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カメラマンの確定申告|源泉徴収10.21%の還付と機材・経費の勘定科目【令和8年分】

カメラマンの確定申告|源泉徴収10.21%の還付と機材・経費の勘定科目【令和8年分】

フリーランスのカメラマンの確定申告では、撮影料から源泉徴収された税額の精算と、カメラ・レンズなどの経費処理を確認します。雑誌や広告に載せる写真の撮影料からは10.21%の所得税が源泉徴収されており、年間の税額がそれを下回れば差額が還付されます。カメラやレンズは1点の金額と白色・青色の別で経費にする年が変わり、2026年4月からは青色申告の特例の上限が40万円未満に上がりました。この記事では令和8年分(申告期限2027年3月15日)を前提に、カメラマンに固有の論点を、申告が要るかどうかの判定から順に整理します。

まとめ:カメラマンの確定申告で押さえる要点

  • 源泉徴収されるのは印刷物に載せる写真の撮影料:所得税法施行令320条1項が対象を「雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真」の報酬に限っています。年税額が源泉徴収額を下回れば、差額が還付されます。
  • 個人客やWeb専用の撮影料は満額で入る:結婚式や七五三の依頼主は源泉徴収義務者ではなく、Web専用の写真は条文の列挙に入っていません。そのぶん申告で納めます。
  • 機材は1点の金額で経費にする年が変わる:10万円未満は全額その年、20万円未満は3年均等も選べ、青色申告なら2026年4月以後の取得分は40万円未満まで全額その年の経費です。それ以上のカメラは耐用年数5年で償却します。
  • 機材を買って赤字になった年は青色なら3年繰り越せる:白色申告では通常の事業の赤字は繰り越せません。
  • 開業届の期限は確定申告期限まで、青色申告の申請は原則3月15日まで:令和8年1月1日以後の開業から開業届の期限が変わりました。青色申告承認申請書の期限は変わっていません。
  • 個人事業税は写真業で5%、インボイスの2割特例は令和8年分で終わる:令和9年分・令和10年分は個人事業者に限り3割特例に移ります。

専業・副業カメラマンの申告義務と所得基準

専業のフリーランスカメラマンは、所得から所得控除を引いて計算した税額が配当控除などを上回る場合、原則として申告が必要です。ただし、源泉徴収税額などを控除しきれず還付になる場合は申告義務がなく、還付を受けるために申告します。令和8年分の基礎控除は、合計所得金額489万円以下なら104万円です。青色申告特別控除の55万円・65万円は期限内に申告しないと受けられないため、「控除を引けば税額がゼロだから申告しない」という判断は成り立ちません。源泉徴収された所得税も、申告しなければ戻りません。

給与収入が2,000万円以下で、1か所から受ける給与の全部が源泉徴収の対象となる会社員は、給与所得・退職所得以外の所得が年20万円を超えると原則として申告が必要です。ただし、申告すれば還付になる場合は申告義務がありません。20万円以下でも、還付申告をするなら副業の所得も含めて計算します。所得税の確定申告をしない場合でも、副業所得について住民税の申告が原則として必要です。撮影の収入が事業所得か雑所得かは、社会通念上事業と呼べる規模かでまず判断し(所得税基本通達35-2)、帳簿書類を保存していない場合は、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除き、原則として業務に係る雑所得になります。帳簿をつけているだけで事業所得になるわけではありません。区分の細部は副業の雑所得はいくらから確定申告?20万円ルールと控除・事業所得の区分【令和8年分】で扱っています。

申告が必要なのに出さないと、税務調査を受けてからの期限後申告には無申告加算税がかかります。国税庁No.2024によると、令和6年1月1日以後に申告期限が来る所得税では、納める税額の50万円までの部分が15%、50万円超300万円までが20%、300万円超が30%です。調査の事前通知より前に自分から期限後申告をすれば原則5%で済みます。取引先が支払調書を税務署に出していれば、撮影料の支払い自体は税務署が把握しています。

写真の報酬にかかる源泉徴収10.21%と還付の計算

所得税法204条1項1号は原稿・さし絵・デザインの報酬などを源泉徴収の対象とし、これに類する報酬を定める所得税法施行令320条1項が「雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬若しくは料金」を挙げています。写真の報酬すべてではなく、印刷物に載せる写真に限られる点が要所です。税率は1回の支払額のうち100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です(所得税法205条1号と復興特別所得税の合計)。

