IFRS(国際財務報告基準)でストックオプションを処理するときの基準はIFRS第2号「株式に基づく報酬」です。付与日の公正価値を権利確定期間にわたって費用にする骨格は日本基準(企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」)と同じで、差が出るのは権利確定後に失効したとき、株価条件が付いているとき、未公開企業が付与するとき、現金で決済するとき、税効果を計算するときです。この記事では、IFRSに移行する会社やIFRS適用会社の子会社で付与する経理担当者向けに、両基準の違いを項番号付きで整理し、費用額がどれだけ変わるかを設例で示します。
ストックオプションの仕組みや税制適格の要件といった総論はストックオプションとは?仕組み・税制適格の要件と税金・会計処理をわかりやすく解説【2026年】、日本基準だけの仕訳はストックオプションの会計基準とは?企業会計基準第8号に基づく仕訳・費用計上の実務解説で扱っています。
まとめ:IFRS第2号と日本基準で結果が変わる5つの場面
- 権利確定後の失効:日本基準は失効分を「新株予約権戻入益」として利益に計上する(基準8号9項)。IFRSは費用を戻し入れず、損益は動かない。資本内の振替は任意(IFRS第2号23項)。
- 株価条件(市場条件):IFRSは株価条件を公正価値に織り込み、市場条件以外の権利確定条件を満たしていれば、株価条件が未達でも費用は戻さない。日本基準はすべての権利確定条件を失効数で調整し、未達なら費用は残らない。
- 未公開企業:日本基準は本源的価値で処理でき、行使価格が株価評価額以上なら費用はゼロになる(基準8号13項)。IFRSに未公開企業向けの特例はなく、公正価値を見積もる(本源的価値は公正価値を信頼性をもって見積もれないまれな場合だけ・24項)。
- 現金決済型:IFRSは負債を決済まで毎期末の公正価値で測り直す。日本基準のストック・オプション基準は持分決済型しか定めていない。
- 税効果:IFRS(IAS第12号)では、税法上の損金算入額が将来の株価に依存する場合に期末株価で見積もり、その見積額が報酬費用累計を超える部分に対応する税効果を資本に直接計上する。日本の法人税法は損金算入額を交付時の価額で決めるため、この処理が効くのは主に国外子会社での付与。
段階的権利確定(トランシェごとに権利が確定する設計)は「IFRSだけが初年度に費用を寄せる」と説明されることが多いものの、日本基準も原則はトランシェ別の処理で、まとめて処理することを妨げないという関係です(適用指針第11号20項)。両基準の差は、日本基準で一括処理を選んでいる会社にだけ生じます。
IFRS第2号の会計処理の骨格:付与日の公正価値を権利確定期間に配分
適用範囲:持分決済型・現金決済型・現金選択権付きの3区分
IFRS第2号は、企業が財やサービスの対価として自社の資本性金融商品を渡す取引、または株価に連動する現金を払う取引を対象にし、持分決済型・現金決済型・現金選択権付きの3つに分けて処理を定めています(IFRS第2号2項)。日本基準の企業会計基準第8号が定めているのは持分決済型(ストック・オプション、自社株式オプション、自社株式の交付)だけです(KPMG あずさ監査法人「IFRS会計基準と日本基準の主要な相違点」2025年10月版 39頁)。株価連動の現金賞与(SAR)やファントムストックは、IFRSではストックオプションと同じ基準の中で処理します。
企業結合の対価として交付する株式はIFRS第3号、株主の立場で行う増資の引受けのような金融商品の取引はIAS第32号・IFRS第9号の範囲で、IFRS第2号には入りません。
測定:付与日の公正価値×権利確定見込み数
従業員との取引は、受け取った勤務の公正価値を直接測れないため、付与した資本性金融商品の付与日の公正価値を参照して測ります(IFRS第2号11項)。付与日は、企業と従業員が契約条件を共通に理解して合意し、株主承認などが必要な場合はその承認も得た日で、日本基準の「募集新株予約権の割当日(会社法238条1項4号)」とは定義の置き方が違います(KPMG同資料39頁)。取締役会決議から割当日まで間があるときや、条件を後から通知するときは、両基準で付与日がずれることがあります。
