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変動費の求め方:勘定科目法・高低点法・回帰分析で固定費と分ける手順と計算例【2026年版】

変動費の求め方:勘定科目法・高低点法・回帰分析で固定費と分ける手順と計算例【2026年版】

変動費は、決算書の費用を科目ごとに固定費と変動費に振り分けて合計するか、月次の売上高と総費用から変動費率を推定して「売上高×変動費率」で求めます。この記事では、年商4億8,000万円の金属部品加工会社を例に、勘定科目法・高低点法・回帰分析の3つで同じ会社の変動費を計算し、結果がどれだけずれるかを並べました。電力料や労務費のような準変動費の分け方、エクセルのSLOPE・INTERCEPT・RSQ関数の入力式、会計システムで毎月自動で分ける設計まで扱います。

まとめ:変動費は勘定科目法で分け、月次データの回帰分析で検算して確定する

実務の手順は「勘定科目法で振り分ける」「準変動費を分解する」「回帰分析で検算する」の順です。設例の会社では、勘定科目法の最初の振り分けで変動費率62.8%、電力料と労務費を分解すると66.0%になり、8月の一時費用を除いた回帰分析の65.9%とほぼ一致しました。

高低点法は2か月分の数字で計算できる手軽さが利点ですが、選んだ月に一時的な費用が入ると答えが大きく狂います。設例では8月の修繕費150万円だけで、変動費率が63.3%から51.8%まで下がりました。単独で使わず、回帰分析の前の当たり付けに留めるのが安全です。

一度決めた区分は勘定科目マスタに持たせ、毎月同じ定義で計算します。年に1回の損益分岐点の確認なら表計算で足ります。部門別・製品別に毎月出す段階になったら、補助科目と販売データの連携を含めてシステムで回すことを検討してください。

変動費の求め方の全体像、固変分解の3つの方法と計算式・必要なデータの違い

費用を固定費と変動費に分ける作業を固変分解と呼びます。方法は大きく3つあり、使うデータと手間が違います。

変動費は売上高×変動費率でも科目の合計でも出せる、2つの計算式の関係

変動費の求め方には、科目を積み上げる式と、比率から逆算する式の2通りがあります。

計算式 使う場面 対応する方法
変動費=変動費に区分した科目の合計 決算書・試算表から出す 勘定科目法
変動費=売上高×変動費率 予算や見込みの売上から出す 高低点法・回帰分析
固定費=総費用-変動費 変動費を出した後の残り 3つとも共通

2つの式は、変動費と変動費率を相互に求める関係です。科目を積み上げて出した変動費を売上高で割れば変動費率になり、その率を来期の売上計画に掛ければ来期の変動費が見込めます。変動費率の計算式と業種別の目安は変動費率の計算式と業種別の目安を解説した記事で扱っています。

勘定科目法・高低点法・回帰分析を手間と精度・必要な月数で比べる早見表

3つの方法の違いを、必要なデータと向いている場面で比べると次のとおりです。

方法 必要なデータ 手間 弱点
勘定科目法 1期分の決算書 小さい 判定が人によってぶれる
高低点法 2か月分の売上と総費用 最小 選んだ月の特殊要因に弱い
回帰分析 12か月以上の売上と総費用 中程度 月割りされていない費用で狂う

実務でまず押さえるのは勘定科目法です。決算書があればその日に計算でき、科目ごとの内訳が残るので後から見直せます。回帰分析は単独で使うより、勘定科目法の判定が実績と合っているかを確かめる検算役に向いています。

勘定科目法で変動費を求める手順、年商4億8,000万円の製造業の決算書で計算

金属部品の加工を請け負う、年間売上高4億8,000万円の会社を例にします。営業費用は合計4億6,230万円、営業利益は1,770万円です。期首と期末の在庫は同額とします。

手順1〜3 製造原価報告書と販管費を科目まで開き、固定か変動かを振り分ける

手順は3つです。製造原価報告書と販管費の明細を科目単位まで開き、売上や生産量が増えたときに比例して増える科目を変動費、増えない科目を固定費に振り分け、両者を合計します。

科目 金額(万円) 最初の区分
材料費 21,600 変動費
外注加工費 4,800 変動費
労務費 7,320 固定費
電力料 1,560 変動費(比重で判定)
消耗工具器具備品費 720 変動費
減価償却費 1,800 固定費
修繕費 450 固定費
工場賃借料 960 固定費
荷造運賃(販管費) 1,440 変動費
役員報酬・給料手当・法定福利費 4,980 固定費
その他の販管費 600 固定費

