わります。東京電力パワーグリッドは工事費負担金算出の考え方についてで、66kVの本線・予備線で供給する場合の算式を次のように公表しています。予備線の20%は、本線と同一の支持物に同時に施設する場合の適用率です。
| 区分 | 算式(東京電力パワーグリッドの例) |
|---|---|
| 本線 | 工事費単価 × こう長(m)÷100 × 新増加契約電力(kW) - 5,500円 × 新増加契約電力(kW) |
| 予備線 | 工事費単価 × こう長(m)÷100 × 新増加契約電力(kW) × 20% |
| 工事費単価 | 架空 198.0円、地中 594.0円(100m・1kWあたり) |
同ページの算出例1(架空、こう長3,050m、契約電力20,000kW)では、本線が10,780,000円、予備線が24,156,000円で、概算負担金額は34,936,000円です。本線は「当社負担額」の5,500円/kWを差し引くので、架空ならこう長が約2,777m以下で本線分は0円になります(計算結果がマイナスなら0円)。単価は「消費税等相当額含む」と明記されているため、請求額には消費税が入っています。この金額を、次章以降の仕訳例でそのまま使います。
工事負担金を支払った側の勘定科目と償却期間
電気・ガス・水道の供給を受けるための負担金は無形固定資産
法人税法施行令第13条第8号は、無形固定資産として償却できる権利を列挙しています。ソの電気ガス供給施設利用権は、条文で「電気又はガスの供給施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して電気又はガスの供給を受ける権利」と定義されています。ツの水道施設利用権、ネの工業用水道施設利用権も同じ構造です。引き込み工事の費用を電力会社やガス会社に支払った時点で、支払った側には資産が立ちます。費用ではありません。
耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第三に定められています。償却方法は施行令第48条の2第1項第4号により定額法だけです。
| 権利の種類 | 根拠 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 電気ガス供給施設利用権 | 法令13条8号ソ | 15年 |
| 水道施設利用権 | 法令13条8号ツ | 15年 |
| 工業用水道施設利用権 | 法令13条8号ネ | 15年 |
| 電気通信施設利用権 | 法令13条8号ナ | 20年 |
| 専用側線利用権 | 法令13条8号タ | 30年 |
| 鉄道軌道連絡通行施設利用権 | 法令13条8号レ | 30年 |
下水道にも手当てがあります。法人税基本通達7-1-8は、公共下水道を使用する排水設備を新設・拡張するために公共下水道管理者へ支払う改築費用の負担金を、水道施設利用権に準じて扱うとしています。上水道と同じ15年です。
売電用の連系工事負担金は繰延資産で15年
自社の発電設備から電力会社へ売電するために系統連系工事の費用を負担する場合は、扱いが変わります。国税庁の質疑応答事例太陽光発電設備の連系工事負担金の取扱いについて(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)は、「当該連系工事負担金は、繰延資産に該当します。また、その償却期間は15年として差し支えありません」と回答しています。根拠は法人税法第2条第24号と施行令第14条第1項第6号ホです。
同事例は、自社の太陽光発電設備の取得価額に含める処理をはっきり否定しています。「電力会社の所有物となる電気供給設備の工事費用を甲社が負担するものであり、甲社の所有する太陽光発電設備に対する支出ではないため、これを固定資産の取得価額に含めることはできません」。この事例と同じ条件なら、連系工事負担金は太陽光発電設備の取得原価から区分し、繰延資産として処理します。
15年は電気ガス供給施設利用権の耐用年数に準じた期間で、電力会社との契約の受給期間など合理的に見積もった期間で償却することも認められています。注意したいのは自動更新の契約です。同事例の(注)は、受給期間を1年として自動更新するような場合は終期が定まっていないので、再生可能エネルギー電気特措法の調達期間(10kW以上は20年、それ以外は10年)を受給期間とみるとしています。1年の自動更新だから1年で償却する、という処理は通りません。
