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総合原価計算とは?完成品換算量の求め方と累加法・非累加法の違いを設例で解説

総合原価計算とは?完成品換算量の求め方と累加法・非累加法の違いを設例で解説

総合原価計算は、同じ製品を連続して大量に生産する工場で、1か月などの期間に発生した原価を完成品と月末仕掛品に分け、1個あたりの原価を求める方法です。原価計算基準では二一〜三〇に定めがあり、集計の単位を「期間生産量」とする点が個別原価計算との違いです(出典:企業会計審議会「原価計算基準」(企業会計基準委員会掲載))。

計算の要になるのは、作りかけの仕掛品を「完成品何個分か」に直す完成品換算量です。この記事では、換算量の求め方から完成品総合原価の計算式、平均法と先入先出法、工程別計算の累加法と非累加法、仕損の処理、仕訳までを、検算済みの設例で確認します。

まとめ:総合原価計算の要点

  • 総合原価計算は、当期製造費用に期首仕掛品原価を加えた総製造費用を、完成品と期末仕掛品に分割して単位原価を求める(基準二一・二四)。
  • 完成品換算量は、直接材料費では材料消費量の比率、加工費では仕上り程度(加工進捗度)の比率を仕掛品の数量に掛けて求める(基準二四(一))。材料を始点で投入すれば換算量は数量そのもの、終点で投入すれば0個。
  • 完成品総合原価=月初仕掛品原価+当月製造費用-月末仕掛品原価。月末仕掛品の評価で平均法と先入先出法に分かれる。
  • 工程別計算では、前工程の完成品原価を「前工程費」として次工程に加算するのが累加法、工程費ごとに最終完成品原価の内訳を求めるのが非累加法。
  • 正常な仕損の費用は、原則として仕損費の費目を設けずに完成品と月末仕掛品に負担させる(基準二七)。異常な仕損は非原価項目(基準五(二))。
  • 日商簿記では、累加法と度外視法は2級、非累加法・非度外視法・純粋先入先出法は1級の範囲。

総合原価計算の定義と原価計算基準上の位置づけ

基準二一・二四が定める「期間生産量」単位の集計

基準二一は、単純総合原価計算を「同種製品を反復連続的に生産する生産形態に適用する」と定めています。基準二四は、単純・等級別・組別の3形態に共通する特質を「原価集計の単位が期間生産量であること」とし、継続製造指図書に基づいて計算すると定めています。

基準の本文は「期首」「期末」と書きます。教科書や検定問題の「月初」「月末」は、原価計算期間を1か月とした場合の呼び方で、「月末」という語は基準に1度も出てきません。

個別原価計算との違い:集計単位・指図書・未完成分の評価

比較軸 総合原価計算 個別原価計算
適用される生産形態 同種製品の反復連続生産 種類の異なる製品の個別生産
原価の集計単位 期間生産量 特定製造指図書
指図書 継続製造指図書 特定製造指図書
未完成分の評価 完成品換算量で按分 未完成の指図書の集計額
基準の条文 二一〜三〇 三一〜三六

基準二〇は製品別計算の類型を「単純総合」「等級別総合」「組別総合」「個別原価計算」の4つに並べています。指図書ごとの集計手続と仕訳は個別原価計算の受注生産の原価集計と仕訳で扱っています。

原価計算の方法を分ける3つの軸:集計単位・原価の種類・集計範囲

「原価計算の方法」「原価計算の種類」として並ぶ名称は、分類の軸が3つ混ざっています。総合原価計算はそのうち集計単位の軸に属するため、ほかの2軸と組み合わせて使います。

分類の軸 区分 基準の条文
集計単位 総合原価計算/個別原価計算 二〇
使う原価 実際原価計算制度/標準原価計算制度 二
集計範囲 全部原価/直接原価(部分原価) 四(三)・三〇

基準二は、企業が実際原価計算制度と標準原価計算制度の「いずれかを」目的や個々の条件に応じて適用すると定めています。標準原価で仕掛品を評価する総合原価計算もあり、この記事の設例はすべて実際原価による計算です。

単純・等級別・組別の3形態と工程別計算の組み合わせ

総合原価計算の種類は、製品の構成で決まる3形態と、工程を分けて計算するかどうかの2つの軸で整理できます。工程別計算は単純・等級別・組別のどれとも組み合わせられるため、「4種類」と並べると軸が混ざります。