変動費に入れた科目を足すと3億120万円、変動費率は62.8%です。固定費は残りの1億6,110万円になります。材料費は仕入高ではなく、期首在庫に仕入を足して期末在庫を引いた当期の消費額を使ってください。在庫が増えた期に仕入高をそのまま入れると、売れていない分まで変動費に数えてしまいます。製品別の原価まで踏み込むなら、製造業の原価管理と標準原価・差異分析の進め方を解説した記事も参考になります。

業種で変わる変動費の科目、卸売・小売・建設・サービス業の振り分け早見表

変動費に入る科目は業種で変わります。売上原価の中身と、販管費のうち売上に比例する科目が違うためです。振り分けの目安を業種別に並べます。

業種 変動費に入れる主な科目 迷いやすい科目
製造業 材料費・外注加工費・荷造運賃 労務費・電力料
卸売業 売上原価・荷造運賃・販売手数料 倉庫料
小売業・EC 売上原価・決済手数料・配送料 パート給与・広告費
建設業 材料費・外注費・現場経費の一部 現場の労務費
サービス業 外注費・仕入・消耗品 人件費のほぼ全体

迷いやすい科目は、勘定科目名ではなく「売上が1割減ったら、その費用は来月から減るか」で判定します。減らないなら固定費です。どちらとも言い切れない科目は、いったん固定費に入れて次の章の分解に回すと、変動費率を甘く見積もらずに済みます。科目ごとの判定の詳細は変動費の一覧と、判定が分かれる科目の分け方を解説した記事にまとめました。

準変動費の分け方、電力料と労務費を固定部分と変動部分に分解する計算

1つの科目に固定的な部分と比例する部分が混ざっている費用を、準変動費と呼びます。勘定科目法の精度は、この扱いでほぼ決まります。

電力料は基本料金と従量料金で分ける、年1,560万円を360万円と1,200万円に

企業会計審議会の原価計算基準は、8(四)で操業度がゼロでも一定額が発生し、操業度に比例して増える費用を準変動費とし、例に電力料を挙げています。扱い方は、固定費か変動費のどちらかとみなすか、固定部分と変動部分に分解するかの2通りです。

電力料は請求書が分解の材料になります。設例の会社の請求書を見ると、契約電力で決まる基本料金が月30万円、年360万円で、残る1,200万円が使用量に応じた従量料金でした。基本料金を固定費、従量料金を変動費に移すと、変動費は2億9,760万円、変動費率は62.0%に下がります。比重で全額を変動費に入れていた最初の判定は、変動費を360万円多く数えていたことになります。

労務費は残業手当と派遣費を変動側に移す、分解後の変動費率は66.0%に上がる

労務費7,320万円のうち、正社員の基本給と賞与・法定福利費の5,400万円は受注が減っても払い続けるので固定費です。一方、繁忙月に増える残業手当と、受注量に合わせて人数を変える派遣社員の費用、合わせて1,920万円は売上に連動して動きます。

この1,920万円を変動費に移すと、変動費は3億1,680万円、変動費率は66.0%、固定費は1億4,550万円です。損益分岐点売上高は「固定費÷(1-変動費率)」で、最初の判定の約4億3,250万円から約4億2,790万円に変わります。売上が1割減ったときの営業利益の減少額も、最初の判定では1,788万円、分解後は1,632万円と156万円ずれます。準変動費を放置すると、売上が動いたときの利益予測がこの幅で外れる計算です。

高低点法で月次データから変動費率と固定費を求める計算手順と外れ値の除き方

高低点法は、売上高が最も多い月と少ない月の2点を結んだ直線の傾きを変動費率、切片を月の固定費とみなす方法です。科目の判定をせずに、総費用の動きだけから推定します。

12か月の売上高と総費用、設例の会社の月次試算表から拾った数字

設例の会社の月次試算表から、売上高と営業費用の合計(総費用)を12か月分拾いました。賞与と減価償却費は毎月12分の1ずつ計上している前提です。

月 売上高(万円) 総費用(万円) 営業利益(万円)
4月 3,800 3,728 72
5月 3,600 3,546 54
6月 4,100 3,916 184
7月 4,300 4,018 282
8月 3,400 3,594 -194
9月 4,000 3,870 130
10月 4,200 3,962 238
11月 4,400 4,124 276
12月 4,600 4,216 384
1月 3,500 3,520 -20
2月 3,900 3,744 156
3月 4,200 3,992 208

8月は夏季休業で売上が最も少なく、休業中に設備の修繕をまとめて行ったため、修繕費150万円が一度に計上されています。12か月の合計は売上高4億8,000万円、総費用4億6,230万円で、前章の決算書と一致します。

最高月と最低月の2点から変動費率を出す式、8月を外すと51.8%が63.3%になる

高低点法の計算式は「変動費率=(最高月の総費用-最低月の総費用)÷(最高月の売上高-最低月の売上高)」です。固定費は「最高月の総費用-最高月の売上高×変動費率」で出します。

