仕掛品は、製造工程に投入したものの、決算日や月末の時点でまだ完成していない品です。この記事では、法人税法施行令と財務諸表等規則での位置づけを条文で確かめ、半製品・製品・原材料との区分の線引きを整理する内容です。そのうえで、原価計算基準が定める完成品換算量を使った月末仕掛品原価の計算を平均法と先入先出法の設例で比べ、決算と翌期首の仕訳、製造間接費の配賦や原価差額に関する国税庁通達の扱いまで確認します。後半では、金額を左右する進捗度の決め方と、生産管理の現場で仕掛在庫をつかむ方法を扱います。
まとめ:仕掛品は製造途中の未完成品、期末に原価で資産計上し進捗度で金額を決める
仕掛品の扱いで迷ったら、次の4点から確認すれば足ります。
- 仕掛品は「製造に着手したが完成していない品」で、棚卸資産として貸借対照表の流動資産に載る。建設業の半成工事や、受託開発で未完成の案件に集めた原価も同じ扱い
- 半製品との違いは、そのままで販売や受け渡しができるかどうか。工程を終えて保管している中間品は半製品、工程の途中にある品は仕掛品
- 金額は「材料費は投入した量、加工費は進捗度を掛けた完成品換算量」で按分して決める。平均法と先入先出法のどちらで計算するかで月末の金額が変わる
- 決算では、期末に残った仕掛品を費用から資産へ振り替え、翌期首に戻す。計上を漏らすと当期の費用が過大になり、利益と課税所得が小さく出る
実務の差がもっとも出るのは4点目の手前、進捗度の決め方です。進捗度を担当者の目分量で決めている会社は、工程の完了ごとに固定の率を割り当てる方式へ切り替えるだけで、月末の金額のぶれが小さくなります。
仕掛品の意味と範囲、法人税法施行令と財務諸表等規則が定める位置づけ
仕掛品は製造工程に入ったが完成していない品、読み方は「しかかりひん」
仕掛品は「しかかりひん」と読みます。現場では「しかけひん」と呼ぶ人もいて、英語では work in process、略して WIP と書かれます。
定義はシンプルです。材料を工程に投入し、加工や組立が始まっているものの、製品として完成していない品を指します。月末や決算日に工程の途中に残っている品は、その時点までにかかった材料費・労務費・経費をまとめて仕掛品という資産に計上します。費用のまま残すと、まだ売れていない品の原価まで当期の費用になってしまうためです。
勘定科目としては資産の科目です。科目の分類の考え方は勘定科目とは?5分類の一覧と決め方で整理しています。
業種で変わる仕掛品の中身、製造業・建設業・ソフトウェア受託開発の例
何が仕掛品になるかは業種で変わります。見た目が「品物」でなくても、完成前の案件に集めた原価であれば仕掛品として扱います。
| 業種 | 仕掛品になるもの | 使われる科目名 |
|---|---|---|
| 部品加工・組立 | 切削途中の部品、組立途中の装置 | 仕掛品 |
| 食品製造 | 仕込み中の原料、熟成中の品 | 仕掛品 |
| 建設業 | 引き渡し前の工事に投じた原価 | 未成工事支出金 |
| ソフトウェア受託開発 | 未納品の案件に集めた工数原価 | 仕掛品 |
建設業の「未成工事支出金」は、条文上では「半成工事」にあたる科目です。受託開発の仕掛品は工数×単価で原価を集めるため、工数入力が遅れると月末の計上額がずれます。受託ソフトウェア開発での具体的な振替は棚卸資産とは?範囲と評価方法6種の計算例の中で扱っています。
棚卸資産7区分のうちの1つ、貸借対照表では流動資産に表示する根拠
税務上の根拠は法人税法施行令第10条です。棚卸資産を7つの号で列挙し、第3号に「仕掛品(半成工事を含む。)」を置いています。第2号が半製品、第1号が商品又は製品で、仕掛品は製品とも半製品とも別の区分として扱われます。
表示の根拠は、上場会社などが有価証券報告書の財務諸表を作るときに従う財務諸表等規則第15条です。流動資産の範囲として、第6号に製品、第7号に半製品(自製部分品を含む。)、第8号に原料及び材料、第9号に仕掛品及び半成工事を挙げています(2026年8月7日施行版で確認)。
