別表13(2)(別表十三(二)「保険金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」)は、火災や災害で固定資産が滅失・損壊し、その保険金で代替資産を取得したときに、法人税の確定申告書へ添付する明細書です。欄は(1)から(35)まであり、何をどこに書くかは国税庁の様式に算式付きで刷り込まれています。この記事では、様式の欄番号どおりに数値を入れた記載例を3ケース(当期中に代替資産を取得した場合、取得が翌期にずれ込んで特別勘定を設ける場合、保険金の支払より前の事業年度に代替資産を取得していた場合)で示し、圧縮限度額の算式、直接減額方式と積立金方式の仕訳と別表四、間違えやすい欄までを整理します。
まとめ:別表13(2)の記載例と保険金の圧縮記帳の要点
- 別表13(2)の中心は3つの数字です。(7)差引保険金等の額=(5)−(6)、(8)保険差益金の額=(7)−(4)被害部分の帳簿価額、(18)圧縮限度額=(8)×(17)圧縮基礎割合。(17)は(16)÷(7)で求めます。
- (13)は「代替資産等の帳簿価額を減額し、又は積立金に経理した金額」、(15)は「当該代替資産等の取得等に要した金額」です。(15)に圧縮処理額を記入すると、(16)(17)を経由して(18)の計算も誤ります。
- 当期中に代替資産を取得できないときは(27)以降の特別勘定欄を使います。取得期限は保険金等の支払を受ける事業年度終了の日の翌日から2年を経過した日の前日まで(法人税法48条1項)です。
- 保険金を受け取る前の事業年度に買い直した資産も、滅失の後に代替として取得したものなら代替資産になります。減価償却資産なら(19)(20)で圧縮限度額を縮め、(25)で取得価額を調整します。
- 対象は滅失・損壊の日から3年以内に支払の確定した保険金等に限られ(法人税法施行令84条)、棚卸資産の保険金や休業補償の保険金は対象外です(法人税基本通達10-5-1)。
- 圧縮記帳は税額を減らす制度ではなく、繰り延べる制度です。圧縮した分だけ税務上の取得価額が下がり、減価償却資産では償却限度額が小さくなります。取得年度から償却額に影響し、実際の納税額は各期の所得等によって変わります。
別表13(2)の記載対象:法人税法47条〜49条の制度と対応欄
別表十三(二)の記載の仕方には「この明細書は、法人が法第47条から第49条まで(保険金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入)の規定の適用を受ける場合に記載します」と書かれています。1枚の様式に、次の3つの制度がまとめて載っている構造です。
様式は国税庁の別表十三(二)(令和8年4月1日以後終了事業年度分・PDF)から、記入上の注意は別表十三(二)の記載の仕方(PDF)から入手できます。以下の記載例は、この様式の欄番号と刷り込まれた算式に沿って組み立てています。
様式が扱う3つの制度と対応する欄
| 根拠条文 | 内容 | 主に使う欄 |
|---|---|---|
| 法人税法47条1項 | 保険金等で代替資産を取得・改良 | (1)〜(8)、(13)〜(20) |
| 法人税法47条2項 | 保険金等に代えて代替資産の交付 | (9)〜(12)、(21)(22) |
| 法人税法48条1項 | 取得が翌期以降になる場合の特別勘定 | (27)〜(31) |
| 法人税法49条1項 | 特別勘定を設けた後の取得による圧縮 | (13)〜(18)、(32)〜(35) |
(23)圧縮限度超過額と(26)取得価額に算入しない金額は3パターンに共通する欄で、様式にも「((13)−((18)若しくは(20)))又は((21)−(22))」のように算式が並べて刷られています。多くの会社が使うのは1つ目、つまり保険金を現金で受け取って建物や機械を買い直すパターンで、この場合(9)から(12)と(21)(22)は空欄です。
対象になる保険金等の範囲:3年以内の支払確定が条件
