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正味売却価額とは?計算式と見積販売直接経費の範囲、商品評価損の仕訳・税務の扱いを基準の条文で解説

正味売却価額とは?計算式と見積販売直接経費の範囲、商品評価損の仕訳・税務の扱いを基準の条文で解説

正味売却価額とは、売価から見積追加製造原価と見積販売直接経費を差し引いた額です。式は「正味売却価額=売価-(見積追加製造原価+見積販売直接経費)」で、売価100円・追加製造原価10円・販売経費5円なら85円になります。期末にこの額が取得原価を下回れば、差額を商品評価損として計上します。ただし、この定義は棚卸資産のものです。固定資産の減損では同じ言葉が「時価-処分費用見込額」を指します。この記事では、企業会計基準第9号と減損の適用指針第6号の2つの定義を項番付きで整理し、見積販売直接経費に入る費用、棚卸減耗損と商品評価損の計算順、税務上の低価法の扱いまでを解説します。

まとめ|正味売却価額の要点(先に結論)

  • 定義は2つ:棚卸資産は「売価-(見積追加製造原価+見積販売直接経費)」(第9号 第5項)、固定資産の減損は「時価-処分費用見込額」(適用指針第6号 第28項)。
  • 見積販売直接経費:運送費・梱包費・販売手数料など、その商品を売るために直接かかる費用です。一般管理費のように売れなくても発生する費用は入れません。
  • 取得原価との関係:低い方を貸借対照表価額にします(第7項)。上回っても評価益は計上しません。
  • 商品評価損の計算:先に棚卸減耗損で数量の不足を落とし、残った実地棚卸数量に(原価-正味売却価額)を掛けます。
  • 計上区分:原則は売上原価、製造に関連し不可避なら製造原価、臨時かつ多額なら特別損失(第17項)。特別損失にした分は洗替え法でも戻し入れません。
  • 正味実現可能価額:旧用語で、意味に相違はないと第33項が明記しています。
  • 税務:低価法を適用していれば、税務上の時価も正味売却価額で計算し、評価減を損金にできます(判定単位は税務の規定による)。届出がなければ法定評価方法の最終仕入原価法による原価法になり、評価損の損金算入は災害・著しい陳腐化などの事実と損金経理が条件です。

正味売却価額の意味|「正味」が指すものと売価との違い

「正味」は、余分なものを除いた中身を指す言葉です。正味売却価額の「正味」は、売れる金額から、売るため・完成させるために出ていく費用を差し引いた後に手元へ残る額を意味します。

売価との違い|売価は起点、正味売却価額は控除後の額

売価は売却市場で売れると見込まれる価格そのもので、正味売却価額はそこから費用を引いた後の額です。第5項は売価を「購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価」としており、仕入値ではなく売り先での価格を見ます。たとえば店頭売価1,000円の商品でも、配送費120円と決済・モール手数料80円が販売ごとにかかるなら、正味売却価額は800円です。取得原価が850円なら、売価だけを見ると利益が出そうでも、正味では50円回収できないと判定します。

正味価格・正味販売価格・正味原価との関係|基準上の用語は「正味売却価額」

「正味売却価格」「正味販売価格」「正味売却額」「正味原価」「正味単価」という表記も見かけますが、企業会計基準第9号の本文にはどれも出てこず、使われている用語は「正味売却価額」だけです。資料によって意味が異なることがあるため、同じものと決めつけずに定義を確認します。取引の現場でいう「正味単価」「正味価格」は値引きや割戻しを差し引いた実際の取引単価を指すことが多く、会計上の評価額である正味売却価額とは別物です。仕訳や注記に書くときは「正味売却価額」にそろえます。

会計基準が定める2つの定義|棚卸資産と固定資産減損の控除費用の違い

日本の会計基準には、適用場面の異なる2つの定義があります。発想はどちらも「売って手元に残る額」ですが、売価から何を引くかが違います。

比較軸 棚卸資産 固定資産の減損
根拠 企業会計基準第9号 第5項 適用指針第6号 第28項
計算式 売価−(追加製造原価+販売直接経費) 時価−処分費用見込額
控除する費用 完成までの追加原価・販売直接経費 仲介手数料・解体費などの処分費用
比べる相手 取得原価(低い方を採用) 使用価値(高い方が回収可能価額)
損失の計上 原価を下回れば商品評価損 認識判定後に減損損失