そのまま計算すると、最高月は12月、最低月は8月です。変動費率は(4,216-3,594)÷(4,600-3,400)で51.8%、月の固定費は1,832万円になります。勘定科目法の66.0%と14ポイント以上離れました。8月の総費用に修繕費150万円が乗っているため、低い側の点が上に持ち上がり、直線の傾きが寝てしまったのが原因です。

8月を外して次に売上が少ない1月を使うと、(4,216-3,520)÷(4,600-3,500)で変動費率63.3%、月の固定費は1,305万円になります。高低点法を使うときは、選んだ2か月に一時的な修繕・賞与・退職金・決算整理が入っていないかを、試算表の科目明細で必ず確かめてください。それでも2点しか見ていないので、残る10か月の情報は捨てています。

回帰分析で変動費を求める方法、エクセルのSLOPE・INTERCEPT・RSQ関数の入力例

回帰分析(最小二乗法)は、12か月すべての点からの距離が最も小さくなる直線を引く方法です。エクセルの関数で計算でき、高低点法より特定の月の影響を受けにくくなります。

関数3つの入力式と結果、12か月で変動費率60.0%・決定係数0.964になる

A列に月、B列に売上高、C列に総費用を2行目から13行目まで入れた前提の入力式です。SLOPE関数が回帰直線の傾き=変動費率、INTERCEPT関数が切片=月の固定費、RSQ関数がピアソンの積率相関係数の2乗=決定係数を返します。

=SLOPE(C2:C13,B2:B13)       結果 0.600(変動費率60.0%)
=INTERCEPT(C2:C13,B2:B13)   結果 1,452(月の固定費1,452万円)
=RSQ(C2:C13,B2:B13)         結果 0.964(決定係数)

8月を除外して計算する場合(FILTER関数が使えるMicrosoft 365などの版)
=SLOPE(FILTER(C2:C13,A2:A13<>"8月"),FILTER(B2:B13,A2:A13<>"8月"))
=INTERCEPT(FILTER(C2:C13,A2:A13<>"8月"),FILTER(B2:B13,A2:A13<>"8月"))

傾きと切片、決定係数を1回で出すならLINEST関数も利用可能な計算方法です。書式はLINEST(既知の y, [既知の x], [定数], [補正])で、補正をTRUEにすると3行目の先頭に決定係数が返ります。12か月全体の結果は変動費率60.0%で、高低点法の51.8%よりは改善しましたが、まだ8月の修繕費に引っ張られています。

決定係数0.9未満なら使わない、8月を除いた11か月で65.9%・0.990になる理由

決定係数は、総費用の動きのうち売上高で説明できる割合で、0から1の値をとります。本稿では、0.9未満なら回帰の結果を変動費率として採用しない、を目安にしています。売上以外の要因で費用が動いている月が多く、直線の傾きを信用できないからです。

設例の12か月は0.964で目安を超えていますが、残差を月ごとに見ると8月だけが直線から大きく上に外れていました。原因が一時的な修繕と分かっている月は除外して計算し直します。8月を除いた11か月では、変動費率65.9%、月の固定費1,204万円、決定係数0.990です。年換算の固定費は約1億4,440万円で、勘定科目法で8月の修繕150万円を除いた固定費1億4,400万円とほぼ重なります。

除外してよいのは、原因を科目明細で説明できる月だけです。理由なく外れた月を消すと、都合のよい数字を作ることになります。回帰分析の考え方そのものは回帰分析の種類と回帰式・決定係数の見方を解説した記事で詳しく扱っています。

回帰分析の結果と勘定科目法の差を、科目ごとの判定の見直しに使う手順

回帰分析の答えをそのまま採用するより、勘定科目法との差を見直しの手がかりに使うほうが、社内で説明のつく数字になります。設例の3つの方法の結果を並べると次のとおりです。

方法 変動費率 月の固定費(万円)
勘定科目法(最初の振り分け) 62.8% 1,343
勘定科目法(準変動費を分解) 66.0% 1,213
高低点法(8月を含む) 51.8% 1,832
高低点法(8月を除く) 63.3% 1,305
回帰分析(12か月) 60.0% 1,452
回帰分析(8月を除く) 65.9% 1,204

最初の振り分け62.8%と回帰の65.9%の差は約3ポイントあります。差が2ポイントを超えたら、固定費に入れた科目の中に売上と一緒に動くものが隠れていないかを疑います。設例では、労務費の月次推移を見ると繁忙月に残業手当と派遣費が増えていて、そこが差の正体でした。分解後の66.0%を採用し、損益分岐点の計算に進みます。計算式の一覧は損益分岐点の5つの計算式と決算書からの求め方を解説した記事にあります。

