タクシー運転手の確定申告は、法人タクシーに雇われているか、個人タクシーとして営業しているかで別物になります。雇用されている運転手は年末調整で終わるのが原則で、申告が要るのは条件に当てはまったときと、制服などの自己負担を特定支出控除で引きたいときです。個人タクシーは事業所得に基づいて毎年申告の要否を判定し、事業用車両の耐用年数、個人事業税、インボイスの扱いなど、タクシー業に固有の論点があります。この記事では令和8年分(2026年分、2027年2月16日〜3月15日に申告)の数値と条文で、それぞれの判断基準を整理します。
まとめ:タクシー運転手の確定申告の要点(令和8年分)
- 法人タクシーの運転手は、給与収入2,000万円超、給与以外の所得20万円超などの場合に確定申告が必要です。「年収2,000万円」は給与所得者の基準で、個人タクシーの申告義務とは関係がありません。
- 制服や研修費を自己負担している法人の運転手は、会社の証明を受ければ、給与所得控除額の2分の1を超える部分を特定支出控除として差し引けます。
- 個人タクシーは、手数料を引かれた入金額でなく乗客が払った運賃の総額を売上に計上します。
- 個人タクシーの営業車両の法定耐用年数は、総排気量2リットル以下の小型車が3年、3リットル以上の大型乗用車が5年、その他が4年です。自家用の普通自動車の6年は使いません。
- 令和8年分の青色申告特別控除は、e-Taxか優良な電子帳簿で65万円です。令和9年分からは65万円にe-Taxが必須になります。
- 個人タクシーは運送業として個人事業税の第1種事業(税率5%)に当たり、事業主控除290万円を超える所得に課税されます。
- タクシーはインボイスの公共交通機関特例の対象外です。登録した個人タクシーは、課税事業者から求められた場合、3万円未満の乗車でも簡易インボイスなどを交付する義務があります。
法人タクシーの運転手が確定申告を要する条件
タクシー会社に雇用されている運転手の収入は給与所得です。歩合給や深夜手当が月ごとに変動しても、会社が毎月源泉徴収し、年末調整で1年分の税額を精算します。給与所得者に確定申告が必要になる主な条件は、次の3つです(所得税法120条・121条)。還付申告になる場合など、申告義務が生じない例外もあります。
- その年の給与収入が2,000万円を超える(年末調整の対象外になるため)
- 給与所得と退職所得以外の所得(副業の報酬など)の合計が20万円を超える
- 2か所以上から給与を受け、年末調整されなかった給与収入と給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える。ただし、給与収入の合計から雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の所得控除を引いた額が150万円以下で、給与・退職所得以外の所得が20万円以下なら申告は不要
このほか、医療費控除を受ける、ふるさと納税で6自治体以上に寄附した、住宅ローン控除の1年目、といった場合は還付を受けるための申告になります。副業の所得が20万円以下で所得税の申告が不要でも、住民税には20万円の申告不要ルールがありません。所得税の確定申告をしない場合、給与以外の所得については原則として市区町村への住民税の申告が必要です。医療費控除などのために所得税の確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も含めて申告します。
年収2,000万円基準と個人タクシーの申告義務の違い
「個人タクシーも年収2,000万円までは申告不要」という理解は誤りです。2,000万円は給与収入に対する年末調整の上限で、個人タクシーの申告義務とは関係がありません。個人タクシーの運賃収入は給与ではなく事業所得なので、売上が2,000万円未満でも、所得から所得控除を引いて税額が出れば申告義務があります。個人タクシーで金額の境目になるのは、消費税の納税義務を判定する基準期間(前々年)の課税売上高1,000万円です。
制服・研修費の自己負担と特定支出控除
法人タクシーの運転手は、会社員なので個人事業主のような経費計上はできません。収入に応じた給与所得控除が経費の代わりで、年収400万円なら給与所得控除は124万円です。自己負担が給与所得控除額そのものを超えていなくても使えるのが、特定支出控除です。国税庁タックスアンサーNo.1415(令和8年4月1日現在法令等)によると、特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超えると、その超える部分を給与所得控除後の金額から差し引けます(所得税法57条の2)。年収400万円なら、124万円の半分の62万円を超えた部分です。
