伝票とは、取引1件ごとに日付・相手・内容・金額を書き起こした票のことです。経理が帳簿を作るために書く入金伝票や振替伝票と、営業や倉庫が取引先とやり取りする発注書・納品書・請求書は、どちらも「伝票」と呼ばれます。この記事では、伝票の意味と帳簿・帳票・証憑との違い、会計伝票と業務伝票の種類、受注から入金までのどの時点でどの伝票が生まれるかを整理しました。後半では、どの伝票にも共通する記載項目とインボイスの要件、7年・10年の保存期間、販売管理システムで紙の伝票をやめる会社と残す会社の条件を扱います。
まとめ:伝票は取引1件を書き起こす票、会計伝票と業務伝票の2系統で整理する
伝票は大きく2系統に分かれます。帳簿をつけるために社内で書く会計伝票と、取引先との間でやり取りする業務伝票です。会計伝票には入金・出金・振替・売上・仕入の5種類があり、業務伝票には見積書・発注書・納品書・受領書・請求書・領収書などがあります。
2つの系統はつながっています。納品書や請求書に書いた数字が、経理で売上の仕訳になるからです。紙の伝票をやめるかどうかは、この受け渡しを手で打ち直しているかで決まります。振替伝票の書き方と記入例は振替伝票とは?書き方と記入例で詳しく扱っているので、本稿では伝票全体の地図と流れに絞ります。
伝票の意味と帳簿・帳票・証憑との違い、取引を1件ずつ書き起こす票の役割
伝票という言葉は、職場によって指すものが少しずつ違います。最初に、似た言葉との境目をはっきりさせておきます。
伝票とは取引1件の内容を書き起こした票、起票と転記で帳簿を作る仕組み
伝票を書くことを「起票」と呼びます。1枚の伝票に書くのは原則として取引1件です。帳面に発生順で書き連ねる帳簿と違い、伝票は1件ずつ切り離せるので、営業・倉庫・経理がそれぞれの持ち場で同時に書けます。
書いた伝票は経理が集め、日付順に綴じたうえで、勘定科目ごとの合計を総勘定元帳へ書き写します。この書き写しが「転記」です。伝票から帳簿を作る手順そのものは総勘定元帳の書き方と転記の手順で解説しています。伝票の様式は法律で決まっていません。市販の用紙でも、自社で作った様式でも構わないということです。
伝票・帳簿・帳票・証憑の違いの表、手元に残る書類をどれに分類するかの目安
4つの言葉は重なる部分があり、同じ書類が2つの呼び方をされることもあります。
| 言葉 | 指すもの | 単位 | 例 |
|---|---|---|---|
| 伝票 | 取引を書き起こした票 | 取引1件で1枚 | 振替伝票・納品書 |
| 帳簿 | 取引を発生順や科目別に記録した帳面 | 1冊・1期間 | 仕訳帳・総勘定元帳 |
| 帳票 | 帳簿と伝票をまとめた総称 | 種類を問わない | 試算表・出荷指示書 |
| 証憑 | 取引があったことを示す根拠書類 | 取引1件で1通 | 請求書・領収書・契約書 |
取引先から受け取った請求書は、業務伝票であると同時に、経理から見れば仕訳の根拠となる証憑です。一方、社内で書いた振替伝票は証憑にはなりません。証憑の種類と保存のしかたは証憑とは:種類一覧と保存期間にまとめています。
伝票の種類一覧、会計伝票5種類と業務伝票の発注書・納品書・請求書の役割
会計伝票は経理の都合で書く票、業務伝票は取引先とモノやお金をやり取りするための票です。
会計伝票の種類、入金・出金・振替・売上・仕入の5伝票と伝票制の選び方
会計伝票は5種類です。現金が増えた取引は入金伝票、減った取引は出金伝票、現金が動かない取引は振替伝票に書きます。掛けの売上と仕入が多い会社は、ここに売上伝票と仕入伝票を足します。
3種類だけ使う方法を3伝票制、5種類を使う方法を5伝票制と呼びます。すべてを振替伝票の形式1種類で書く1伝票制もあります。会計ソフトで入力する会社は、画面上ではどの伝票から入れても同じ仕訳データになるため、伝票の種類分けを意識する場面はほとんどありません。各伝票の欄の書き方と使い分けは入金伝票・出金伝票と振替伝票の違いを参照してください。
業務伝票の種類、見積書・発注書・納品書・受領書・請求書・領収書を出す場面
業務伝票は、取引の段階ごとに名前が変わります。
| 伝票 | 出す側 | 出す時点 | 伝える内容 |
|---|---|---|---|
| 見積書 | 売り手 | 受注の前 | 品目・数量・単価・有効期限 |