対象になる保険金等は、保険会社・外国保険業者・少額短期保険業者が支払う保険金、農業協同組合など施行令84条各号の法人が行う共済の共済金、そして損害賠償金で、いずれも滅失または損壊のあった日から3年以内に支払の確定したものに限られます(法人税法施行令84条)。3年を超えて確定した保険金は、金額が大きくても圧縮記帳できません。
次の2つも対象外です(法人税基本通達10-5-1)。商品や製品など棚卸資産の滅失等により受ける保険金と、休廃業等によって減った収益や生じる費用の補塡に充てる保険金です。工場が焼けて「建物の保険金」と「休業補償の保険金」を一括で受け取った場合、圧縮記帳できるのは前者だけなので、保険会社の支払明細で内訳を分けておきます。
別表13の(1)〜(9)一覧:保険金は(2)、補助金は(1)
別表13は圧縮の原因ごとに9つの様式に分かれています。令和8年4月1日以後終了事業年度分の国税庁の様式一覧と、各様式の「記載の仕方」冒頭に書かれた根拠条文は次のとおりです。
| 様式 | 対象 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 別表13(1) | 国庫補助金等・工事負担金・賦課金 | 法人税法42条〜46条 |
| 別表13(2) | 保険金等で取得した固定資産等 | 法人税法47条〜49条 |
| 別表13(3) | 交換により取得した資産 | 法人税法50条 |
| 別表13(4) | 収用換地等に伴い取得した資産 | 措置法64条〜65条 |
| 別表13(5) | 特定の資産の買換え | 措置法65条の7〜65条の9 |
| 別表13(6) | 特定の交換分合による土地等 | 措置法65条の10 |
| 別表13(7) | 特定普通財産と隣接する土地等の交換 | 措置法66条 |
| 別表13(8) | 技術研究組合が賦課金で取得した試験研究用資産等 | 措置法66条の10 |
| 別表13(9) | 転廃業助成金等で取得した固定資産等 | 措置法67条の4 |
同じ事業年度に補助金と保険金の両方があるなら、別表13(1)と別表13(2)を両方作ります。補助金の欄番号と記載例は別表十三(一)(別表13(1))の記載例|国庫補助金の圧縮記帳を欄番号順に書く、土地の買換え・収用は土地の圧縮記帳|買換え・収用・補助金の3制度と面積5倍の壁で扱っています。
別表13(2)の記載例1:当期中に代替資産を取得したケース
保険金を受け取った事業年度のうちに建物を買い直した、最も基本的なケースです。
当期取得の設例条件:保険金3,000万円と建物取得額2,100万円
- 事業年度:2026年4月1日から2027年3月31日
- 2026年5月20日、火災で工場建物が全焼。被害直前の帳簿価額は1,200万円(全損なので被害部分も1,200万円)
- 取壊費と焼跡の整理費として200万円を支出
- 2026年9月に火災保険金3,000万円の支払が確定し入金
- 2027年2月に代替の工場建物を2,100万円で取得し事業供用
- 経理方法は直接減額方式(損金経理により帳簿価額を減額)
当期取得の場合の記入値:(1)〜(35)の記載例
| 欄 | 欄名 | 記入値 | 算式・根拠 |
|---|---|---|---|
| (1) | 保険事故等のあった事業年度 | 2026・4・1/2027・3・31 | 火災の日が属する事業年度 |
| (2) | 保険等の目的資産 | 工場建物 | 滅失した所有固定資産 |
| (3) | 保険等の目的資産の帳簿価額 | 12,000,000 | 被害直前の帳簿価額 |
| (4) | 同上のうち被害部分の帳簿価額 | 12,000,000 | 全損のため(3)と同額 |
| (5) | 支払を受けた保険金等の額 | 30,000,000 | 確定した保険金 |
| (6) | 資産の滅失等により支出する経費の額 | 2,000,000 | 取壊費・焼跡の整理費 |
| (7) | 差引保険金等の額 | 28,000,000 | (5)−(6) |
| (8) | 保険差益金の額 | 16,000,000 | (7)−(4)(令85条2項) |
| (9)〜(12) | 代替資産の交付を受けた場合 | 空欄 | 現金で受領のため |
