会計

連結損益計算書とは:個別PLとの違いと表示区分、内部取引の消去で利益が変わる流れを設例で解説【2026年版】

連結損益計算書とは:個別PLとの違いと表示区分、内部取引の消去で利益が変わる流れを設例で解説【2026年版】

連結損益計算書とは、親会社と子会社を1つの企業集団とみなし、グループ全体の1年間の収益・費用と利益を示す損益計算書です。各社の損益計算書を合算し、グループ内の売買や配当、在庫に残った利益を消して作ります。この記事では、個別の損益計算書との違いを条文で確認したうえで、非支配株主に帰属する当期純利益と親会社株主に帰属する当期純利益の意味、1計算書方式と2計算書方式の違いを整理する構成です。後半は親子2社の設例で、合算から連結損益計算書の完成までを金額で追い、作成業務をExcelで回す範囲とシステム化の判断を示します。

まとめ:連結損益計算書は合算から内部取引を消し、最後に利益を親子の株主に分ける

連結損益計算書の骨格は、売上高から税金等調整前当期純利益まで個別の損益計算書と同じです。違いは2点あります。1つは、親会社と子会社の間の売上・仕入・配当・未実現利益を消すため、合算した数字より売上も利益も小さくなることです。もう1つは、当期純利益の下に「非支配株主に帰属する当期純利益」と「親会社株主に帰属する当期純利益」の2行が加わることです。

読むときは、グループ全体の稼ぐ力は当期純利益まで、親会社の株主の取り分は親会社株主に帰属する当期純利益で見ます。1株当たり当期純利益もこちらが基礎です。

作る側の負担は、消去の金額を各社から正しく集める工程に集中します。国内子会社が数社で親子間取引が単純なうちはExcelで足ります。子会社ごとに科目体系が違う、内部取引の照合差異が毎期出る、という状態なら収集の仕組みから見直す時期です。

連結損益計算書の定義と、個別の損益計算書との違い・作成義務の範囲

連結損益計算書は、法令上どの書類の一部で、個別の損益計算書と何が同じで何が違うのかを先に押さえます。

個別の損益計算書と同じ7区分に、連結だけの2行と持分法の科目が加わる構造

有価証券報告書の連結損益計算書は、連結財務諸表規則の様式第五号で作ります。49条は収益と費用を売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の7つに分けると定めており、この区分は個別の損益計算書と共通です。5つの利益を上から読む手順は個別の損益計算書の見方を2期比較で示した記事と変わりません。

連結だけに出てくる科目は次の表のとおりです。

科目 表示する区分 根拠(連結財務諸表規則)
持分法による投資利益/損失 営業外収益/営業外費用 57条・58条
負ののれん発生益 特別利益 62条
税金等調整前当期純利益 特別損益の次 64条
非支配株主に帰属する当期純利益 当期純利益の次 65条4項
親会社株主に帰属する当期純利益 最終行 65条5項

個別の損益計算書で「税引前当期純利益」と呼ぶ行は、連結では「税金等調整前当期純利益」になります。この名称の違いは、法人税等に加えて非支配株主への配分が後に控えているためです。

作成義務は金商法の有報提出会社と、会社法444条3項の大会社が負う

連結損益計算書を含む連結財務諸表は、有価証券報告書を提出する会社が金融商品取引法に基づいて作ります。会社法では、事業年度末に大会社であって有価証券報告書の提出義務がある会社が連結計算書類の作成対象です。会社計算規則61条は、連結計算書類を連結貸借対照表・連結損益計算書・連結株主資本等変動計算書・連結注記表の4つと定めています。

表示の定めも会社計算規則に置かれた規定です。92条は連結損益計算書の税引前の利益を「税金等調整前当期純利益金額」と表示すること、94条4項は親会社株主に帰属する当期純利益金額を表示することを求めています。非上場の会社に作成義務はありませんが、上場準備や金融機関への説明のために任意で作る例は多くあります。

連結損益計算書の表示区分、非支配株主と親会社株主に利益を分ける最終行の意味

連結損益計算書で読み違いが最も多いのは、当期純利益から下の3行です。

当期純利益から非支配株主の取り分を引いて親会社株主の利益を出す計算

連結財務諸表規則65条3項は、税金等調整前当期純利益から法人税等を加減した額を当期純利益とします。4項はそのうち非支配株主持分に帰属する金額を次の行に記載し、5項は差し引いた残りを親会社株主に帰属する当期純利益とします。