形態 適用する生産形態(基準) 按分の鍵 日商の級
単純総合(二一) 同種製品を反復連続生産 完成品換算量 2級
等級別総合(二二) 同一工程で形状・大きさ・品位が違う同種製品 等価係数×生産量の積数 2級
組別総合(二三) 異種製品を組別に連続生産 組直接費は賦課、組間接費は配賦 2級
工程別計算(二五) 2以上の連続する工程 工程ごとの完成品換算量 累加法は2級

等級別総合原価計算の等価係数は、基準二二(一)では重量・長さ・面積・純分度・熱量・硬度など製品の性質から決め、完成品の総合原価を一括で按分します。二二(二)では標準材料消費量や標準作業時間など原価要素ごとに係数を決め、製造費用の段階で按分します。組別総合原価計算は、基準二三が「個別原価計算に準じ」と書くとおり、組直接費を各組に賦課し、組間接費を配賦基準で各組に配賦してから、組ごとに完成品と仕掛品を分けます。配賦基準の決め方は配賦基準の選び方と同じ考え方です。

完成品換算量とは:仕掛品を完成品何個分かに直す数量

基準二四(一)の定義と「加工換算量」「換算数量」の呼び方

完成品換算量は、月末仕掛品の数量を、完成品に直すと何個分にあたるかで表したものです。基準二四(一)は、直接材料費については「期末仕掛品に含まれる直接材料消費量の完成品に含まれるそれに対する比率」を、加工費については「期末仕掛品の仕上り程度の完成品に対する比率」を算定し、それぞれ期末仕掛品現在量に掛けて計算すると定めています。

基準の用語は「完成品換算量」だけです。検定テキストや解説で使われる「換算量」「加工換算量」「換算数量」「完成品換算数量」は同じものを指し、「加工換算量」は加工費側の換算量を特に指すときの呼び方です。「仕上り程度」は、教科書では加工進捗度と呼ばれます。加工進捗度50%の仕掛品200個は、加工費については完成品100個分です。完成品は工程をすべて終えているので、換算量は数量と同じです。

始点・終点・工程途中・平均的投入で変わる直接材料費の換算量

直接材料費の換算量は、材料を工程のどこで投入するかで決まります。材料を特定の地点で全量投入する場合、月末仕掛品が投入点を通過していれば100%、未到達なら0%です。分割投入や平均的投入では、完成品に必要な材料量に対する投入済みの割合で計算します。月末仕掛品200個(加工進捗度50%)で比べると次のとおりです。

材料の投入点 月末仕掛品の材料消費の比率 直接材料費の換算量
工程の始点 100% 200個
工程の40%地点 100%(通過済み) 200個
工程の60%地点 0%(未到達) 0個
工程の終点 0% 0個
加工に比例して平均的に投入 50% 100個

終点や60%地点で投入する材料は、月末仕掛品が負担しないため全額が完成品原価になります。平均的に投入する材料は加工費と同じ換算量です。包装材のように終点で加える材料と、主原料のように始点で投入する材料が混在する工場では、材料ごとに換算量を分けて按分します。

前工程費の換算量:次工程の始点投入と同じ数え方

前工程費は、工程別計算で前の工程から振り替えられた工程製品の原価です(基準二五)。次工程から見ると、前工程の完成品は工程の始点で受け入れる材料と同じなので、次工程の月末仕掛品の前工程費の換算量は、加工進捗度にかかわらず数量そのものになります。設例Bの第2工程の月末仕掛品100個(進捗度50%)は、前工程費が100個、第2工程の加工費が50個です。

完成品総合原価の求め方:計算式と平均法の設例

直接材料費と加工費に分けて按分する理由

基準二四(一)は、当期製造費用と期首仕掛品原価を「原則として直接材料費と加工費とに分け」て、換算量をそれぞれ算定すると定めています。材料は始点でまとめて投入されることが多いのに対し、加工費は作業の進み具合に応じて発生するため、同じ月末仕掛品でも負担させる個数が違うからです。基準八(三)は「直接材料費以外の原価要素を総括して」加工費とできると定めているので、直接労務費と製造間接費のほか、補修用材料や工場消耗品などの間接材料費も加工費側で按分されます。

完成品総合原価・月末仕掛品原価・完成品単位原価の計算式

以下は、仕損・減損や副産物などの調整がない場合の基本式です。原価要素ごとに式を当てはめ、最後に直接材料費と加工費を合計します。分母の「月末仕掛品の換算量」は、直接材料費と加工費で別の値になります。