| (13) | 帳簿価額を減額し又は積立金に経理した金額 | 12,000,000 | 実際に経理した圧縮額 |
| (14) | (7)のうち適用を受けない金額等 | 0 | 他の資産に振り分けていない |
| (15) | 当該代替資産等の取得等に要した金額 | 21,000,000 | 代替建物の取得価額 |
| (16) | 取得等に対応する保険金等の額 | 21,000,000 | ((7)−(14))と(15)の少ない方 |
| (17) | 圧縮基礎割合 | 0.75 | (16)÷(7) |
| (18) | 圧縮限度額 | 12,000,000 | (8)×(17) |
| (19)(20) | 前期以前に取得をした減価償却資産 | 空欄 | 当期に取得したため |
| (21)(22) | 代替資産の交付を受けた場合の圧縮 | 空欄 | 現金で受領のため |
| (23) | 圧縮限度超過額 | 0 | (13)−(18) |
| (24)(25) | 保険差益割合・取得価額調整額 | 空欄 | 前期以前取得の資産がない |
| (26) | 取得価額に算入しない金額 | 12,000,000 | (13)と(18)の少ない方 |
| (27)〜(35) | 特別勘定関係 | 空欄 | 当期中に取得済み |
(14)の正式な欄名は「(7)のうち、圧縮額等の損金算入の適用を受けない金額及び他の代替資産等につき圧縮額等の損金算入の適用を受ける場合のその適用に係る金額」です。1つの火災の保険金で建物と機械を別々に買い直すときは、建物の用紙の(14)に機械へ充てた分を入れ、二重に圧縮しないようにします。計算を混同しないよう、災害別・被害資産の種類別に保険金と経費の内訳を整理します。
(17)の0.75は、差引保険金等2,800万円のうち2,100万円を代替資産に充てた割合です。保険金を全額使い切れば(17)は1.00になり、圧縮限度額は保険差益金の額と一致します。国税庁のタックスアンサーNo.5608の具体例(簿価1,000万円、経費50万円、保険金2,000万円、代替資産3,000万円)はこの全額充当型で、保険差益金の額950万円がそのまま圧縮限度額950万円になります。
間違えやすいのは(13)と(15)の役割、(18)の「−1円」
(15)は代替資産にいくら払ったかであって、圧縮した金額ではありません。圧縮した金額は(13)です。上の例で(15)に12,000,000と書くと(16)も12,000,000になり、(17)が0.428…、圧縮限度額は約685万円まで縮みます。(16)には「マイナスの場合は0」という注記もあり、保険金の大半を他の資産の圧縮に充てて(14)が大きくなったときに効いてきます。
(18)の算式は「((8)×(17))又は((8)×(17)−1円)」と2通り刷られています。(20)(22)も同じ形です。圧縮記帳で帳簿価額が1円未満になる場合でも1円以上を付けなければならない(法人税法施行令93条)ため、圧縮後の帳簿価額が0円になるときだけ後者を使います。
圧縮限度額の計算:保険差益金の額と圧縮基礎割合
圧縮限度額の算式は法人税法施行令85条1項にあります。保険差益金の額に圧縮基礎割合を乗じた金額が上限で、圧縮基礎割合は「保険金等の額から滅失または損壊により支出する経費の額を控除した金額」のうちに「代替資産等の取得または改良をするために要した金額に達するまでの金額」が占める割合です。
保険差益金の額(8)の計算:施行令85条2項の定義
(7)には「(5)−(6)」と算式が刷られていますが、(8)保険差益金の額には算式がありません。定義は施行令85条2項で、差引保険金等の額が「被害直前の帳簿価額のうち被害部分に相当する金額」を超える場合のその超える部分です。(4)には全損なら(3)と同額を、一部損壊なら被害直前の帳簿価額のうち被害部分に相当する金額を入れ、(8)=(7)−(4)で求めます。(4)の見積りが(8)を直接動かします。差引保険金等が被害部分の帳簿価額以下なら保険差益は生じず、圧縮記帳の余地もありません。