公正価値はブラック・ショールズ・モデルや二項モデル、株価条件があればモンテカルロ法で算定します。勤務条件や市場条件以外の業績条件による失効の見込みは単価に織り込まず、権利確定見込み数で調整し、見込みが変われば累計額を修正します。この「単価は付与日で固定、数量は毎期見直し」の構造は日本基準(基準8号6項(2)・7項)も同じです。
IFRS第2号と日本基準の違い一覧
KPMGの相違点資料(2025年4月1日時点の公表基準が対象)と基準本文から、ストックオプションの処理で結果が変わる項目を抜き出しました。
| 項目 | IFRS第2号 | 日本基準 |
|---|---|---|
| 対象の取引 | 持分・現金・選択権付き | 持分決済型のみ(基準8号) |
| 付与日 | 合意・必要な承認の成立日 | 割当日 |
| 段階的権利確定 | トランシェ別(IG11) | 原則トランシェ別・一括も可 |
| 株価条件 | 公正価値に織り込む | 失効数で調整 |
| 株価条件の未達 | 費用を戻さない | 費用は残らない |
| 権利確定条件以外の条件 | 公正価値に織り込む | 規定なし |
| 権利確定後の失効 | 資本内振替のみ | 新株予約権戻入益(9項) |
| 未公開企業 | 公正価値(特例なし) | 本源的価値も可(13項) |
| 権利確定期間中の取消し | 未認識費用を即時計上 | 規定なし |
| 相手勘定の表示 | 名称の定めなし | 純資産の新株予約権 |
表のうち、財務数値への影響が大きいのは権利確定後の失効・株価条件・未公開企業の3つです。以下で順に見ていきます。
段階的権利確定の費用配分:3年均等確定の設例
付与数の3分の1ずつが1年後・2年後・3年後に確定する設計では、IFRSは各トランシェを権利確定期間の違う別個のオプションとして扱います(IFRS第2号 適用ガイダンスIG11)。日本基準も原則は同じ処理ですが、付与した単位でまとめて処理することも妨げません(適用指針第11号20項・KPMG同資料40頁)。
次の条件で比べます。付与数300個(各トランシェ100個)、1個あたりの公正価値1,000円、失効は見込まない。実際にはトランシェごとに予想残存期間が違うので公正価値も変わりますが、ここでは配分方法の差だけを見るため同額とします。
| 年度 | トランシェ別(IFRS・日本基準の原則) | 一括で定額(日本基準で選べる方法) |
|---|---|---|
| 1年目 | 183,333円 | 100,000円 |
| 2年目 | 83,333円 | 100,000円 |
| 3年目 | 33,334円 | 100,000円 |
| 合計 | 300,000円 | 300,000円 |
1年目のトランシェ別の額は、1年目確定分100,000円の全額、2年目確定分100,000円の2分の1、3年目確定分100,000円の3分の1の合計です。総額は同じでも、初年度の費用は一括定額の約1.83倍になります。表では円未満を調整し、3年目を33,334円として合計を300,000円に合わせています。日本基準で一括処理を選んでいる会社がIFRSへ移ると、付与直後の年度の株式報酬費用が増え、その後の年度で減ります。
この差を避けるために、権利確定を3年後一括(クリフ)に変える設計を検討する会社もあります。会計の都合だけで変えるのは勧めません。クリフに変えると従業員が権利を得る時期が3年後まで遅れるうえ、予想残存期間が変わって公正価値が変わり、失効見込みも変わり得るため、得られるのは初年度の費用の山が低くなることだけで、総額が下がる保証はありません。変更を検討するなら、制度の狙い(いつ権利を渡したいか)を先に決め、会計上の配分はその結果として受け入れる順序にします。
権利確定条件の扱い:株価条件と権利確定条件以外の条件
株価条件(市場条件)の公正価値への反映と未達時の費用処理
「株価が行使価格の150%を超えたら行使できる」のように株価に連動する条件を、IFRSは市場条件と呼び、付与日の公正価値の見積りに織り込みます(IFRS第2号21項)。市場条件以外の権利確定条件をすべて満たした場合は、市場条件が未達で権利が確定しなくても費用は認識したままです(同21項)。日本基準には株価条件を公正価値に織り込む定めがなく、すべての権利確定条件を失効数で調整するので、条件が未達なら費用は残りません(基準8号7項)。