タクシー乗務員に関係するのは、職務に直接必要な研修費、資格取得費(第二種運転免許など)、勤務必要経費のうち制服など勤務場所で着用が必要な衣服費です。勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)は合計65万円が上限です。職務との関係などについて会社の証明が必要ですが、研修費・資格取得費のうち厚生労働大臣が指定する教育訓練給付指定講座の受講に係る部分は、キャリアコンサルタントの証明でも認められます。会社から補てんされて課税されていない部分は含みません。歩合給の運転手でも、雇用契約で働いている限り所得は給与所得で、青色申告は選べません。営業車の燃料代や洗車用品代は、会社の証明だけで特定支出になるものではありません。研修費や制服の購入費など、法定の対象に当たる支出について、まず会社に証明書(給与所得者の特定支出に関する証明書)の発行を相談します。
副業やライドシェアで運転する場合の所得区分
本業のかたわら別のタクシー会社で運転する、あるいは日本版ライドシェア(自家用車活用事業)でタクシー事業者の管理のもと運転する場合は、報酬の受け取り方で所得区分が決まります。国土交通省の制度概要では、日本版ライドシェアのドライバーはタクシー事業者が雇用する者とされています。給与として源泉徴収票が出るなら給与所得で、上の3の「2か所給与」の判定になります。日本版ライドシェア以外の副業で、雇用によらない業務の対価を受ける場合は、その実態に応じて事業所得か雑所得となり、上の2の20万円基準で申告の要否を判断します。2か所給与の還付の仕組みは「ダブルワークの確定申告|バイト掛け持ちで乙欄の所得税が戻る条件と還付の時期【令和8年分】」、報酬の区分は「副業の雑所得はいくらから確定申告?20万円ルールと控除・事業所得の区分【令和8年分】」で詳しく扱っています。
ライドシェアで使う自分の自家用車(白ナンバー)は、事業所得や雑所得で減価償却する場合でも、下で説明する運送事業用の3年は使えません。耐用年数通達2-5-6の「運送事業用」は、道路運送法4条の許可を受けた事業者が自動車運送事業用として登録した車両に限られるためです。自家用の普通自動車として6年で償却し、私用分は按分します。
個人タクシーの売上計上と申告義務の判定
運賃の総額計上と決済手数料の経費処理
個人タクシーの売上で誤りやすいのは、キャッシュレス決済の計上です。配車アプリ、クレジットカード、タクシーチケットの売上は、手数料を差し引いた金額が口座に入ります。この入金額を売上にすると、売上が過少になり、日報やメーターの記録とも一致しません。乗客が支払った運賃の総額を売上に計上し、差額は支払手数料として経費に計上します。たとえば運賃5,000円から手数料200円を引かれて4,800円が入金された場合、売上は5,000円、支払手数料は200円です。迎車料金やキャンセル料、乗客から受け取ったチップも事業の収入に含めます。
日次では、メーターの記録を現金・カード・アプリ・チケットの決済手段別に日報へ分けて書き、月末に入金明細と突き合わせます。決済手段ごとの入金サイクルがずれるため、月をまたいだ未入金は売掛金で管理すると照合できます。
基礎控除104万円と申告が必要になるライン
個人タクシーは、事業所得などの合計から所得控除を差し引いて所得税額が出る場合に確定申告が必要です。令和8年分の基礎控除は、合計所得金額489万円以下で104万円、489万円超655万円以下で67万円、655万円超2,350万円以下で62万円です(租税特別措置法41条の16の2・所得税法86条)。令和7年分の58万円〜95万円から変わっているため、前年の申告書を写すと控除額を誤ります。
税額が出ない年でも、申告しておく意味はあります。青色申告の純損失は、損失が生じた年分の申告に加え、その後も連続して確定申告書を提出することで、原則として翌年以後3年間繰り越せます(所得税法70条)。住民税や国民健康保険料の算定にも申告内容が使われます。
個人タクシーの経費と事業用車両の減価償却
経費にできるのは、タクシー営業のために支出したものです。主な項目を勘定科目とあわせて整理します。