一部損壊で建物を建て替えず修復する場合、圧縮の対象になるのは改良をした損壊資産です(法人税法47条1項の「損壊資産等」)。施行令85条1項4号は、改良の場合の帳簿価額を「その改良に係る部分の帳簿価額」と定めています。
(6)に入れてよい経費・入れてはいけない経費
法人税基本通達10-5-5は、含まれるものとして取壊費、焼跡の整理費、消防費のように滅失等に直接関連して支出される経費を挙げ、含まれないものとして類焼者に対する賠償金、けが人への見舞金、被災者への弔慰金を挙げています。近隣への賠償金を(6)に入れると保険差益金が過小になり、圧縮限度額を自分で削ることになります。国税庁の質疑応答事例も、船舶沈没で乗組員捜索のためにチャーターした船の用船料について「船体の滅失に直接関連して支出される経費ではありませんから、滅失経費に該当しません」と回答しています。判断軸は金額の大小ではなく、滅失した資産そのものに直接ひもづく支出かどうかです。
工場建物と機械設備が同時に焼けて共通の経費が出たときは、保険金等の額の比その他合理的な基準で各資産に配賦します(同10-5-6)。焼跡の整理に着手しておらず経費が確定していないときは、見積額で計算し、確定した日の属する事業年度で調整します(同10-5-7)。
保険金の圧縮記帳の仕訳:直接減額方式と積立金方式
記載例1の数値をそのまま使って、決算までの仕訳と申告調整を追います。
保険金確定前の滅失損・経費の仮勘定処理
法人税基本通達10-5-2は、圧縮記帳の適用を受けようとするときは、滅失等による損失の額(支出した経費を含む)を保険金等の額が確定するまで仮勘定とし、損金の額に算入しないとしています。保険金等の額を見積り計上する場合と、受け取るものが損害賠償金のみの場合は除かれます。実務では火災未決算などの勘定で受けます。
- 焼失時:火災未決算 12,000,000 / 建物 12,000,000
- 取壊費の支払時:火災未決算 2,000,000 / 現金預金 2,000,000
- 保険金確定・入金時:現金預金 30,000,000 / 火災未決算 14,000,000、保険差益 16,000,000
この保険差益16,000,000円が(8)と一致します。合わないときは(6)の経費の範囲か(4)のどちらかがずれています。
直接減額方式の仕訳:固定資産圧縮損と帳簿価額の減額
- 代替建物の取得時:建物 21,000,000 / 現金預金 21,000,000
- 圧縮時:固定資産圧縮損 12,000,000 / 建物 12,000,000
保険差益と固定資産圧縮損は損益計算書の特別損益項目に記載します。日本公認会計士協会の照会に対する国税庁の回答(直法2-18、昭和51年5月15日。直法2-19の別紙1)が、この処理で格別の課税所得は生じないことを確認しています。損金経理で圧縮しているので別表四の調整は要りません。
圧縮後の9,000,000円が税務上の取得価額とみなされます(法人税法施行令54条3項5号)。翌期以降はこの金額を基に償却するので、2,100万円で償却する場合より償却費が小さくなり、繰り延べた税負担が戻ってきます。定額法・定率法の計算そのものは減価償却の計算方法とは?定額法・定率法の計算式と償却率表、期中取得とExcelの計算式を設例で解説を参照してください。少額減価償却資産(同令133条・10万円未満)や一括償却資産(同令133条の2・20万円未満)の判定も、圧縮前ではなく圧縮後の金額で行います。
積立金方式の仕訳:剰余金処分と別表四の減算調整
会計上の帳簿価額を取得価額のまま残したい場合は積立金方式を使います。法人税法施行令86条は、決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法を認めています。
- 積立時:繰越利益剰余金 12,000,000 / 圧縮積立金 12,000,000
剰余金処分なので会計上の利益は減りません。別表四で「圧縮積立金積立額」12,000,000円を減算・留保し、別表五(一)では圧縮積立金の当期増12,000,000円と、同額の認定損(マイナス)を両建てします。(13)欄に入る金額は直接減額方式と同じ12,000,000円です。
