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損益通算とは?対象の4所得と順序・計算例、第四表の書き方をわかりやすく解説

損益通算とは?対象の4所得と順序・計算例、第四表の書き方をわかりやすく解説

損益通算は、ある所得の赤字を別の所得の黒字から差し引いて、税金のかかる所得を小さくする仕組みです。ただし赤字が出たすべての所得で使えるわけではありません。所得税法69条1項が対象にしているのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つだけで、差し引く相手と順番も所得税法施行令198条が決めています。この記事では、会社員が副業の赤字を通算したときに税金がいくら減るかの計算例から入り、差し引く順序、株式の口座ごとの扱い、通算できない損失、確定申告書第四表の書き方、通算しきれなかった赤字の行き先までを、国税庁の資料と条文に沿って整理します。

まとめ:損益通算の要点

  • 他の所得から差し引ける赤字は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つだけです(所得税法69条1項)。
  • 減る税額は、必ずしも「赤字×通算前の限界税率」とは一致しません。所得税は累進税率なので、通算によって税率の区分をまたぐ場合は、区分ごとに計算します。
  • 差し引く順序は所得税法施行令198条が定めています。事業・不動産の赤字は経常所得から、譲渡所得の赤字はまず一時所得から差し引きます。
  • 総合課税の長期譲渡所得と一時所得に適用する2分の1計算は、損益通算後の金額について行います。
  • 申告分離課税の株式等・先物取引・土地建物等の損失は、原則として各区分の範囲内で通算します。ただし、一定のマイホームの売却損には給与所得などと通算できる特例があります。NISA口座の損失は通算も繰越もできません。
  • 通算しても残った赤字は、青色申告なら純損失として翌年以後3年間繰り越せます。白色申告の一般の純損失では、事業から生じた変動所得の損失と被災事業用資産の損失が繰越対象です。居住用財産の譲渡損失などには別の特例があります。

損益通算の対象になる4つの所得

内部通算・損益通算・繰越控除という3段階の関係

赤字の処理は3段階で進みます。最初が同じ所得区分の中で黒字と赤字を相殺する内部通算で、物件Aの黒字と物件Bの赤字を不動産所得の中で相殺するのがこれに当たります。それでも残った赤字を他の所得区分の黒字から差し引くのが損益通算です。損益通算をしてもなお残った赤字が純損失となり、翌年以後へ繰り越す繰越控除に進みます。所得税法施行令201条3号は、この順番を「まず法第69条の規定による控除を行つた後に法第70条第1項又は第2項の規定による控除を行う」と明記しています。

国税庁のタックスアンサーNo.2250「損益通算」は、損益通算を「一定のもの…についてのみ、一定の順序にしたがって…他の各種所得の金額から控除すること」と定義しています。対象と順序の2つが要件だという構造を、最初に押さえておくと迷いません。

赤字が出ても他の所得から引けない所得

利子所得と退職所得は計算上そもそも赤字になりません。配当所得・給与所得・一時所得・雑所得は赤字になることがありますが、その赤字を他の所得から差し引くことはできません(No.2250注2)。

実務で問題になりやすいのが雑所得です。副業の経費が収入を上回っても、その区分が雑所得であれば給与所得と通算できません。事業所得と雑所得のどちらに当たるかの判定そのものが、通算の可否を決めます。判定の基準は副業の雑所得はいくらから確定申告?20万円ルールと控除・事業所得の区分【令和8年分】で詳しく整理しています。

損益通算で税金がいくら減るかの計算例

会社員が副業の事業所得の赤字を給与所得から差し引く例

給与所得が450万円の会社員が、副業の事業所得で80万円の赤字を出したとします。社会保険料控除などを合わせた所得控除の合計は200万円(令和8年分の基礎控除104万円を含む)と置きます。合計所得金額は通算の前後とも489万円以下なので、国税庁No.1199の令和8年分の表どおり基礎控除は104万円のまま変わりません。所得税は国税庁No.2260の速算表で計算します。