源泉徴収される取引とされない取引

源泉徴収をするのは、法人や従業員に給与を払っている個人事業者といった源泉徴収義務者です。給与を払っていない個人が支払者なら、所得税法204条2項2号により徴収されません(国税庁No.2793)。カメラマンの取引に当てはめると次のとおりです。

取引の例 源泉徴収
雑誌・広告・カタログなど印刷物に載せる撮影 あり(10.21%)
撮影済み写真の使用許諾料(著作権の使用料) あり(10.21%)
企業のWebサイト専用の撮影・イベント記録撮影 条文の列挙になし
個人客の結婚式・七五三・家族写真 なし
支払者がホテル等へ直接払った交通費・宿泊費 報酬に含めない

Web専用の撮影でも、取引先が源泉徴収してくることがあります。印刷物に載せる予定があれば正しい徴収ですが、対象外の報酬から誤って引かれた所得税は、受け取った側の確定申告で差し引くことができず、支払者が税務署に誤納額の還付を請求して精算する扱いです。請求の段階で写真の用途を確認し、対象外なら源泉徴収をしない請求書で合意しておくのが確実です。

交通費の扱いも誤解が多いところです。国税庁No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」(令和8年4月1日現在法令等)は、支払者が直接交通機関やホテルへ通常必要な範囲の費用を払った場合だけ報酬に含めなくてよいとしています。カメラマンが立て替えて実費精算を受けた旅費は、報酬に含めて10.21%を引かれるのが原則です。

請求書の書き方で変わる源泉徴収額

同じNo.2792は、請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されていれば、報酬額だけを源泉徴収の対象にしてよいとしています。税抜30万円の撮影なら、消費税を区分した請求書では源泉徴収額が30万円×10.21%=30,630円、振込額は33万円−30,630円=299,370円です。税込33万円とだけ書くと、源泉徴収額は33,693円に増えます。源泉徴収額は翌年の確定申告で年税額と精算され、納め過ぎの分があれば還付されます。消費税額を区分して源泉徴収額を抑えると、入金時点で手元に残る資金を増やせます。

源泉徴収額が戻る仕組みと試算

源泉徴収された所得税は、確定申告書の「源泉徴収税額」欄に書いて年税額から差し引きます。次の条件で令和8年分を試算します。

  • 雑誌・広告用の撮影料:税抜400万円(全額10.21%源泉徴収済み=408,400円)
  • 必要経費150万円、青色申告特別控除65万円→事業所得185万円
  • 所得控除:基礎控除104万円、社会保険料控除40万円

課税所得は185万円−104万円−40万円=41万円、所得税は41万円×5%=20,500円で、復興特別所得税を加えて20,930円です。源泉徴収済みの408,400円との差額387,470円が還付されます。支払調書は支払者が税務署に出す書類で、受け取る側に交付する義務はありません。届かなくても、通帳の入金額と請求書の控えから源泉徴収額は計算できます。

モデルやアシスタントに払う側になったときの源泉徴収

カメラマンは報酬を受け取るだけでなく、モデルやアシスタントへ払う側にもなります。所得税法204条1項4号はモデルの業務に関する報酬を源泉徴収の対象にしており、国税庁No.2792も「モデルや外交員などに支払う報酬・料金」を挙げています。ただし徴収の義務を負うのは源泉徴収義務者だけなので、従業員に給与を払っていない一人のカメラマンがモデルに謝礼を払うときは源泉徴収しません。

アシスタントを雇って給与を払い始めると、その時点から源泉徴収義務者になり、モデルへの報酬からも10.21%を引いて納める必要が出ます。給与支払事務所等の開設届出書は開設から1か月以内に出します。給与の支給人員が常時10人未満なら、給与の源泉所得税は納期の特例で半年分をまとめて納められますが、国税庁No.2505が特例の対象にしているのは給与・退職手当と税理士などの一定の報酬に限られます。モデルへの報酬から引いた税は特例の対象外で、支払った月の翌月10日までに納めます。撮影補助を業務委託で頼む外注費は、204条の列挙に当たる仕事でなければ源泉徴収の対象になりません。モデル側から見た源泉徴収と申告はモデルの確定申告の記事で扱っています。