権利確定期間の決め方も違います。IFRSは付与日に権利確定日を合理的に予測し、その予測は公正価値の見積りに使った仮定と整合させ、後から修正しません(IFRS第2号15項(b))。日本基準は、株価条件が付されている等で権利確定日を合理的に予測することが困難なため予測を行わないときは、対象勤務期間はないものとみなし、付与日に一時に費用を計上します(適用指針第11号18項)。同じ株価条件付きのストックオプションでも、日本基準では付与日に費用が立ち、IFRSでは予測した期間に配分されることがあります。
権利確定条件以外の条件と、業績条件の線引き
勤務条件にも業績条件にも該当しない条件(たとえば毎月の積立継続や、目標の達成対象期間が要求される勤務期間を超える条件)を、IFRSは権利確定条件以外の条件として公正価値に織り込みます(IFRS第2号21A項)。日本基準に同じ規定はなく、業績条件は通常の権利確定条件として失効数で扱います(KPMG同資料40頁)。業績条件に勤務期間が付いているかどうかで、IFRSでは単価に入るか数量で調整するかが分かれるので、付与契約の条件を1本ずつ読み分ける必要があります。
権利確定後の失効:日本基準の戻入益とIFRSの資本内処理
権利が確定した後、株価が行使価格を下回ったまま行使期間が終わり、ストックオプションが失効したときの処理は両基準で正反対です。日本基準は、新株予約権として計上した額のうち失効分を、失効が確定した期の利益として計上します(基準8号9項)。結論の背景では、原則として特別利益に「新株予約権戻入益」等の科目で計上するとしています(同47項)。IFRSは、資本に認識した勤務の対価を戻し入れません。資本の中の別の項目へ振り替えることは妨げられませんが、振替は必須ではありません(IFRS第2号23項)。
権利確定済みのストックオプション1,000,000円分が失効した場合の仕訳です。
| 基準 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 日本基準 | 新株予約権 1,000,000円 | 新株予約権戻入益 1,000,000円 |
| IFRS | 株式報酬に係る資本 1,000,000円 | 資本剰余金等 1,000,000円 |
IFRSは相手勘定の名称を定めていないため(KPMG同資料40頁)、「株式報酬に係る資本」「資本剰余金等」は会社ごとの科目です。株価が低迷した年に日本基準では利益が出て、IFRSでは損益に何も出ない、という差が業績予想に効きます。権利確定前に勤務条件を満たさず失効した分は、どちらの基準でも費用を戻します(IFRS第2号19項・基準8号7項)。
権利行使されたときは、日本基準では新株予約権を払込資本に振り替え(基準8号8項)、自己株式を交付したときは自己株式の処分差額として処理します。IFRSでも損益は通らず、資本の内部で振り替えます。
未公開企業・IPO準備企業:IFRSの公正価値測定原則と限定的な例外
日本基準では、未公開企業は公正な評価単価に代えて単位当たりの本源的価値で処理でき、付与日に見積もった本源的価値はその後見直しません(基準8号13項)。付与日の本源的価値は「株式の評価額-行使価格」とゼロのいずれか大きい額なので、行使価格を株価評価額以上に設定すればゼロになり、株式報酬費用は計上されません。税制適格ストックオプションの行使価格は契約締結時の株価以上が要件なので、日本基準の未公開企業ではストックオプションの費用がゼロになっているケースが多くあります。
IFRS第2号24項には、公正価値を信頼性をもって見積もれないまれな場合に本源的価値を毎期末・最終決済日に再測定する例外があります。ただし、未公開企業という理由で選べる特例はなく、未公開企業も原則として公正価値を見積もります(IFRS第2号 結論の根拠BC137〜BC144・KPMG同資料40頁)。株価のボラティリティは上場している類似企業から推定するのが通例です。IFRS適用の上場親会社が未上場子会社の株式でストックオプションを付与する場合や、IFRSで上場申請するスタートアップは、日本基準なら費用ゼロだった付与にも費用が立つ前提で予算を組む必要があります。