| 支出 | 勘定科目の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| LPG・ガソリン代 | 車両費 | 私用走行分は按分 |
| 車検・整備・タイヤ交換 | 修繕費 | 価値を高める改造は資産計上 |
| 任意保険・自賠責保険 | 損害保険料 | 私用があれば按分 |
| 自動車税・重量税・個人事業税 | 租税公課 | 所得税・住民税は経費不可 |
| 配車アプリ・カード決済手数料 | 支払手数料 | 売上は総額で計上 |
| 個人タクシー協会・組合費 | 諸会費 | 事業関連の会費のみ |
| 車庫の賃料 | 地代家賃 | 自宅兼用は按分 |
| 車両・メーター・ドライブレコーダー | 減価償却費 | 取得価額と耐用年数で償却 |
国民健康保険料や国民年金保険料は経費ではなく社会保険料控除で差し引きます。経費と所得控除のどちらで引くかの違いは「個人事業主の経費と控除の違い|1万円で減る税金と令和8年分の所得控除16種」で比較しています。
事業用車両の耐用年数:小型車3年・その他4年・大型乗用車5年
一般に「普通自動車の耐用年数は6年」と紹介されますが、これは運送事業用以外の自動車の年数です。減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一には「運送事業用、貸自動車業用又は自動車教習所用の車両及び運搬具」という区分が別にあります。耐用年数の適用等に関する取扱通達2-5-6は、この「運送事業用」を、道路運送法4条の許可を受けた者が自動車運送事業の用に供するものとして登録した車両と定めています。個人タクシーは同条の許可を受けて営業するため、営業車両はこちらの年数を使います。
| 運送事業用の自動車の区分 | 法定耐用年数 | 定額法の償却率 |
|---|---|---|
| 小型車(総排気量2リットル以下) | 3年 | 0.334 |
| 大型乗用車(総排気量3リットル以上) | 5年 | 0.200 |
| その他(2リットル超3リットル未満) | 4年 | 0.250 |
| (参考)運送事業用以外の普通自動車 | 6年 | 0.167 |
総排気量は車検証の記載で確認します。個人事業主の償却方法は、届出をしなければ定額法です。たとえば取得価額360万円の小型車を1月から営業に使えば、年間の償却費は360万円×0.334=120万2,400円です。誤って6年で計算すると初年の償却費は60万1,200円となり、正しい3年の計算より60万1,200円少なくなります。耐用年数の違いは取得価額を経費に配分する時期の違いであり、償却総額が増えるわけではありません。年の途中から使い始めた場合は、使用した月数分(12分の月数)だけ計上します。省令別表の引き方と資産ごとの年数は「減価償却の耐用年数とは?省令別表の引き方と主な資産の年数、中古資産と改正時の台帳管理を解説」にまとめています。
中古車は、残りの使用可能期間を見積もるのが難しければ簡便法を使えます。ただし、事業に使うための資本的支出が中古車の取得価額の50%を超える場合は、簡便法を使えません。法定耐用年数の一部を経過した資産は「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」、全部を経過した資産は「法定耐用年数×20%」で、1年未満の端数は切り捨て、2年に満たなければ2年です(同省令3条1項2号)。法定耐用年数が3年の小型車は、どちらの式でも2年になります。
車両に常時搭載するメーターなどは、耐用年数通達2-5-1により原則として車両と一括して耐用年数を適用します。車両と別の資産として判定できる少額の設備については、一定の要件を満たす青色申告者なら、少額減価償却資産の特例により、取得して事業に使い始めた年に取得価額を必要経費に算入できます。令和8年4月1日以後に取得したものは取得価額40万円未満、それより前は30万円未満が対象で、年間の合計300万円が上限です(租税特別措置法28条の2)。
私用にも使う車両・携帯電話の家事按分
営業車両を休日に私用で使う、携帯電話を私用と兼ねている、といった支出は、業務に使った部分だけを経費にします(所得税法施行令96条)。車両関係は日報の営業走行距離と総走行距離の比率、車庫は事業用と私用の使用面積や使用実態など、支出の性質に合う基準で按分し、計算の根拠を残します。営業専用車両を休業日に保管するための費用まで、休業日という理由だけで私用分にする必要はありません。白色申告でも、業務に必要な部分を明確に区分できれば、その割合が50%以下でも必要経費に算入できます(所得税基本通達45-2)。青色申告では取引の記録から業務に直接必要だったと明らかにできる部分を経費にできます。