受益者負担金・協会や商店街の負担金の償却期間
国や地方公共団体の公共的施設、所属する協会や商店街の共同的施設のために払う負担金は、施行令第14条第1項第6号イの繰延資産です。会計上は「長期前払費用」などの科目で管理し、税務上は繰延資産として扱います。償却期間は法人税基本通達8-2-3の表を基本とし、8-2-4・8-2-5の特例も確認します。協会等の本来の用に供される会館等の建設・改良負担金は、8-2-3による期間が10年を超える場合、8-2-4により10年とします。10分の7や10分の4で計算した年数に1年未満の端数が出たら切り捨てます(8-2-3の注2)。
| 負担金の種類 | 通達 | 償却期間 |
|---|---|---|
| 公共的施設(負担者が専ら使用) | 8-1-3、8-2-3 | 耐用年数の10分の7 |
| 公共的施設(上記以外) | 8-1-3、8-2-3 | 耐用年数の10分の4 |
| 公共下水道の受益者負担金 | 8-2-5 | 6年 |
| 協会等の共同的施設(建設・改良部分) | 8-1-4、8-2-3 | 耐用年数の10分の7 |
| 協会等の共同的施設(土地部分) | 8-1-4、8-2-3 | 45年 |
| 商店街のアーケード・すずらん灯等 | 8-1-4、8-2-3 | 原則5年(耐用年数が5年未満ならその年数) |
法人税基本通達8-1-3(2)は、国等の公共的施設の設置等で「著しく利益を受ける場合」の負担金を繰延資産に含めつつ、「土地所有者又は借地権を有する法人が土地の価格の上昇に基因して納付するもの」を除いています。除かれた負担金は繰延資産にならず、土地の取得価額に算入します(タックスアンサーNo.5462)。そのうえで8-2-5は、地方公共団体が都市計画事業などとして公共下水道を設置し、その設置で著しく利益を受ける土地所有者が都市計画法などの法令に基づいて負担する受益者負担金について、償却期間を6年と定めています。6年になるのは、都市計画法などの法令に基づいて土地所有者が負担する受益者負担金です。自社の排水設備を新設・拡張するために下水道管理者へ払う改築費用の負担金は、前述の7-1-8で水道施設利用権に準じる15年なので、請求の根拠が受益者負担金か改築費用の負担かを請求書で確かめてください。
協会や商店街の負担金でも、施設の相当部分が貸室など本来の用以外に使われている場合は、その部分は協会等への寄附金になります(8-1-4)。街路の簡易舗装・街灯・がんぎなど、主として一般公衆の便益に供される簡易な施設の負担金は、繰延資産にせず支出年度の損金にできます(8-1-13)。
資産区分別の少額資産の損金算入基準
施行令第134条は、第14条第1項第6号の繰延資産のうち支出額が20万円未満のものを、損金経理をすれば支出年度の損金に算入すると定めています。連系工事負担金の質疑応答事例も、この条文を引いて20万円未満なら全額損金にできると明記しています。
この20万円基準は繰延資産だけが対象です。電気ガス供給施設利用権のような無形固定資産は施行令第134条の適用外で、減価償却資産のルールで判定します。施行令第133条は、取得価額10万円未満などの対象資産について、事業の用に供した事業年度に取得価額を損金経理した場合に損金算入を認めており、租税特別措置法第67条の5の対象となる中小企業者等は、令和8年4月1日以後の取得等について40万円未満(同年3月31日までの取得等は30万円未満)まで損金経理できます。同条は青色申告書の提出などを要件とし、1事業年度あたり合計300万円が限度です。同じ15万円の工事負担金でも、繰延資産なら20万円未満で全額損金、無形固定資産なら10万円以上なので原則は資産計上(中小企業者等の特例を使えば損金)と分かれます。
工事負担金の消費税区分と仕入税額控除
負担金は、対価性があるかどうかで課税・不課税が分かれます。消費税法基本通達5-5-6は、負担金・賦課金等について「当該事業の実施に伴う役務の提供との間に明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定する」としたうえで、判定が困難な国・地方公共団体の公共的施設や同業者団体等の共同的施設の負担金は、交付先が対価に該当しないものとし、支払う事業者も課税仕入れとしない処理を認めています。