親会社が80%を持つ子会社が200の利益を出せば、20%の40は親会社以外の株主の取り分です。グループの当期純利益にはこの40も含まれますが、親会社の株主のものではありません。そこで最後に切り分けます。

この並びは2015年4月1日以後開始する連結会計年度から適用されています。それ以前の連結損益計算書では、非支配株主の取り分を引いた後の金額を「当期純利益」、引く前を「少数株主損益調整前当期純利益」と呼んでいました。過去10年分の推移を並べる場合、2015年3月期以前の「当期純利益」は今の親会社株主に帰属する当期純利益に当たります。

1株当たり当期純利益とROEは親会社株主に帰属する当期純利益で計算する

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(最新は2026年6月2日の改正版)は、当期純利益に非支配株主に帰属する部分も含めたうえで、親会社株主に帰属する当期純利益を区分して示す理由を51-3項で説明しています。同項の明記する算定の基礎は、1株当たり当期純利益についても従来どおり親会社株主に帰属する当期純利益です。連結財務諸表規則65条の2は、1株当たり当期純利益とその算定上の基礎の注記を求めています。

ROEも分子は親会社株主に帰属する当期純利益、分母は非支配株主持分を除いた自己資本で計算するのが通例です。当期純利益を分子に使うと、非支配株主の多い会社ほどROEが高く見えます。子会社に外部株主が多いグループを比べるときは、2つの利益の差を必ず確認してください。

1計算書方式と2計算書方式、包括利益計算書との関係と会社法での扱い

有価証券報告書では、連結損益計算書のほかに包括利益の表示が必要です。連結財務諸表規則69条の4は、連結包括利益計算書を当期純利益・その他の包括利益・包括利益に分けて記載するよう定めています。その他の包括利益は69条の5により、その他有価証券評価差額金・繰延ヘッジ損益・為替換算調整勘定・退職給付に係る調整額の4項目に分けます。

表示の方法は2つあります。連結損益計算書と連結包括利益計算書を別々に作る2計算書方式と、1つの計算書にまとめる1計算書方式です。第22号39項(3)③により、2計算書方式では当期純利益の下に非支配株主と親会社株主の2行を並べ、1計算書方式では当期純利益の直後に2つの金額を付記します。どちらを選んでも、当期純利益までの計算は同じです。

会社法の連結計算書類には、包括利益計算書は含まれません。会社計算規則61条の4つに入っていないためです。金商法と会社法の両方で開示する会社は、同じ連結損益計算書を2つの書類に使い、包括利益の部分だけを有価証券報告書に足す形になります。キャッシュ・フロー計算書も同じく金商法側だけで求められ、作り方は原則法と簡便法を設例で比べた連結キャッシュフロー計算書の記事で扱いました。

連結損益計算書の作り方を設例で追う、合算から内部取引と未実現利益を消すまで

親会社P社が子会社S社の株式80%を持つグループで、1年分の連結損益計算書を作ります。単位は万円で、税効果会計は省略します。

P社とS社の損益計算書を科目ごとに合算した消去調整前の単純合算の数字

第22号34項は、連結損益計算書を親会社と子会社の個別損益計算書等の金額を基礎とし、連結会社相互間の取引高の相殺消去と未実現損益の消去等を行って作ると定めています。最初の作業は単純な合算です。

科目 P社 S社 単純合算
売上高 5,000 1,800 6,800
売上原価 3,500 1,300 4,800
販売費及び一般管理費 1,000 200 1,200
営業利益 500 300 800
受取配当金 40 0 40
支払利息 0 10 10
法人税等 150 90 240
当期純利益 390 200 590

P社はこの1年でS社に商品を300販売し、S社の期末在庫にはP社から仕入れた商品100が残っています。P社の利益率は20%です。S社は配当50を支払い、P社は80%分の40を受け取りました。支配獲得時に生じたのれんは毎期10ずつ償却します。合算の590は、グループの外から見た利益ではありません。

合算した数字から内部取引・未実現利益・配当・のれん償却を消す4つの調整

合算の後に入れる調整は4つです。それぞれの仕訳の作り方は連結修正仕訳の種類を同じ設例で示した記事にまとめているので、ここでは損益計算書のどの行がいくら動くかだけを見ます。