個人事業税と営業用車の自動車税
個人タクシーは、所得税とは別に都道府県の個人事業税がかかります。地方税法72条の2の第1種事業に「運送業」があり、税率は5%です。大阪府の個人事業税の案内のとおり、事業所得から年290万円の事業主控除などを引いた残りに課税され、青色申告特別控除は差し引けません。年の途中で開業・廃業した場合、事業主控除は事業を行った月数による月割りになります。所得税の確定申告書を出していれば個人事業税の申告は原則不要です。大阪府の案内では、8月に届く納税通知書に第1期と第2期の納付書が同封され、原則として8月と11月の2回で納めます(年税額1万円以下は8月に全額)。たとえば青色申告特別控除前の事業所得が450万円なら、(450万円-290万円)×5%=8万円です。納めた個人事業税は、納税通知を受けた年の租税公課として経費になります。
営業車両(緑ナンバー)の自動車税は、自家用より低い営業用の税率です。令和8年4月1日から「自動車税種別割」は「自動車税」に名称が変更されています。東京都主税局の税率表では、乗用車の営業用の年税額は総排気量1リットル超1.5リットル以下8,500円、1.5リットル超2リットル以下9,500円で、自家用(令和元年10月1日以後の初回新規登録)の1リットル超1.5リットル以下30,500円・1.5リットル超2リットル以下36,000円の3割に満たない金額です(グリーン化特例を受けない場合)。休日に私用で使っていても、営業用として登録した車両の税額はこの税率で、経費にするときは車両費と同じ割合で按分します。
個人タクシーの青色申告|控除額と届出期限
青色申告特別控除65万円の要件と令和9年分の改正
令和8年分の青色申告特別控除は、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告すれば55万円、さらに期限内にe-Taxで申告するか、仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿として備え付け・保存し、原則として必要な届出書を申告期限までに提出すれば、最高65万円です(国税庁タックスアンサーNo.2072)。簡易な記帳の場合や期限後の申告では10万円になります。
令和9年分からは制度が変わります。65万円の控除はe-Taxでの申告が必須要件になり、55万円の区分はなくなります。e-Taxでの申告に加え、請求書データ等との自動連携や訂正削除履歴の記録など、75万円控除用の要件を満たす電子帳簿の作成・保存等を行うと最高75万円です(租税特別措置法25条の2・令和9年分以後)。簡易な記帳の10万円控除も、前々年の事業所得の収入金額が1,000万円を超える人は受けられなくなります(国税庁「令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?」)。紙の申告書と優良な電子帳簿の組み合わせで現在65万円を受けている人は、令和9年分から控除が大きく減るため、e-Taxへの切り替えを前提に準備します。スマートフォンでの申告方法は「e-Taxのスマホ対応機種一覧はどこ?Android・iPhoneの条件と確定申告のやり方【2026年10月】」にまとめています。
開業届・青色申告承認申請書・専従者給与の届出期限
| 書類 | 提出期限 |
|---|---|
| 個人事業の開業届出書 | 開業した年分の確定申告期限まで |
| 青色申告承認申請書 | 適用を受ける年の3月15日まで |
| (1月16日以後に開業した場合) | 開業日から2か月以内 |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 適用を受ける年の3月15日まで |
| (1月16日以後に開業・専従者が生じた場合) | その日から2か月以内 |
開業届の期限は、令和8年1月1日から「開業の日から1か月以内」が「その年分の確定申告期限まで」に改正されています(所得税法229条)。一方、青色申告承認申請書の期限は変わっていないため、開業届だけ後回しにしても、青色申告は期限までに申請しておかないとその年は白色申告になります。配偶者に経理や配車の受付を任せて給与を払う場合の要件は「専従者給与とは?要件・届出といくらまで経費になるか、配偶者控除との損得【令和8年分】」を参照してください。