  • 平均法の月末仕掛品原価=(月初仕掛品原価+当月製造費用)÷(完成品数量+月末仕掛品の換算量)×月末仕掛品の換算量
  • 先入先出法の月末仕掛品原価=当月製造費用÷(完成品数量-月初仕掛品の換算量+月末仕掛品の換算量)×月末仕掛品の換算量
  • 完成品総合原価=月初仕掛品原価+当月製造費用-月末仕掛品原価
  • 完成品単位原価=完成品総合原価÷完成品数量

設例A:平均法で月末仕掛品原価と完成品単位原価を求める5ステップ

次の条件で計算します。材料は工程の始点で投入します。

区分 数量(加工進捗度) 直接材料費 加工費
月初仕掛品 200個(50%) 38,000円 28,000円
当月投入 1,000個 202,000円 302,000円
完成品 1,000個 - -
月末仕掛品 200個(50%) - -
  1. 数量を確かめる:月初200個+当月投入1,000個=完成1,000個+月末200個。
  2. 完成品換算量を出す:直接材料費は月末200個、加工費は200個×50%=100個。
  3. 直接材料費の単価:(38,000円+202,000円)÷(1,000個+200個)=200円。月末仕掛品は200個×200円=40,000円。
  4. 加工費の単価:(28,000円+302,000円)÷(1,000個+100個)=300円。月末仕掛品は100個×300円=30,000円。
  5. 完成品総合原価:総製造費用570,000円-月末仕掛品70,000円=500,000円。完成品単位原価は500円。

仕掛品勘定を、左に月初と当月投入、右に完成と月末を置いた箱形に書くと、検定で「ボックス図」と呼ばれる図になります。左右の数量と金額が一致することを確かめれば、手順1と手順5の転記ミスを防げます。

平均法と先入先出法で変わる月末仕掛品の評価額

設例Aを先入先出法で計算した場合の差額600円

先入先出法は、月初仕掛品が先に完成したとみなし、当月製造費用だけで月末仕掛品を評価します(基準二四(二)2)。直接材料費の単価は202,000円÷(1,000個-200個+200個)=202円、加工費の単価は302,000円÷(1,000個-100個+100個)=302円です。

項目 平均法 先入先出法
直接材料費の単価 200円 202円
加工費の単価 300円 302円
月末仕掛品原価 70,000円 70,600円
完成品総合原価 500,000円 499,400円
完成品単位原価 500円 499.4円

月初仕掛品の単価(材料190円・加工費280円)が当月より低いため、当月の単価だけで評価する先入先出法のほうが月末仕掛品が高くなり、完成品原価は600円下がります。材料費の単位原価が月初より当月のほうが高ければ、材料費部分の完成品原価は先入先出法のほうが低くなります。完成品原価全体の大小は、加工費の単位原価の変化にも左右されます。評価方法は区分ごとに選んで継続して適用するのが前提で(棚卸資産会計基準第6-3項)、価格の動きを見て月ごとに切り替えることはできません。

修正先入先出法と純粋先入先出法の区別

上の計算は、月初仕掛品から完成した分と当月着手で完成した分の原価を合算して1つの完成品単位原価を出しています。検定ではこれを「修正先入先出法」と呼びます。月初仕掛品からの完成分と当月着手分の単位原価を別々に計算するのが「純粋先入先出法」です。商工会議所の出題区分表では、平均法と(修正)先入先出法が2級、純粋先入先出法が1級に区分されています(出典:日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表 工業簿記・原価計算」)。

後入先出法:原価計算基準の記載と財務諸表での適用制限

原価計算基準は昭和37年(1962年)11月8日付の本文のままで、二四(二)3に後入先出法が残っています。一方、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」は2008年の改正で後入先出法を選択肢から削除し、第6-2項で仕掛品を含む棚卸資産に個別法・先入先出法・平均原価法・売価還元法などを適用するとしています(参考:EY新日本有限責任監査法人「棚卸資産の評価に関する会計基準 第4回」)。財務諸表に載せる仕掛品の評価で後入先出法は使えません。

工程別総合原価計算:累加法と非累加法の違い

累加法:前工程の完成品原価を前工程費として次工程に加算

基準二五は、工程別総合原価計算で「一工程から次工程へ振り替えられた工程製品の総合原価を、前工程費又は原料費として次工程の製造費用に加算する」と定めています。これが検定でいう累加法です。第2工程では前工程費を始点投入の材料と同じ扱いにし、第2工程の加工費と合わせて完成品と月末仕掛品に分けます。

