四半期決算とは、事業年度を3か月ごとに区切り、その時点までの業績と財政状態を締める決算です。2024年4月1日以後に始まる事業年度から金融商品取引法の四半期報告書が廃止され、上場会社の第1・第3四半期は取引所の四半期決算短信、第2四半期は半期報告書で開示する形に分かれました。さらに2026年4月1日以後に始まる事業年度からは、四半期と中間の会計処理を1本にまとめた期中会計基準が適用されています。この記事では、開示書類の分担と45日の期限、監査人レビューの実態、四半期で認められる簡便的な会計処理、締めの工程表、会計システムで任せる範囲と投資を見送る条件を扱います。
まとめ:四半期決算は短信と半期報告書の2本立て、簡便処理を決めて45日で締める体制
上場会社の四半期決算は、廃止されたわけではありません。廃止されたのは第1・第3四半期の法定の報告書であり、3か月ごとに数字を締めて開示する義務は取引所規則に残っています。第2四半期は半期報告書として法定開示が続き、期限は中間期の経過後45日以内です。
実務で先に決めるべきなのは、四半期でどの簡便的な会計処理を使うかです。実地棚卸を省くのか、税金費用を見積実効税率で出すのかを期首までに決めておけば、四半期末の作業は月次決算の延長で回せます。監査人のレビューは原則任意で、2024年6月終了の四半期に任意で受けた会社は全体の23.7%でした。
システム投資の判断は、45日の中で何が日数を食っているかで決まります。単体の締めが月次5営業日で回っている会社なら、四半期のためだけの投資は不要です。子会社からの数値回収と注記の作成が期限を圧迫している会社は、そこを連携開発で縮める価値があります。
四半期決算の意味と対象期間、上場会社の義務と非上場会社の任意の位置づけ
四半期決算という言葉は、3か月ごとの締めの作業と、その結果を外部へ開示する行為の両方を指します。会社によって義務の有無が分かれるため、まず自社がどちらに当たるかを確認します。
四半期決算とは3か月ごとに業績を締める決算、累計期間と会計期間の違い
3月決算の会社なら、4〜6月が第1四半期、7〜9月が第2四半期、10〜12月が第3四半期、1〜3月が第4四半期です。第4四半期は年次決算と重なるため、四半期決算として個別に開示するのは第1〜第3四半期の3回になります。
注意したいのは、開示される損益が「その3か月」ではなく「期首からの累計」である点です。企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」も、損益計算書の開示対象を期首からの累計期間と前年同期間としています。第3四半期の短信に載る売上高は4〜12月の9か月分で、10〜12月だけの数字は累計の差額から読み取ります。
上場会社は取引所規則で義務、非上場会社は月次決算の延長で任意に行う決算
上場会社は、四半期の決算内容が定まったら直ちに開示するよう取引所規則で義務づけられています。非上場会社には四半期決算の開示義務がありません。それでも、親会社への連結報告、金融機関との約束、上場準備のために四半期単位で締める会社はあります。
非上場会社が四半期で締める場合、法定の様式や期限に縛られないため、月次決算の精度を3か月ごとに一段上げる位置づけで足ります。年次・中間・四半期・月次の義務の違いを法律ごとに整理した表は、決算の種類と期限を法律別に整理した記事にまとめています。
四半期報告書の廃止後の開示、第1・第3四半期決算短信と半期報告書の分担
「四半期決算は廃止された」という説明を見かけますが、正確ではありません。2023年11月に成立した改正金融商品取引法で廃止されたのは、第1・第3四半期の四半期報告書です。
2024年4月以後開始の事業年度から変わった開示書類と期限の対応表
東証の「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(2023年11月22日)が示した見直し後の開示は、次のとおりです。
| 期間 | 取引所規則 | 金融商品取引法 | 監査人の関与 |
|---|---|---|---|
| 第1四半期 | 四半期決算短信 | なし(廃止) | レビューは原則任意 |
| 第2四半期 | 第2四半期(中間期)決算短信 | 半期報告書 | 半期報告書にレビュー |
| 第3四半期 | 四半期決算短信 | なし(廃止) | レビューは原則任意 |
| 通期 | 決算短信 | 有価証券報告書 | 有価証券報告書に監査 |