| 発注書(注文書) | 買い手 | 注文するとき | 品目・数量・単価・納期 |
| 納品書 | 売り手 | モノを届けるとき | 届けた品目と数量 |
| 受領書 | 買い手 | モノを受け取ったとき | 受け取った事実と日付 |
| 請求書 | 売り手 | 締め日のあと | 期間内の請求額と支払期日 |
| 領収書 | 売り手 | 代金を受け取ったとき | 受け取った金額と日付 |
倉庫では出荷伝票、運送では送り状と、業界ごとに別の名前の伝票も加わります。発注書と注文書は名前が違うだけで中身は同じ書類として扱われることが多く、使い分けは発注書と注文書の違いで整理しています。
複写式の伝票が今も使われる理由、控え・納品書・受領書を1回の記入で作る仕組み
卸や小売の現場では、3枚や4枚つづりの複写式伝票がまだ多く使われています。1枚目が売り手の控え、2枚目が納品書、3枚目が受領書という構成です。
1回書けば、売り手・買い手・配送の担当がそれぞれ同じ内容の紙を持てます。配送先で受領印をもらった3枚目を持ち帰れば、届けた証拠にもなります。手書きでも記入漏れや数字の食い違いが起きにくいことが、複写式が残っている最大の理由です。裏を返すと、控えを経理が見ながら会計ソフトへ打ち直す手間は、複写式のままでは消えません。
受注から入金までの業務の流れ、販売と購買の取引で伝票が生まれる順番
伝票は単独で存在するのではなく、取引の流れに沿って1枚ずつ生まれます。売る側と買う側では、同じ取引を反対側から見ることになります。
販売側の伝票の流れ、見積・受注・出荷・納品・請求・入金の6工程と出す伝票
掛けで商品を売る会社では、おおむね次の順で伝票が生まれます。
- 見積:見積書を作って取引先へ出す
- 受注:取引先から発注書を受け取り、社内で受注伝票を起こす
- 出荷:倉庫へ出荷指示書を回し、出荷伝票を起こす
- 納品:納品書を添えて届け、受領書に受領印をもらう
- 請求:締め日に、その期間の納品分をまとめて請求書を出す
- 入金:振込を確かめ、請求と照らし合わせて消し込む
担当は工程ごとに分かれます。見積と受注は営業、出荷と納品は倉庫と配送、請求と入金は経理という会社が多いはずです。部署の境目で伝票が手渡されるたびに、転記と確認の作業が生まれます。
購買側の伝票の流れ、発注書を出してから納品書・請求書を受け取り支払うまで
買う側の流れは、販売側を裏返した形です。発注書を出し、モノと一緒に届いた納品書で品目と数量を確かめ、受領書を返します。次に、受け取った請求書を発注書・納品書と突き合わせ、3つの数字が合っていれば支払います。
この突き合わせは「三点照合」と呼ばれ、購買の誤払いを防ぐ基本の手順です。発注した数と届いた数がずれる、単価が見積と違う、といった食い違いはここで見つけます。見積から支払いまでの工程と、どこからシステムに載せるかの判断は購買管理の業務フローで詳しく扱っています。
業務伝票から会計伝票へ、納品書と請求書の数字が売上の仕訳に変わる地点
業務伝票の数字は、ある時点で会計伝票に書き換えられます。販売側なら、商品を届けた日に「売掛金/売上」、代金が振り込まれた日に「普通預金/売掛金」の仕訳を起こすのが一般的な形です。
つまり経理は、納品書の控えを見て売上伝票を書き、入金の記録を見て振替伝票を書いています。同じ金額を2度書く作業が発生しているわけです。売上をいつ計上するかは会社の会計方針で決まり、出荷した日とする会社もあれば、取引先が検収した日とする会社もあります。どの日付で計上するかを決めないまま伝票を書くと、月をまたぐ取引で売上の月がずれます。仕訳1本の書き方は仕訳とは?書き方の5手順を参照してください。
伝票の書き方と保存の決まり、共通の記載項目とインボイスの要件と保存期間
伝票の様式は自由ですが、書く項目と残す期間には、税法から決まる部分があります。
どの伝票にも共通する記載項目、日付・伝票番号・取引先・内容・金額・起票者の欄
会計伝票でも業務伝票でも、次の項目はほぼ必ず入っています。
- 日付:取引が起きた日。起票した日とずれる場合は取引の日を書く
- 伝票番号:抜けや重複がないかを確かめるための通し番号
- 取引先:会社名や店名
- 内容:品目・数量・単価、会計伝票なら勘定科目と摘要