区分が別であることには実務上の意味があります。法人税法施行令第29条第1項は、棚卸資産の評価方法を事業の種類ごと、かつ製品・半製品・仕掛品・原材料などの区分ごとに選ぶよう求めています。製品は総平均法、仕掛品は別の方法、という選び方も制度上は可能です。
仕掛品と半製品・製品・原材料の違い、販売できるかと工程の位置で分ける基準
半製品との違いは単体で売れるか、自製部品を在庫に持つ場合の区分
仕掛品と半製品は、どちらも完成前の品です。分かれ目は「工程を区切りまで終えて保管されており、そのまま販売や他工程への受け渡しができるか」にあります。
たとえば金属部品メーカーが、切削を終えて塗装前で保管しているシャフトを、補修用として単体でも出荷しているとします。このシャフトは半製品です。同じシャフトが切削機にかかっている途中なら仕掛品になります。財務諸表等規則が半製品に「自製部分品」を含めているのは、自社で作って在庫に置き、後工程や別製品に使う部品がこの区分に入るためです。
判定に迷う品は、品目マスタに「保管場所があり、在庫数として数えるか」で決めると運用がぶれません。棚に置いて数える品は半製品、工程の中で流れている品は仕掛品という線引きです。
4科目の比較表、工程上の位置・販売の可否・評価の手がかりで整理
製造業の在庫に関わる4つの科目を並べると、違いは工程上の位置と、金額をどう決めるかに表れます。
| 科目 | 工程上の位置 | 単体での販売 | 金額の決め方 |
|---|---|---|---|
| 原材料 | 工程に投入する前 | しない(仕入品) | 仕入単価×数量 |
| 仕掛品 | 工程の途中 | できない | 投入原価を進捗度で按分 |
| 半製品 | 中間工程を終えて保管 | できる | その工程までの原価 |
| 製品 | 全工程を完了 | できる | 完成品の製造原価 |
表のとおり、計算に手間がかかるのは仕掛品だけです。他の3科目は数量と単価で決まりますが、仕掛品は「どこまでできているか」という進捗度を決めないと金額が出ません。
外注加工中・検査待ち・手直し待ちの品、区分を誤りやすい場面と判断の目安
区分の誤りが多いのは、品物が自社の工程から一時的に離れている場面です。
- 外注先でメッキや熱処理を受けている品:自社の倉庫になくても自社の仕掛品。外注先への預け在庫として数量を確認し、計上を漏らさない
- 最終検査待ちの品:検査が完成の条件なら仕掛品。検査を出荷前の付随作業と定めている会社は製品として扱う。どちらにするかを社内規程で固定する
- 不良で手直し待ちの品:手直しして出荷する見込みがあれば仕掛品のまま。廃棄が決まった品は仕掛品から外し、仕損として処理する
実務でもっとも漏れやすいのは外注先の預け在庫です。月末に外注先から預かり数量の報告をもらう手順を決めておくと、計上漏れの大半は防げます。
期末仕掛品の金額の出し方、原価計算基準の完成品換算量と平均法・先入先出法
材料費は投入時点、加工費は進捗度で換算する完成品換算量の考え方
月末仕掛品の金額は、原価計算基準の二四が手順を定めています。製造費用を直接材料費と加工費に分け、月末仕掛品の数量を「完成品に換算すると何個分か」に置き換えて按分する方法です。
換算の比率は、費目によって異なるものです。材料を工程の始点で全量投入する製品なら、材料費は仕掛品1個でも完成品1個分を負担します。加工費は工程が進むにつれて発生するので、仕上り程度(進捗度)を掛けます。進捗度40%の仕掛品が200個あれば、加工費は完成品80個分です。
原価計算基準は、加工費の換算が難しい場合に月末仕掛品を直接材料費だけで計算する方法や、月末の仕掛品数量が毎期ほぼ同じなら計算上無視する方法も認めています。換算量の求め方と工程別計算の全手順は総合原価計算とは?完成品換算量の求め方で設例を追えます。
設例で計算する月末仕掛品原価、平均法と先入先出法で変わる金額の差
同じ数字で、平均法と先入先出法の結果を比べます。材料は工程の始点で全量投入する前提です。
| 項目 | 数量 | 材料費 | 加工費 |
|---|---|---|---|
| 月初仕掛品(進捗50%) | 200個 | 34,000円 | 19,200円 |
| 当月投入 | 1,000個 | 200,000円 | 294,000円 |