見落としやすいのは翌期以降です。施行令54条3項は積立金方式にも及ぶため、税務上の取得価額は9,000,000円になりますが、会計の償却費は2,100万円を基に計上されます。その差は償却超過額です。耐用年数31年(定額法の償却率0.033)として1年分を計算すると、別表四は次の3行になります。
| 別表四の項目 | 加算・減算 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 減価償却超過額 | 加算・留保 | 396,000 | 693,000−297,000 |
| 圧縮積立金取崩額 | 加算・留保 | 396,000 | 剰余金処分の取崩し |
| 減価償却超過額認容 | 減算・留保 | 396,000 | 法人税基本通達10-1-3 |
法人税基本通達10-1-3は、積立金を取り崩して益金に算入した場合、その資産の償却超過額のうち取り崩した積立金の額に達するまでの金額を損金に算入するとしています。償却費の差額と同じ額を取り崩せば3行の差引は396,000円の加算で、直接減額方式で297,000円を償却した場合と課税所得は一致します。取り崩さない年は償却超過額だけが残るので、取崩額を償却費の差額に合わせておくと別表五(一)が膨らみません。取得年度(2027年2月取得・2か月分)も同じ構造で、差額は66,000円です。会計上と税務上の2本の取得価額を何十年も並べて持つことになるため、固定資産台帳で両方を管理できるかを先に確認しておくべきで、台帳側の作り込みが必要なら会計・経理システム開発の領域になります。
消費税の取扱い:保険金の不課税と代替建物の仕入税額控除
保険金や共済金は保険事故の発生に伴い受けるもので、資産の譲渡等の対価に該当しません(消費税法基本通達5-2-4)。受取保険金は不課税で、課税売上割合の計算にも入りません。一方、代替資産の取得は課税仕入れなので、仕入税額控除は圧縮後の900万円ではなく、実際に支払った2,100万円を基礎に計算します。圧縮記帳は法人税の計算上の措置で、消費税の計算は動かしません。
別表13(2)の記載例2:決算をまたぐときの特別勘定(27)〜(35)
保険金は入金されたが、建て直しが翌期になる。このパターンは様式の右下ブロック(27)から(35)を使い、根拠は法人税法48条の特別勘定です。
特別勘定の取得指定期間と延長申請の期限
特別勘定を使える期間は、保険金等の支払を受ける事業年度終了の日の翌日から2年を経過した日の前日までです(法人税法48条1項)。災害その他やむを得ない事由で期限までの取得が困難な場合は税務署長が指定した日まで延びますが、申請書は事業年度終了の日の翌日から2年を経過した日の2月前までに出さなければなりません(法人税法施行令88条1項)。2027年3月期に保険金を受け取った下の例なら、取得期限は2029年3月31日、延長申請の提出期限は2029年2月1日です。着工が遅れそうだと分かった段階でこの日付をカレンダーに入れておくべきです。申請に対して2年経過日の前日までに指定も却下もなかったときは、申請した期日で指定があったものとみなされます(同条4項)。
特別勘定を設けた事業年度の記入値
記載例1と同じ火災で、代替建物の取得が翌期の2027年8月(予定取得価額2,100万円)になったとします。(1)から(8)までは記載例1と同じで、当期は圧縮していないため(13)から(18)は空欄です。
| 欄 | 欄名 | 記入値 | 算式 |
|---|---|---|---|
| (27) | 特別勘定に経理した金額 | 12,000,000 | 実際に経理した額 |
| (28) | 特別勘定の対象となり得る金額 | 28,000,000 | (7)−(14)−(15) |
| (29) | (28)のうち取得等に充てようとする金額 | 21,000,000 | 取得見込額 |
| (30) | 繰入限度額 | 12,000,000 | (8)×(29)÷(7) |
| (31) | 繰入限度超過額 | 0 | (27)−(30) |