棚卸資産の定義は企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」の第5項で、「売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの」とされています。減損側の定義は後半の「固定資産の減損での使い方」で扱います。実務では「いま扱っているのは在庫か固定資産か」を先に確定させてから式を選びます。

計算式の3要素|見積販売直接経費と見積追加製造原価の範囲

正味売却価額 = 売価 -(見積追加製造原価 + 見積販売直接経費)

要素は売価・見積追加製造原価・見積販売直接経費の3つです。原価計算の枠組みは個別原価計算の原価集計と仕訳も参考になります。

見積販売直接経費とは|運送費・梱包費・販売手数料など販売に直結する費用

見積販売直接経費とは、その商品を販売するために直接かかると見込まれる費用です。運送費、梱包費、荷役費、販売手数料、ECモールの決済・出店手数料のうち売上連動分などが該当します。判定の目安は「その商品を売らなければ発生しない費用か」で、本社の一般管理費、全社の広告宣伝費、倉庫の固定賃料のように売れても売れなくても出ていく費用は入れません。金額は直近の運送契約や手数料率で見積もります。たとえば1個あたり送料100円なら、売価500円の商品では売価の20%、売価1,000円の商品では10%にあたります。定額の送料と売上連動の手数料を分けて持っておくと、売価を変えたときにも控除額をすぐ更新できます。

見積追加製造原価とは|仕掛品を完成させるために「これから」かかる原価

見積追加製造原価とは、仕掛品や半製品を完成品にするために、これから追加でかかる材料費や加工費です。すでに投入した原価ではなく、完成までの残りのコストを見積もります。そのまま販売できる完成品や仕入商品では通常生じず、仕掛品・半製品のほか、完成後の製品売価から原材料を評価する場合(第50項)に登場します。

計算例|仕掛品1個あたりの正味売却価額と評価損の判定

仕掛品1個の取得原価が900円、完成後の見込売価が1,000円、完成までの追加加工費が150円、運送費と手数料が合わせて50円とします。正味売却価額は 1,000 -(150 + 50)= 800円です。取得原価900円が上回っているため、差額100円を評価損として計上し、貸借対照表価額は800円になります。

正味売却価額がマイナスの場合|帳簿価額の切下げ限度と残る損失(第44項)

追加製造原価と販売直接経費の合計が売価を超えると、正味売却価額はマイナスになります。第44項の例では、売価100、見積追加製造原価と見積販売直接経費の合計120、仕掛品の帳簿価額30で、正味売却価額はマイナス20、本来の簿価切下額は50です。しかし帳簿価額は30しかないため、ゼロまで切り下げても残る20の損失は棚卸資産の評価では認識されません。第44項は、この部分を反映させるため引当金で損失を計上することがあるとしたうえで、企業会計原則注解(注18)との関連で別途扱うべき問題としています。赤字受注の仕掛品を抱えるときは、在庫の評価だけで損失が出し切れているか確認が要ります。

売価の決め方|市場価格がないとき・期末に価格が乱れたとき

売却市場で市場価格が観察できないときは、合理的に算定された価額を売価とし、これには期末前後での販売実績に基づく価額や、契約で取り決めた一定の売価を用いる場合を含みます(第8項)。期末だけ突発的に売価が乱れた場合、第43項は期末時点ではなく期末付近の合理的な期間の平均的な売価に基づく正味売却価額によることが適当としています。

複数の売却市場に参加し得るときは実際に販売できると見込まれる売価を使い、市場ごとに売価が異なり在庫を市場別に区分できないときは、販売比率に基づく加重平均売価等によります(第11項)。国内と輸出の両方に売る商品の扱いはここで決まります。また第48項は、収益性が低下していないことが明らかで、事務負担をかけて判断するまでもない場合には、正味売却価額を見積る必要はないとしています。見積りを省略できるのは、収益性が低下していないことが明らかな品目です。粗利率が安定していても、運送費や手数料の値上がりで販売直接経費が増えていれば回収できないことがあるため、売価だけでなく控除する費用の変化も見て判断します。

取得原価(簿価)との比較|低い方を貸借対照表価額にする低価基準

取得原価は実際に支払った過去のコスト、正味売却価額は将来売って回収できる見込み額です。第7項は、通常の販売目的で保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末の正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、差額は当期の費用として処理すると定めています。