項目 通算しない場合 通算する場合
総所得金額 450万円 370万円
課税される所得金額 250万円 170万円
適用される速算表の段 10%・控除額97,500円 5%・控除額0円
所得税 152,500円 85,000円
復興特別所得税(2.1%) 3,202円 1,785円
所得税と復興特別所得税の合計 155,702円 86,785円

所得税と復興特別所得税で68,917円、これに住民税の所得割(税率10%)が課税所得80万円分、約8万円減ります。給与から源泉徴収され、年末調整で精算された所得税等のうち、損益通算によって納め過ぎとなる分は確定申告で還付されます。住民税は翌年度の税額が下がる形で反映されます。副業の赤字を給与と通算できる条件と、実際に申告すべきかの判断は副業の赤字は給与と相殺できる?損益通算の条件と減る税額【令和8年分】で詳しく扱っています。

減る税額が「赤字×税率」と一致しない場面

上の例で、80万円の赤字に10%を掛けると8万円になりますが、実際に減った所得税は67,500円です。速算表の10%が掛かるのは課税所得195万円から329万9,000円までで、通算後の170万円は5%の段に落ちています。250万円から195万円までの55万円には10%、195万円から170万円までの25万円には5%しか効いていません。

逆に、通算の前後とも課税所得が20%の段(330万円から694万9,000円)に収まる人なら、同じ80万円の赤字で所得税が16万円減ります。「赤字が出れば得」という説明を見かけますが、税金で取り戻せるのは赤字のうち税率分だけで、損失そのものが補われるわけではありません。減価償却費のように現金の出ていかない経費を含む赤字なら手元資金との関係は変わりますが、経費を使って赤字を作れば税額の減少分を超えてお金が出ていきます。損益通算は損失の痛みを税率分だけ和らげる仕組みだと捉えると、判断を誤りません。

赤字を差し引く順序

赤字の種類ごとに決まった3つのルート

所得税法施行令198条は、赤字がどの所得区分から生じたかによって、差し引く相手の順番を分けています。令和7年分の確定申告の手引き(損失申告用)は、これを次の矢印の形で示しています。

赤字の出た所得 差し引く順序
事業所得・不動産所得 経常所得 → 譲渡所得 → 一時所得 → 山林所得 → 退職所得
譲渡所得 一時所得 → 経常所得 → 山林所得 → 退職所得
山林所得 経常所得 → 譲渡所得 → 一時所得 → 退職所得

譲渡所得の赤字だけは、経常所得ではなく一時所得が最初の相手になります(施行令198条2号)。また、事業や不動産の赤字を譲渡所得から差し引く場面では、施行令198条3号後段により、総合課税の短期譲渡(所得税法33条3項1号)に係る部分から先に充てます。施行令198条1号がいう経常所得は、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・雑所得の6つで、一時所得は入りません。

譲渡所得の赤字と2分の1を掛けるタイミングの数値例

所得税法22条2項2号は、長期譲渡所得と一時所得の金額を「第六十九条の規定の適用がある場合には、その適用後の金額」の合計額の2分の1と定めています。損益通算は2分の1を掛ける前の金額で行い、通算後の残額を半分にして総所得金額に入れます。

給与所得400万円の人が、事業で使っていた機械を売って総合課税の短期譲渡所得で30万円の赤字を出し、同じ年に生命保険の一時金で一時所得の金額(特別控除50万円を差し引いた後)が40万円あったとします。

計算のしかた 途中の計算 総所得金額
正しい順序 一時40万-譲渡30万=10万 → ×1/2=5万 405万円
先に2分の1にする誤り 一時40万×1/2=20万-譲渡30万=▲10万 → 給与から10万 390万円
給与から先に引く誤り 給与400万-30万=370万、一時40万×1/2=20万 390万円

どちらの誤りも総所得金額を15万円少なく計算し、過少申告になります。一時所得がある年に譲渡損失を出したときは、まず一時所得と相殺し、残りを半分にするという順番を崩さないことです。