この不課税扱いには除外があります。同通達の注1は「公共的施設の負担金等であっても、例えば、専用側線利用権、電気ガス供給施設利用権、水道施設利用権、電気通信施設利用権等の権利の設定に係る対価と認められる場合等の、その負担金等は、資産の譲渡等の対価に該当する」と明記しています。電力・ガス・水道の引き込み工事のように利用権の設定を伴う工事費負担金は課税取引で、支払った側では課税仕入れです。前章の東京電力パワーグリッドの単価が消費税等相当額込みで示されているのも、この扱いと一致します。仕入税額控除には、原則として帳簿と適格請求書等の保存が必要です。
控除の時期は償却期間で按分しません。消費税法基本通達11-3-3(減価償却資産)と11-3-4(繰延資産)は、いずれも「その課税仕入れ等を行った日の属する課税期間において法第30条の規定が適用される」としています。15年で償却する電気ガス供給施設利用権でも、仕入税額控除は課税仕入れを行った日の属する課税期間に行います。工事着手前の前払いだけでは課税仕入れにならず、利用権の取得などの取引時点で判定します。
支払側の仕訳例:引き込み工事と連系工事の負担金
電気ガス供給施設利用権を計上して15年で償却する仕訳
東京電力パワーグリッドの算出例1の34,936,000円(消費税等相当額込み)を支払ったとします。約款どおり工事着手前に払うので、支払時は前払金とし、工事が完成して供給を受けられるようになった時点で利用権に振り替えます。税抜経理で、消費税は10%として税抜31,760,000円と消費税3,176,000円に分けます。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 支払時(着手前) | 前払金 | 34,936,000 | 普通預金 | 34,936,000 |
| 工事完成時 | 電気ガス供給施設利用権 | 31,760,000 | 前払金 | 34,936,000 |
| 仮払消費税等 | 3,176,000 | |||
| 決算時(1年分) | 減価償却費 | 2,127,920 | 電気ガス供給施設利用権 | 2,127,920 |
償却費は取得価額31,760,000円に耐用年数15年の定額法の償却率0.067を掛けた額です。償却は供給を受け始めた月から月割で始め、工事完成後の精算で金額が変わったら取得価額を修正します。無形固定資産なので残存価額はなく、帳簿価額をゼロまで償却します。消費税等の3,176,000円は、利用権の取得などにより課税仕入れを行った日の属する課税期間に、保存要件などを満たす範囲で仕入税額控除の対象となります。
連系工事負担金を長期前払費用で処理する仕訳
売電用の連系工事負担金として税込1,100,000円を工事着手前に支払った場合、支払時は前払金とし、電力会社が工事に着手した時点で繰延資産(長期前払費用)に振り替えます。法人税基本通達8-3-5は、固定資産を利用するための繰延資産で、その固定資産の建設等に着手していないときは「その固定資産の建設等に着手した時から償却する」としています。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 支払時(着手前) | 前払金 | 1,100,000 | 普通預金 | 1,100,000 |
| 工事着手時 | 長期前払費用 | 1,000,000 | 前払金 | 1,100,000 |
| 仮払消費税等 | 100,000 | |||
| 決算時(12か月分) | 長期前払費用償却 | 66,666 | 長期前払費用 | 66,666 |
繰延資産の償却限度額は、施行令第64条第1項第2号により「繰延資産の額÷支出の効果の及ぶ期間の月数×その事業年度の月数」で計算します。15年=180か月なので、1,000,000円÷180×12=66,666円(円未満切捨て)で、初年度は月割です。税抜金額が20万円未満なら、長期前払費用にせず全額を損金経理できます(施行令第134条)。仮払消費税等は、前払金を払った時点ではなく、国税庁タックスアンサーNo.6165 前受金や前払金などがあるときのとおり「実際に引渡しやサービスの提供があった時」の課税期間で控除します。
