経理代行サービスは、記帳・請求書発行・支払・経費精算・給与計算などの経理実務を外部の事業者に任せるサービスです。料金は「何を・どれだけ」任せるかで決まり、記帳なら仕訳数、給与計算なら従業員数、オンラインアシスタント型なら作業時間が単位になります。
依頼先を選ぶ前に押さえておくべきなのが法律の線引きです。申告書の作成や税務相談は税理士法で税理士しか行えず、社会保険の届出代行は社会保険労務士法で社労士の業務とされています。罰則の対象は受けた業者ですが、業者が摘発されれば、依頼した会社は申告や届出の担い手を年度の途中で失います。この記事では、料金の決まり方を公開料金の例で示したうえで、依頼先の違い、資格が要る業務、選び方と依頼の流れを順に解説します。
まとめ:経理代行サービスの料金と依頼先選びの要点
- 経理代行で任せられるのは、記帳・請求書発行・入金消込・支払・経費精算・給与計算・月次決算の補助です。資格の要らない実務が中心で、決算整理や申告は税理士の領域に入ります。
- 料金の単位は業務ごとに違います。公開料金の例では、記帳代行が月100仕訳まで月11,000円(税込)、給与計算代行が従業員30人で月18,700円(税込)、オンラインアシスタント型が月30時間で90,000〜132,000円(税抜)です。見積もりを比べるときは、同じ単位にそろえてから比べます。
- 申告書の作成・税務代理・税務相談は、有償か無償かを問わず税理士しか業として行えません(税理士法52条、違反は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。社会保険・労働保険の届出代行と賃金台帳などの帳簿書類の作成は、報酬を得て行えるのは原則として社労士だけです(社会保険労務士法27条。税理士が税理士業務に付随して行う場合を除く)。
- 依頼先は「申告まで1社で完結させたいなら税理士事務所」「記帳・支払・請求の実務量を減らしたいなら経理代行会社」「社内の担当者を残したまま手を借りたいならオンラインアシスタント型」が基準です。
- 取引が月数十件で、社内の担当者が会計ソフトへの入力に慣れているなら、経理代行より会計ソフトの自動取込を先に試すほうが安く済みます。
経理代行で任せられる業務と記帳代行・税理士との違い
業務ごとの担い手:代行会社・税理士・社労士の役割分担
経理代行の対象業務は、資格の要らない実務と、資格者だけが行える業務に分かれます。どの業務を誰に頼めるかを先に整理しておくと、見積もりの範囲がぶれません。
| 業務 | 経理代行会社 | 税理士 | 社労士 |
|---|---|---|---|
| 仕訳入力・記帳 | 可 | 可(付随業務) | - |
| 請求書発行・入金消込 | 可 | 可 | - |
| 支払・振込データ作成 | 可 | 可 | - |
| 経費精算のチェック | 可 | 可 | - |
| 給与の計算 | 可 | 可 | 可 |
| 賃金台帳の作成 | 不可※ | 税理士業務に付随する範囲 | 可 |
| 社会保険・労働保険の届出 | 不可※ | 税理士業務に付随する範囲 | 可 |
| 申告書作成・税務相談 | 不可 | 可 | 不可 |
※報酬を得て業として行う場合。届出まで任せるときは、代行会社の提携社労士と自社が直接契約する形にします。税理士がどこまで付随業務として扱うかは事務所ごとに確認します。
どこまでを社外に出し、どこを社内に残すかの切り分けは経理アウトソーシングの定義と対象業務の全体像で詳しく扱っています。給与計算だけを委託する場合の範囲と料金は給与計算アウトソーシングの委託範囲と料金相場を参照してください。
記帳代行・経理代行・税理士顧問の違い
記帳代行は、領収書や通帳のデータから仕訳を起こして会計帳簿をつける作業に限ったサービスです。経理代行は記帳に加えて、請求書の発行、入金の消込、支払、経費精算のチェックまで日々の実務を引き受けます。税理士顧問は、決算・申告と税務相談が本体で、記帳はその付随業務という位置づけです。
税理士法2条2項は、税理士が税理士業務に付随して「会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務」を行えると定めています。記帳そのものは資格がなくても行える業務なので、記帳代行会社が仕訳を起こし、決算と申告だけを顧問税理士が受け持つ分担も成り立ちます。
経理代行の料金相場と料金の決まり方