評価損は計上するが評価益は計上しない|原価より高いときの扱い

正味売却価額が原価より高くても、帳簿価額は切り上げず取得原価のまま据え置きます。原価80円の商品の正味売却価額が95円なら、評価損も評価益も計上しません。70円に下がったときだけ、差額10円を評価損にします。実現していない利益は載せず、収益性の低下だけを先に反映するという非対称なルールです。

判定の単位は原則として個別品目ごと(第12項)

収益性の低下の判断と簿価切下げは、原則として個別品目ごとに行います。複数の棚卸資産を一括りにした単位が適切と判断されるときは、継続適用を条件にその単位で判定できます(第12項)。売れ筋と不動在庫を混ぜて平均すると評価損が消えるため、括り方の合理性が問われます。

商品評価損の計算と仕訳|棚卸減耗損との順序と売上原価への振替

期末に帳簿の数量と実地の数量がずれていると、計算の順序で評価損の額が変わります。先に棚卸減耗損で数量の不足分を原価で落とし、残った実地棚卸数量だけに(原価-正味売却価額)を掛けます。帳簿数量と実地数量のずれの原因と許容範囲は棚卸差異の原因特定と許容範囲の決め方で扱っています。

設例|帳簿10個・実地9個・原価@100円・正味売却価額@80円

項目 計算 金額
帳簿棚卸高 @100円 × 10個 1,000円
棚卸減耗損 @100円 ×(10個 − 9個) 100円
商品評価損 (@100円 − @80円)× 9個 180円
貸借対照表価額 @80円 × 9個 720円

評価損を10個分の200円で計算するのは誤りです。なくなった1個は減耗損として原価100円で落とし済みなので、評価損の対象は手元に残る9個だけです。

仕訳例|評価損の計上と売上原価への振替(三分法)

(借方)棚卸減耗損 100円 /(貸方)繰越商品 100円
(借方)商品評価損 180円 /(貸方)繰越商品 180円
(借方)仕入 180円 /(貸方)商品評価損 180円

3行目は、評価損を売上原価に含めるための振替です。後述する特別損失に区分する場合は、この振替を行わずに独立の科目として表示します。期末商品棚卸高を含む決算整理の全体は決算整理仕訳の主な9項目と期末商品棚卸高の設例にまとめています。

計上区分と戻入れ|売上原価・製造原価・特別損失の3分岐(第17項・第14項)

計上区分の判定|原則は売上原価、臨時かつ多額なら特別損失

第17項は、収益性の低下による簿価切下額を売上原価とし、製造に関連し不可避的に発生すると認められるときは製造原価とすると定めています。臨時の事象に起因し、かつ多額であるときは特別損失です。条文は臨時の事象の例として「重要な事業部門の廃止」と「災害損失の発生」を挙げています。例年より値下がりが大きかったというだけでは、これらと同じ性質の臨時の事象とはいえません。

洗替え法と切放し法は選択適用できる|特別損失分は戻入れ禁止

前期の簿価切下額を当期に戻し入れる洗替え法と、戻し入れない切放し法は、棚卸資産の種類ごとに選択適用でき、売価下落の要因を区分把握できるなら物理的劣化・経済的劣化・市場の需給変化の要因ごとにも選べます。いったん採用した方法は原則として継続適用します(第14項)。「日本基準では戻入れできない」という説明は、切放し法を採った場合の話です。ただし第17項は、特別損失に計上した簿価切下額について「洗替え法を適用していても(第14項参照)、当該簿価切下額の戻入れを行ってはならない」としています。

開示は注記か独立掲記(第18項)

簿価切下額は、注記するか、売上原価等の内訳項目として独立掲記して示します。重要性が乏しい場合はこの限りではありません(第18項)。

正味売却価額が見積れないときの代替|再調達原価・処分見込価額・規則的切下げ

再調達原価による代用|価額の連動と継続適用の条件(第10項・第50項)

再調達原価は、購買市場の時価に購入付随費用を加えた額です(第6項)。第10項は、製造業の原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額がそれに歩調を合わせて動くと想定される場合に、継続適用を条件として再調達原価(最終仕入原価を含む)によることを認めています。第50項は、把握しやすいという点は原材料等に限らず他の購入品でも同様としています。どの資産でも、正味売却価額が再調達原価に連動して動くと説明できることが使える条件です。