撮影機材の経費処理:10万・20万・40万円の分岐と耐用年数

カメラ本体やレンズ、ストロボ、編集用パソコンは、1点(通常1組として使うものは1組)の取得価額で処理が分かれます。金額基準は税込経理なら税込額、税抜経理なら税抜額で判定し、免税事業者は税込額を使います。経費にできるのは事業に使い始めた年からで、私用と兼ねる機材は事業で使う割合だけが経費です。2026年4月1日から、青色申告者向けの少額減価償却資産の特例が30万円未満から40万円未満へ引き上げられ、期限も令和11年3月31日まで延びました(租税特別措置法28条の2)。令和8年分は、1月から3月の取得が30万円未満、4月以後の取得が40万円未満という二本立てです。

1点の取得価額 処理 使える人
10万円未満 全額をその年の経費 白色・青色
10万円以上20万円未満 一括償却資産として3年で均等に経費 白色・青色
40万円未満(2026年4月以後取得) 全額をその年の経費(年合計300万円まで) 青色のみ
上記の特例を使わないもの 耐用年数で減価償却 白色・青色

しきい値の使い分けやパソコンの判定は少額減価償却資産とは?40万円特例はいつからか、10万円・20万円との使い分けとパソコンの判定を解説にまとめています。

カメラ・レンズ・パソコンの耐用年数

減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一では、器具及び備品のうち「光学機器及び写真製作機器」の「カメラ、映画撮影機、映写機及び望遠鏡」が5年です。編集に使うパーソナルコンピュータ(サーバー用を除く)は「事務機器及び通信機器」の4年です。交換レンズやストロボは別表に個別の品目がなく、国税庁も年数を示していないため、カメラの付属品として5年で扱うかどうかは税務署か税理士に確認してから決めるのが確実です。

白色申告で2026年5月にミラーレス一眼を35万円で買い、同月から事業専用で使い始めた場合、個人は定額法が原則なので、5年の償却率0.200を使って35万円×0.200×8/12=46,667円がその年の経費になります。青色申告で中小事業者の要件を満たし、その年の特例適用分の合計が300万円以内なら、同じ35万円を全額その年の経費にできます。初年度の経費に30万円以上の差がつくため、高額機材を買い替える年ほど青色申告の効果が大きく出ます。

中古のボディやレンズは、簡便法で耐用年数を短くできます。(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%で計算し、1年未満の端数は切り捨て、2年未満なら2年です。3年使われた中古カメラなら(5−3)+3×0.2=2.6で2年になります。事業に使うための改良費が中古の取得価額の50%を超える場合は使えません。

修理代・オーバーホールと資本的支出

センサー清掃や故障したシャッターユニットの交換など、元の性能に戻すための修理代は修繕費としてその年の経費です。国税庁No.1379は、使用可能期間を延ばしたり価値を高めたりする部分の支出を資本的支出とし、修繕費とは区別して減価償却で経費にするとしています。機能を追加する改造や、買い替えに近い大規模な部品交換は資本的支出になりえます。

撮影の経費と勘定科目の一覧

経費になるかどうかは「事業のための支出と説明できるか」で決まり、勘定科目の選び方で経費になるかどうかは変わりません。ただ、毎年同じ科目で記帳しておくと、前年比の確認や税務署からの問い合わせへの説明がしやすくなります。青色申告決算書や収支内訳書に印字された科目に当てはまらない費目は、空欄に科目名を書き足して使います。

費目 勘定科目の例
撮影料・写真の使用料の収入 売上(収入)金額
撮影地までの交通費・宿泊費・駐車場代 旅費交通費
レンタルスタジオ・機材レンタル 賃借料(追加科目)
モデル謝礼・レタッチや撮影補助の外注 外注工賃
SDカード・バッテリー・背景紙・10万円未満の機材 消耗品費
10万円以上の機材の償却分 減価償却費
機材の動産保険 損害保険料
センサー清掃・修理 修繕費
ポートフォリオサイト・広告 広告宣伝費
写真集・技術書 新聞図書費(追加科目)
取引先との会食・手土産 接待交際費
振込手数料・ストックフォトの販売手数料 支払手数料(追加科目)
個人事業税・事業用の印紙 租税公課