経理代行の料金は、業務ごとに計算の単位が違います。ここでは各社の公式料金ページに載っている価格(2026年10月6日時点)を例に、単位ごとの水準を示します。実際の請求額は見積もりで決まるため、比べるときは自社の件数・人数・時間に当てはめて計算します。
記帳代行:月の仕訳数による従量料金
記帳代行は、1か月に起こす仕訳の数で料金が決まるのが一般的です。中央経理センターの経理記帳代行サービスは、月100仕訳までのAコースが月額11,000円(税込)です。101〜250仕訳のBコースは「月々10,000円+1仕訳増毎に110円」という料金表記です。年1回の総勘定元帳の作成は5,500円の別料金です。
仕訳数は「通帳の明細1行=1仕訳」とは限りません。1枚の請求書を複数の勘定科目に分ける複合仕訳をどう数えるかは事業者ごとに違うため、見積もりの前に直近3か月の仕訳数を会計ソフトから出し、数え方をそろえて比べます。
給与計算代行:基本料金と従業員1人あたりの単価
給与計算は、毎月の基本料金に計算する人数分の単価を足す形が多く見られます。丸の内マネージメントのMiyata給与計算は、基本料金が月額5,500円、1名あたり月額440円(いずれも税込)です。従業員30人なら月額18,700円、50人なら27,500円(1人あたり550円)になります。勤怠の集計(1名あたり月額935円)や賞与計算は別料金なので、賞与月は請求額が上がります。
オンラインアシスタント型:月の作業時間と契約期間による料金
経理を含む事務作業を時間単位で請け負うオンラインアシスタント型は、月の作業時間と契約期間で料金が決まります。30時間のプランで比べると次のとおりです。
| サービス | プラン | 月額(税抜) | 1時間あたり | 契約期間 |
|---|---|---|---|---|
| フジ子さん | PLAN30 | 92,700円 | 約3,090円 | 1か月(自動更新) |
| Remobaアシスタント | スタンダード | 96,000円 | 3,200円 | 6か月 |
| Remobaアシスタント | ロング | 90,000円 | 3,000円 | 12か月 |
| CASTER BIZ assistant | BASIC | 132,000円 | 4,400円 | 6か月 |
| CASTER BIZ assistant | BASIC | 120,000円 | 4,000円 | 12か月 |
同じ30時間でも、契約期間を長くすると時間単価が下がる設計です。経理だけで月30時間を使い切らない会社は、20時間のプラン(フジ子さんのPLAN20は月額62,400円・税抜)や、仕訳数課金の記帳代行と組み合わせたほうが総額を抑えられます。
見積もりが上がる条件
- 証憑が紙で、郵送の受け取りやスキャンを代行会社に頼む
- 決算月・賞与月など、月によって処理件数が大きく変動する
- 代行会社が対応していない会計ソフトを使い続けたい
- 月次の締めを翌月5営業日以内など短い期限で求める
- 申告書の作成や社会保険の届出など、資格者の業務まで含める
経理代行が違法になるケース:資格が必要な業務と法律の線引き
「経理代行は違法か」という問いへの答えは、業務によって分かれます。記帳や請求書発行の代行は違法ではありません。違法になるのは、資格者だけに認められた業務を無資格の業者が行う場合です。
税理士法52条:申告書の作成と税務相談は税理士だけ
税理士法2条1項は、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つを税理士業務と定め、52条は「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」としています。違反すると59条1項4号により、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
この制限は無料でも外れません。国税庁の税理士法基本通達2-1は、税理士業務を「業として行う」かどうかを反復継続の意思で判断し、有償か無償かを問わないとしています。経理代行会社が「申告書の作成もサービスで」と提案してきたら、税理士が実際に作成・署名する体制かを確認します。行政書士など他の士業でも原則は同じで、詳しくは行政書士に確定申告を頼めない理由と税理士法52条で解説しています。
社会保険労務士法27条:社会保険の届出代行は社労士
