看護休暇は、小学校3年生修了までの子を育てる労働者が、子の病気やけがの看護などのために1年度に5日(対象の子が2人以上なら10日)まで取れる法定の休暇です。2025年4月1日の改正で正式名称が「子の看護等休暇」に変わり、対象の子が小学校入学前から小学3年生修了までに延びたうえ、学級閉鎖や入園式・卒園式・入学式でも取れるようになりました。この記事では、育児介護休業法16条の2と施行規則の条文、厚生労働省の資料をもとに、対象者と日数、取得事由、時間単位取得のルール、申出と賃金の扱いを確認します。後半では、勤怠システムで子ごとの対象期間と残日数・残時間をどう持つかという設計と、パッケージで足りる会社・個別開発を検討すべき会社の境界を整理します。
まとめ:看護休暇で会社が守るルールと勤怠システムで持つべき判定・残高の項目
子の看護等休暇は、労働者から申出があれば会社が拒めない休暇です。日々雇用を除く全ての労働者が対象で、労使協定で除外できるのは週の所定労働日数が2日以下の人だけになりました。日数は対象の子が1人なら年5日、2人以上なら年10日。時間単位の申出も、時間単位が難しい業務として協定で外した人を除いて断れません。
取得事由は、病気・けがの看護、予防接種・健康診断、学級閉鎖等、入園・卒園・入学の式典の4類型です。賃金は無給でもかまいませんが、休んだ時間を超えて給与を減らす扱いは不利益取扱いになります。勤怠システムでは、子の生年月日から対象が終わる3月31日を自動で求め、上限の5日と10日を切り替え、残高を日と時間の2列で介護休暇や年次有給休暇とは別に持つ。この3点を押さえれば、規定の変更にも設定値の更新で追随できます。
子の看護等休暇の対象と日数:育児介護休業法16条の2が定める小3修了まで年5日
まず条文で制度の骨格を確かめます。看護休暇は会社が任意に設ける特別休暇ではなく、就業規則に定めがなくても労働者が取れる法定の休暇です。
1年度に5日・対象の子が2人以上で10日、年度は4月1日始まりという日数の数え方
e-Gov法令検索に掲載された育児介護休業法の16条の2第1項は、小学校第3学年修了前の子を養育する労働者が、事業主に申し出ることで1の年度に5労働日(その子が2人以上なら10労働日)を限度に休暇を取れると定めています。子1人ごとに5日ずつ増える仕組みではありません。対象の子が3人いても年10日です。
条文は10日を子ごとに割り振ることを求めていないので、2人の子のうち1人の看護で10日を使い切ることもできます。年度は、会社が別に定めなければ4月1日から翌年3月31日まで(同条4項)。暦年で区切るなら、就業規則に年度の定めを書いておきます。
小学校第3学年修了前は9歳到達後最初の3月31日まで、誕生日で切らない判定
条文は「小学校第三学年修了前の子」を、9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子と定義しています。学年と同じ区切りで、誕生日に対象から外れるわけではありません。年齢は誕生日の前日に1つ加わる扱いなので、4月1日生まれの子は1学年上と同じ時期に対象を外れます。
| 子の生年月日 | 9歳に達する日 | 対象の最終日 |
|---|---|---|
| 2017年4月1日 | 2026年3月31日 | 2026年3月31日 |
| 2017年4月2日 | 2026年4月1日 | 2027年3月31日 |
| 2018年3月31日 | 2027年3月30日 | 2027年3月31日 |
生年月日から満9歳の誕生日で対象を切る設定にしていると、ほとんどの子が実際の3年生修了より前に対象外になります。改正前の「小学校就学の始期に達するまで」と同じ発想で作られた判定ロジックは、この点を必ず確認してください。
パートや入社直後も対象、労使協定で除外できるのは週2日以下だけ
対象は日々雇用される人を除く全ての労働者で、男女も雇用形態も問いません。会社は申出を拒めず(16条の3第1項)、例外は労使協定で定めた人に限られます。
厚生労働省の育児休業制度特設サイト「法改正のポイント」によると、2025年3月31日までは「継続雇用期間6か月未満」と「週の所定労働日数が2日以下」の2つを協定で除外できました。4月1日以降は前者が撤廃され、後者だけです。入社直後の社員を一律に対象外としたままの協定は、効力のない条項が残っている状態になります。改正全体の流れは育児介護休業法の改正内容を施行日別に整理した記事にまとめています。
2025年4月改正で広がった取得事由:学級閉鎖・入園式と出席停止の範囲
名称が「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に変わったのは、看護以外の事由が加わったためです。取れる場面を条文の単位で分けて確認します。
法定の取得事由は看護・予防接種と健診・学級閉鎖等・式典参加の4類型
16条の2第1項と育児介護休業法施行規則を合わせると、取得事由は次の4つです。
- 負傷し、または疾病にかかった子の世話(改正前から)