第1・第3四半期は、決算短信が唯一の開示書類になりました。法定開示の速報という役割がなくなったぶん、短信そのものの正確さに対する責任が重くなったと捉えるのが実務的です。
第1・第3四半期決算短信に追加されたセグメント情報とキャッシュ・フローの注記
四半期報告書の廃止に合わせ、第1・第3四半期の決算短信には、それまで報告書で開示していた情報の一部が移りました。実務の方針では、貸借対照表・損益計算書・包括利益計算書の掲載に加え、「セグメント情報等の注記」と「キャッシュ・フローに関する注記」が追加で義務づけられています。キャッシュ・フロー計算書そのものは任意で、載せない場合は減価償却費などの注記で代えます。
データの形式も変わりました。第1・第3四半期の短信はXBRLとHTMLの提出が義務となり、PDFを作れば終わりという運用はできません。短信の記載項目と見方の全体は、決算短信の記載項目と45日の開示期限を解説した記事で扱っています。
半期報告書は中間期経過後45日以内、金融商品取引法第24条の5の期限
第2四半期は、短信とは別に法定の半期報告書を提出します。金融商品取引法第24条の5は、上場会社等の半期報告書について、事業年度開始後6か月の期間が経過した日から45日以内の政令で定める期間内の提出を求めています。銀行や保険会社など金融システムの安定に関わる事業を営む会社は60日以内です。
3月決算の会社なら、中間期末の9月30日から数えて11月14日が期限です。旧制度の第2四半期報告書と期限の感覚は同じですが、名称と根拠条文が変わったため、社内の決算スケジュール表や規程に旧名称が残っていないかを確認しておきます。
四半期決算の期限と監査人レビュー、任意レビュー23.7%と二段階開示の実態
期限とレビューの扱いは、制度の文言よりも実際の運用を見たほうが判断しやすい項目です。東証は見直し後の最初の四半期について開示動向を集計しています。
四半期末後45日を超える見込みなら適時開示、2024年6月期の所要日数37.0日
第1・第3四半期の決算短信は、内容が定まり次第開示し、四半期末から45日を超える場合はその状況を適時開示するよう求められています。3月決算の会社なら第1四半期は8月14日、第3四半期は2月14日が目安です。
東証の「四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向」(2024年9月5日)によると、2024年6月30日に終わった四半期を45日以内に開示した2,438社の所要日数は平均37.0日でした。前年同期より0.4日の遅れにとどまり、半数以上の会社は前年とほぼ同じ時期に開示しています。45日以内に開示できない旨を適時開示した会社は7社でした。年次決算まで含めて完了日を前倒しする手順は、決算早期化のボトルネックの測り方をまとめた記事で扱っています。
レビューは原則任意、会計不正や期限超過で義務になる5つの要件
第1・第3四半期の短信に対する監査人のレビューは原則任意です。ただし、次のいずれかに当たると、取引所規則により以後の第1・第3四半期のレビューが義務になります。
- 直近の有価証券報告書・半期報告書・四半期決算短信で、無限定適正意見(結論)以外が付いた
- 直近の内部統制監査報告書で、無限定適正意見以外が付いた
- 直近の内部統制報告書で、開示すべき重要な不備を報告した
- 直近の有価証券報告書・半期報告書を当初の期限内に提出できなかった
- 当期の半期報告書を訂正し、訂正後の財務諸表にレビュー報告書が付く
2024年6月期の集計では、任意でレビューを受けた会社は577社(23.7%)、義務で受けた会社は24社(1.0%)でした。プライム市場に限ると任意レビューは27.3%で、時価総額1兆円以上では40.2%に上がります。任意レビューを受ける会社のうち62社は、レビュー前に短信を先に出し、完了後に再度開示する二段階開示を選びました。1回目の開示は平均31.4日です。
レビューを受けるかどうかは、投資家への説明より先に、社内の確認体制で決めるのが筋です。経理部門の人数が少なく、四半期で第三者の目が入らないと誤りを拾えない会社は、任意でも受ける価値があります。
期中会計基準第37号で変わる四半期の会計処理、2026年4月以後開始の期から適用
会計処理のルールも制度変更に合わせて整理されました。3月決算の会社では、2026年4〜6月の第1四半期から新しい基準で締めています。
第12号と第33号を統合した期中会計基準、報告頻度で年次の結果を変えない原則