社会保険労務士法27条は、社労士でない者が「他人の求めに応じ報酬を得て」2条1項1号から2号の事務を業として行うことを禁じています。対象は、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成、その提出代行、事務代理、帳簿書類の作成です。労働社会保険諸法令には労働基準法が含まれるため(同法別表第一)、労働基準法108条の賃金台帳も帳簿書類にあたります。違反した場合は32条の2第1項6号により、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。27条ただし書と同法施行令2条により、税理士が税理士業務に付随して行う場合は、この制限が外れます。
給与の計算そのものを社労士だけの業務とする条文はありません。給与計算代行を頼む際は、算定基礎届や入退社の資格取得・喪失届まで任せたいのか、計算結果の受け取りだけでよいのかを分けて見積もりを取ります。届出まで頼むなら、社労士(社労士法人)と自社が直接契約しているかを契約書で確認します。27条に違反する業者から仕事の紹介(事件のあっせん)を受けることは、社労士の側でも社会保険労務士法23条の2で禁じられています。
番号法と個人情報保護法:委託先の監督と再委託の許諾
給与計算や源泉徴収の代行では、従業員のマイナンバーを委託先に渡します。番号法11条は委託元に「必要かつ適切な監督」を義務づけ、10条は委託を受けた者が再委託できるのは委託元の許諾を得た場合に限るとしています。経理代行会社がさらに別の事業者へ作業を出しているなら、その再委託を自社が許諾した記録が必要です。
マイナンバー以外の従業員・取引先の個人データでも、個人情報保護法25条が委託先の監督を求めています。委託先の安全管理措置(アクセス権限、データの受け渡し方法、契約終了時の削除)を契約前に書面で確認し、年に1回は実施状況の報告を受けます。
常駐型・派遣との混同で起きる偽装請負
代行会社のスタッフが自社のオフィスに常駐する形では、自社の社員がそのスタッフに直接作業を指示すると、業務委託の形をとった労働者派遣(偽装請負)と判断されるおそれがあります。厚生労働省は、労働者が請負事業主ではなく発注者から直接指揮命令を受けると、実態として労働者派遣に該当し偽装請負になると説明しています。労働者派遣と請負を区分する基準(昭和61年労働省告示第37号)は、受託者が自ら業務の遂行方法や労働時間を指示・管理していることを請負の要件としています。業務の内容・量・手順・期限はあらかじめ書面で取り決め、日々の個別の指示は出しません。東京労働局は「形式だけ責任者型」として、現場に責任者を置いていてもその責任者が発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけなら、発注者が指示しているのと実態は同じだと説明しています。
経理代行のメリット・デメリットと向かない会社
メリット:担当者の退職リスクと牽制の仕組み
最も大きい効果は、経理担当者が1人しかいない会社で、その人の退職や休職で経理が止まるリスクを外せることです。チーム制で受ける代行会社なら、担当者が1人抜けても手順が残ります。契約前に主担当と副担当の人数を確認します。
支払の承認者と振込データの作成者を分けられる点も利点です。社内の1人が請求書の受領から振込までを担当していると、不正を見つける仕組みが働きません。外部の作成者と社内の承認者を分ければ、規模の小さい会社でも職務分掌が成り立ちます。経理の内部統制の考え方は経理の内部統制が必要な理由と規模別の優先順位で扱っています。
デメリット:即時性と社内のノウハウ
代行会社への依頼は資料の受け渡しと確認のやり取りを挟むため、「今日中にこの取引先の入金状況を知りたい」といった問い合わせには即答できないことがあります。月次の締めも、資料の提出期限から逆算した日程になります。オンラインアシスタント型は稼働時間も決まっており、Remobaアシスタントは平日9:00〜17:00です。フジ子さんは契約時間を超えた作業に時間単価の1.5倍の超過料金がかかります。
仕訳の判断を代行会社に任せきりにすると、勘定科目の使い分けや取引の会計処理を社内の誰も説明できなくなります。月次の試算表を受け取ったら、前月比で大きく動いた科目の理由を社内で説明できるかを確かめる時間を、毎月とるようにします。
経理代行を見送るべき条件