- 予防接種または健康診断を受けさせること(施行規則32条・改正前から)
- 学校保健安全法による出席停止や学校の休業などに伴う子の世話(施行規則33条・2025年4月追加)
- 入園、卒園または入学の式典その他これに準ずる式典への参加(施行規則33条の2・2025年4月追加)
病気の種類や重さに要件はなく、風邪で通院に付き添う場合も対象です。予防接種は任意接種も条文上区別されていません。
学級閉鎖や出席停止は子が感染していなくても対象、保育所の休園も含む線
施行規則33条は、学校保健安全法19条の出席停止と、同法20条による学校の休業(学級閉鎖・学年閉鎖・休校)を挙げ、保育所等の施設でこれらに準ずる事由も含めています。厚生労働省の子の看護等休暇のページは、感染症による学級閉鎖等で子の世話をする場合、子が感染症にかかっていなくても取れると説明しています。
インフルエンザの流行で学年閉鎖になり、本人は元気でも家に1人で置けない。この場面が典型例です。改正前は子が発症していなければ看護休暇の対象にならず、年次有給休暇で対応するしかありませんでした。
入園式・卒園式・入学式は対象、授業参観や運動会を含めるかは会社の上乗せ
施行規則33条の2が定める行事は「入園、卒園又は入学の式典その他これに準ずる式典」です。条文の列挙は式典に限られ、授業参観、運動会、保護者面談は挙がっていません。これらを対象に含めるのは法定を上回る扱いとして会社が決められますが、法律上の義務ではありません。
対象の子は小学3年生修了までなので、小学校の卒業式は時期的に対象外です。上乗せで行事を広げる会社は、法定分と上乗せ分を同じ休暇区分に混ぜず、事由コードで分けておくと、法定の5日を使い切ったかどうかの判定がぶれません。
時間単位取得のルール:始業・終業に連続する1時間単位と1日分の時間数
現在の条文には、1日の所定労働時間が短い人を時間単位の対象から外す定めがありません。パートを含め、対象者は全員が時間単位で申し出られます。
施行規則34条の始業から連続・終業まで連続という要件と中抜けの扱い
施行規則34条1項は、時間単位の子の看護等休暇を「始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続する」時間で取るものと定めています。9時始業・18時終業なら、9時から11時、または16時から18時という取り方が法定の範囲です。勤務の途中で抜けて戻る中抜けを認める義務はありません。
小児科の受診は午前中に集中しやすく、始業から連続で取れば法定の範囲に収まることが多いはずです。一方、昼に保育所から呼び出されて迎えに行くと、そこから終業までを休暇にする形になります。中抜けを認めるかは就業規則で決められるので、子育て中の社員が多い職場なら検討の余地は大きいはずです。認める場合は申請画面と打刻の突き合わせを変える必要があり、後で触れるシステム改修の分かれ目になります。
所定7時間30分なら1日8時間で年40時間、半日単位を残すときの注意
時間単位で取るときの1日分の時間数は、1日の所定労働時間数です(施行規則34条2項)。日によって所定労働時間が違う人は1年間の1日平均所定労働時間数を使い、1時間未満の端数は1時間に切り上げます。所定7時間30分の会社なら1日分は8時間で、子が1人の人の上限は8時間×5日の40時間、2人以上なら80時間です。
年次有給休暇の時間単位は年5日までという別の上限がありますが、子の看護等休暇にはその枠がなく、全部を時間単位で使えます。年休側の上限と労使協定の要件は有給休暇の時間単位取得と勤怠システムの残高管理を解説した記事で整理しています。
法定の単位は1日と1時間です。半日単位を就業規則に残すこと自体は、法定に加えた選択肢として問題ありません。ただし時間単位の申出を断る理由にはならず、半日を所定労働時間の2分の1とする会社では、半日2回で1日分の時間数(切り上げ後)と合わなくなる点に注意が要ります。時間単位が難しい業務に就く人は、労使協定で時間単位の対象から外せます(16条の3第2項)。外せるのは時間単位だけで、1日単位の取得までは止められません。
申出・証明書類・賃金の扱い:人事が受付と給与計算で迷いやすい論点
子の発熱は前日に予測できません。受付の流れと賃金の扱いは、当日の朝に連絡が来る前提で決めておきます。
当日の口頭申出も受け付ける前提と施行規則35条が定める申出事項4つ
厚生労働省の子の看護等休暇のページは、申出は原則として書面等で行い、緊急の場合は口頭で申し出て書面を後日提出することもできるとしています。申出で明らかにする事項は、施行規則35条1項が4つに決めています。
- 申出をする労働者の氏名
- 子の氏名と生年月日
- 取得する年月日(時間単位なら開始と終了の年月日時)
- 子が負傷・疾病にかかっている事実、または予防接種・健診、学級閉鎖等の世話、式典への参加をする旨