- 金額:税抜か税込かを明記する
- 起票者と承認者:誰が書き、誰が確認したか
このうち後から最も効いてくるのが伝票番号です。番号が連続していれば、途中の1枚が抜き取られていないことを示せます。書き損じた伝票も捨てずに「取消」と書いて残すのはこのためです。
納品書や請求書がインボイスになる条件、国税庁が示す6つの記載事項
国税庁のインボイス制度についてでは、適格請求書の記載事項として次の6つを挙げています。
- 交付を受ける買い手の氏名または名称
- 売り手の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分した対価の合計額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
同じページには、請求書に限らず、所定の事項が書かれていれば領収書や納品書など名称を問わずインボイスになる、と書かれています。月に何度も納品し、月末にまとめて請求する会社では、納品書と請求書のどちらに登録番号や税額を載せるかをあらかじめ決めておくことが必要です。制度の全体と2026年10月からの控除割合の変更は適格請求書(インボイス)とは?で解説しています。
伝票の保存期間7年と10年、施行規則59条が挙げる書類と電子保存の3区分
国税庁のNo.5930 帳簿書類等の保存期間によると、法人は帳簿と書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。青色繰越欠損金が生じた事業年度は10年です。保存の対象は法人税法施行規則の第59条に定めがあり、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書のように取引に関して作った書類は、自社が出した分の写しも含まれます。業務伝票の控えを7年残すのはこの規定によるものです。
電子で残す場合は、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトが示す3区分のどれに当たるかで要件が変わります。会計ソフトで作った伝票は「電子帳簿等保存」、紙の伝票を画像にして残すなら「スキャナ保存」、メールやEDIで受け取った請求書は「電子取引」です。電子取引で受け取ったデータは紙に印刷して保存する方法では済まないので、電子取引データ保存の要件を確かめてください。紙の伝票を画像で残す要件はスキャナ保存制度とは?にまとめています。
伝票レス化の判断、販売管理システムで紙の伝票をやめる会社と残す会社の条件
伝票レス化とは、紙の伝票を書いて回す運用をやめ、取引のデータから必要な帳票を出力する形に切り替えることです。どの会社にも勧められる話ではありません。
伝票レス化で変わること、手書きと転記をやめて取引データから伝票を出す形
販売管理システムを入れると、受注の入力が起点になります。受注データから出荷指示書と納品書が出力され、納品の実績から請求書が、請求と入金の記録から売上と入金の仕訳が自動で作られます。
伝票そのものが無くなるわけではない、という点は押さえておいてください。納品書も請求書も出力はされます。無くなるのは、同じ数字を部署ごとに手で書き直す作業と、控えを見ながら会計ソフトへ打ち直す作業です。経理が書いていた売上伝票は、販売管理から会計へ仕訳データを渡す連携に置き換わります。
紙の伝票を残してよい会社の条件、月の取引件数と取引先の受け取り方で決める
紙のままでよい会社ははっきりしています。納品が月に数十件程度で、請求書の作成から会計ソフトへの入力まで1人の担当者が半日で終わる会社です。仕組みを入れる費用と、取引先ごとの調整の手間のほうが大きくつきます。
もう1つの条件は取引先側です。配送先の店舗や工場が紙の納品書に受領印を押す運用を変えない場合、自社だけ伝票レス化しても紙の受領書は戻ってきます。この場合は、出力と記録はシステムで行い、受領書だけを紙で回収して画像で残す形が現実的です。取引先ごとに様式が違う紙の注文書が大量に届く会社なら、AI-OCRで非定型帳票を読み取る仕組みで入力側を減らす方法もあります。
伝票レス化で詰まる箇所、取引先指定の伝票・受領印・伝票番号の体系の3点
実際に移行を進めると、詰まる場所はおおむね決まっています。