従業員が対価を払って引き受ける有償ストックオプションも同じ構造で差が出ます。日本基準では、権利確定条件付きの有償新株予約権はストック・オプションに該当するものとし(実務対応報告第36号4項)、公正な評価額から払込金額を差し引いた額を対象勤務期間に費用計上します(同5項(3))。無償型・有償型の設計の違いは無償ストックオプションとは?種類・税金・有償との違いを令和6年度改正対応で解説で比べています。
現金決済型(SAR・ファントムストック):IFRSの負債再測定
株価の上昇分を現金で払う株式増価受益権(SAR)や、仮想の株式を割り当てて退職時などに株価相当額を払うファントムストックは、IFRSでは現金決済型の株式に基づく報酬です。企業は受け取った勤務に応じて負債を計上し、決済されるまで報告期間の末日と決済日に公正価値で測り直し、変動を純損益に計上します(IFRS第2号30項)。持分決済型のように付与日の単価で固定されないので、株価変動は再測定額に影響しますが、当期費用は勤務の進捗や権利確定見込みなどにも左右されるため、株価が下がっても必ず戻入れになるわけではありません。
2016年6月の改訂(Classification and Measurement of Share-based Payment Transactions)で、現金決済型の測定に権利確定条件をどう反映するか、源泉徴収分を株式数から差し引いて交付する純額決済、現金決済型から持分決済型への条件変更の処理が明確になりました(IFRS財団 IFRS第2号のページ)。純額決済の例外は、企業が法令上の源泉徴収義務を履行するために株式を留保し、税務当局へ納付する場合の規定です。役員への納税資金の別途給付とは区別して判定します。
日本基準のストック・オプション基準には現金決済型の定めがありません。ファントムストックの仕組みと税金はファントムストックとは?仕組み・税金・会計処理とストックオプションとの違い【2026年】で解説しています。
条件変更と取消し:増分の測り方と即時計上
行使価格の引下げなどで公正価値が増える条件変更をしたとき、両基準とも増加分を残りの期間で追加計上し、公正価値が下がる変更では当初の費用計上を続けます(基準8号10項)。違うのは増分の測り方で、IFRSは条件変更日における「当初条件での公正価値」と「変更後の条件での公正価値」の差額を増分とします(IFRS第2号 B43(a))。日本基準は「付与日の公正な評価単価」と「条件変更日の変更後の評価単価」を比べます(基準8号10項(1))。株価が付与日より下がった後に行使価格を引き下げた場合、日本基準では変更後の評価単価が付与日の単価を下回って追加費用が出ず、IFRSでは同じ日の変更前後の差額で増分が出ることがあります。
権利確定期間中にストックオプションを取り消したとき(従業員の失効を除く)、IFRSは権利確定を早めたものとして扱い、残りの期間に計上するはずだった費用を直ちに認識します(IFRS第2号28項)。日本基準にこの規定はありません(KPMG同資料40頁)。ただし日本基準でも、新しい条件のストックオプションと引換えに当初分を取り消す場合は、実質的に条件変更と同じなら条件変更として処理します(基準8号10項なお書き)。
税効果:IAS第12号68B・68C項による繰延税金資産の測定
日本基準では、税制非適格ストックオプションの株式報酬費用は、従業員が行使時に給与所得として課税されたときに会社の損金になるため、費用計上時点で将来減算一時差異として繰延税金資産の対象になります。税制適格ストックオプションはどの時点でも損金にならないので永久差異で、繰延税金資産は計上できません(EY新日本「ストック・オプション 第4回:権利確定日以後の会計処理について」)。非適格と適格の課税の違いは税制非適格ストックオプションとは?課税2回の仕組みと税制適格との違い【令和6年度改正対応】にまとめています。
IAS第12号は、将来の損金算入額が報告期間末の株価に基づく場合、その期末時点の株価で損金算入額を見積もって繰延税金資産を測ります(IAS第12号68B項)。見積もった損金算入額が株式報酬費用の累計を上回れば、上回った部分に対応する税効果は純損益でなく資本に直接計上します(同68C項)。
