損益計算書の勘定科目は、売上高から特別損失までの7つの区分のどれかに振り分けて使います。本記事では、会社計算規則と財務諸表等規則が定める区分ごとに代表的な科目を一覧にし、売上原価と販管費、営業外と特別損益、法人税等と租税公課のように境界で迷う科目の判定を整理する記事です。帳簿で使う勘定科目と、決算書に印刷される表示科目が一致しない理由、税抜経理と税込経理で金額が変わる点、会計システムで両者の対応表を持つ設計までを扱います。
まとめ:損益計算書の勘定科目は7区分へ振り分け、表示科目へ集約して出す
損益計算書の勘定科目は、売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の7区分に、法人税等を加えた枠のどこかに入ります。区分は法令で決まっていますが、区分の中でどんな名前の科目を使うかは会社が決め、決めた科目を毎期続けて使います。
迷いやすいのは区分の境界です。同じ給料でも工場の人の分は売上原価、本社の人の分は販管費に入ります。貸倒損失は通常の取引なら販売費、固定資産の売却損益は特別損益、利益にかかる税金は法人税等で、外形標準課税の付加価値割は租税公課です。帳簿の科目は決算書では10%基準などでまとめて表示されるため、帳簿科目と表示科目の対応表を1枚持っておくと、月次と決算で同じ数字を出せます。
損益計算書の勘定科目を決める会社計算規則第88条の7区分と表示の規則
勘定科目を一覧にする前に、科目を入れる箱がいくつあり、誰がそれを決めているかを押さえます。箱の数は法令が決め、箱の中身の名前は会社が決める、という分担です。
7区分の並びと5つの段階利益、法令が科目名までは決めていない範囲
会社計算規則第88条1項は、損益計算書を売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の7項目に区分して表示するよう定めています。上場会社などが使う財務諸表等規則も、第70条で同じ7分類を置いています。
この7区分を上から差し引いていくと、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つの利益が順に出ます。法令が決めているのは区分と並び順、それに一部の例示です。「旅費交通費」「通信費」といった個々の科目名は法令に一覧がなく、会社が決めて継続して使います。会計ソフトの初期設定の科目は、この慣行を各社がまとめたものです。並んだ損益計算書をどう読むかは、損益計算書の見方とは?5つの利益を上から読む手順で扱っています。
帳簿の勘定科目と損益計算書の表示科目がずれる理由と10%基準
帳簿で使う勘定科目と、決算書に印刷される科目は同じではありません。財務諸表等規則は、営業外収益(第90条)、営業外費用(第93条)、特別利益(第95条の2)、特別損失(第95条の3)のそれぞれで、金額が区分の総額の10%以下のものをまとめて表示できると定めています。帳簿に「受取手数料」「保険配当金」「雑収入」があっても、決算書では「その他」1行になることがあるのはこのためです。
販管費には別の規則があります。第85条は、販管費を一括して1行で表示した場合に、減価償却費・引当金繰入額と、販管費合計の10%を超える費目を「主要な費目」として金額を注記するよう求めています。中小企業の決算書では販管費の内訳を別表にすることが多く、こちらに並ぶのは帳簿の科目がほぼそのまま残った内訳です。どちらの形で出すかを決めておかないと、毎月の試算表と決算書の科目が合わず、突き合わせに時間がかかります。
損益計算書の勘定科目一覧、売上高・売上原価・販管費の区分ごとの代表科目
営業利益までの3区分には、会社の日々の取引のほとんどが入ります。科目の数も最も多い部分です。
売上高と売上原価の勘定科目、商品販売・製造業・受託開発で変わる内訳
売上原価の中身は、何を売っている会社かで変わります。財務諸表等規則第75条は、売上原価を期首棚卸高・当期仕入高(製造業は当期製品製造原価)・期末棚卸高の3つで示すよう定めています。
| 業態 | 売上高の科目例 | 売上原価の科目例 |
|---|---|---|
| 商品販売(卸・小売) | 売上高、売上値引・返品 | 期首商品棚卸高、仕入高、期末商品棚卸高 |