滞留在庫・処分見込在庫|処分見込価額と回転期間による切下げ(第9項)

営業循環過程から外れた滞留または処分見込等の棚卸資産で、合理的な価額の算定が難しい場合は、帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)まで切り下げる方法か、一定の回転期間を超えたら規則的に切り下げる方法で、収益性の低下を反映します(第9項)。回転期間で切り下げるには、採用したルールに応じて入庫ロットごとの在庫年齢や滞留期間を把握する必要があります。同じ品目の一部が動いているだけで古いロットが隠れることもあるため、受払の記録が表計算で分散している会社は、在庫管理システムの開発で滞留日数を自動集計できる状態にしておくと期末の作業が短くなります。

売価還元法を採っている場合|低価法原価率なら切下げ済みとみなせる(第13項)

売価還元法でも、期末の正味売却価額が帳簿価額より下落していれば正味売却価額で評価します。ただし値下額等が売価合計額に適切に反映されている場合、値下額と値下取消額を除外した原価率(売価還元低価法の原価率)で求めた帳簿価額は、簿価切下額を反映したものとみなせます(第13項)。使っている原価率によって追加の切下げの要否が変わるため、二重計上に注意します。

税務での扱い|低価法の選定届出と評価損が損金になる条件

会計で計上した評価損が、そのまま法人税の損金になるとは限りません。分かれ目は、税務上の棚卸資産の評価方法として低価法を適用しているかどうかです。

状況 税務上の評価方法 評価損の損金算入
低価法を選定・届出済み 低価法(施行令28条1項2号) 税務上の判定で評価減が損金
原価法(届出なしを含む) 原価法(届出なしは施行令31条) 68条の事実+損金経理が必要

法人税法施行令第28条1項2号の低価法は、原価法による評価額と期末の価額のうち低い方を評価額とする方法です。評価方法は事業の種類ごと・棚卸資産の区分ごとに選び、所轄税務署長へ書面で届け出ます(第29条)。すでに原価法を届け出ている会社や届出をしていない会社が低価法へ移るには、新しい方法を採用する事業年度開始の日の前日までに変更承認の申請書を出す必要があります(第30条)。届け出なかった場合の法定評価方法は、最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法です(第31条)。

低価法の「期末の価額」について、法人税基本通達5-2-11は、期末に売却するとした場合に通常付される価額とし、注書きで売却可能価額から見積追加製造原価(未完成品に限る)と見積販売直接経費を控除した正味売却価額によることに留意するとしています。税務の時価も正味売却価額で考える点は会計と共通です。ただし低価の判定は税務上の取得価額と種類等の単位で行うため(通達5-2-9・5-2-10)、会計上の評価減がそのまま損金の額と一致するとは限りません。

原価法のままの会社が棚卸資産の評価損を損金にするには、施行令第68条1項1号の物損等の事実(災害により著しく損傷したこと、著しく陳腐化したこと、これらに準ずる特別の事実)により価額が帳簿価額を下回り、評価換えをして損金経理で帳簿価額を減額することが必要です(同条は更生手続に準ずる法的整理の事実も別に定めています)。条文に「時価が何%下がったら」という割合の基準はありません。会計上は評価損を計上しても、この事実に当たらない部分は申告書で加算することになります。

正味売却価額・再調達原価・時価の違い一覧

評価額 見る市場 費用の扱い 主な使用場面
正味売却価額 売却市場 在庫は追加原価・販売経費、減損は処分費用を控除 棚卸資産の低価基準、減損
再調達原価 購買市場 購入付随費用を加算 原材料等の代替評価
時価 市場一般 控除も加算もしない 公正な評価額の基礎

時価は「公正な評価額をいい、市場価格に基づく価額をいう。市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額を公正な評価額とする」と定義されています(第33-2項)。正味売却価額は売却市場の時価から費用を引いた額、再調達原価は購買市場の時価に費用を足した額です。

正味実現可能価額との違い|用語変更だけで意味に相違なし(第33項)