「累加法」「非累加法」という名称は基準には出てきません。どちらも教科書と検定の用語で、基準二五の文言は累加法の手続を書いたものです。累加法の弱点は、最終完成品原価のうち第1工程で生じた原価がいくらかが、前工程費にまとまって見えなくなる点にあります。

非累加法:工程費ごとに最終完成品原価の内訳を把握する2つの方式

非累加法は、原価を第1工程直接材料費・第1工程加工費・第2工程加工費のような工程費に区分し、最終完成品原価の内訳を工程費ごとに把握する方法です。次の2つの方式があります(出典:ネットスクール「工業簿記・原価計算 TEXT 完成編」第3章)。

  • 通常の計算方式:工程全体を1つの工程とみなし、工程費ごとに単一工程の総合原価計算と同じ方法で最終完成品原価を計算する。
  • 累加法と計算結果が一致する方法:工程費ごとに区分しつつ、累加法と同じ順序で工程ごとに按分を繰り返す。

通常の計算方式では、第1工程費を按分するとき、第2工程の月末仕掛品は第1工程の作業を終えているため進捗度100%として数えます。第1工程の月末仕掛品だけが第1工程の加工進捗度で換算されます。

設例B:累加法と通常の非累加法で完成品原価が900円ずれる理由

2工程・平均法の設例です。材料は第1工程の始点で投入し、第2工程では加工費だけが発生します。

区分 第1工程 第2工程
月初仕掛品 100個(50%) 200個(50%)
月初の原価 材料20,000円・加工費5,000円 前工程費57,800円・加工費9,000円
当月投入・受入 900個 800個
当月の原価 材料189,000円・加工費103,000円 加工費181,000円
完成品 800個(第2工程へ) 900個
月末仕掛品 200個(50%) 100個(50%)

第2工程の月初仕掛品の前工程費57,800円は、材料38,200円と第1工程加工費19,600円の合計です。

累加法では、第1工程の単価が材料209円・加工費120円で、800個分の263,200円を第2工程へ振り替えます。第2工程の前工程費単価は(57,800円+263,200円)÷(900個+100個)=321円、加工費単価は(9,000円+181,000円)÷(900個+50個)=200円です。完成品原価は900個×521円=468,900円になります。

通常の非累加法では、材料を(20,000円+189,000円+38,200円)÷(900個+200個+100個)=206円、第1工程加工費を(5,000円+103,000円+19,600円)÷(900個+100個+100個)=116円で按分します。完成品原価は185,400円+104,400円+180,000円=469,800円となり、累加法より900円高くなります。

方法 完成品原価 単位原価 月末仕掛品(両工程計)
累加法 468,900円 521円 95,900円
非累加法(累加法と一致する方法) 468,900円 521円 95,900円
非累加法(通常の計算方式) 469,800円 522円 95,000円

差の原因は、第2工程の月初仕掛品に含まれる第1工程費の単価(1個289円)です。累加法はこれを第2工程の段階で当月受入分(1個329円)と平均しますが、通常の非累加法は第1工程の月初・当月の原価とまとめて1回で平均します。平均する母集団が違うため、月初仕掛品の単価が当月と違う月には結果がずれます。非累加法で得られる内訳(材料185,400円・第1工程加工費104,400円・第2工程加工費180,000円)は、どの工程の原価が上がったかを追うときの材料になります。

加工費工程別総合原価計算(加工費法)が使える条件

基準二六は、原料がすべて最初の工程の始点で投入され、後の工程では加工するだけの場合に、工程別に加工費だけを集計し、それに原料費を加算する方法を認めています。途中の工程で材料を追加投入する工場には使えません。出題区分表では1級の範囲です。

仕損・減損の処理:度外視法と負担先の判定

基準二七の原則と正常・異常の線引き

基準二七は、総合原価計算では仕損の費用を「原則として、特別に仕損費の費目を設けることをしないで、これをその期の完成品と期末仕掛品とに負担させる」と定めています。蒸発・粉散・ガス化・煙化などで原料が減る減損も、仕損に準じて扱います。仕損費を独立に計算せず、完成品や月末仕掛品の原価計算に織り込んで負担させる方法を、検定では「度外視法」と呼びます。計算手順は、完成品のみの負担か、月末仕掛品との両者負担かで異なります。仕損費を一度計算してから負担させる方法が「非度外視法」で、こちらは1級の範囲です。「度外視」という語も基準には出てきません。

