犬や猫を繁殖して販売するブリーダーは、営業開始前に、都道府県知事(指定都市では市長)の第一種動物取扱業の登録を受ける必要があります。税務署への開業届とは別の手続きです。税金の面では、親犬は減価償却資産、販売用の子犬は棚卸資産という区分が申告の骨格になり、青色申告決算書の書き方もこの区分で決まります。この記事では、令和8年(2026年)時点の所得税法・動物愛護管理法・耐用年数省令と国税庁の資料をもとに、ブリーダーの開業届から令和8年分の確定申告までの手順と、判断が分かれる点を整理します。
まとめ|ブリーダーの開業届と確定申告の要点
- 犬猫の販売を業として行うには、事業所の所在地を管轄する都道府県知事(指定都市は市長)の第一種動物取扱業の登録が必要です。無登録営業は100万円以下の罰金です。
- 開業届の提出期限は、令和8年1月1日以後の開業から「開業した年分の確定申告期限まで」に変わりました。青色申告承認申請書は、1月1〜15日の開業ならその年の3月15日まで、1月16日以後なら開業日から2か月以内です。期限が土日祝日等に当たる場合は翌開庁日となり、開業届とは期限が異なります。
- 「売上300万円以下は雑所得」という理解は誤りです。所得税基本通達35-2の300万円は、帳簿書類を保存していない場合の例外として書かれています。
- 繁殖用の親犬・親猫は、耐用年数省令の別表第一「器具及び備品」の「生物」に当たり、法定耐用年数は8年です。販売用の子犬・子猫は棚卸資産として年末に在庫計上します。
- 令和8年分の確定申告は2027年2月16日から3月15日までです。青色申告なら確定申告書に青色申告決算書を付け、繁殖犬は「減価償却費の計算」欄に耐用年数8年・償却率0.125で書きます。
- 簡易課税では、自分で繁殖させた犬猫の販売は第三種事業(みなし仕入率70%)が基本です。適用には、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることや、原則として適用開始前の届出などの要件があります。
- 国税庁の調査データでは、ブリーダーは令和3〜6事務年度の4年続けて、1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種に入っています。
ブリーダーが開業するときの手続きの順番
営業開始前に必要な第一種動物取扱業の登録(販売)
動物愛護管理法10条1項は、動物の販売を業として営もうとする者に、事業所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を義務づけています。指定都市では市長の登録です。登録を受けずに営業すると、同法46条1号により100万円以下の罰金の対象になります。開業届は税務署への届出にすぎず、開業届を出しても動物取扱業の登録を受けたことにはなりません。犬の販売に加えて預かり(保管)や触れ合い(展示)も行う場合は、その種別も登録の対象です。展示に当たるかどうかの線引きはドッグカフェの許認可と事業計画書の書き方で解説しています。
登録で押さえておく条件は次のとおりです。
- 有効期間:5年ごとに更新しないと失効します(13条1項)。
- 動物取扱責任者:事業所ごとに選任し、所定の研修を受けさせます(22条)。要件は施行規則9条で、獣医師か愛玩動物看護師の免許、または「施行規則の別表で販売業に対応する種別での半年以上の実務経験(常勤職員としての在職に限る)か、取り扱う動物の種類について実務経験と同等と認められる1年以上の飼養経験」に加えて「営む種別に係る知識・技術を1年以上教育する学校等の卒業(該当する専門職大学の前期課程修了を含む)か、公平性・専門性を持つ団体の客観的な試験による当該知識・技術の習得の証明」が必要です。1人で営む場合は自分がこの要件を満たさなければなりません。
- 犬猫等販売業:犬猫を販売する場合は、登録申請の際に犬猫等健康安全計画を出し、その計画に従って業務を行います(10条3項・22条の2)。
- 56日規制:繁殖した犬猫は、出生後56日を経過するまで販売のために引き渡したり展示したりできません(22条の5)。天然記念物に指定された犬だけを繁殖する業者が、犬猫等販売業者以外に販売する場合は、附則の特例で49日です。
- マイクロチップ:取得した犬猫には、原則として取得日から30日以内(生後90日以内に取得したときは生後90日を過ぎた日から30日以内、それより前に譲渡するときは譲渡日まで)にマイクロチップを装着し、環境大臣の登録を受けます(39条の2・39条の5)。令和4年6月1日から義務化されています。