個人タクシーのインボイス対応と消費税
タクシー運賃の公共交通機関特例の適用除外
インボイス制度には、3万円未満の公共交通機関の運賃についてインボイスの交付義務を免除する特例があります。ただし対象は、船舶(一般旅客定期航路事業など)、路線バス(一般乗合旅客自動車運送事業)、鉄道、軌道による旅客の運送に限られます(消費税法施行令70条の9第2項1号)。タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業)は含まれません。
その代わり、タクシー業は相手方の氏名や名称を省略できる適格簡易請求書(簡易インボイス)を交付できる事業に指定されています(同施行令70条の11第2号)。インボイス発行事業者に登録した個人タクシーは、乗車ごとに発行者の氏名または名称・登録番号・取引年月日・取引内容(タクシー運賃)・税率ごとの税込運賃・適用税率または消費税額を記載したレシートや領収書を交付できるよう、メーターやプリンターの設定を確認します。登録番号の構成は「インボイス登録番号と法人番号の違い|個人事業主の13桁・マイナンバーとの関係と照合手順」で説明しています。
個人事業者の2割特例の終了と令和9年分からの3割特例
免税事業者からインボイス登録で課税事業者になった個人は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であるなどの適用要件を満たせば、令和8年分まで2割特例を使えます。基準期間や特定期間の売上などにより、登録がなくても課税事業者になる年は対象外です。令和9年分と令和10年分は、個人事業者に限り売上税額の3割を納める3割特例に移ります。簡易課税を選ぶ場合、タクシー業は第五種事業でみなし仕入率は50%です。
登録しない場合、一般課税の法人の乗客は、少額特例や出張旅費等特例などが適用される場合を除き、所定の帳簿と請求書等を保存して仕入税額控除の経過措置を使うことになります。控除できる割合は令和8年9月30日までの80%から、10月1日以後は70%に下がっています。法人需要の多い地域で営業するかどうかが登録の判断材料になります。売上規模ごとの納税額の計算は「個人事業主が売上1000万円を超えたら消費税はいくら?納税開始は2年後・2割特例は令和8年分まで」で試算しています。
個人タクシーの確定申告のやり方と提出期限
この章の日程は所得税のもので、インボイス登録などで消費税の課税事業者になっている人は、消費税の申告・納付を3月31日までに別に行います。個人タクシーの申告で作る書類は、確定申告書(第一表・第二表)と、青色申告なら青色申告決算書、白色申告なら収支内訳書です。決算書の損益計算書で運賃収入の総額と経費を集計し、所得金額を第一表へ移します。第一表(令和7年分以降用の様式)では、事業の営業等の収入を「ア」欄に、所得を「①」欄に書きます。法人タクシーの運転手が特定支出控除や医療費控除で申告する場合は決算書は不要で、源泉徴収票の支払金額を第一表の給与の収入金額欄に書き、特定支出控除なら明細書と給与の支払者または対象となる教育訓練についてのキャリアコンサルタントの証明書を添付し、支出の事実と金額を証する書類も添付または提示します。
| 項目 | 令和8年分の日付・内容 |
|---|---|
| 申告期間 | 2027年2月16日(火)〜3月15日(月) |
| 納付期限 | 2027年3月15日(月) |
| 消費税の申告・納付期限(課税事業者) | 2027年3月31日(水) |
| 振替納税の引落日 | 2027年4月中旬〜下旬(日付は国税庁が確定次第掲載) |
| 還付申告 | 2027年1月1日から5年間提出可 |
| 帳簿・決算書類の保存 | 青色は帳簿・決算書類7年、白色は法定帳簿7年・書類5年 |
納付期限と振替日は国税庁の納期限・振替日の一覧で確認できます。令和8年分の振替日は「令和9年4月中旬〜下旬」とだけ示されているので、前年の日付を当てはめず、掲載を待って口座残高を用意します。保存期間は、青色申告者の領収証・預金通帳などは原則7年で、前々年分の事業所得などが300万円以下なら5年です。乗務日報やメーターの記録は売上の根拠になるので、帳簿と同じ7年を目安に残します。なお、仕入税額控除のための請求書等や交付したインボイスの写しは、所得税の保存期間とは別に原則7年間の保存が必要です。電子取引で受け取った領収書等は電子データのまま保存します。