工事負担金や受益者負担金は、資産区分ごとに償却期間と償却方法が違うため、固定資産台帳に区分と根拠条文を持たせておかないと償却計算を取り違えます。台帳と仕訳を連動させる仕組みづくりは会計・経理システム開発で支援しています。
圧縮記帳ができるのは工事負担金を受け入れた事業者
対象は法人税法45条1項の5事業と施行令83条の2の3事業
法人税法第45条第1項は「次に掲げる事業を営む内国法人(清算中のものを除く。)が、各事業年度において当該事業に必要な施設を設けるため電気、ガス若しくは水の需要者又は鉄道若しくは軌道の利用者その他その施設によつて便益を受ける者(以下この条において「受益者」という。)から金銭又は資材の交付を受けた場合」と定めています。主語は事業を営む内国法人で、交付するのは受益者です。工事費を払った企業がこの条文で圧縮記帳をすることはできません。
列挙されている事業は5つです。電気事業法第2条第1項の一般送配電事業・送電事業・配電事業・発電事業、ガス事業法第2条第5項の一般ガス導管事業、水道法第3条第2項の水道事業、鉄道事業法第2条第1項の鉄道事業、軌道法第1条第1項の軌道を敷設して行う運輸事業です。さらに施行令第83条の2が、電気通信回線設備を設置して電気通信役務を提供する電気通信事業、日本放送協会から委託を受けて行う国際放送の施設に係る事業、有線電気通信設備を用いるテレビジョン放送事業を加えています。
法人税基本通達10-3-1は、不動産業者等が開発した団地に必要な施設の工事負担金を事業者へ交付し、その金額を土地等の購入者に負担させている場合、その不動産業者等も受益者に含まれるとしています。
圧縮限度額は取得に要した金額まで、交付前の取得は施行令82条の3で按分
圧縮限度額は、交付を受けた金銭の額または資材の価額のうち、その固定資産の取得に要した金額に達するまでの金額です。工事負担金400万円を受け入れ、同じ年度に取得した1,000万円の施設に充てた場合、圧縮限度額は400万円です。交付額が取得価額を上回っても、超える部分は圧縮できません。対象は条文上「その施設を構成する固定資産」で、減価償却資産に限られていません(土地を含む圧縮記帳の考え方は土地の圧縮記帳の3制度で扱っています)。固定資産そのものの交付を受けたときは第45条第2項が適用され、その固定資産の価額が圧縮限度額になります。
固定資産を先に取得し、あとから交付を受けた場合は施行令第82条の3が働きます。圧縮限度額は、交付を受けた日の帳簿価額に「交付額(取得に要した金額が上限)÷取得に要した金額」を乗じた額です。1,000万円で取得した施設を償却して帳簿価額が900万円になった時点で400万円の交付を受けたなら、900万円×400万円÷1,000万円=360万円が限度で、受け入れた400万円より40万円小さくなります。補助金で同じ論点を扱った先行取得と期をまたぐ場合の圧縮限度額と計算の型は共通です。
圧縮した金額は取得価額から外れます。施行令第83条の3は、損金算入された金額(既償却額があるときは、その累積額に第82条の3の割合を乗じた金額を加算した金額)を取得価額に算入しないと定めています。翌期以降の減価償却費が小さくなるのはこのためで、圧縮記帳が減税ではなく課税の繰り延べだと言われる理由です。
適用要件は確定申告書への明細の記載で、届出は不要
第45条第3項は「確定申告書にこれらの規定に規定する減額し又は経理した金額に相当する金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する」と定めています。事前に税務署へ出す届出書はありません。その代わり、明細の記載を落とすと適用できません。第4項に宥恕があり、記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは適用できます。
交付年度に取得未了の場合の仮勘定処理
工事負担金を受け入れた事業年度の末日までに施設を取得できないことは珍しくありません。法人税基本通達10-3-3は、この場合に提供を受けた金額を仮勘定として経理し、固定資産を取得した事業年度に取り崩して益金に算入することを認めています。取り崩した事業年度には、第45条第1項または第5項に準じて圧縮記帳ができます。