(30)が(18)と同じ形なのは、施行令89条が繰入限度額の計算に85条を準用し、「取得又は改良をするために要した金額に達するまでの金額」を「取得又は改良に充てようとする額」と読み替えているためです。
経理方法は2通りあります。原則は法人税法48条1項の本則どおり、確定した決算で特別勘定を設ける方法で、「保険差益特別勘定繰入額 12,000,000 / 保険差益特別勘定 12,000,000」と処理すれば繰入額が損金になり、別表四の調整は要りません。直法2-18の回答が「貴見のとおり」とした照会では、この特別勘定を貸借対照表の負債の部に表示するとしています。もう1つは剰余金処分により積み立てる方法(施行令86条)で、「繰越利益剰余金 12,000,000 / 特別勘定 12,000,000」と処理し、会計上の利益が減らない分を別表四で減算・留保します。適格分割等に際して期中特別勘定を設けた場合も、その金額は(27)欄に記載します(記載の仕方3、法人税法48条6項)。
翌期に取得したときの(32)〜(35)
2027年8月に代替建物を2,100万円で取得したら、特別勘定を取り崩して益金に算入し、同じ事業年度に法人税法49条で圧縮します。翌期の別表13(2)は次のようになります。
| 欄 | 欄名 | 記入値 | 算式 |
|---|---|---|---|
| (32) | 当初特別勘定に経理した金額 | 12,000,000 | 繰入事業年度の(27)−(31) |
| (33) | 同上のうち前期末までに益金算入 | 0 | 取崩し実績なし |
| (34) | 当期中に益金の額に算入すべき金額 | 12,000,000 | 取得に伴う取崩し |
| (35) | 期末特別勘定残額 | 0 | (32)−(33)−(34) |
取り崩した12,000,000円は益金に算入され、同額を圧縮限度額の範囲内で損金算入するので、差引の課税所得は動きません。このときの圧縮限度額は施行令91条により、取得した日の特別勘定の金額のうち、保険差益金の額に「取得または改良に充てた額÷差引保険金等の額」を乗じた金額です。上の例では16,000,000円×21,000,000円÷28,000,000円で12,000,000円となり、(13)から(18)欄にも記載例1と同じ数値が入ります。
期限までに取得できなかった場合は、取得指定期間を経過した日の前日に残っている特別勘定の全額を取り崩します(施行令90条2号)。対応する圧縮損はないため、繰り延べた税負担がその事業年度に一度に戻ってきます。取得指定期間内に解散した場合も同様です(同条3号)。補助金が期をまたぐケースとの違いは先行取得の圧縮記帳|補助金が期をまたぐ場合の圧縮限度額と別表で整理しています。
別表13(2)の記載例3:保険金の支払より前の事業年度に代替資産を取得したケース
ここでは、火災の直後に自己資金で建物を買い直し、保険金の支払確定が翌期になった場合を例示します。法人税法47条1項は「当該事業年度終了の時までに取得をした代替資産」と定めており、施行令85条1項は代替資産が「当該事業年度前の各事業年度において取得又は改良をした減価償却資産である場合」の計算を置いています。滅失の後に代替として取得したものなら、保険金を受け取る前の事業年度の取得でも圧縮記帳できます。
前期取得の設例条件:建物取得と保険金確定の時系列
- 2026年1月15日(2026年3月期)に工場建物が全焼。帳簿価額1,200万円、取壊費等200万円
- 2026年3月に代替の工場建物を2,100万円で取得し事業供用。2026年3月期に1か月分の償却費57,750円(21,000,000円×0.033×1/12)を計上
- 2026年6月(2027年3月期)に保険金3,000万円の支払が確定し入金
(1)は火災のあった2026年3月期を書きます。(2)から(18)は、(13)を除いて記載例1と同じ内容です。(18)は12,000,000円ですが、(13)は次の表のとおり11,967,000円になります。違うのは、(19)(20)で圧縮限度額を縮め、(24)(25)で既償却額の分を取得価額から調整する点です。