企業会計基準委員会(ASBJ)は2025年10月16日、四半期財務諸表の基準(企業会計基準第12号)と中間財務諸表の基準(第33号)を統合した第37号を公表しました。適用は2026年4月1日以後に開始する事業年度の最初の期中会計期間からで、早期適用の定めはありません。
統合の背景は、第2四半期だけ6か月を1つの会計期間として作る半期報告書と、3か月単位で積み上げる第1・第3四半期の短信とで、同じ会社の数字が食い違うおそれがあったことです。第37号は、年次・半期・四半期という報告の頻度で年次の経営成績が変わってはならないという原則を採りました。この結果、有価証券の減損や棚卸資産の簿価切下げは、期中洗替え法が原則になっています。従来から切放し法を使っていた会社は継続できますが、その旨の注記が必要です。
期中特有の会計処理は原価差異の繰延と見積実効税率による税金費用の2つ
第37号が期中だけに認める特有の会計処理は2つです。1つ目は原価差異の繰延で、標準原価計算を採る会社が、操業度の季節変動で生じ年度末までにほぼ解消する原価差異を、継続適用を条件に資産や負債として繰り延べられます。工場の稼働が夏に落ちる製造業などで使われる処理です。
2つ目は税金費用の計算です。原則は年度決算と同じ方法ですが、年間の税引前当期純利益に対する実効税率を見積り、期中の税引前利益に掛けて法人税等を出す方法が認められています。四半期ごとに申告書と同じ計算をする負担を避けられるので、採るかどうかを期首に決めておきます。
実地棚卸の省略や減価償却の按分など、簡便的な会計処理を期首に決める項目
第37号第9項は、利用者の判断を誤らせない限り簡便的な会計処理を認めています。基準の結論の背景では、実地棚卸の省略、定率法の減価償却費の期間按分、退職給付費用の期間按分、連結会社間の債権債務の差異調整の省略、未実現損益の見積り計算などが例に挙がっています。
どれを使うかは、四半期末になってから決めるものではありません。期首の時点で項目ごとに方針を決め、会計システムの設定と手順書に落とし込みます。たとえば実地棚卸を省くなら、前期末の棚卸高に帳簿上の受払を加減した数値を使い、評価損の兆候だけを確認する、といった運用です。連結会社間の内部取引を見積りで消去する場合の前提は、連結修正仕訳の種類と手順を設例で解説した記事で確認できます。
四半期決算の手順、期末から短信開示までを45日以内に収める工程表
四半期決算の工程は年次決算と同じ並びですが、監査や株主総会がないぶん、短い日数に詰め込まれます。
締めから短信開示までの6工程と、3月決算会社の第1四半期の日程例
3月決算の会社が第1四半期の短信を8月上旬に出す場合、6月30日の四半期末から次の順で進めます。
- 単体の締め(7月第1〜2週):売上・仕入・経費の計上を確定し、簡便的な会計処理の方針どおりに減価償却費や引当金を計上する
- 税金費用の計算(7月第2週):見積実効税率を使う場合は、年間の業績見通しから税率を更新する
- 連結(7月第2〜3週):子会社の報告を回収し、内部取引を消去する
- 注記と短信の作成(7月第3〜4週):セグメント情報、キャッシュ・フローに関する注記、経営成績の概況を書く
- 任意レビュー(受ける場合は7月第4週〜8月第1週):監査人と日程を前年のうちに押さえておく
- 取締役会の承認とTDnetへの登録(8月第1〜2週):XBRLとHTMLを含めて提出する
日程表を作るときは、取締役会の日付を先に固定し、そこから逆算して各工程の締切を置きます。工程ごとの担当と前工程の完了条件を書いておくと、遅れがどこで出たかを四半期ごとに比べられます。
月次決算を四半期決算に流用する場合の差分、四半期末だけ追加する処理
月次決算を締めている会社なら、四半期決算は「3か月目の月次」に追加の処理を足すだけで回せます。差分になるのは、税金費用の計算、引当金の見直し、連結と内部取引の消去、注記の作成の4つです。月次では概算で済ませている賞与引当金や貸倒引当金を、四半期末だけは見積りの根拠まで確認します。
逆に、月次が10営業日を超えている会社は、四半期決算の工程を設計する前に月次の締め方を直すほうが効果が大きいと判断します。月次の締め手順は月次決算を5営業日で締める手順の記事で、四半期末に追加する決算整理の中身は決算整理仕訳の9項目を一覧にした記事で確認できます。
四半期決算をシステムで締める範囲と、Excel運用を続けてよい会社の条件
四半期決算は年に3回まわるため、作業の自動化が効きやすい領域です。ただし、すべての会社に投資の価値があるわけではありません。
会計システムに任せる処理、簡便法の自動計上と連結パッケージの四半期回収