求めた変動費を会計システムの勘定科目マスタで毎月自動で分ける設計と判断

固変分解は1回やって終わりではありません。毎月の試算表に同じ区分を当て続けて、初めて月次の損益分岐点や限界利益が比べられる数字になります。

科目マスタに固変区分と変動比率を持たせ、補助科目で準変動費を分ける設計

毎月の分解を手作業にしないためには、勘定科目マスタに区分を持たせます。準変動費は、比率で按分する方法と補助科目で分ける方法のどちらかを科目ごとに決めます。

科目 固変区分 変動比率 分け方
材料費 変動 100% 区分のみ
電力料 準変動 - 補助科目(基本料金・従量料金)
労務費 準変動 - 補助科目(固定給・残業手当・派遣費)
水道光熱費(事務所) 準変動 30% 比率で按分
減価償却費 固定 0% 区分のみ

補助科目は仕訳の段階で分かれるので、毎月の実績がそのまま正しく分かれます。比率で按分する方法は設定が簡単な反面、実態が変わっても比率が古いまま残りがちです。金額の大きい準変動費は補助科目、小さいものは比率と使い分け、比率は年に1回、回帰分析の結果と照らして見直します。区分の付いた試算表を毎月同じ日に締める手順は、月次決算を5営業日で締める手順を解説した記事を参照してください。

表計算で足りる会社と、固変分解をシステムに載せる条件・見送る場面

全社の変動費と損益分岐点を年に1〜2回確認する程度なら、会計ソフトから試算表を書き出し、表計算で区分を掛ければ足ります。科目の判定が社内でまだ固まっていない段階でシステム化を急ぐのも見送ってください。区分を変えるたびに過去の数字が変わり、推移が読めなくなります。

システムに載せる価値が出るのは、部門別・製品別の変動費を毎月出して受注の採否や値付けに使っている場合です。製品別の変動費は会計の科目だけでは出せず、生産・販売データの数量と材料の使用量をつなぐ必要があるため、表計算の手作業が月10時間を超えたら仕組み化の目安になります。この段階では、会計・経理システム開発のように、勘定科目マスタの固変区分と補助科目の設計、販売・生産データとの連携をまとめて相談できる先を選ぶと、全社の数字と製品別の数字を一致させたまま毎月出せます。

よくある質問

変動費の求め方と固定費との分け方について、よく挙がる質問に答えます。

変動費の求め方を簡単に言うとどうなりますか?

決算書の費用を科目ごとに見て、売上や生産量に比例して増える科目を足し合わせる方法が最も簡単です(勘定科目法)。製造業なら材料費・外注加工費・荷造運賃、小売業なら売上原価・決済手数料・配送料が中心になります。月次データが12か月分あれば、エクセルのSLOPE関数で売上高と総費用の回帰直線の傾きを出し、「売上高×傾き」で変動費を求めることもできます。

固定費と変動費の分け方で迷う科目はどうすればよいですか?

「売上が1割減ったら、その費用は来月から減るか」で判定します。減らない費用は固定費です。人件費や電力料のように両方の性質を持つ科目は、基本料金と従量料金、固定給と残業手当のように中身を分けて、固定部分と変動部分に振り分けます。分けられない場合はいったん固定費に入れ、回帰分析の結果と比べて差が大きければ見直してください。

変動費の計算に売上原価をそのまま使ってよいですか?

小売業や卸売業で概算を出すなら、売上原価をそのまま変動費とみなす簡便法でもかまいません。ただし製造業では、売上原価に工場の労務費や減価償却費といった固定費が含まれるため、そのまま使うと変動費を多く見積もります。また、販管費に入っている荷造運賃や販売手数料は変動費なので、売上原価だけでは漏れが出ます。社内の判断に使う数字は科目ごとに分けて出してください。

準変動費とは何ですか?

準変動費は、売上や生産量がゼロでも一定額がかかり、そこから量に比例して増える費用です。原価計算基準8(四)は電力料を例に挙げています。電力料なら契約電力で決まる基本料金が固定部分、使用量に応じた従量料金が変動部分です。似た言葉の準固定費は、一定の範囲では変わらず、範囲を超えると段階的に増える費用で、監督者の給料が例に挙げられています。

高低点法と回帰分析はどちらを使うべきですか?

12か月以上の月次データがあるなら回帰分析を使います。高低点法は2か月分の数字しか見ないため、その月に一時的な修繕や賞与が入ると結果が大きく狂います。設例では8月の修繕費150万円だけで変動費率が63.3%から51.8%に下がりました。高低点法は月次データが揃わない段階の当たり付けに留め、最終的な値は勘定科目法と回帰分析の突き合わせで決めるのが安全です。

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