株式・投資信託の損益通算と口座別の申告手続き

口座ごとの通算の範囲と確定申告の要否

株式や投資信託の売却損益は、給与や事業の所得とは別枠の申告分離課税です。さらに国税庁No.1463のとおり、上場株式等と一般株式等(非上場株式など)も別々の枠で、上場株式等の譲渡損失を一般株式等の譲渡益から差し引くことはできません。上場株式等の枠の中でどこまで自動で通算されるかは、口座の種類で決まります。

口座の種類 口座内の損益 他の口座・配当との通算 確定申告
特定口座(源泉徴収あり) 証券会社が通算して源泉徴収 申告すれば可 原則不要(口座外との通算・繰越は必要)
特定口座(源泉徴収なし) 証券会社が年間の損益を計算 申告すれば可 原則必要(申告不要の例外あり)
一般口座 自分で計算 申告すれば可 原則必要(申告不要の例外あり)
NISA口座 非課税 不可 損失は申告しても使えない

特定口座は1つの金融商品取引業者等につき1口座です。国税庁No.1476は、源泉徴収口座の所得を他の口座の譲渡損益と相殺する場合や、譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受ける場合には確定申告が必要だとしています。NISA口座の譲渡損失は、国税庁No.1474の注3で損益通算も繰越控除もできないとされています。

見落としやすい落とし穴が1つあります。No.1476によると、源泉徴収口座で生じた譲渡損失を申告する場合、その口座に受け入れた配当等は申告不要にできず、併せて申告しなければなりません。口座内ですでに配当と損失が相殺済みなら、申告しても取り戻せる税金が増えないこともあります。口座や商品ごとに申告が要るかどうかは個人投資家の確定申告が必要な人・不要な人|口座・商品別の判定と申告方式【令和8年分】で一覧にしています。

上場株式等の譲渡損失の3年繰越と連続申告

上場株式等の譲渡損失は、確定申告で申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等と通算でき、それでも残った損失は翌年以後3年間、上場株式等の譲渡所得等と配当所得等から繰越控除できます(No.1474・措置法37条の12の2)。繰り越した損失は一般株式等の譲渡益からは差し引けません。相対取引で生じた譲渡損失も対象外です。

手続きの要件は、損失が出た年に「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付して申告し、その後も連続して付表付きの確定申告書を出すことです。No.1474は「上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です」と注記しています。売買をしなかった年に申告を飛ばすと、連続提出の要件を欠いて繰越しが途切れます。期限後申告書も確定申告書に含まれる(所得税法2条1項37号)ので、気づいたら未提出の年分を早めに申告し、繰越しをつなげられるか税務署に確認してください。

損益通算が使えない損失

分離課税の枠内で完結する損失

申告分離課税が適用される損失は、同じ枠の中でしか通算できません。No.2250は、株式等・先物取引・土地建物等について、それぞれ「以外の所得の金額との損益通算はできません」「また逆に」と双方向で禁じています。

  • 株式等:給与や事業の赤字を株の利益から引くことも、株の損失を給与から引くこともできません。上場株式等の譲渡損失を配当と通算する道は前章のとおりです。
  • 先物取引・FX:国税庁No.1522のとおり、先物取引に係る雑所得等は所得税15%・地方税5%の申告分離課税で、損失は他の先物取引に係る雑所得等とだけ通算でき、翌年以後3年間の繰越控除があります。第一種金融商品取引業者または登録金融機関を相手方とする店頭FXもこの枠に入るため、FXの損失を株の利益と通算することはできません。海外の無登録業者とのFXは、この枠の対象外です。
  • 土地建物等:一定の居住用財産の特例に当たる場合を除き、他の所得と通算できません(No.2250注7)。マイホームの売却損で特例を使う条件は不動産売却で損失が出たときの確定申告|損益通算できる条件と2つの特例で整理しています。