飼養管理の数値基準も令和6年6月に完全施行されました。環境省令の基準では、従業員1人当たりの飼養頭数の上限が犬20頭(うち繁殖用15頭)、猫30頭(うち繁殖用25頭)です。雌犬の出産は生涯6回までで、交配時の年齢は原則6歳以下です。7歳に達した時点で出産回数が6回未満だと証明できる場合に限り、7歳以下まで認められます。頭数の上限は従業員の人数に比例するため、繁殖頭数を増やす計画では、先に人員を確保する必要があります。犬猫以外の哺乳類も繁殖・販売する場合は、2026年10月15日公布の改正基準省令による飼養管理基準が2027年6月1日から適用されます(既存事業者の設備の規模は2028年6月1日から。環境省の報道発表)。
開業届の期限は令和8年から「確定申告期限まで」
所得税法229条の改正により、令和8年1月1日以後に開業した場合、個人事業の開業・廃業等届出書は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」に出せばよくなりました(国税庁の手続き案内)。「開業から1か月以内」と書かれた解説は改正前の内容です。
職業欄と事業の概要欄には、犬猫の繁殖・販売であることがわかる業種名を書きます。事業の概要欄に、繁殖・販売する動物の種類と販売方法(直販、仲介サイト経由など)を書いておくと、後で事業実態を説明するときの材料になります。屋号欄は任意で、犬舎名(ケンネル名)を使って販売しているならその名称を書きます。開業から申告までの全体の流れは個人事業主の確定申告の手順と令和8年分の期限で解説しています。
青色申告承認申請の期限と開業日による違い
開業届の期限が延びた一方、所得税法144条の青色申告承認申請書の期限は変わっていません。1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内です。開業届の期限に合わせて翌年3月に出すと、開業した年は白色申告になります。
| 書類 | 提出先 | 期限(令和8年以後の開業) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 第一種動物取扱業の登録申請 | 都道府県知事・指定都市の長 | 営業を始める前 | 動物愛護管理法10条 |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 所轄税務署 | 開業した年分の確定申告期限 | 所得税法229条 |
| 青色申告承認申請書 | 所轄税務署 | 1月1〜15日開業:その年の3月15日/1月16日以後開業:開業日から2か月以内(休日は翌開庁日) | 所得税法144条 |
青色事業専従者給与を必要経費に算入する場合の届出期限は、原則としてその年の3月15日です。その年の1月16日以後に開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合は、その日から2か月以内です。
ブリーダー収入の所得区分と申告が必要になる条件
事業所得か雑所得かの判定基準
判定の基本は、社会通念上「事業」と呼べる規模と継続性があるかどうかです。よく引用される所得税基本通達35-2の注書きは、次のように書かれています。
「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。」
帳簿書類の保存も判定に関わりますが、保存しているだけで事業所得になるわけではなく、営利性や継続性、規模などを総合して判断します。帳簿を保存していない場合は、収入金額300万円超で事業所得と認められる事実がある例外を除き、原則として事業所得には区分されません。通達は、資産の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得としています。登録を受けて継続的に繁殖と販売を行い、1頭ごとの販売記録と経費の帳簿をつけていることが、事業所得を主張する前提になります。
雑所得になると、青色申告特別控除(最大65万円)や純損失の3年間の繰越控除は使えません。赤字を給与所得と損益通算することもできません。
会社員の副業ブリーダーの確定申告
会社員が副業でブリーダーをしている場合、給与を1か所から受けて年末調整を済ませている人は、給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要です。ただし、住民税にはこの基準がないため、別に申告が必要です。医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下のブリーダーの所得も申告書に含めます。事業所得と認められる規模で赤字が出た年は、確定申告をすれば給与所得と損益通算でき、源泉徴収された所得税の一部が戻ります(所得税法69条1項)。条件の詳細は副業の雑所得の20万円ルールと事業所得の区分にまとめています。
繁殖犬と販売用の子犬の会計処理
繁殖用の親犬・親猫は耐用年数8年
減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一「器具及び備品」の「10 生物」には、動物について「魚類2年、鳥類4年、その他のもの8年」と定められています。犬や猫は「その他のもの」に当たるため、法定耐用年数は8年です。牛・馬・豚・綿羊・やぎを扱う別表第四には、犬猫は含まれていません。