| 製造業 | 製品売上高 | 期首製品棚卸高、当期製品製造原価、期末製品棚卸高 |
| 受託開発・サービス業 | 役務収益、保守売上 | 外注費、労務費、仕掛品の増減 |
売上高は1つの科目にまとめても、「商品売上」「サービス収入」のように分けてもかまいません。分けるのは、決算書の読み手に別々に見せたい場合です。受託開発やサービス業で売上原価にどこまで人件費と外注費を入れるかは、粗利とは?売上総利益との関係と計算式の受託開発の項で扱っています。
販売費及び一般管理費の勘定科目一覧と主要な費目として注記される科目
財務諸表等規則第84条は、会社の販売と一般管理の業務で発生した費用をすべて販管費に入れると定めています。範囲が広いぶん、科目は会社によって20〜40ほどに増えます。
| まとまり | 代表的な勘定科目 |
|---|---|
| 人に関する費用 | 役員報酬、給料手当、賞与、法定福利費、福利厚生費 |
| 販売に関する費用 | 広告宣伝費、販売手数料、荷造運賃、接待交際費 |
| 拠点・設備の費用 | 地代家賃、水道光熱費、修繕費、減価償却費、リース料 |
| 事務の費用 | 旅費交通費、通信費、消耗品費、事務用品費 |
表に載せきれなかった科目は、退職給付費用を人に関する費用、貸倒引当金繰入額を販売に関する費用、保険料を拠点・設備の費用、支払手数料・租税公課・雑費を事務の費用のまとまりに入れます。
実務でまず押さえるのは表の上2行です。人に関する費用と販売に関する費用は金額が大きく、販管費合計の10%を超えて主要な費目として注記の対象になりやすい科目です。雑費は便利ですが、毎月一定額を超えるなら中身を見て別の科目を立てます。人件費の科目の分け方は人件費とは?含まれるもの・内訳と勘定科目で詳しく扱っています。
製造業で同じ名前の科目が製造原価報告書と販管費に並ぶ仕組みと部門別の区分
製造業の帳簿には、「給料」「減価償却費」「水道光熱費」が2つずつあります。工場で発生した分は製造原価、本社や営業所の分は販管費に入れるためです。財務諸表等規則第75条2項は、当期製品製造原価の内訳を記載した明細書を損益計算書に添付するよう定めており、これが製造原価報告書です(連結財務諸表でセグメント情報を注記している場合は不要)。
製造原価報告書は、材料費・労務費・経費の3つに分けて当期の製造費用を集め、仕掛品の増減を調整して当期製品製造原価を出します。帳簿では「労務費(賃金)」と「給料手当」のように名前を分けるか、同じ名前の科目に製造用と販管用のコードを別に振ります。名前だけで区別すると、工場の人の残業代が販管費に入っても気づけません。部門を工場と本社で分け、部門と科目の組み合わせで置き場所を決める方法が確実です。
営業外損益・特別損益・法人税等の勘定科目一覧と区分を誤りやすい科目
営業利益より下の区分は、科目の数は少ないものの、どの区分に入れるかで経常利益が変わります。判定の誤りが起きやすいのはこちらです。
営業外損益と特別損益の代表科目、財務諸表等規則と会社計算規則の例示
法令は、営業利益より下の4区分については科目を例示しています。下の表では、法令の例示と、例示にはないが実務でよく使う科目を分けて並べました。
| 区分 | 法令の例示 | 実務でよく使う科目 |
|---|---|---|
| 営業外収益 | 受取利息、有価証券利息、受取配当金、有価証券売却益 | 受取手数料、為替差益、雑収入 |
| 営業外費用 | 支払利息、社債利息、創立費償却、開業費償却 | 売上割引、為替差損、雑損失 |
| 特別利益 | 固定資産売却益、前期損益修正益、負ののれん発生益 | 投資有価証券売却益、債務免除益 |
| 特別損失 | 固定資産売却損、減損損失、災害による損失 | 固定資産除却損、投資有価証券評価損 |
法令の例示で表に載せきれなかったのは、営業外収益の仕入割引、営業外費用の有価証券売却損、特別損失の前期損益修正損の3つです。
営業外は毎期くり返し発生する本業以外の損益、特別は臨時で金額の大きい損益と考えると振り分けやすくなります。営業外の科目が経常利益をどう動かすかは経常利益とは?計算式と営業利益・純利益との違いで扱っています。
貸倒損失・補助金・債務免除益など、区分の判定で迷う科目の扱い