この扱いは通常発生する正常な仕損に限られます。基準五(二)1は「異常な仕損、減損、たな卸減耗等」を非原価項目に挙げており、異常仕損費は製品原価に入れません。仕損品に売却価値があれば、基準二八の副産物に準じて評価額を控除します。歩留まりの計算と減損の把握は歩留まりの計算式と工程別集計で扱っています。

設例C:仕損の発生点で完成品単位原価が391円と388円に分かれる計算

検定2級の度外視法では、仕損の発生点と月末仕掛品の加工進捗度を比べて負担先を決めます。月末仕掛品が発生点を通過していれば完成品と月末仕掛品の両者負担、通過していなければ完成品のみ負担です。材料は始点で全量投入し、仕損品の評価額はゼロとします。当月投入1,000個(材料190,000円・加工費167,320円)、完成800個、正常仕損50個、月末仕掛品150個(進捗度60%)、月初仕掛品なしの条件で比べます。

仕損の発生点 負担先 材料単価 加工費単価 月末仕掛品 完成品原価 単位原価
終点(100%) 完成品のみ 190円 178円 44,520円 312,800円 391円
40%の地点 両者負担 200円 188円 46,920円 310,400円 388円

終点発生では仕損50個を分母に入れて単価を出し、仕損分の18,400円を完成品原価に含めます。40%地点の発生では月末仕掛品も発生点を通過しているため、仕損を分母から外し、月末仕掛品にも仕損の負担を配ります。

総合原価計算の仕訳:材料消費・完成品振替・売上原価の計上

単純総合原価計算の仕訳は、仕掛品勘定に原価を集め、完成品総合原価を製品勘定へ振り替える流れです。設例Aの当月分で、加工費302,000円の内訳を直接労務費120,000円・製造間接費182,000円とし、完成品のうち900個を販売した場合は次のとおりです。

取引 借方 貸方
材料の消費 仕掛品 202,000 材料 202,000
直接労務費の消費 仕掛品 120,000 賃金・給料 120,000
製造間接費の配賦 仕掛品 182,000 製造間接費 182,000
完成品の振替 製品 500,000 仕掛品 500,000
販売分の売上原価 売上原価 450,000 製品 450,000

工程別計算の累加法では、工程ごとに仕掛品勘定を分け、前工程の完成品を次工程の仕掛品勘定へ振り替えます。設例Bなら「第2工程仕掛品 263,200/第1工程仕掛品 263,200」です。製造間接費を部門ごとに集計してから配賦する手続は部門別原価計算の手続3段階で説明しています。

総合原価計算の限界:進捗度の見積りと製品ごとの原価の平均化

総合原価計算の利点は、指図書ごとに原価を集めなくてよいため記帳の手間が少なく、月ごとの単位原価を同じ物差しで比べられることです。その代わり、結果の精度は月末仕掛品の加工進捗度の見積りに左右されます。設例Aで、実際は50%の月末仕掛品を別の進捗度と見積もった場合を平均法で計算し直すと次のとおりです。

見積もった進捗度 加工費の換算量 月末仕掛品原価 完成品総合原価 完成品単位原価
40% 80個 64,444円 505,556円 505.6円
50%(正しい値) 100個 70,000円 500,000円 500.0円
60% 120個 75,357円 494,643円 494.6円

進捗度を10ポイント読み違えるだけで、完成品原価は約5,400〜5,600円(約1.1%)動きます。進捗度を現場の勘で毎月50%と置いている工場では、工程の区切りごとに標準時間を決め、月末に仕掛品がどの区切りまで進んだかで進捗度を数える運用に変えるのが先です。

もう一つの限界は、単純総合原価計算では期間の原価を生産量で割るため、同じ工程を流れる製品ごとの手間の差が平均化されることです。仕様ごとに作業時間が大きく違う多品種少量生産では、製品間の原価差を反映せずに一律平均した単位原価を、製品別の採算判断に使うべきではありません。製品の性質で係数を決められるなら等級別、製品群ごとに原価を分けられるなら組別、受注ごとに仕様が違うなら個別原価計算を選びます。工程ごとの実績を製品別原価まで自動で集計する仕組みは、原価管理システムの開発で設計する範囲です。