なお、措置法41条の14第1項2号は括弧書きで「暗号等資産…に係るものを除く」としており、暗号資産に係るデリバティブ取引はこの15%の申告分離課税に入りません。総合課税の雑所得として扱われるため、税率も損失の扱いも先物取引とは別物です。暗号資産取引の所得区分と経費の考え方は仮想通貨(暗号資産)の経費はどこまで?その他雑所得と事業所得で変わる範囲【令和8年分】で扱っています。

生活に通常必要でない資産の損失

所得税法69条2項は、生活に通常必要でない資産に係る赤字について、他の生活に通常必要でない資産に係る所得から控除してもなお残る部分を「生じなかつたものとみなす」と定めています。No.2250が挙げる対象は、競走馬その他射こう的行為の手段となる動産、主として趣味・娯楽・保養・鑑賞の目的で所有する不動産、ゴルフ会員権等、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・書画・骨とう等です。

例外は競走馬だけです。所得税法施行令200条は、事業用以外の競走馬の譲渡による譲渡所得の赤字に限って、その競走馬の保有に係る雑所得の黒字から控除できると定めています。給与所得から引けるわけではありません。競走馬の所得区分は一口馬主の確定申告のやり方|20万円の判定と源泉20.42%の還付・経費の範囲【令和8年分】で整理しています。

不動産所得の赤字のうち通算できない部分

土地等を取得するための借入金利子

不動産所得の赤字は原則として給与所得などと通算できますが、必要経費に算入した金額のうち土地または土地の上に存する権利を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、なかったものとみなされます(措置法41条の4第1項、平成4年分以後)。建物部分の借入金利子や減価償却費は通算の対象に残るため、土地分と建物分の按分をしないと通算できる赤字の額が確定しません。

国外中古建物と組合の特定組合員

令和3年分以後、国外中古建物の貸付けによる赤字のうち、耐用年数を簡便法等で計算した減価償却費に相当する部分もなかったものとみなされます。土地等の利子と違うのは、この部分が他の所得と通算できないだけでなく、不動産所得の中での内部通算まで封じられる点です。国税庁No.1391も、国内の不動産からの不動産所得との内部通算と、不動産所得以外の所得との損益通算の両方を否定しています。ただし令和7年分の手引きは、当該国外中古建物以外の国外不動産等に係る不動産所得の黒字からは差し引けると補足しています。

不動産所得を生ずべき事業を行う民法組合等の特定組合員や信託の受益者が組合事業・信託から受けた不動産所得の赤字も、同じく内部通算まで封じられます。組合型の不動産投資に出資している場合は先に確認してください。

確定申告書第四表(損失申告用)の書き方

第四表(一)の所得金額欄と損益通算欄

損益通算をした人が必ず第四表を使うわけではありません。国税庁の令和7年分の様式案内は、黒字から差し引く赤字が数多くある人が所得金額を計算するときは「損益の通算の計算書」を使い、翌年に繰り越す損失がある人はこの計算書を使わず第四表(損失申告用)を使うとしています。以下は第四表(一)を使う場合の書き方です。上段の「1 損失額又は所得金額」で、A経常所得/B譲渡・一時/C山林/D退職/E一般株式等の譲渡・上場株式等の譲渡・上場株式等の配当等/F先物取引の区分ごとに金額を並べ、下段の「2 損益の通算」で第1次通算後・第2次通算後と段階的に差し引いていきます。「A 経常所得」欄には申告書第一表の所得金額等①から⑥および⑩の合計額を転記します。

手引きが挙げている実務上の注意が1つあります。所得内通算および損益の通算をした場合は、通算前の金額を下段に括弧書きし、上段に通算後の金額を書くという二段書きです。第四表(一)を提出するときは第四表(二)と申告書第一表・第二表も一緒に提出し、第三表(分離課税用)の提出は不要になります。国税庁の確定申告書等作成コーナーで所得金額を入力すれば、施行令198条の順序に沿って「2 損益の通算」欄が計算されるため、手計算で順序を追う必要はありません。