同じ科目でも、取引の性質によって入る区分が変わるものがあります。迷う頻度が高い順に並べます。
- 貸倒損失・貸倒引当金繰入額:財務諸表等規則第87条により、通常の取引で生じた売掛金などの分は、異常なものを除き販売費に入ります。取引先への貸付金の貸倒れは営業外費用です。
- 補助金・助成金:雇用関係の助成金のように毎期受け取るものは営業外収益(雑収入)、設備の取得に充てる補助金は圧縮記帳と組み合わせて特別利益に計上する例が多く見られます。
- 債務免除益:金融機関からの大きな免除は特別利益、取引先との少額の精算は営業外収益とするのが一般的です。判定の基準は債務免除益の勘定科目と仕訳|特別利益と営業外収益の分け方で詳しく扱っています。
- 固定資産売却損益:会社計算規則第88条2項・3項が特別損益の例に挙げています。ただし営業車を毎年入れ替える会社のように経常的に発生するなら、営業外で処理する例もあります。
判定に迷ったら、その損益が来期も同じように発生するかを考えます。来期も起きるなら営業外、起きないなら特別です。一度決めた扱いは毎期そろえます。
法人税、住民税及び事業税と租税公課の境界、付加価値割の置き場所
税金の区分を分ける判断軸は、利益にかかる税金かどうかです。財務諸表等規則第95条の5は、法人税・地方法人税・住民税と、利益に関連する金額を課税標準とする事業税を「法人税、住民税及び事業税」として、税引前当期純利益の次に記載するよう定めています。税効果会計を使う会社は、その下に法人税等調整額が入ります。
逆に言えば、利益を課税標準としない税金はこの行に入りません。資本金1億円超の会社など外形標準課税の対象法人では、事業税のうち付加価値割と資本割が該当し、販管費の租税公課に計上します。印紙税・固定資産税・自動車税も租税公課です。事業税の納付書1枚を全額「法人税等」にすると、営業利益が実際より大きく出ます。
損益計算書と消費税、税抜経理と税込経理で売上高と費用の金額が変わる点
消費税そのものは損益計算書の勘定科目ではない場合と、租税公課として載る場合があります。分かれ目は会社の経理方式です。
税抜経理は仮受・仮払消費税等で分け、税込経理は納付額を租税公課へ
国税庁タックスアンサーNo.6375は、税抜経理方式では売上にかかる消費税を仮受消費税等、仕入や経費にかかる消費税を仮払消費税等として、売上や費用と分けて経理すると説明しています。この方式では損益計算書の売上高も費用も税抜の金額になり、消費税は貸借対照表側で精算されます。
税込経理方式では、売上高も費用も消費税を含んだ金額で計上し、納付する消費税は租税公課として損金に入れます。同じ取引でも、税込経理のほうが売上高と販管費が約10%大きく出ます。免税事業者は、帳簿を税抜で付けていても税込経理方式で所得を計算する扱いです。前年と経理方式を変えた会社は、損益計算書を並べて比べる前に金額の基準をそろえます。税抜経理で仮受と仮払を相殺したときの端数は、雑収入か雑損失で処理するのが一般的です。
会計システムで損益計算書の勘定科目を管理する、帳簿科目と表示科目の対応表
科目の一覧と区分の判定が決まったら、それを会計システムの勘定科目マスタに落とします。ここで決めるのは、帳簿の科目をどの表示科目へまとめ、どの区分に集計するかの対応です。
勘定科目ごとに表示科目と製造・販管の区分を持たせる対応表の設計
対応表は、帳簿の勘定科目1行ごとに「決算書の表示科目」「7区分のどこか」「製造原価か販管費か」の3つを持たせます。
| 帳簿の勘定科目 | 表示科目 | 区分 | 製造/販管 |
|---|---|---|---|
| 受取手数料 | その他(10%以下で一括) | 営業外収益 | - |
| 賃金(工場) | 当期製品製造原価 | 売上原価 | 製造 |
| 給料手当(本社) | 給料手当 | 販売費及び一般管理費 | 販管 |
| 事業税(付加価値割) | 租税公課 | 販売費及び一般管理費 | 販管 |
この表を持つ利点は、月次の試算表と決算書を同じマスタから出せることです。会計ソフト上の科目コードや補助科目の決め方は会計ソフトの勘定科目:科目マスタ・自動仕訳ルールの設計、損益区分の属性で段階利益を集計する考え方は営業利益とは?販管費の区分ミスで数字がぶれる仕組みで扱っています。管理会計のために固定費と変動費の区分も足すなら、変動費とは?会計データで毎月集計する仕組みが参考になります。