個人事業主の法定償却方法は定額法で、耐用年数8年の償却率は0.125です。30万円で購入した繁殖犬を1月から丸1年使った場合、その年の減価償却費は30万円×0.125=3万7,500円です。年の途中から使い始めた場合は、使った月数で月割りします。
繁殖犬の減価償却の開始時期
減価償却は、資産を業務の用に供した時から始めます。所得税基本通達49-27には「成熟の年齢」に達した月から償却できるという規定がありますが、対象は「令第6条第9号に掲げる生物」、つまり牛・馬・豚や果樹などです。器具及び備品に区分される犬猫に、この規定をそのまま当てはめることはできません。49-28の年齢表にも、犬猫の記載はありません。
幼齢で迎えた繁殖候補の犬は、取得日だけで償却の開始を決めないでください。初回の交配に使った月など、実際に繁殖の用に供した時期を飼育記録で示せるようにしておき、判断に迷う場合は所轄の税務署に確認します。
少額の繁殖犬を一度に経費にする特例
取得価額によって、全額を経費にする処理や3年間の一括償却を選べます。下表の少額減価償却資産の特例の年間限度額300万円は、年の途中で開業・廃業した場合、「300万円÷12×その年に業務を営んだ月数」で計算します。月数の1か月未満の端数は切り上げます。
| 取得価額 | 処理 | 対象者 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 業務の用に供した年に全額を経費 | 青色・白色とも対象 |
| 10万円以上20万円未満 | 3年間で3分の1ずつ経費(一括償却資産) | 全員(選択) |
| 令和8年3月末までの取得は30万円未満 | 業務の用に供した年に全額を経費(年間合計300万円まで) | 青色申告の中小事業者 |
| 令和8年4月以後の取得は40万円未満 | 業務の用に供した年に全額を経費(年間合計300万円まで) | 青色申告の中小事業者 |
少額減価償却資産の特例(租税特別措置法28条の2)は令和8年度改正で上限が40万円未満に上がり、期限は令和11年3月31日まで延びました。改正は令和8年4月1日以後の取得から適用されるため、令和8年分の申告では、1〜3月の取得は30万円未満、4月以後の取得は40万円未満と、取得月で基準が分かれます。
販売用子犬の棚卸評価と引退犬の譲渡の所得区分
販売するために飼育している子犬・子猫は棚卸資産です。12月31日時点で売れ残っている子犬・子猫は年末の在庫として計上し、その年の売上原価から除きます。自家繁殖の子犬の取得価額は、飼料費や獣医療費などの直接費に、従業員の人件費や犬舎の光熱費など繁殖・育成にかかった経費の配賦分を加えて計算します(所得税法施行令103条)。そのうえで、選んだ棚卸資産の評価方法に従って年末の評価額を求めます。どの子犬を在庫に含めたかを1頭ずつ記録しておくと、翌年の売上との対応を説明できます。
繁殖を引退した親犬を譲渡したときの扱いは、所得税基本通達27-1が参考になります。同通達は「養豚業における繁殖用又は種付用の豚の譲渡」のように、事業に使った固定資産を反復継続して譲渡することが事業の性質上通常である場合、その所得を事業所得としています。引退犬を定期的に譲渡しているなら、同じ考え方で事業所得に含めることになります。繁殖犬が死亡した場合は、帳簿に残っている未償却残高を事業用固定資産の損失として必要経費にします(所得税法51条1項)。
ブリーダーの経費と勘定科目
ブリーダーの経費は、繁殖と販売のために支出したものに限られます。代表的な支出と勘定科目の例は次のとおりです。
| 支出 | 勘定科目の例 |
|---|---|
| フード・ペットシーツ・消臭剤 | 消耗品費 |
| ワクチン・健康診断・帝王切開の費用 | 獣医療費 |
| 他のブリーダーへの交配料 | 支払手数料 |
| マイクロチップ装着・登録の手数料 | 支払手数料 |
| 動物取扱業の登録・更新手数料 | 租税公課 |
| 仲介サイトの掲載料・成約手数料 | 広告宣伝費・支払手数料 |
| 子犬の輸送費 | 荷造運賃 |
| 犬舎の建築費 | 建物(減価償却) |
上表の勘定科目名は例です。同じ種類の支出は継続して同じ科目にまとめると、前年との費用比較や記帳漏れの確認がしやすくなります。ただし、科目名にかかわらず、棚卸資産や固定資産に含めるべき支出はその区分に従って処理します。
同じ犬の購入でも、繁殖に使うのか販売するのかで処理が分かれます。仕訳の例は次のとおりです。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 繁殖に使う雌犬を50万円で購入 | 工具器具備品 500,000円 | 普通預金 500,000円 |
| 販売用の子犬を8万円で仕入れ | 仕入 80,000円 | 普通預金 80,000円 |