第33項は、連続意見書 第四で用いられていた正味実現可能価額という用語に代えて「正味売却価額」を用いるとし、理由として「実現可能という用語は不明確であるという意見があること」と、減損会計基準で正味売却価額を用いていることとの整合性を挙げ、「これらの意味するところに相違はない」としています。古い教材で正味実現可能価額と書かれていても、そのまま読み替えて構いません。IFRSのIAS第2号は英語でnet realisable value(NRV)の語を使っているため、連結や国際基準の資料ではNRVの表記に出会います。

固定資産の減損での使い方|回収可能価額の判定と算定を省略できる場面

適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」の第28項は、回収可能価額を「資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額」とし、正味売却価額は時価から処分費用見込額を控除して求めるとしています。使用価値は、資産を使い続けて得られる将来キャッシュ・フローの現在価値です。

減損では正味売却価額を毎回算定しなくてよい|第28項の省略条件

第28項には「通常、使用価値は正味売却価額より高いと考えられるため、減損損失の測定において、明らかに正味売却価額が高いと想定される場合や処分がすぐに予定されている場合などを除き、必ずしも現在の正味売却価額を算定する必要はない」とあります。この省略は、減損損失の測定で使う現在の正味売却価額についての扱いです。認識判定の割引前将来キャッシュ・フローに含める、使用後の処分による収入の見積りまで省略できるわけではありません。

土地・不動産の時価|鑑定評価と重要性が乏しい場合の指標

不動産の時価は国土交通省の「不動産鑑定評価基準」に基づいて算定し、自社での合理的な見積りが困難な場合は不動産鑑定士の鑑定評価額を用いることができます。重要性が乏しい不動産については、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標を合理的に算定された価額とみなせます(第28項(2)①なお書き)。適用指針が例示する指標は、公示価格、都道府県基準地価格、路線価による相続税評価額、固定資産税評価額です。重要性がある土地に固定資産税評価額をそのまま使うことはできません。なお土地そのものは減価償却しない資産で、その根拠は土地が減価償却できない理由で解説しています。

減損の仕訳例|帳簿価額1,000円・正味売却価額700円・使用価値650円

減損の兆候があり、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額1,000円を下回るため減損損失を認識すると判定済みとします(適用指針第18項)。このとき回収可能価額は高い方の700円で、帳簿価額との差額300円が減損損失です。

(借方)減損損失 300円 /(貸方)機械設備 300円

「固定資産の減損に係る会計基準」四 2 は「減損損失は、原則として、特別損失とする」と定めています。リース資産や資産計上したソフトウェアも減損の対象になり得るため、リース会計の処理やソフトウェア資産化の会計基準上の位置づけもあわせて確認しておくと判定漏れを防げます。

よくある質問

正味売却価額とは何ですか?

企業会計基準第9号 第5項では、売価から完成までの見積追加製造原価と見積販売直接経費を控除した額を指します。売って手元に残ると見込まれる額で、期末に取得原価と比べて低い方で在庫を評価します。

見積販売直接経費には何が含まれますか?

運送費、梱包費、荷役費、販売手数料など、その商品を売るために直接かかる費用です。たとえば売価1,000円で販売手数料率が5%なら、50円を見積販売直接経費に含めます。一般管理費、全社の広告宣伝費、倉庫の固定賃料のように、売れなくても発生する費用は含めません。

正味売却価額と正味実現可能価額の違いは?

違いはありません。企業会計基準第9号 第33項が、旧用語の正味実現可能価額に代えて正味売却価額を用いるとし、「これらの意味するところに相違はない」と明記しています。

正味売却価額が原価より高いときはどうなりますか?

過去に評価損を計上していなければ、取得原価のまま据え置き、評価益は計上しません。前期に評価損を計上している場合は、第14項で選んだ洗替え法なら戻し入れ、切放し法なら戻し入れません。

正味販売価格とは何ですか?

会計基準上の用語ではなく、資料によって意味が異なります。棚卸資産の評価額の意味で使われていれば正味売却価額のことですが、取引の現場では値引き後の販売単価を指す場合もあります。企業会計基準第9号の用語は「正味売却価額」なので、仕訳や注記ではこちらにそろえます。

日本基準では簿価切下額の戻入れはできないのですか?

できます。第14項により洗替え法を選べば戻し入れます。ただし臨時かつ多額として特別損失に計上した簿価切下額は、洗替え法でも戻入れが禁止されています(第17項)。

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