| 完成品 | 1,000個 | ― | ― |
| 月末仕掛品(進捗40%) | 200個 | ― | ― |
平均法は、月初分と当月分を合算して単価を出します。材料費は(34,000+200,000)÷(1,000+200)=195円で、月末は200個×195円=39,000円です。加工費は(19,200+294,000)÷(1,000+80)=290円、月末は80個×290円=23,200円になり、月末仕掛品原価は62,200円です。
先入先出法は、月初仕掛品が先に完成したとみなし、月末仕掛品は当月投入分だけで評価します。材料費は200,000÷1,000=200円で月末40,000円。加工費の当月換算量は、完成1,000個から月初の換算量100個を引き、月末の80個を足した980個で、294,000÷980=300円、月末は24,000円です。月末仕掛品原価は64,000円になります。
差は1,800円。当月の単価が月初より高い局面では、先入先出法のほうが月末仕掛品が大きく、完成品原価(483,200円)が小さくなります。平均法の完成品原価は485,000円です。
個別原価計算の仕掛品は未完成の製造指図書に集計した原価の合計額
受注生産のように1件ごとに仕様が違う製品では、換算量の計算は使いません。製造指図書(作業番号)ごとに材料費・労務費・経費を集め、月末に未完成の指図書に集まっている原価の合計がそのまま仕掛品になります。
たとえば月末時点で指図書No.101が完成、No.102とNo.103が未完成なら、No.102とNo.103の集計額の合計が月末仕掛品です。進捗度を見積もる必要がない代わりに、工数や材料の出庫を指図書番号付きで記録していないと集計できません。指図書別の集計と仕訳の流れは個別原価計算とは?受注生産の原価集計・仕訳で扱っています。
製造間接費を仕掛品に配賦しない簡便法、法人税基本通達5-1-5の条件
税務では、仕掛品の取得価額に含める範囲について、国税庁の法人税基本通達5-1-3〜5-1-5が目安を示しています。中小の製造業で使い道があるのは次の2つです。
- 5-1-5:事業の規模が小さいなどの理由で製造間接費を製品・半製品・仕掛品に配賦するのが難しい場合、製造間接費を半製品と仕掛品には配賦せず、製品の製造原価だけに配賦できる
- 5-1-3:製造後の検査・選別の費用、販売所への運賃、長期保管の費用は、合計が製造原価のおおむね3%以内なら取得価額に入れなくてよい
5-1-5を使うと、仕掛品は直接材料費と直接労務費だけで計算できます。配賦計算の手間は減りますが、仕掛品の金額が小さく出るぶん当期の費用は大きくなります。仕掛品の残高が毎期大きく動く会社では利益のぶれにつながるため、残高が毎期ほぼ一定の会社に向く簡便法です。
仕掛品の仕訳、製造費用の振替から完成・期末計上・翌期首の戻しまでの流れ
製造原価を仕掛品勘定に集める仕訳と完成品を製品へ振り替える仕訳
工業簿記で原価計算を回している会社は、製造費用を仕掛品勘定に集め、完成した分を製品勘定へ移します。前の設例(平均法)を当てはめると次のとおりです。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 材料を工程に投入 | 仕掛品 200,000 | 材料 200,000 |
| 労務費・経費を振替 | 仕掛品 294,000 | 賃金・製造間接費 294,000 |
| 1,000個が完成 | 製品 485,000 | 仕掛品 485,000 |
月初残高53,200円に494,000円を足し、完成分485,000円を引くと、仕掛品勘定の残高は62,200円です。設例で計算した月末仕掛品原価と一致します。帳簿の残高と計算結果が合わないときは、振替漏れか換算量の誤りを疑います。
決算で期末仕掛品棚卸高を計上する仕訳と、翌期首に戻す振替仕訳
中小企業では、日々の製造費用を材料費・労務費・経費の科目に計上したままにしておき、決算でだけ仕掛品を計上する方式が一般的です。会計ソフトの製造原価報告書もこの形で作られます。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 決算日に残高を計上 | 仕掛品 62,200 | 期末仕掛品棚卸高 62,200 |