会計ソフトの標準設定で足りる会社と科目体系の作り直しを検討する条件
製造原価を持たない商社・サービス業で、勘定科目が100前後、部門が10以下なら、会計ソフトの初期設定の科目と標準の決算書レイアウトで足ります。対応表はスプレッドシート1枚で管理すれば十分で、システムに手を入れる理由はありません。
作り直しを検討するのは、次のような場面です。製造原価と販管費を名前だけで分けていて、決算のたびに振替仕訳を手で入れている。子会社ごとに科目体系が違い、連結や事業部別の損益を毎月組み替えている。販売・給与など複数のシステムから仕訳を取り込み、科目の対応表が3枚以上に分かれている。逆に、来期に組織再編や事業の入れ替えを控えている会社は、区分が固まるまで見送ります。体系が決まらないまま作ると、改修が二度手間になるためです。勘定科目マスタの再設計や会計システムの刷新は、会計・経理システム開発で現状の科目体系の棚卸しから相談できます。
損益計算書の勘定科目についてよくある質問:区分の判定と一覧の使い方
損益計算書の勘定科目について、検索でよく調べられている質問に答えます。
損益計算書の項目と勘定科目は何が違いますか?
項目は、売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の7つの区分と、その間に出る5つの利益を指すのが一般的です。勘定科目は、その区分の中で取引を記録する単位で、旅費交通費や受取利息がこれにあたります。項目は会社計算規則で決まり、勘定科目は会社が決めます。1つの項目の下に複数の勘定科目がぶら下がる関係です。
損益計算書の勘定科目は会社が自由に決めてよいですか?
区分の中であれば、科目名は会社が決めてかまいません。条件は、取引の中身が分かる名前にすることと、一度決めた科目を毎期続けて使うことです。法令が例示している科目(受取利息・支払利息・固定資産売却益など)は、その名前を使うのが無難です。期の途中で科目を変えると前年との比較が崩れるため、変えるなら期首からにします。
損益計算書と貸借対照表の勘定科目はどう見分けますか?
収益と費用の科目は損益計算書、資産・負債・純資産の科目は貸借対照表に入ります。名前が似ていても、売上高は損益計算書、売掛金は貸借対照表です。減価償却費は損益計算書、減価償却累計額は貸借対照表に載ります。期末に残高が残るかどうかで考えると区別しやすく、2つの書類のつながりは貸借対照表と損益計算書の違いとはで設例の仕訳とともに扱っています。
減価償却費は売上原価と販管費のどちらに入りますか?
償却する資産をどこで使っているかで決まります。工場の機械や製造ラインの設備の減価償却費は製造原価に入り、当期製品製造原価を通じて売上原価になります。本社の建物や営業車、事務用のPCの分は販管費です。1つの資産を工場と本社で共用しているなら、面積や使用時間で按分します。期末と月次の減価償却の仕訳は減価償却の仕訳とはで整理しています。
雑収入と雑損失は損益計算書のどの区分に入りますか?
どちらも営業外の区分で、雑収入は営業外収益、雑損失は営業外費用です。本業以外で少額かつ他の科目に当てはまらない損益を入れます。金額が大きいものや毎期くり返すものは、受取手数料や為替差損のように別の科目を立てます。臨時で多額の損益は特別利益か特別損失に入れ、雑収入や雑損失には混ぜません。
関連記事
- 会計基準とは?日本で使える4種類の一覧と会計システムへの落とし込み・2026年の最新改正まで解説:損益計算書の区分の前提になる会計基準と、会計システムへの反映
- 管理会計とは?5つの手法と導入手順、システム化を分ける判断基準【2026年版】:勘定科目に部門を組み合わせて社内向けの損益を出す方法
- 原価管理システムとは?機能・原価計算との違いから選び方と受託開発の判断まで解説:製造原価報告書の材料費・労務費・経費を集めるシステム
- 連結損益計算書とは:個別PLとの違いと表示区分、内部取引の消去で利益が変わる流れを設例で解説【2026年版】:子会社と科目体系をそろえる必要がある連結の損益計算書