所得税と住民税は経費になりません。源泉徴収された所得税も同じで、帳簿では売上を源泉徴収前の報酬額で計上し、引かれた所得税は「事業主貸」で処理します。個人事業者の接待交際費には法人のような損金算入の上限額はなく、事業上必要だったかで判断されます(2023年3月14日の国会答弁で財務省も「制限を設けることなく必要経費に算入する扱い」と説明)。そのぶん、相手・目的・撮影案件との関係を領収書やメモに残しておかないと否認されやすい費目です。

ロケ費・衣装・自宅スタジオの家事按分

衣装や小道具は、撮影業務に直接必要な支出が経費になります。私用と兼ねる場合は、使用記録などに基づいて業務上必要な部分を明確に区分できる金額だけが対象です。普段着などの家事費は経費になりません。自宅の一室を撮影や現像作業に使っている場合は、家賃や電気代を業務で使った割合で按分します。根拠は所得税法施行令96条と所得税基本通達45-2で、国税庁No.2210も、取引の記録などに基づいて業務上直接必要だったと明らかに区分できる金額に限るとしています。床面積比で6畳の撮影部屋が住居の5分の1なら、家賃の20%を地代家賃として計上するのが典型です。

撮影料の売上計上日と納品・役務完了の基準

売上は入金日ではなく、収入が確定した日の年分に計上します。所得税基本通達36-8(4)は、物の引渡しを要する請負は「目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日」、引渡しを要しない請負は「約した役務の提供を完了した日」としています。データや写真を納品する仕事なら納品日、イベントの記録撮影のように撮影そのものが役務なら撮影完了日が基準です。

年をまたぐ案件で間違いが起きやすいのは、12月撮影・1月納品・2月入金のパターンです。納品が翌年なら売上は翌年分、12月中に納品して入金が翌年なら今年分の売上と売掛金になります。源泉徴収税額も入金時ではなく、売上を計上した年分の申告で差し引きます。ただし、申告時点でも報酬が未払いで源泉徴収されていない場合、その税額に対応する還付は保留されます。支払いと源泉徴収の後に「源泉徴収税額の納付届出書」を提出して還付を受けます。

消費税とインボイス:カメラマンの判断基準

前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下で、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしていなければ、原則として消費税の納税義務はありません。前年1月から6月の課税売上高と給与等の支払額がいずれも1,000万円を超えた場合などは例外があります(国税庁No.6501)。広告代理店や出版社など法人の取引先が多いカメラマンは、取引先の仕入税額控除のために登録を求められることがあり、登録すると売上規模にかかわらず課税事業者になります。登録していない事業者から仕入れた側の控除割合は、令和8年10月1日から令和10年9月30日までが70%、その後は50%、30%と下がっていきます(国税庁インボイス制度の見直し)。取引先が一般課税で仕入税額控除を計算する場合、控除割合の縮小は税負担に影響します。登録の要否は、取引先の課税方式や取引条件を確認して判断します。

登録で課税事業者になった人の負担を抑える2割特例は、個人事業者は令和8年分が最後で、令和9年分と令和10年分は納付税額を売上税額の3割とする3割特例に移ります。簡易課税制度の事業区分では、撮影業務はサービス業の写真業に当たる第5種事業でみなし仕入率50%です。国税庁の質疑応答事例は、結婚式や七五三の写真を台紙にはめ込んで引き渡す事業を第5種とする一方、写真館が自ら撮影した写真で卒業アルバムを製作する事業は第3種(70%)としています。

税抜売上400万円(消費税40万円)で比べると、2割特例なら8万円、3割特例なら12万円、簡易課税(第5種)なら20万円の納税になり、令和10年分までは特例のほうが有利です。機材を多く買った年は、実額で仕入税額を引く一般課税のほうが小さくなることもあります。2割特例が終わった後の切替先と届出の期限はインボイス2割特例の終了後はどうなる?法人・個人別の切替先と簡易課税の届出期限、会計システムの設定変更【2026年10月】、売上1,000万円前後の判定は個人事業主が売上1000万円を超えたら消費税はいくら?納税開始は2年後・2割特例は令和8年分までで扱っています。