| 年末に繁殖犬の減価償却(7月から使用) | 減価償却費 31,250円 | 工具器具備品 31,250円 |
繁殖犬は資産に計上して8年で費用にし、販売用に仕入れた子犬は仕入(売上原価)にします。仕入れた子犬が年末に売れ残っていれば、その仕入価額を期末の棚卸高として翌年に繰り越します。繁殖犬の科目は「生物」とする例もあります。
自宅の一部を犬舎にしている場合、家賃・電気代などは、業務に使っている部分を明らかに区分できる範囲でだけ経費にできます(所得税法施行令96条)。家賃は犬舎の床面積割合、電気代は設備の使用時間や消費電力など、支出の実態に合う合理的な基準で按分し、間取り図や計算記録を残してください。按分できない私生活部分や、繁殖に使っていない家庭犬の費用は経費になりません。経費と所得控除の違いは個人事業主の経費と所得控除の整理で詳しく説明しています。
ブリーダーの確定申告の流れと青色申告決算書の書き方
令和8年分の申告期間と提出する書類
令和8年分の確定申告書の提出期間は、2027年(令和9年)2月16日から3月15日までです。所得税の納付期限も3月15日です。提出は e-Tax、郵送、税務署への持参のいずれでもできます。
確定申告書には、青色申告なら青色申告決算書(一般用)を、白色申告なら収支内訳書(一般用)を添付します。青色申告特別控除は、複式簿記で記帳して貸借対照表を添付し、期限内に申告すれば55万円、さらに e-Tax で申告するか優良な電子帳簿を保存すれば65万円で、これらの要件を満たさない場合は10万円です(国税庁 No.2072)。令和9年分以後は、65万円の控除に e-Tax での申告が必須となり、書面で申告した場合の上限は10万円に下がります。65万円の要件に加えて優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たし、適用年分の確定申告期限までに所定の届出書を提出すれば最大75万円です。ただし、既に優良な電子帳簿の保存による65万円控除を受けている人は、そのための届出書を改めて提出する必要はありません(国税庁のリーフレット)。
決算書の「減価償却費の計算」欄に繁殖犬を書く例
繁殖犬は、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に1頭ずつ書きます。収支内訳書にも同じ名前の欄があります。令和8年7月に50万円で購入し、同じ月から繁殖に使い始めたトイ・プードルの雌なら、記入は次のとおりです。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 減価償却資産の名称等 | 繁殖用犬(トイ・プードル雌) |
| 面積又は数量 | 1頭 |
| 取得年月 | 令和8年7月 |
| 取得価額・償却の基礎になる金額 | 500,000円 |
| 償却方法・耐用年数・償却率 | 定額法・8年・0.125 |
| 本年中の償却期間 | 6/12 |
| 本年分の普通償却費 | 31,250円 |
| 事業専用割合 | 100% |
| 本年分の必要経費算入額 | 31,250円 |
| 未償却残高(期末残高) | 468,750円 |
令和8年4月1日以後に取得した40万円未満の繁殖犬(同年3月31日以前の取得は30万円未満)に少額減価償却資産の特例を使う場合も同じ欄に書き、摘要欄に「措法28の2」と記載します(中小企業庁の案内)。販売用の子犬はこの欄に書きません。年末に売れ残った子犬は、損益計算書の期末商品(製品)棚卸高に計上します。
ブリーダーの消費税と個人事業税
消費税の簡易課税は自家繁殖なら第三種
国税庁は、簡易課税の第三種事業を「おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定」するとしています。日本標準産業分類(令和5年7月改定)の細分類0125「畜産類似業」には、例示として「愛がん用動物飼育業(カナリア、文鳥、犬など)」が挙がっており、この分類は大分類A「農業、林業」に属します。そのため、自分で繁殖させて育てた犬猫の販売は、飲食料品ではない農業として第三種事業(みなし仕入率70%)になります。
一方、他のブリーダーから仕入れた犬猫を、そのままの状態で販売する分は第三種になりません。事業者に売れば第一種(90%)、消費者に売れば第二種(80%)です。自家繁殖と仕入販売の両方を行う場合は、売上を区分して記録します。区分しない部分には、該当する事業のうち最も低いみなし仕入率が適用されます。また、固定資産として繁殖に使用していた親犬・親猫の売却は、原則として第四種事業(みなし仕入率60%)として区分します。
そもそも消費税の納税義務が生じるのは、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えた場合などです。免税事業者のまま販売すると、インボイスを求めるペットショップなどの事業者との取引で条件交渉になることがあります。納税が始まる時期と2割特例の扱いは売上1,000万円を超えたときの消費税の納税開始時期で整理しています。