- 取引先指定の伝票:百貨店やチェーンストアの中には、自社指定の様式やチェーンストア統一伝票での納品を求める先がある。システムから同じ様式で印字できるかを最初に確かめる
- 受領印:受領書の回収が残ると、紙の回収と照合の作業だけが残る。配送伝票の控えや電子の受領記録で代えられるかを取引先と相談する
- 伝票番号の体系:手書き時代の番号と、システムが振る番号が混在すると、過去の伝票を追えなくなる。移行日を境に番号を切り替え、旧番号を参照用の項目として持たせる
取引先が多く、発注から請求までを企業間でデータのまま送り合いたい場合は、伝票レス化の先にEDIがあります。仕組みと流れはEDI取引とは?発注から支払までの流れで扱っています。
販売管理システムの開発を検討する会社と、パッケージで足りる会社の分かれ目
受注から請求までの流れが一般的な掛け売りで、取引先指定の伝票も少ない会社は、既製の販売管理システムで足ります。機能の範囲と選び方は販売管理システムとは?機能とExcel管理との違いを参照してください。
開発を検討すべきなのは、パッケージに業務を合わせると伝票が増えてしまう会社です。取引先ごとに締め日・単価・伝票の様式が異なる、1つの受注を複数の倉庫から分けて出荷する、納品後に数量を確定させてから請求する、といった流れを持つ会社では、パッケージの標準画面に収まらない部分を紙やExcelで補うことになりがちです。そうなると伝票レス化の意味が薄れます。自社の伝票の流れに合わせて受注から会計連携までをつなぐ設計は、一創の販売管理システム開発でご相談いただけます。
よくある質問
伝票について、経理や営業事務を担当し始めた方から出やすい質問をまとめました。
伝票と請求書の違いは何ですか?
請求書は伝票の一種です。伝票は取引を書き起こした票の総称で、その中に会計伝票と業務伝票があり、請求書は業務伝票に入ります。会計の分野で単に「伝票」と言うときは、入金伝票や振替伝票などの会計伝票を指すことが多いため、請求書と別物として説明されることがあります。請求書は取引先へ代金の支払いを求めるための書類、会計伝票は社内で帳簿をつけるための票、と目的で区別すると混乱しません。
伝票番号は何のために振るのですか?
伝票に抜けや重複がないことを確かめるためです。通し番号が連続していれば、途中の伝票が紛失したり抜き取られたりしていないと示せます。取引先から問い合わせを受けたときに、どの伝票の話かを特定する目印にもなります。書き損じた伝票も番号を飛ばさず「取消」として残し、システムでは取り消した番号を再利用しないのが原則です。締めた後に訂正するときの赤黒処理の扱いは締め処理と赤黒処理の実装で解説しています。
伝票は英語で何と言いますか?
一般には slip と言います。入金伝票は receipt slip、出金伝票は payment slip、振替伝票は transfer slip と訳されることが多い言葉です。会計の文脈では、取引の根拠となる票という意味で voucher を使うこともあります。納品書は delivery note、請求書は invoice です。海外の取引先や外資系のシステムでは、日本の「伝票」に1対1で当たる語がないため、どの書類を指しているかを具体的な名前で確かめてください。
取引先から指定された伝票は必ず使わないといけませんか?
法律上の義務はありませんが、取引の条件として求められている場合は従うのが一般的です。指定伝票は、受け取る側が自社の仕入システムに読み込んだり、検品を効率よく行ったりするために定めているものです。使わないと検品や支払いが遅れることがあります。販売管理システムを選ぶ・作るときは、主要な取引先の指定様式に印字できるかを要件に入れておくと、手書きの伝票が残りません。
個人事業主も伝票を書く必要がありますか?
必須ではありません。伝票は帳簿を作るための手段の1つで、法令は伝票を使うことまでは求めていないからです。取引が少ない個人事業主は、会計ソフトに直接入力すれば足ります。ただし、取引先へ出した納品書や請求書の控え、受け取った領収書は、帳簿の根拠として保存が必要です。青色申告の場合の保存年数は書類の種類で分かれるので、税務署の案内で確認してください。
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