個人事業税:写真業は第一種事業で税率5%

個人事業税は地方税法72条の2が定める70業種にだけかかり、写真業は第一種事業(同条8項17号)として税率5%です。計算は所得税の事業所得そのままではなく、青色申告特別控除を足し戻してから事業主控除290万円を引きます。1年を通じて営業し、65万円の控除後の事業所得が400万円なら、(400万円+65万円−290万円)×5%=87,500円です。年の途中で開業した年は、290万円が営業月数で月割りになります。

確定申告書の「事業税に関する事項」欄を書けば別の申告は要らず、8月に納税通知書が届いて8月と11月の2回に分けて納めます。事業税は納税通知書が届いた年の経費(租税公課)です。スタジオを持たない出張撮影やストックフォトの販売まで写真業に含めるかは地方税法に定義がなく、都道府県が業務の実態で判断するため、迷う場合は都道府県税事務所に確認するのが確実です。業種の一覧と計算の詳細は個人事業税がかからない業種は?法定70業種の一覧と税率3〜5%・290万円控除の計算にあります。

開業届・青色申告の期限と令和9年分からの控除額

開業届と青色申告承認申請書の期限

個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)の提出期限は、所得税法229条の改正で、令和8年1月1日以後の開業から「開業の日の属する年分の確定申告期限まで」になりました(国税庁No.2090)。一方、青色申告承認申請書の期限は、開業日が1月15日以前なら原則その年の3月15日、1月16日以後なら開業日から2か月以内です。期限が土日・祝日等なら翌開庁日となり、令和8年の原則期限は3月16日(月)、令和9年は3月15日(月)です(所得税法144条)。開業届だけ出して申請を忘れると、その年は10万円の控除も受けられない白色申告になります。

開業届の職業欄は「カメラマン」、事業の概要に「写真撮影業」のように書けば足ります。前の章で触れた給与支払事務所等の開設届出書は、開業届とは別に出します。令和8年1月1日以後の開業では、開業届を出しても省略できなくなりました。

令和8年分と令和9年分以後の青色申告特別控除額と適用要件

令和8年分の青色申告特別控除は、複式簿記で記帳して貸借対照表と損益計算書を添付し、期限内に申告することを前提に、e-Taxで申告するか、仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件で保存して所定の届出をすれば最高65万円です。この追加要件を満たさない場合は最高55万円、簡易簿記などの場合は最高10万円です。令和9年分からは租税特別措置法25条の2の改正で区分が変わります。

控除額 令和8年分の要件 令和9年分以後の要件
75万円 なし 65万円の要件+優良な電子帳簿等
65万円 複式簿記+e-Taxまたは優良な電子帳簿 複式簿記+e-Tax(必須)
55万円 複式簿記(65万円の追加要件を満たさない場合) 廃止
10万円 簡易簿記 簡易簿記(前々年の収入1,000万円超は不可)

令和9年分からは、複式簿記でも書面で申告すると10万円まで下がります。機材の多いカメラマンは固定資産台帳と減価償却の計算が毎年発生するため、会計ソフトで複式簿記とe-Taxをそろえておくのが現実的です。

機材購入で生じた純損失の3年間の繰越控除

開業した年や機材をまとめて買い替えた年は、経費が売上を上回ることがあります。国税庁No.2070によると、青色申告者は損益通算しても控除しきれない純損失を翌年以後3年間繰り越して、各年の所得から差し引けます。白色申告で繰り越せるのは、変動所得の損失や被災事業用資産の損失などに限られ、通常の撮影業の赤字は繰り越せません。繰越控除を受けるには、赤字の年分の確定申告書を出し、その後も連続して申告書を出す必要があります。赤字だから申告しない、という選択をすると翌年以後の控除を失います。

40万円未満の機材を少額減価償却資産の特例で全額経費にした結果の赤字も、青色申告なら同じように繰り越せます。開業初年度に高額のボディを買う予定があるなら、青色申告承認申請書の期限に間に合わせることが、そのまま翌年以後の税額に効きます。

確定申告の流れ:令和8年分の期限・提出書類・保存期間

令和8年分の確定申告は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)までが申告期間で、3月15日が申告と納税の期限です。振替納税を使えば、引き落とし日は2027年4月23日(金)です(国税庁法定納期限等の一覧)。還付申告だけなら、翌年1月1日から5年間出せます。