前期取得の場合の記入値:圧縮限度額と取得価額の調整
| 欄 | 欄名 | 記入値 | 算式 |
|---|---|---|---|
| (19) | 支払を受ける日の代替資産等の帳簿価額 | 20,942,250 | 21,000,000−57,750 |
| (20) | 圧縮限度額 | 11,967,000 | (18)×(19)÷(15) |
| (13) | 帳簿価額を減額し又は積立金に経理した金額 | 11,967,000 | (20)まで圧縮 |
| (23) | 圧縮限度超過額 | 0 | (13)−(20) |
| (24) | 保険差益割合 | 12/21(約0.5714) | (8)×(17)÷(15) |
| (25) | 既償却額に係る取得価額調整額 | 33,000 | 57,750×(24) |
| (26) | 取得価額に算入しない金額 | 12,000,000 | (13)と(20)の少ない方+(25) |
(20)の11,967,000円は、すでに償却した分だけ記載例1の12,000,000円より小さくなります。ところが(25)の33,000円が加わるので、(26)取得価額に算入しない金額は記載例1と同じ12,000,000円です。施行令54条3項は、圧縮で損金算入した額に「既償却額の累積額×割合」を加えた額を取得価額から控除するとしており、税務上の取得価額は21,000,000円−12,000,000円=9,000,000円で、記載例1と一致します。(24)は分数のまま掛けると端数が出ません。
記載の仕方2には、この(20)欄の補足があります。別表十六(九)「24」の欄に金額の記載がある減価償却資産では、その金額(同表「26」の金額のうち施行令85条1項4号に規定する日までに記載すべきこととなった金額があれば、それを控除した金額)を(19)から控除して計算します。該当する資産を代替資産に充てるときは、別表十六(九)を先に固めてから(19)(20)に取りかかる順番になります。
なお、滅失等のあった時点で建設、製作、製造または改造の途中だった資産は代替資産に該当しません(法人税基本通達10-5-4)。もともと進めていた設備投資を保険金で穴埋めした形は認められず、記載例3が成り立つのは、滅失の後に代替として取得した資産に限られます。
適用が否認される典型パターンと、その前に確認すべきこと
計算が正しくても、次の点で適用そのものが崩れることがあります。金額の精度より先に確認すべき論点です。
買い直した資産が「同一種類」でないとき
代替資産は、滅失した所有固定資産と同一種類の固定資産でなければなりません。判定は、耐用年数省令別表第一に掲げる減価償却資産については同表の種類の区分が同じかどうかで、機械及び装置については平成20年改正前の耐用年数省令別表第二の設備の種類の区分が同じか類似するかで行います(法人税基本通達10-5-3)。焼けた工場建物の保険金で機械設備を買っても、種類の区分が違うので代替資産になりません。
明細の記載がないとき:宥恕規定と、後から付けられない線
法人税法47条3項は、圧縮額の損金算入は「確定申告書にこれらの規定に規定する減額し又は経理した金額に相当する金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する」と定めています。これが別表13(2)の添付が必須とされる根拠です。確定申告書には期限後申告書が含まれます(法人税法2条31号)が、修正申告書や更正の請求書は含まれていません。期限内に出した申告書に明細がなかったとき、修正申告や更正の請求で後から別表13(2)を付けても3項は満たせません。そもそも圧縮損の損金経理(または積立金の経理)が確定した決算に入っていなければ、明細を付ける以前に適用の前提を欠きます。