国庫補助金と違い、第45条の工事負担金には特別勘定の規定がありません(法人税法第43条の特別勘定は国庫補助金等だけ)。期ズレは通達による仮勘定で処理します。なお法人税基本通達10-3-2は令和4年課法2-14「三十」で削除されているため、この番号を引いた古い解説は根拠に使えません。
受入側の仕訳例:直接減額方式と積立金方式
第45条第1項が認める経理方法は、固定資産の帳簿価額を損金経理で減額する方法(直接減額方式)と、確定した決算で積立金として積み立てる方法(積立金方式)の2つです。施行令第83条により、決算確定の日までに剰余金の処分で積み立てる方法も認められています。以下は、鉄道事業者が受益者から工事負担金400万円を受け入れ、1,000万円の構築物を同じ事業年度に取得した例です。電気・ガスの事業者は後述の会計規則に従うため、規定の無い鉄道を例にしています。消費税は前章の基準で別途判定するため、税抜の金額で示します。
直接減額方式の仕訳
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 受入時 | 普通預金 | 4,000,000 | 工事負担金受入額 | 4,000,000 |
| 取得時 | 構築物 | 10,000,000 | 普通預金 | 10,000,000 |
| 決算時 | 固定資産圧縮損 | 4,000,000 | 構築物 | 4,000,000 |
工事負担金受入額は特別利益、固定資産圧縮損は特別損失に表示します。圧縮後の帳簿価額600万円が以後の減価償却の基礎になり、別表四の調整は要りません。処理は簡単ですが、貸借対照表の構築物は実際の取得額より400万円小さく表示されます。
積立金方式の仕訳と税効果
積立金方式では構築物を1,000万円のまま計上し、決算で純資産の中に圧縮積立金を積みます。税効果会計を適用する場合、企業会計基準適用指針第28号15項により、圧縮積立金は繰延税金負債を控除した額で積み立てます。法定実効税率を30%と仮定すると次のとおりです。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 決算時 | 法人税等調整額 | 1,200,000 | 繰延税金負債 | 1,200,000 |
| 繰越利益剰余金 | 2,800,000 | 圧縮積立金 | 2,800,000 |
圧縮積立金の積立ては損益計算書を通らないので、申告では別表四で圧縮額を減算し、損金にならない法人税等調整額120万円を加算して所得を計算します。純資産に積んだのは280万円ですが、繰延税金負債の額などを記載した明細を申告書に添付すれば、繰延税金負債分を含めた400万円まで損金算入できる取扱いです。以後は減価償却に応じて圧縮積立金と繰延税金負債を取り崩します。別表四では税効果控除前の税務上の取崩額を加算し、繰延税金負債の取崩しに伴う法人税等調整額の貸方額を減算します。償却費は1,000万円が基礎のまま計上されるので、税務上の減価償却費との差を毎期調整し続けることになります。調整の手間はかかりますが、貸借対照表に実際の取得額が残るのが積立金方式の利点です。
別表十三(一)Ⅱの(25)〜(37)欄の記載内容
申告書では、国庫補助金等・工事負担金・賦課金を1枚で扱う別表十三(一)を使います。Ⅰが法人税法第42条から第44条までの国庫補助金等、Ⅱが第45条の工事負担金、Ⅲが第46条の非出資組合の賦課金です。国税庁の令和7年4月1日以後終了事業年度分の様式では、Ⅱは(25)交付を受けた金銭の額及び資材の価額から(29)固定資産の取得に要した金額までが受入と取得の記録、(30)圧縮限度基礎額((25)と(29)のうち少ない金額)から(34)圧縮限度額までが限度額の計算、(35)圧縮限度超過額から(37)取得価額に算入しない金額までが調整です。(31)から(33)は前期以前に取得した減価償却資産のときだけ使う欄で、上の仕訳例は(30)の経路、施行令第82条の3の例は(31)から(33)の経路になります。
(34)の算式は「(26)、(30)若しくは(33)又は(((26)、(30)若しくは(33))-1円)」で、末尾の1円は備忘価額を残す選択肢です。Ⅰにある特別勘定の欄((16)から(24))に相当する欄はⅡに無く、様式からも工事負担金に特別勘定が無いことが確認できます。欄ごとの書き方は別表十三(一)の記載例で国庫補助金のⅠを軸に解説しています。