個人事業税の業種区分と都道府県への確認
地方税法72条の2第8項1号は、第一種事業(税率5%)の物品販売業を「物品販売業(動植物その他通常物品といわないものの販売業を含む。)」と定めています。事業主控除は年290万円ですが、営業期間が1年未満なら月割りとなり、青色申告特別控除は適用されません。
一方、第二種事業(税率4%)の畜産業は、同条9項で「主として自家労力を用いて行うもの以外のもの」に限られています。自家繁殖のブリーダーをどちらの業種と認定するかを明示した都道府県の一次資料は見当たらず、認定は都道府県が行います。開業時に、事業所所在地の都道府県税事務所へ業種の扱いを確認してください。法定業種の一覧は個人事業税の法定70業種と税率にまとめています。
国税庁の調査データに見るブリーダーの申告漏れ
国税庁は毎年「所得税及び消費税調査等の状況」(令和6事務年度分は国税庁の公表資料)で、事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種を公表しています。ブリーダーは令和3事務年度から4年続けて上位10業種に入っています。
| 事務年度 | 順位 | 1件当たりの申告漏れ所得金額 |
|---|---|---|
| 令和3事務年度 | 3位 | 2,136万円 |
| 令和4事務年度 | 3位 | 2,075万円 |
| 令和5事務年度 | 5位 | 2,028万円 |
| 令和6事務年度 | 8位 | 1,876万円 |
令和6事務年度の1件当たりの追徴税額(加算税を含む)は498万円です。国税庁の注記によると、ブリーダーは令和2事務年度までは「小売業・犬」という業種名で管理されていました。1件当たりの申告漏れ所得金額は、調査した全年分の合計です。
売上と在庫の計上漏れを防ぐには、1頭ごとの記録を販売契約や入金記録と照合します。子犬ごとに、マイクロチップの識別番号、出生日、販売日、販売先、入金方法(現金・振込・仲介サイト経由)を1行で記録しておくと、売上の計上漏れと年末の在庫計上漏れを同時に防げます。売上は原則として引き渡した日で計上します。ただし、要件を満たして現金主義による所得計算の特例を適用している場合は取扱いが異なります。
申告しなかった場合、無申告加算税が原則15%課されます(国税通則法66条1項)。納付すべき税額が50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%です。調査の通知前に自主的に期限後申告すれば5%に下がります。延滞税は原則として法定納期限の翌日から発生します。令和8年中の割合は、納期限までとその翌日から2か月以内が年2.8%、その後が年9.1%です。期限後申告の場合、ここでいう納期限は申告書を提出した日です。税務調査の件数や確率は税務調査が入る確率と業種別データで紹介しています。
よくある質問
副業のブリーダーでも開業届は必要ですか?
所得税法229条は、事業を開始した人に開業届の提出を求めています。副業でも、繁殖と販売を事業として行うなら提出の対象です。令和8年以後の開業なら期限はその年分の確定申告期限までです。ただし、青色申告の承認申請は、1月1〜15日の開業ならその年の3月15日まで、1月16日以後なら開業日から2か月以内です。期限が土日祝日等に当たる場合は翌開庁日となります。
ブリーダーの開業届の職業欄には何と書けばよいですか?
職業欄の記載例は「犬の繁殖・販売業」です。事業の概要欄には、たとえば「トイプードルの繁殖および一般消費者への対面販売」のように、実際に扱う動物と販売方法を書きます。開業届とは別に、都道府県知事の第一種動物取扱業の登録が必要です。
繁殖犬の耐用年数は国税庁の資料では何年ですか?
耐用年数省令の別表第一「器具及び備品」の「生物」で、魚類・鳥類以外の動物は8年です。個人の定額法の償却率は0.125で、30万円の繁殖犬なら1年分の償却費は3万7,500円です。牛馬等を対象とする所得税基本通達49-27の成熟年齢の規定は、犬猫に直接は適用できません。
ブリーダーは簡易課税で第何種事業になりますか?
自分で繁殖させた犬猫の販売は、日本標準産業分類の「愛がん用動物飼育業」(大分類A「農業、林業」)に当たるため、第三種事業(みなし仕入率70%)です。仕入れた犬猫をそのまま売る分は、事業者向けが第一種、消費者向けが第二種です。
ブリーダーの確定申告はいつまでに何を出せばよいですか?
令和8年分は2027年2月16日から3月15日までに、確定申告書を提出します。青色申告なら青色申告決算書(一般用)を、白色申告なら収支内訳書(一般用)を添付します。繁殖犬の減価償却は決算書の「減価償却費の計算」欄に1頭ずつ書き、販売用の子犬の売れ残りは期末の棚卸高に計上します。