基準二四(二)の簡便法を使ってよい場面と使うべきでない場面

基準二四(二)は、期末仕掛品の評価に3つの簡便法を認めています。加工費の完成品換算量の計算が困難な場合に加工費をすべて完成品に負担させる方法(4号)、必要な場合に予定原価または正常原価で評価する方法(5号)、期末仕掛品の数量が毎期ほぼ等しい場合に仕掛品を無視する方法(6号)です。

設例Aで6号を使うと、完成品総合原価は当月製造費用の504,000円となり、平均法の500,000円との差は0.8%です。4号は継続適用が前提で、月初仕掛品にも加工費が含まれません。月初仕掛品を材料費38,000円だけとすると、完成品総合原価は38,000円+202,000円+302,000円-40,000円=502,000円で、通常の計算との差は月末と月初の加工費評価額の差(30,000円-28,000円=2,000円)です。

6号の明文上の条件は、期末仕掛品の数量が毎期ほぼ等しいことだけです。数量が同じでも進捗度や単価が動けば原価は変わるため、新製品の立ち上げ月や材料価格が大きく動いた月は、通常の計算による期首・期末仕掛品原価の差額を先に確認します。4号は「換算量の計算が困難」な場合に限った方法で、加工進捗度を測っていないことは4号を使う理由になりません。

日商簿記2級・1級の出題範囲の境界

商工会議所の出題区分表(2022年度適用版)では、総合原価計算の論点が次のように分かれています。2027年度適用版の公表時にも、工業簿記・原価計算の区分は変更なしとされています(出典:日本商工会議所「出題区分表」)。

論点 2級 1級
単純・等級別・組別総合原価計算 ○ ○
平均法・(修正)先入先出法 ○ ○
純粋先入先出法 - ○
工程別計算の累加法 ○ ○
非累加法・加工費法 - ○
正常仕損・減損の度外視法 ○ ○
非度外視法・異常仕損費・副産物・連産品 - ○

2級の受験者は、材料の投入点別の換算量、設例Aの平均法・先入先出法、設例Bの累加法、設例Cの度外視法を押さえたうえで、等級別・組別総合原価計算と記帳を学習します。

よくある質問

総合原価計算と全部原価計算の違いは何ですか?

分類の軸が違います。総合原価計算と個別原価計算は、原価を期間生産量で集計するか指図書で集計するかという集計単位の区分です。全部原価計算と直接原価計算は、固定費を含む全部の製造原価を製品に集計するか、変動費だけを集計するかという範囲の区分です(基準四(三))。基準三〇は総合原価計算で直接原価計算を行う方法も定めています。直接原価計算の損益計算書の作り方は直接原価計算と全部原価計算の違いで扱っています。

組別総合原価計算と等級別総合原価計算の違いは何ですか?

対象の製品が違います。等級別は同じ工程で形状・大きさ・品位だけが違う同種製品に使い、等価係数で原価を按分します(基準二二)。組別は異なる種類の製品を組ごとに連続生産する場合に使い、組直接費を各組に賦課し、組間接費を配賦してから組ごとに総合原価計算を行います(基準二三)。

修正先入先出法とは何ですか?

月初仕掛品が先に完成したとみなして月末仕掛品を当月製造費用だけで評価し、完成品原価は月初仕掛品からの完成分と当月着手分を合算して1つの単位原価で示す方法です。日商簿記2級で「先入先出法」と出題されるのはこの方法です。2つの単位原価を分けて出す純粋先入先出法は1級の範囲です。

異常仕損費はどのように処理しますか?

製品原価に含めず、非原価項目として扱います。基準五(二)1は「異常な仕損、減損、たな卸減耗等」を、異常な状態を原因とする価値の減少として非原価項目に挙げています。正常な仕損だけが完成品と月末仕掛品に負担させる対象です(基準二七)。日商の出題区分表では、異常仕損費と異常減損費の処理は1級の範囲です。

月末仕掛品が毎月ほぼ同じなら計算を省略できますか?

基準二四(二)6により、期末仕掛品の数量が毎期ほぼ等しい場合は、仕掛品を無視して当期製造費用をそのまま完成品総合原価にできます。設例Aのように月初と月末が同じ200個・50%なら、平均法との差は0.8%でした。数量が同じでも単価や進捗度の変化で差が広がるため、省略する前に、通常の計算による期首・期末仕掛品原価の差額を確認してください。

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