| 翌期首に戻す | 期首仕掛品棚卸高 62,200 | 仕掛品 62,200 |
期末仕掛品棚卸高は当期の製造原価から差し引かれ、期首仕掛品棚卸高は翌期の製造原価に加わります。決算日の1本を入れ忘れた場合、当期の利益は62,200円だけ小さく出て、翌期は逆に同じ額だけ大きく出る結果です。決算整理の他の項目と合わせた手順は決算整理仕訳とは?主な9項目の仕訳一覧にまとめています。
標準原価で評価した仕掛品の原価差額、総製造費用1%以内なら調整不要
標準原価や予定原価で仕掛品を評価している会社は、実際原価との差(原価差額)の扱いに注意が要ります。国税庁の法人税基本通達5-3-1〜5-3-5は、期末棚卸資産に対応する原価差額を評価額に加算するよう定めています。
ただし5-3-3により、原価差額が総製造費用のおおむね1%以内で、計算を示した明細書を確定申告書に添付すれば、調整を省略できます。1%を超える場合でも、5-3-5の簡便調整方法を使えば、原価差額を仕掛品・半製品・製品の順に配る代わりに一括で期末棚卸資産へ配賦できます。標準原価を年に一度しか改訂しない会社は、期末に差額が1%を超えやすいので、改訂の頻度とあわせて見直す対象です。
生産管理で仕掛在庫をつかむ方法、工程実績から進捗度を決める運用とその限界
進捗度を目分量で決める会社の失敗、工程完了ごとの固定率への置き換え
仕掛品の金額は進捗度で決まります。ところが現場では、月末に班長が「だいたい半分」と申告した値をそのまま使っている会社が少なくありません。申告者が変わると同じ状態の品でも30%と60%に分かれ、月ごとの原価が説明できない動き方をします。
直し方は単純です。工程ごとに完了時点の進捗度を固定で割り当てます。切削完了で30%、溶接完了で60%、塗装完了で90%のように、標準作業時間の累積比率から決めておけば、月末には「どの工程まで完了したか」を数えるだけで済みます。原価計算基準が「仕上り程度」と呼ぶ比率を、人の判断から工程実績の記録に置き換える考え方です。
この方式が向かないのは、1工程が数週間に及ぶ大型の受注品です。工程の途中で月末を迎える割合が高く、固定率では実態と大きくずれます。その場合は個別原価計算に切り替え、指図書ごとの実際原価で仕掛品を計上します。
仕掛在庫が膨らむ兆候、工程間の滞留日数と在庫回転率で見る基準
仕掛品は会計上は資産ですが、現場にとっては資金が寝ている状態です。膨らみ方を見るには、仕掛在庫日数を月次で追うのが手軽です。月末仕掛品原価を、1日あたりの完成品原価で割って求めます。
設例なら、62,200円÷(485,000円÷30日)でおよそ3.8日分です。製造リードタイムが3日の製品でこの値が6日、8日と伸びていくなら、どこかの工程の前で品が滞留しています。在庫全体の回転の見方は在庫回転率とは?計算式と業種別の目安と組み合わせると読み違えません。
原因の特定には、工程ごとの着手数と完了数の差を見ます。差が積み上がっている工程が詰まっている箇所です。
月末の実地棚卸で帳簿の仕掛品と現物が合わない原因と差異の追い方
帳簿の仕掛品数量と実地棚卸の数が合わない原因は、だいたい次の順で多く見つかります。
- 工程完了の実績入力漏れ。完成して次工程に移った品が、帳簿上は前工程に残っている
- 不良品の廃棄登録漏れ。現物は捨てたのに、帳簿には仕掛品として残っている
- 外注先の預け在庫の把握漏れ。現物は外注先にあり、社内の棚卸で数えていない
- 単位の取り違え。kgで投入した材料を個数で数えている、ロット数と個数を混同している
差異は工程単位で出し、差の大きい工程から上の順に当てはめて確認します。棚卸の段取りと差異率の許容水準は実地棚卸とは?帳簿棚卸との違いと差異率の許容水準で詳しく扱っています。
Excelで足りる条件と生産管理システムで仕掛品を自動計上すべき判断の分かれ目
Excel集計で回る規模の目安、品目数・工程数・月末の締め日数で判断
Excelで仕掛品を計算して困らないのは、次の条件をすべて満たす会社です。