  1. 内部取引の消去:売上高を300減らし、売上原価も300減らす(第22号35項)。利益は変わらない
  2. 未実現利益の消去:在庫100に含まれる20を売上原価に加える(36項)。売上総利益が20減る
  3. 配当の消去:P社の受取配当金40を消す。経常利益が40減る
  4. のれん償却:販売費及び一般管理費に10を加える。営業利益が10減る

1の内部取引は売上と原価が同額で動くため、利益には影響しません。それでも消さないと、グループの売上高が300水増しされたまま開示されます。利益に効くのは2から4で、合計70です。

完成した連結損益計算書と、非支配株主に帰属する当期純利益40の計算

4つの調整を入れた結果が次の連結損益計算書です。

科目 単純合算 調整 連結
売上高 6,800 −300 6,500
売上原価 4,800 −300+20 4,520
販売費及び一般管理費 1,200 +10 1,210
営業利益 800 −30 770
経常利益 830 −70 760
税金等調整前当期純利益 830 −70 760
当期純利益 590 −70 520
非支配株主に帰属する当期純利益 − − 40
親会社株主に帰属する当期純利益 − − 480

非支配株主に帰属する当期純利益は、S社の利益200の20%で40です。P社からS社へ売るダウンストリームなので、未実現利益20は全額をP社側が負担し、非支配株主の取り分には影響しません。

検算の方法も覚えておくと便利です。P社の利益390から受取配当金40を除き、S社の利益の80%の160を足し、のれん償却10と未実現利益20を引くと480になります。連結損益計算書の最終行がこの金額と合わなければ、どこかの消去が漏れています。

子会社から親会社へ売るアップストリームでは親会社株主の利益が変わる

同じ取引の向きを逆にし、S社がP社へ販売してP社の在庫に未実現利益20が残ったとします。第22号38項により、売手の子会社に非支配株主がいる場合、未実現利益は持分比率で親会社と非支配株主に配分します。

項目 ダウンストリーム アップストリーム
当期純利益 520 520
非支配株主に帰属する当期純利益 40 36
親会社株主に帰属する当期純利益 480 484

グループ全体の当期純利益は変わりません。変わるのは最後の切り分けで、消した20のうち20%の4を非支配株主が負担するため、親会社株主の利益が4増えます。この配分は売手がどちらかで決まるので、内部取引のデータには「誰が誰に売ったか」を必ず持たせてください。37項により金額の重要性が乏しければ消去しないこともできますが、その判断も売手別の集計がなければできません。

連結損益計算書の作成業務で手間がかかる箇所と、Excel運用とシステム化の境界

設例は2社でしたが、実務の負担は計算ではなく数字を集める工程にあります。

科目の組替表と内部取引の相手先別データを、子会社から毎期集める工程

子会社の会計ソフトの勘定科目は、親会社の科目と一致しないのが普通です。第22号の注13(1)は、連結の科目分類は個別財務諸表の科目分類を基礎とし、誤解を生じさせない限り集約できると定めています。実務では、子会社の科目を連結の科目へ置き換える組替表を作り、毎期の合算はこの表を通して行う手順です。子会社が科目を追加したのに組替表を直さないと、その金額が「その他」に落ちて、後で原因を探すことになります。

次に必要なのが内部取引の相手先別データです。設例の4つの調整は、P社のS社向け売上300、S社の在庫に残るP社仕入分100、P社の受取配当金40がそれぞれ分かって初めて計算できます。子会社の試算表だけでは相手先が分からないため、別の様式で集める必要があるのです。一創の会計・経理システム開発では、子会社の会計システムから組替済みの数字と相手先別の取引データを自動で取り込む連携部分の設計から相談を受けています。

Excelの連結精算表で足りるグループと、連結会計システムへ移す条件

子会社が国内の3社以内、親子間の取引が商品の売買と配当程度、子会社の科目体系がほぼ親会社と同じ。この3つがそろうなら、Excelの連結精算表で連結損益計算書は十分に作れます。システムに予算を割く段階ではありません。整えるのは、組替表、相手先別の内部取引の様式、前述の検算式の3つです。

次のどれかに当てはまれば移行を検討してください。

  • 内部取引の照合差異の調査に毎期3日以上かかっている
  • 海外子会社があり、損益の換算と為替差の調整を手で行っている
  • 子会社ごとに会計ソフトが違い、組替表を何種類も保守している
  • 決算短信の開示日程に対して、連結の作業日数が足りていない

移行先が連結会計パッケージかERPの連結機能か、という製品の比較は連結会計システム5製品とERPの連結機能を比べた記事にまとめています。子会社が2社で取引も単純なグループにパッケージを入れるのは過剰です。先に組替表と様式を固めてください。