会計上の根拠は企業会計原則注解注24、電気・ガスは会計規則が優先
税務で圧縮記帳を選べることと、財務諸表でどう見せるかは別の問題です。会計上の根拠は企業会計原則注解注24で、「国庫補助金、工事負担金等で取得した資産については、国庫補助金等に相当する金額をその取得原価から控除することができる」と定めています。日本公認会計士協会の業種別監査委員会報告第29号「鉄道業における工事負担金等の圧縮記帳処理に係る監査上の取扱い」(平成15年1月16日)によれば、これは直接減額方式を任意規定としたものです。
同報告は、電力業とガス業は会計規則で工事負担金等の処理を定めているのに対し、鉄道事業会計規則には規定がなく、実務上さまざまな処理が行われてきたと指摘しています。現行の電気事業会計規則第10条は、託送供給等約款等により電気使用者が提供した金銭等を工事費負担金勘定で整理するよう定め、他の勘定への振替を原則として禁じています。ガス事業会計規則第4条は、工事負担金を充当して建設した有形固定資産の取得価額を「取得に要した有効かつ適正な費用の額から工事負担金の額を控除した額とする」としています。税法の圧縮記帳は任意ですが、ガス事業では直接控除が会計規則上の義務です。
開示について同報告は、工事負担金等が財政状態・経営成績に重要な影響を与える場合は業種特有の重要な会計方針として、採用した方針、直接減額した累計額、特別利益と特別損失を相殺表示した場合はその旨と金額などを開示すべきとしています。参考開示例は、受入額を特別利益に、直接減額した額を固定資産圧縮損として特別損失に両建てで計上する形です。保険金で取得した資産の圧縮記帳も特別損益での表示が問題になり、そちらは保険金の圧縮記帳と別表13(2)の記載例で扱っています。
よくある質問
工事負担金の勘定科目は何になりますか?
支払った側は、電気・ガス・水道の供給を受けるための負担金なら無形固定資産の「電気ガス供給施設利用権」「水道施設利用権」などです。売電のための連系工事負担金、下水道の受益者負担金、公共的施設や協会の負担金は繰延資産で、「長期前払費用」などの科目で計上します。受入側が直接減額方式で両建て表示する場合は、「工事負担金受入額」を特別利益に、圧縮額を「固定資産圧縮損」として特別損失に計上します。積立金方式や電気・ガス事業の会計規則による処理は異なります。
下水道の受益者負担金はどう処理しますか?
都市計画事業などで公共下水道が設置され、著しく利益を受ける土地所有者が納める受益者負担金は繰延資産で、償却期間は6年です(法人税基本通達8-2-5)。税抜20万円未満なら支出年度の損金にできます。一方、自社の排水設備を新設・拡張するために下水道管理者へ払う改築費用の負担金は水道施設利用権に準じ、15年の無形固定資産です(7-1-8)。
工事費負担金に消費税はかかりますか?
電気ガス供給施設利用権や水道施設利用権などの権利の設定に係る対価と認められる工事費負担金は、消費税法基本通達5-5-6の注1により課税取引で、支払った側は課税仕入れです。役務の提供との対価関係がない負担金は不課税です。国・地方公共団体や同業者団体等の施設の負担金で対価性の判定が困難な場合は、双方が対価・課税仕入れに該当しないものとして処理する取扱いが認められています。
工事負担金は長期前払費用で処理してよいですか?
繰延資産に該当する場合は、長期前払費用で計上して償却期間にわたり償却して差し支えありません。電気やガスの供給を受けるための負担金は施行令第13条第8号の無形固定資産で、繰延資産ではありません。長期前払費用に寄せると、20万円未満の少額特例(施行令第134条)の適用可否や別表の区分を誤ります。繰延資産か無形固定資産かを決めてから科目を選んでください。
工事負担金の圧縮記帳はなぜ必要なのですか?
受け入れた工事負担金は原則として受入年度に全額が益金になる一方、その資金で取得した固定資産の費用化は耐用年数にわたって分散するため、受入年度に課税所得だけが突出するからです。取得が翌期にずれる場合は、法人税基本通達10-3-3の仮勘定で益金算入を取得年度まで遅らせられます。圧縮記帳は税負担を減価償却の期間に合わせて後ろへずらします。減税ではなく繰り延べで、施行令第83条の3により圧縮額は取得価額から外れるため、翌期以降の減価償却費はその分小さくなります。