- 取引が月数十件で、会計ソフトの自動取込で足りる:銀行・カードの明細を会計ソフトに連携すれば仕訳の候補が自動で作られます。会計ソフトの利用料(例:マネーフォワード クラウド会計のスモールビジネスプランは年払いで月4,480円・税抜)は、記帳代行の月11,000円(税込)を下回ります。業務の自動化から始める進め方は経理DXの進め方と対象業務の優先順位を参照してください。
- 証憑が紙のまま社内に散らばっている:領収書や請求書の回収ルールが無い状態で委託すると、代行会社が受け取れるのは揃った分だけで、未処理の取引が残ります。先に証憑の回収と保管のルールを決めます。
- 経営判断に使う数字の設計が課題:予算と実績の管理や資金繰りの計画づくりは、実務の代行では埋まりません。この場合は社外CFOの役割と費用相場で扱う支援の形が合います。
経理代行サービスの選び方と依頼の流れ
依頼先タイプ別の向き・不向き
| 依頼先 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| 税理士事務所 | 記帳から申告まで1か所で | 請求・支払の実務は対象外が多い |
| 経理代行会社 | 日々の実務量を減らしたい | 申告は税理士と別途契約 |
| BPO事業者 | 処理件数が多い中堅以上 | 業務設計と移行に期間がかかる |
| オンラインアシスタント | 社内担当者を残して手を借りる | 時間枠の超過は割増料金 |
BPOの定義や人材派遣との違いは外注・派遣・請負と混同しないためのBPOの定義で整理しています。
見積もり前に確認する5項目
- 月の処理件数:仕訳数、請求書の発行枚数、支払件数、経費精算の申請件数。料金表の単位にそろえて数えます。
- 使っている会計ソフト:代行会社が対応しているソフトか、乗り換えが必要か。年度の途中で乗り換えると期中の残高と仕訳の移行が必要になるため、期首からの切り替えが扱いやすくなります。
- 資料の受け渡し方法:紙の郵送か、スキャンデータか、会計ソフト・ストレージの共有か。郵送の場合は発送の手間と紛失リスクを見込みます。
- 資格者の関与:申告は誰が作成・署名するか、社会保険の届出は誰が提出するか、再委託先はどこか。
- 契約の終了条件:最低契約期間、解約の予告期間、終了時のデータ返却と削除の方法。
問い合わせから稼働までの流れ
一般的な流れは、問い合わせと業務のヒアリング、見積もりと契約、引き継ぎ資料の準備、試行運用、本稼働の順です。引き継ぎでは、勘定科目の使い方、取引先ごとの支払条件、毎月発生する定型の仕訳、過去に指摘を受けた処理をまとめた資料を用意します。
最初の1〜2か月は社内でも同じ月を並行して処理し、代行会社の試算表と照合すると、科目の付け方や計上時期の違いを早い段階でつぶせます。稼働後は、資料の提出期限と試算表の受け取り日を月次の予定表に固定します。
よくある質問
経理代行は違法ですか?
記帳や請求書発行、支払の代行は違法ではありません。違法になるのは、税理士でない者が申告書の作成や税務相談を行う場合(税理士法52条)や、社労士でない者が報酬を得て社会保険の届出を代行する場合(社会保険労務士法27条)です。
経理代行の使い方は?資料はどう渡しますか?
多くのサービスは、領収書や請求書をスキャンまたは撮影してクラウドストレージや専用の受付画面にアップロードし、銀行やカードの明細は会計ソフトとの連携や閲覧権限の付与で共有する方式です。紙の原本を郵送する方式もあります。どちらの場合も、毎月の提出期限を決めておくことが前提です。
経理代行の業者に守秘義務はありますか?
税理士(税理士法38条)と開業社労士(社会保険労務士法21条)には法律上の守秘義務があります。資格者でない経理代行会社には一般的な守秘義務の規定が無いため(マイナンバーを含む特定個人情報ファイルを正当な理由なく提供した従事者は、番号法48条で4年以下の拘禁刑等の対象)、秘密保持契約と、個人情報保護法25条に基づく委託先としての安全管理措置を契約書で定めます。
個人事業主やフリーランスでも経理代行を頼めますか?
頼めます。個人事業主向けに、月の仕訳数が少ない前提の低額プランを用意している事業者もあります。ただし確定申告書の作成は税理士の業務なので、申告まで任せたい場合は税理士事務所か、税理士と提携しているサービスを選びます。
経理代行と税理士顧問は両方必要ですか?
申告を税理士に頼んでいて、記帳や支払の実務量が負担になっているなら、両方を使う形になります。顧問税理士が記帳まで引き受けている場合は、請求書の発行や支払といった多くの税理士事務所が扱わない実務だけを経理代行に出すと、範囲の重複を避けられます。