ここで効くのが、損金算入額を何で決める税制かです。日本の法人税法では、非適格ストックオプションの損金算入額は「特定新株予約権の交付された時の価額に相当する金額」とされ(法人税法施行令111条の3第3項)、行使時の株価に連動しません。このため日本法人の従業員に付与したストックオプションでは、68B項の期末株価による見積りや68C項の資本への計上が問題になる場面は限られます。IFRS適用会社が国外子会社の従業員に付与し、現地の税制で行使時の株価を基礎に損金算入額が決まる場合は、期末ごとに株価で見積もり直し、費用累計を超えた部分の税効果を資本に計上します。連結の実効税率を分析するときは、この資本計上分を損益と分けて見ます。
IFRSへ移行する会社が準備するデータと判断
東京証券取引所の2026年7月31日公表の分析では、2026年3月決算会社までの開示でIFRS適用済・適用決定・適用予定の会社は合計318社(適用済297社)、IFRS適用を検討中の会社は81社でした(JPX「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析について)。移行時にストックオプションで作業が増えるのは次の3点です。
- 付与ごとの明細:付与日・トランシェ・権利確定条件の種類(勤務・業績・株価・それ以外)・失効実績を付与単位で持つ。日本基準で一括処理していた場合はトランシェ別に計算し直す。
- 未公開時代の付与:本源的価値で費用ゼロにしていた付与は、IFRSの比較年度で公正価値の再算定が要るかを初度適用の免除規定(IFRS第1号 付録D)と合わせて監査法人と詰める。
- 失効・取消しの履歴:権利確定後の失効で日本基準では戻入益にしていた額は、IFRSの数値では資本内振替に置き換える。
付与回数が年数回を超え、トランシェ・失効見込み・期末株価による税効果を毎四半期更新するなら、表計算で管理する場合は、計算式の変更履歴、承認記録、期別ファイルを保存し、監査で追跡できる運用が必要です。株式報酬の明細を会計システムの仕訳まで自動でつなぐ仕組みは会計・経理システム開発の範囲で設計できます。日本基準とIFRSを含む会計基準の全体像は会計基準とは?日本で使える4種類の一覧と会計システムへの落とし込み・2026年の最新改正まで解説で整理しています。
よくある質問
IFRSと日本基準でストックオプションの費用総額は変わりますか?
付与日・公正価値・権利確定数が両基準で一致し、条件変更がなければ総額は同じです。差が出るのは、付与日の定義がずれて公正価値が変わる場合、条件変更で増分の測り方が違う場合、権利確定後に失効した場合(日本基準は戻入益、IFRSは戻さない)、株価条件が未達の場合(IFRSは費用が残る)、未公開企業が本源的価値で処理していた場合(IFRSは公正価値で費用が立つ)です。
IFRSでは新株予約権戻入益を計上できますか?
計上できません。IFRS第2号23項は、権利確定後に行使されなかった場合でも資本に認識した勤務の対価を戻し入れないとしており、認められるのは資本の中での科目の振替だけです。
段階的権利確定はIFRSだけの処理ですか?
いいえ。日本基準も原則はトランシェごとに別個のストックオプションとして処理し(適用指針第11号20項)、付与単位でまとめて処理することも妨げないという定めです。日本基準でまとめて定額処理を選んでいる会社がIFRSへ移ると、初年度の費用が増えます。
ESOP(株式交付信託)もIFRS第2号の対象ですか?
従業員に割り当てたポイントに応じて信託を通じて株式を交付する株式給付型のESOPは、IFRSでは株式に基づく報酬で、交付する株式の価値は付与日の公正価値で固定されます。日本基準は実務対応報告第30号で、ポイントに応じた株式数に信託が自社株式を取得したときの株価を掛けた額を基礎にする処理を定めており、ここも両基準の差になります(KPMG同資料39〜40頁)。
IFRSのストックオプションの注記では何を開示しますか?
IFRS第2号は、期中の株式に基づく報酬の内容、公正価値の算定方法(モデルと入力値)、期中に生じた費用と負債の額を利用者が理解できるように開示することを求め、オプションの期首残高・付与・失効・行使・期末残高の数と加重平均行使価格を示します(IFRS第2号44〜52項)。例えばIFRS第2号47項は、予想変動性の算定方法や、モデルに織り込んだ市場条件などの説明を求めています。