システムに任せやすいのは、ルールが決まっていて毎回同じ計算になる処理です。期首に決めた方針どおりの減価償却費の按分計上、見積実効税率による税金費用の仕訳、前年度の損益率を使った未実現損益の消去がこれに当たります。短信のXBRLとHTMLを開示ツールへ渡す数値の出力も、手作業の転記を減らせる箇所です。
子会社のある会社では、四半期ごとの報告パッケージの回収と内部取引の照合が最も時間を取ります。回収と照合を担う製品の比較は、連結会計システムの機能と主要製品を比較した記事にまとめています。
システム投資を見送る条件、非連結で月次5営業日以内に締まっている会社
非連結の上場会社で、月次決算が5営業日以内に締まり、四半期の短信を30日台で出せている会社は、四半期決算のための投資を見送ってください。この状態なら、簡便的な会計処理の方針を手順書に落とし、注記のひな形を整えるだけで45日の期限には十分に間に合います。
レビューを任意で受けていない会社が、開示の遅れを理由にシステムを入れるのも順序が逆です。遅れの原因が取締役会の日程や、引当金の見積りに対する経営者の判断待ちにあるなら、システムでは1日も縮みません。
投資に進む判断基準、子会社の数値回収と注記作成が45日を圧迫する会社
投資に進んでよいのは、子会社が複数あり、報告パッケージの組み替えと内部取引の照合、セグメント情報の集計に毎四半期で合計5営業日以上かかっている会社です。この作業は年3回の四半期と年次で年4回まわるため、縮めた日数がそのまま毎回の開示日の前倒しになります。
パッケージ製品の標準機能で吸収できない部分、たとえば独自の基幹システムからの仕訳連携や、子会社ごとに違う会計ソフトからのデータ取り込みは、連携部分だけを開発する方法があります。当社は会計・経理システム開発として、基幹システムから会計への仕訳連携や、子会社データの収集の仕組みづくりを請け負っています。
よくある質問
四半期決算について寄せられる質問を5つ取り上げます。
四半期決算は廃止されたのですか?
廃止されたのは、金融商品取引法にもとづく第1・第3四半期の四半期報告書です。2024年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。上場会社が3か月ごとに決算を締めて開示する義務は、取引所規則の四半期決算短信として残っています。第2四半期は半期報告書として法定開示が続いており、四半期決算そのものがなくなったわけではありません。
四半期決算はいつ発表されますか?
第1・第3四半期の決算短信は、内容が定まり次第開示し、四半期末から45日を超える場合はその状況を適時開示します。3月決算の会社なら、45日目は第1四半期が8月14日、第3四半期が2月14日です。2024年6月30日に終わった四半期の開示は、平均で四半期末から37.0日でした。個別の会社の予定日は日本取引所グループの決算発表予定日のページや各社のIRカレンダーで確認できます。
四半期決算と中間決算の違いは何ですか?
中間決算は、事業年度の前半6か月をまとめて締める決算です。上場会社では第2四半期の決算が中間決算に当たり、半期報告書と第2四半期(中間期)決算短信で開示します。四半期決算は3か月ごとの締めの総称で、第1・第3四半期の開示書類は決算短信のみです。会計処理は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から、どちらも企業会計基準第37号にもとづいて行います。
非上場企業でも四半期決算は必要ですか?
法律や取引所規則による義務はありません。上場会社の子会社として親会社の連結に数値を出す場合や、金融機関との約束で四半期ごとの試算表の提出を求められる場合には、事実上の締めが必要になります。上場準備に入る会社は、上場後の45日以内の開示に耐える体制を申請前から作っておくことが求められます。それ以外の会社は、月次決算の精度を上げることを優先して構いません。
四半期決算短信に監査法人の監査は必要ですか?
第1・第3四半期の決算短信には、監査ではなくレビューが関係します。レビューは原則任意で、2024年6月期の集計では任意で受けた会社が23.7%でした。ただし、直近の有価証券報告書に無限定適正意見以外が付いた場合や、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合など5つの要件に当たると、レビューが義務になります。第2四半期の半期報告書は、従来どおりレビューの対象です。
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