  1. 1年分の売上(請求書の控え・入金記録)と経費(領収書・カード明細)を帳簿にまとめる。源泉徴収された額は取引先ごとに集計する。
  2. 青色申告なら青色申告決算書、白色申告なら収支内訳書を作る。機材の減価償却費はここで計算する。
  3. 確定申告書に事業所得・源泉徴収税額・所得控除・事業税の欄を書き、e-Taxで送信する(青色の65万円控除にはe-Taxか優良な電子帳簿が必要)。

申告後も帳簿と書類は保存します。電子メールやWebで授受した請求書・領収書などは、紙への印刷だけでなく電子取引データも所定のルールに従って保存します。保存期間について、国税庁の資料によると、青色申告者は帳簿と決算関係書類を7年、領収書や通帳などの現金預金取引等関係書類を原則7年、請求書・見積書・契約書などを5年保存します。白色申告者も、収入と経費を書いた帳簿は7年、領収書や請求書は5年です(国税庁No.2080)。インボイス登録をした課税事業者は、交付したインボイスの写しと仕入税額控除のための請求書等を7年保存します。申告書の作成からe-Taxの送信までの画面ごとの流れは個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円で解説しています。

確定申告後の資金計画:予定納税と翌年の住民税

前年分の所得税額から源泉徴収税額を差し引いた「予定納税基準額」が15万円以上になると、6月に税務署から通知が届き、7月と11月に3分の1ずつを前払いします(国税庁No.2040)。法人案件が中心で源泉徴収が多いカメラマンは基準額が小さくなりやすく、個人客中心のカメラマンほど対象になりやすい構造です。時期や減額申請は個人事業主の予定納税|令和8年分の納期限・15万円基準・減額申請と仕訳の実務を参照してください。還付を受けた年でも、住民税と国民健康保険料は確定申告の所得をもとに6月以降に課されます。源泉徴収は所得税だけの前払いなので、住民税(所得割10%)の分は別に手元に残しておく必要があります。

よくある質問

カメラマンの業種は確定申告書や開業届に何と書けばいいですか?

開業届の職業欄は「カメラマン」や「写真家」、青色申告決算書や収支内訳書の業種名は「写真業」と書くのが一般的です。決まった表記はありませんが、個人事業税の業種判定にも使われるため、実態に合った名称にします。

撮影料や撮影代の勘定科目は何ですか?

受け取る撮影料は「売上(収入)金額」で、源泉徴収される前の報酬額で計上します。引かれた所得税は「事業主貸」で処理し、還付を受けたら「事業主借」で受けます。他のカメラマンやスタジオに撮影を頼んで払う撮影代は「外注工賃」です。

副業カメラマンでも開業届を出すべきですか?

開業届は事業を始めた人に提出義務がありますが、出さなくても罰則はありません。撮影活動が事業所得に該当するなら、青色申告承認申請書を期限内に提出します。令和8年分の最高65万円控除には複式簿記・期限内申告とe-Taxまたは所定の電子帳簿保存の要件があり、純損失の3年繰越には継続した申告が必要です。期限は開業届が確定申告期限まで、青色申告承認申請書は1月15日以前の開業なら原則その年の3月15日まで、1月16日以後なら開業日から2か月以内です。土日・祝日等に当たる期限は翌開庁日に繰り越され、令和8年の原則期限は3月16日(月)、令和9年は3月15日(月)です。

撮影用の衣装の耐用年数は何年ですか?

取得価額10万円未満の撮影専用の衣装は、原則として撮影業務に使い始めた年の消耗品費にします。耐用年数省令の別表第一で衣装が出てくるのは「興行又は演劇用具」の「衣しよう、かつら、小道具及び大道具」(2年)だけで、写真撮影用の衣装を名指しした品目はありません。10万円以上の衣装を償却するときは、この区分を当てはめてよいかを税務署か税理士に確認してください。

ミラーレス一眼の耐用年数は何年ですか?

「光学機器及び写真製作機器」のカメラとして5年です。青色申告なら2026年4月以後に取得した40万円未満の機材は、少額減価償却資産の特例でその年に全額を経費にできます。交換レンズは別表に品目がないため、扱いを税務署などに確認してください。

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