特例ごとに追加で必要になる書類

特例を受ける場合は、その特例に対応した付表や明細書が必要です。なお損失申告用の手引きは、申告する損失が株式等の譲渡損失と先物取引の損失だけの場合は書き方が異なるとして、『株式等の譲渡所得等の申告のしかた』か『先物取引に係る雑所得等の説明書』を見るよう案内しています。上場株式等の譲渡損失なら前章の付表と計算明細書の添付が措置法37条の12の2第3項の適用要件です。先物取引の繰越損失なら「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」、居住用財産の譲渡損失なら措置法41条の5用または41条の5の2用の計算書を併せて使います。

作成コーナーを使えば付表や明細書は入力内容から自動作成されますが、当初申告に記載も添付もないまま提出すると、後から特例だけを追加するのは容易ではありません。信用取引の損益を扱う場面は信用取引の税金と確定申告|申告不要になる条件と金利・配当落調整額の扱い【令和8年分】も合わせて確認してください。

通算しきれない赤字の行き先

一般の純損失の繰越控除と青色・白色の適用範囲

損益通算をしても残った赤字は純損失となり、翌年以後3年間の各年の所得から控除できます。ただし所得税法70条1項は、この繰越しを「その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る」と限定しています。

白色申告でも繰り越せる例外が同条2項です。この規定の対象は、事業から生じた変動所得の損失と、被災事業用資産の損失です。雑所得に区分される原稿料などの赤字は、この純損失の繰越控除の対象にはなりません。変動所得とは、令和7年分の手引きによれば漁獲やのりの採取による所得、はまち・まだい・ひらめ・かき・うなぎ・ほたて貝・真珠・真珠貝の養殖による所得、印税や原稿料・作曲料などによる所得です。原稿料を事業所得として申告している白色申告者の赤字は繰り越せる一方、一般的な小売業の赤字は繰り越せません。

繰越しには手続要件もあります。所得税法70条4項は、純損失が生じた年分の確定申告書を提出し、かつ「その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り」適用すると定めています。なお令和5年4月1日以後に発生した特定非常災害による被災事業用資産の損失などは、損失が生じた年の翌年以後5年間繰り越せます(令和7年分の手引き(特定非常災害の被災者用))。対象額は青色・白色の区分や事業用資産の被害割合によって変わります。

前年の税金を取り戻す繰戻し還付

赤字を翌年以後へ送らず、前年に納めた所得税を取り戻す方法もあります。所得税法140条1項の純損失の繰戻しによる還付です。前年分の課税総所得金額等から純損失を差し引いて計算し直した所得税額との差額が還付されます。ただし、この請求では復興特別所得税は還付されません。

要件は厳格です。同条4項は、前年分の所得税につき青色申告書を提出していること、かつその年分の青色申告書を提出期限までに提出していることを求めています。請求は確定申告書の提出と同時に行います。前年に相応の所得があり、翌年以降の黒字が読みにくい事業なら、3年繰り越すより繰戻し還付のほうが資金繰りに効きます。

損益通算で必ず得をするとは限らない場面

配当との損益通算と配当控除の選択

上場株式等の譲渡損失を配当所得と通算するには、その配当所得について申告分離課税を選ぶ必要があります。ところが国税庁No.1250は、配当控除の対象にならない配当として「申告分離課税制度を選択したもの」を明示しています。国内法人の配当など配当控除の対象となるものでは、総合課税を選び、課税総所得金額等が1,000万円以下なら原則10%の配当控除を受けられます。証券投資信託は種類により控除率や対象可否が異なります。こうした対象配当では、配当控除を通算と引き換えに手放す形になります。

しかも申告分離課税の選択は、確定申告する上場株式等の配当所得の全額について行わなければなりません(No.1330)。譲渡損失が配当所得より小さいのに全額を分離課税に回すと、控除しきれる範囲を超えた部分で配当控除だけを失います。損失額と配当額を並べて比べてから決めるべきです。