残るのは同条4項の宥恕規定で、税務署長は明細の記載がない確定申告書の提出があった場合でも、やむを得ない事情があると認めるときは適用できるとされています。特別勘定(48条5項)と特別勘定を設けた場合の圧縮(49条3項)にも同じ構造の規定があります。添付漏れに気づいたら事情を整理して所轄税務署に相談する価値はありますが、認めるかは税務署長の判断なので、当てにした申告書の作り方はすべきではありません。当初申告要件の考え方は圧縮記帳とは?当初申告要件と損金経理の要件、補助金の仕訳を条文で整理で詳しく扱っています。
所有権移転外リースによる代替資産の調達
代替資産の取得からは、所有権移転外リース取引による取得が除かれます(法人税法47条1項かっこ書、施行令84条の2)。焼けた設備を所有権移転外リース取引で入れ替える場合は、リース資産として計上されても圧縮記帳の対象になりません。手元の保険金を残したいという理由でリースを選ぶと、保険差益への課税だけが先に来ます。
繰越欠損金がある場合の圧縮記帳の適用判断
圧縮記帳の適用は任意です。法人税法47条1項は「損金経理により減額し、又は…経理したときは」と定めており、経理しなければ適用されません。圧縮記帳をした減価償却資産は、圧縮しない場合より税務上の償却限度額が小さくなります。実際の納税額への影響は、その後の所得や欠損金の状況によって異なります。
当期に控除可能で、使わなければ期限切れになる繰越欠損金で保険差益を吸収できる場合は、圧縮記帳を使わず、代替資産の取得価額を維持する選択を優先して検討します。代替資産の取得価額が下がらない分、翌期以降の減価償却費を満額とれます。繰越欠損金の繰越期間は原則10年(2018年4月1日前に開始した事業年度に生じた分は9年)で、中小法人等以外の控除限度額は、新設法人等の一定の事業年度を除き、原則として繰越控除前所得の50%に制限されている(法人税法57条1項)ので、使えるうちに消化する価値があります。保険差益が出たら反射的に圧縮記帳と決めず、欠損金の残高と期限を確認してから判断してください。逆に、欠損金に期限まで余裕があり翌期以降の所得で使い切れる見込みなら、圧縮記帳で当期の欠損金を温存したほうが有利になることもあるので、両方の税額を試算して比べます。
よくある質問
別表13(1)と別表13(2)は何が違いますか?
圧縮の原因が違います。別表13(1)は国庫補助金等・工事負担金・賦課金で固定資産を取得した場合で根拠は法人税法42条から46条まで、別表13(2)は保険金等で取得した場合で根拠は47条から49条までです。同じ事業年度に補助金と保険金の両方があるなら両方を作ります。工事負担金の扱いは工事負担金の会計処理と勘定科目|支払側の資産区分と受入側の圧縮記帳を参照してください。
保険金で先行取得した資産は圧縮記帳できますか?
滅失等の後に代替として取得した資産なら、保険金の支払を受ける前に取得していても対象になります。前の事業年度に取得した減価償却資産なら、記載例3のように(19)(20)と(24)〜(26)を使います。滅失等の時点ですでに建設や製作の途中だった資産は代替資産に該当しません(法人税基本通達10-5-4)。
社用車が全損になった保険金も対象になりますか?
車両は固定資産なので対象になります。買い直す車両が耐用年数省令別表第一で同じ種類の区分に属していることが必要です(法人税基本通達10-5-3)。盗難で失った車両の保険金も対象で、国税庁の質疑応答事例「盗難により支払を受けた保険金に係る保険差益の圧縮記帳」は「法人税法第47条第1項の『固定資産の滅失』には、固定資産の盗難による滅失も含まれます」としています。
商品が焼けて受け取った火災保険金は圧縮記帳できますか?
できません。棚卸資産の滅失等により受ける保険金等には、法人税法47条から49条までの適用がありません(法人税基本通達10-5-1(1))。休廃業等により減少した収益や生じる費用の補塡に充てる保険金も対象外です(同(2))。
別表13(2)の添付を忘れて申告してしまったら?
申告期限内なら、明細を付けた申告書を出し直せます。期限を過ぎてからの修正申告や更正の請求では明細の要件を満たせないので、法人税法47条4項の宥恕規定(やむを得ない事情があると税務署長が認めるとき)に頼るしかありません。まず所轄税務署に事情を説明して相談し、次の期からは申告前のチェックリストに別表13(2)を入れておきます。