- 総合原価計算で、製品の種類が数種類にとどまる
- 工程が3つ程度までで、工程ごとの固定の進捗度で月末を数えられる
- 月末の仕掛品の棚卸と計算が、締めの2〜3営業日で終わっている
この範囲なら、システムを入れても月末の作業は大きく減りません。工程完了数を数える棚卸表と、換算量を計算するシートを1枚ずつ持てば足ります。逆に、締めのたびに担当者が工程ごとの数字を電話で集めている、あるいは月次決算が仕掛品の確定待ちで止まっているなら、Excelの限界を超えています。
工程実績から仕掛品を自動計上するシステムの要件と作り込みが過剰な場面
工程実績の入力から仕掛品の金額まで自動でつなぐなら、システムに持たせる要件は次の4つです。
- 製造指図書(またはロット)ごとに、工程の着手・完了を記録できる
- 工程ごとの標準進捗度を品目マスタに持ち、完了実績から換算量を自動で出す
- 外注先への出庫と戻りを記録し、預け在庫を仕掛品に含める
- 月末仕掛品の金額を、会計システムに期末仕掛品棚卸高として連携する
すべてを一度に作る必要はありません。最初は1と2だけを作り、月末の数え作業をなくすところから始めるのが投資を抑える順番です。一方で、製品が数種類で工程も少ない会社が、個別原価計算並みの指図書管理を作り込むのは過剰です。入力の手間が増えるだけで、決算の精度はほとんど変わりません。
工程実績と原価計算をつなぐ部分は、パッケージの標準機能では自社の工程に合わないことが多い領域です。既存の生産管理や会計システムとの連携を含めて検討する場合は、生産管理システム開発の進め方を参考にしてください。
よくある質問
仕掛品について、決算や税務の場面で聞かれることの多い質問をまとめました。
仕掛品は勘定科目のどの区分に入りますか?
資産の区分で、貸借対照表では流動資産の棚卸資産に表示します。財務諸表等規則第15条で、流動資産として第9号に挙げられているのが「仕掛品及び半成工事」です。中小企業の決算書でも、製品や原材料と並べて流動資産に記載します。損益計算書側には、製造原価報告書の中で期首仕掛品棚卸高と期末仕掛品棚卸高として登場し、当期の製造原価を調整する役割を持ちます。
仕掛品を計上せず、全額を経費にしてもよいですか?
認められません。期末に残っている仕掛品の原価は翌期以降に売れる品の原価なので、当期の費用にすると利益と課税所得が実際より小さくなります。税務調査では期末棚卸資産の計上漏れとして指摘されやすい項目です。金額が小さくても、毎期同じ方法で数えて計上してください。製造間接費の配賦を省く簡便法(法人税基本通達5-1-5)は、計上そのものを省く扱いではありません。
製造原価報告書では仕掛品をどこに書きますか?
材料費・労務費・経費を合計した当期総製造費用に、期首仕掛品棚卸高を足し、期末仕掛品棚卸高を引いた額が当期製品製造原価になります。設例の数字なら、当期総製造費用494,000円+期首53,200円−期末62,200円=485,000円です。この当期製品製造原価が損益計算書の売上原価の計算に入ります。仕掛品の計上を誤ると、製造原価報告書と損益計算書の両方がずれます。
仕掛品にも低価法で評価損を計上できますか?
税務では、評価方法として低価法を選んで届け出ていれば、仕掛品にも適用できます。法人税法施行令第28条第1項第2号が、原価法による評価額と期末の価額のうち低いほうを評価額とする方法を定めており、第29条で仕掛品は独立した区分として評価方法を選べます。届出の期限と方法の変更手続きは棚卸資産全体の話になるため、本文で紹介した棚卸資産の記事で確認してください。
直接原価計算を採用すると仕掛品の金額は変わりますか?
変わります。直接原価計算では固定製造原価を期間費用とし、仕掛品と製品には変動製造原価だけを負担させるため、全部原価計算より仕掛品の金額が小さくなる仕組みです。外部向けの財務諸表は全部原価計算で作る必要があるので、期末に固定費を仕掛品と製品へ配る固定費調整を行います。計算例は直接原価計算の損益計算書とは?固定費調整の計算例で確認できます。
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