株式の利益の申告による扶養判定・住民税・国保への影響

特定口座(源泉徴収あり)の利益は、確定申告不要制度を使えば合計所得金額に算入されません。複数の証券会社をまたいで損益通算するために申告すると、通算後に残った利益が合計所得金額に加わり、配偶者控除や扶養控除の判定、国民健康保険料の算定に影響します。令和8年分は、配偶者控除を受けられる配偶者の合計所得金額が62万円以下です(国税庁No.1191)。取り戻す源泉徴収税額より、扶養から外れる影響のほうが大きくなることがあります。

住民税の所得割も、地方税法313条2項により所得税と同じ計算の例で総所得金額を出すため、損益通算の結果はそのまま住民税に反映されます。所得税の確定申告書を提出すれば住民税の申告書を出したものとみなされる(同法317条の3)ので、別に住民税の申告をする必要はありません。純損失の繰越控除も住民税に同じ仕組みがあります(同法313条8項)。ただし住民税には繰戻し還付がなく、立川市の案内は、所得税で繰戻し還付を選んで住民税と繰越額が食い違う場合、住民税の申告書と繰越控除明細書を3月15日までに出し、その後も繰り越す年度ごとに毎年提出するよう求めています。また令和6年度分(令和5年分の所得)以後は、上場株式等の配当や譲渡益を所得税で申告すると住民税も同じ方式で課税され、住民税だけ申告不要にすることはできません。株の利益を申告すると、住民税の合計所得金額と国民健康保険料にも乗るということです。住民税の税額の仕組みは住民税はいくら?年収別早見表と市町村民税所得割額の確認方法【令和8年度】で確認できます。

逆に、事業や不動産の赤字を給与所得と通算する場合は合計所得金額が下がるため、この副作用は起きません。通算の方向によって影響が正反対になる点が、判断を分けます。

よくある質問

損益通算は会社に知られますか?

給与所得以外の所得に係る住民税は、申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」で徴収方法を選べます。令和7年分の確定申告の手引きは、給与から差し引かないで別に窓口等に自分で納付することを希望する場合は「自分で納付」欄に記入すると案内しています。ただし副業の赤字が給与所得から差し引かれると、給与に係る住民税の所得割そのものが下がり、勤務先へ届く特別徴収税額の決定通知書の金額が変わります。副業の赤字を給与と通算する場合は、普通徴収を選んでも通知額の変化までは避けられません。

株の損益通算による還付金はいつ振り込まれますか?

令和8年分の確定申告期間は2027年2月16日(火)から3月15日(月)までで、還付を受けるための申告は期間前から提出できます。国税庁は、2月・3月の確定申告期間中の還付金の支払手続には「おおむね1か月から1か月半程度の期間を要する」としています。e-Taxで提出された還付申告は3週間程度で処理されますが、訂正申告など同一人について複数回の申告がある場合や、書類不備・書面による別送書類の提出がある場合は3週間程度の対象外になります。

損益通算を忘れて申告した場合は取り戻せますか?

納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合は、更正の請求ができます。期間は原則として法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条)。ただし上場株式等の譲渡損失の損益通算のように、確定申告書への記載と明細書の添付が適用要件になっている特例(措置法37条の12の2第3項)は、後から請求しても認められないことがあります。

白色申告でも損益通算はできますか?

できます。損益通算は所得税法69条の規定で、青色申告かどうかを問いません。青白で差が出るのは、通算しきれずに残った純損失を翌年以後へ繰り越す段階です。白色申告の一般の純損失では、事業から生じた変動所得の損失と被災事業用資産の損失が繰越対象です。なお、居住用財産の譲渡損失などには、青色申告かどうかを問わない別の特例があります。

FXの損失は株の利益と損益通算できますか?

できません。第一種金融商品取引業者や登録金融機関を相手にしたFXの損益は先物取引に係る雑所得等、株の売却損益は株式等に係る譲渡所得等で、別々の申告分離課税です。このFXの損失は他の先物取引の利益と通算し、残れば翌年以後3年間繰り越します。海外の無登録業者とのFXはこの特例の対象外で、扱いが異なります。

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