申告書の作成手順そのもの(作成コーナーの入力順や添付書類の一覧)は「個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円」で詳しく扱っています。同じ運送でも、軽貨物(黒ナンバー)は届出制のため耐用年数が異なる点を「軽貨物ドライバーの確定申告|令和8年分の申告ラインと経費・車両の耐用年数・インボイス」で説明しています。
税務調査への備えと期限後申告のペナルティ
個人タクシーの税務調査に備える売上と経費の記録
個人タクシーの売上は、現金で受け取る運賃に第三者の記録が残りにくいため、乗務日報、メーターの記録、カード・アプリ・チケットの入金明細と帳簿の売上が一致しているかを月ごとに確かめます。個人タクシーには、税務署とは別の役所に出す数字もあります。旅客自動車運送事業等報告規則2条により、個人タクシー事業者は前年4月1日から3月31日までの輸送実績報告書を毎年5月31日までに運輸支局へ提出し、関東運輸局の案内では事業報告書として損益計算書と貸借対照表を事業年度経過後100日以内に出すことになっています。輸送実績報告書は4月〜3月、所得税は1月〜12月と期間がずれるため、月別の売上を帳簿から集計できるようにしておくと、どちらの書類も同じ記録から作れます。経費側では、私用走行分を按分していない車両費や、家族の食事など事業と関係のない支出が混入していないかを確認します。日報・決済明細・入金明細を日付で対応付けて保存しておけば、売上の根拠を説明できます。
加算税と延滞税の割合
申告が遅れたり、売上を少なく申告したりすると、加算税や延滞税がかかる場合があります。以下の加算税率は、原則として調査による更正・決定を予知した後などの基本税率です。延滞税率は令和8年中の期間に対応するもので、令和8年分所得税の申告期限後に適用する令和9年の税率とは区別してください。
| 区分 | 割合 |
|---|---|
| 過少申告加算税 | 10%(期限内申告税額と50万円の多い方を超える部分は15%) |
| 無申告加算税 | 50万円までの部分15%・50万円超300万円までの部分20%・300万円超の部分30% |
| 延滞税(令和8年) | 納期限の翌日から2か月以内2.8%・その後9.1%(年率) |
延滞税は法定納期限の翌日から納付の日までの日数に応じてかかり、令和8年中の割合は国税庁の延滞税の割合で公表されています。期限後申告や修正申告では申告書を提出した日が表の「納期限」になり、法定納期限からその日までの期間と、その翌日から2か月以内は低い方の割合です。加算税は、税務調査の通知を受ける前に自主的に修正申告や期限後申告をすれば軽くなります(国税通則法65条・66条)。
よくある質問
法人タクシーの運転手は確定申告をしなくてよいのですか?
年末調整を受けていれば原則として不要です。ただし給与収入が2,000万円を超える、給与以外の所得が20万円を超える、2か所以上から給与を受けて年末調整されなかった給与収入と給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える、といった場合には原則として必要です。医療費控除や特定支出控除を受けたい場合も申告します。
個人タクシーで年収2,000万円を超えなければ確定申告は不要ですか?
いいえ。2,000万円は給与所得者の基準で、個人タクシーの運賃収入には当てはまりません。事業所得などから所得控除を引いて所得税額が出れば、売上の金額にかかわらず申告が必要です。
個人タクシーの車両の耐用年数は何年ですか?
運送事業用の自動車として、総排気量2リットル以下の小型車は3年、3リットル以上の大型乗用車は5年、その他は4年です。中古車を簡便法で計算すると、小型車は2年になります。ライドシェアで使う自家用車は運送事業用に当たらず、普通自動車の6年です。
個人タクシーは青色申告にしたほうがよいですか?
複式簿記で記帳してe-Taxで申告できるなら、令和8年分は65万円の控除が受けられ、赤字を3年間繰り越せます。適用を受ける年の3月15日(1月16日以後の開業は開業日から2か月以内)までに青色申告承認申請書を提出します。
個人タクシーの領収書にインボイスの登録番号は必要ですか?
法人の乗客が一般課税で仕入税額控除を受ける場合、原則として登録番号などを記載した簡易インボイスが必要です。ただし、少額特例や出張旅費等特例など、帳簿のみの保存で控除できる場合もあります。タクシーは3万円未満の公共交通機関特例の対象外なので、少額の乗車でも交付できるようにしておきます。