連結損益計算書で起きやすい3つの誤り、消去漏れ・二重消去・按分の誤り

連結損益計算書の誤りは、ほぼ次の3つの型に収まります。

最も多いのが消去漏れです。親子間の業務委託料や家賃のように、商品売買以外の取引は内部取引の様式から外れやすく、受取手数料と支払手数料が両方残ります。第22号の注12は、連結会社以外を通じた取引でも実質的に連結会社間の取引なら同様に扱うとしています。商社や代理店を経由した親子間の取引も対象です。

2つ目は二重消去です。子会社が売上を計上したのに親会社が仕入を翌期に計上した未達取引を、売上側と仕入側の両方で調整すると、消去額が倍になります。3つ目は非支配株主への按分の誤りで、アップストリームの未実現利益を全額親会社負担にしてしまう例が典型です。いずれも前述の検算式で最終行を確かめれば、差額として見つかります。

連結損益計算書についてよくある質問、見方・単体との比較・連単倍率

連結損益計算書について、検索でよく調べられている疑問に答えます。

連結損益計算書と単体の損益計算書はどちらを見ればよいですか?

グループ全体の業績を見るなら連結、親会社1社の配当余力や税務の状況を見るなら単体です。上場企業の有価証券報告書には両方が載っていますが、決算短信や投資家向けの説明は連結が中心です。子会社への業務移管が多い会社では、単体の売上が減っても連結では変わらないことがあります。単体だけで判断すると、グループの実態を見誤ります。

連結損益計算書の当期純利益と親会社株主に帰属する当期純利益の違いは何ですか?

当期純利益はグループ全体の最終利益で、子会社の外部株主の取り分も含みます。親会社株主に帰属する当期純利益は、そこから非支配株主に帰属する当期純利益を引いた、親会社の株主の取り分です。100%子会社しか持たないグループでは2つは一致します。1株当たり当期純利益やROEは親会社株主に帰属する当期純利益で計算します。

連単倍率とは何で、どのくらいなら高いといえますか?

連単倍率は、連結の数値を単体の数値で割った比率です。売上高や当期純利益で計算し、1倍を大きく上回るほど子会社が稼いでいるグループだと読めます。持株会社で倍率が極端に高くなる理由は、単体の売上が子会社からの配当や経営指導料に限られるためです。業種や組織の形で水準が大きく変わるため、他社と比べるより自社の推移で見るほうが役に立ちます。

連結損益計算書はどこで見られますか?

上場企業の連結損益計算書は、金融庁のEDINETで公開される有価証券報告書と、各社のIR資料の決算短信で見られます。有価証券報告書では「経理の状況」の連結財務諸表の中に、連結包括利益計算書とあわせて載っています。会社法に基づく連結計算書類は、株主総会の招集通知の添付書類として各社のサイトに掲載されることが多いです。

非支配株主に帰属する当期純利益がマイナスになるのはどんなときですか?

外部株主がいる子会社が赤字のときです。子会社が100の損失を出し、親会社の持分が80%なら、非支配株主の負担分20がマイナスで表示されます。この場合、当期純利益から負の金額を差し引くため、親会社株主に帰属する当期純利益のほうが当期純利益より大きくなる計算です。子会社の赤字が続き非支配株主持分を超える損失が出た場合の処理は、第22号27項で親会社持分に負担させると定められています。

関連記事

お気に入りに入れた記事の一覧

この記事は以下の記事からリンクされています

資料請求

今日のトレンド記事 直近 24 時間で、いつもより多く読まれている記事

  1. 2026.10.16 テックブログ バーガーキング不正アクセスで約1,118万件の情報漏洩|対象確認・案内メールの真偽と運営側のログ点検
  2. 2026.10.16 テックブログ ソースネクスト不正アクセスで最大2,252万件流出|ログインできない理由・パスワード再設定と会員APIの点検
  3. 2026.10.15 テックブログ リゾートトラスト不正アクセス:会員2.6万件・カハラ横浜3.6万件の対象確認と窓口
  4. 2026.10.15 テックブログ 銀のさら不正アクセス:最大650万件の対象確認と窓口、パスワード変更の手順
  5. 2026.10.16 テックブログ ワラウ不正アクセスで連携トークン流出|Yahoo! JAPAN ID再連携と対象確認

RELATED POSTS 関連記事

目次