会社はこの4番目の事項を証明する書類の提出を求めることができます(同条2項)。条文は書類の種類を限っていないので、学級閉鎖のお知らせ、入園式の案内、予防接種の予診票の控えなど、手元にあるもので足りる運用が現実的です。書類が揃うまで休ませない運用は、拒めない休暇の性格と合わないため、取得を先に認めて書類は後から受け取る順番にしておきます。
有給か無給かは会社が決めるが、休んだ時間を超える減額は不利益取扱い
育児介護休業法には、子の看護等休暇の日の賃金を支払うよう求める規定がありません。有給にするか無給にするかは就業規則で決めます。年次有給休暇とは別の休暇なので、年休の残りを先に使うよう求めて申出を断ることはできません。
無給にする場合も、限度はあります。法16条の4は、介護休業の不利益取扱いを禁じる16条を子の看護等休暇に準用しており、休んだ日や時間を超えて賃金を減らすこと、賞与や昇給の算定で欠勤と同じに扱うことは問題になります。休暇区分は「欠勤」と分け、賞与の出勤率の計算で欠勤側に数えられていないかを確かめてください。控除額の計算と端数処理は勤怠控除の計算方法と給与連携の実務を解説した記事で扱っています。
勤怠システムで子の看護等休暇を管理する対象判定・残高・休暇区分の設計
ここからは、子の看護等休暇を勤怠システムでどう持つかという設計の話です。パッケージを選ぶ場合も、個別開発や改修を依頼する場合も、要件定義でこの粒度まで決めておくと手戻りが減ります。
子ごとの対象終了日を生年月日から自動計算し、上限5日と10日を切り替える
判定の起点は、社員に紐づく子のマスタです。子ごとに生年月日を持たせ、9歳に達する日(9回目の誕生日の前日)以後の最初の3月31日を対象終了日として自動で求めます。各日付時点で対象終了日を過ぎていない子の数を数え、1人なら5日、2人以上なら10日を上限にします。
注意したいのは、年度を4月1日以外で区切る会社です。1月始まりの年度では、上の子が3月31日で対象を外れると、年度の途中で上限が10日から5日に下がります。すでに6日使っていた場合の扱いは法律に細かな定めがないため、就業規則で決めたうえでシステムの判定に反映します。年度の始まりはプログラムに固定せず、設定値として持たせてください。
時間単位の残りを日と時間の2列で持ち、介護休暇・年休とは別の残高にする
時間単位を使う場合の残高は、「3日と5時間」のように日と時間に分けて保持します。小数1列(3.625日など)で持つと、所定労働時間が人によって違う会社で換算が崩れるためです。1日分の時間数は施行規則34条2項の切り上げ後の値を社員ごとに持ち、所定労働時間を変えた人は適用開始日つきで履歴を残します。
子の看護等休暇と介護休暇は条文も枠も別で、同じ年度に両方を上限まで使えます。年休とも時間単位の上限の有無が違うので、3つは別の残高テーブルに分けるのが前提です。介護休暇側の設計は介護休暇の時間単位取得と勤怠システムでの取得管理を解説した記事で同じ粒度で整理しています。
取得事由コードと証明書類の受領記録、給与へ渡す有給・無給の区分
申請画面では、取得事由を4類型のコードで選ばせ、上乗せで認めている行事があれば別コードにします。証明書類を求める会社は、受領日を申請に紐づけて記録しておくと、後から確認を求められたときに追えます。始業か終業に連続しているかの確認も、申請時点で自動チェックにできる項目です。
給与計算には「看護等休暇(有給)」「看護等休暇(無給)」のように分けた区分コードで渡し、無給分は控除の対象時間として集計します。年3日までは有給、超える分は無給という規定なら、取得順に有給の枠から消化する判定が勤怠側に必要です。制度全体の設定項目は育児介護休業法の事業主の義務と人事システムの設定項目をまとめた記事で確認できます。
パッケージの設定で足りる会社と、個別開発・改修を検討すべき会社の境界
法定どおりの子の看護等休暇(年5日・1時間単位・始業か終業に連続・4月1日始まり)であれば、休暇種別と付与日数を細かく設定できる勤怠パッケージで表現できる範囲です。分かれ目は、所定労働時間のばらつきと、法定より手厚くしている部分が製品の前提に収まるかどうかにあります。
所定労働時間が全員同じで法定どおりの運用なら勤怠の標準機能で足りる条件
全員の所定労働時間が同じ、看護等休暇は全部無給か全部有給のどちらか、時間単位は始業か終業に連続する取り方だけ、年度は4月1日始まり。この条件なら1日分の時間数も上限の時間も全員共通で、休暇種別の設定と残高表示で管理は完結します。
この条件で子の看護等休暇のために個別開発をするのは過剰投資です。製品の比較は勤怠管理システムの機能・種類・費用と選び方をまとめた記事を起点に進め、デモでは「子の生年月日から小3修了の3月31日で対象を切れるか」「介護休暇と別の残高で時間単位を持てるか」の2点を確かめれば足ります。
シフト制や事由別の有給化をする会社が個別開発を選ぶ条件と見送る場面
個別開発や既存システムの改修を検討するのは、シフト制で1年平均から1日分の時間数を出す必要がある、中抜けを認めて打刻との突き合わせが要る、事由ごとに有給と無給を分けている、授業参観など上乗せの行事を別枠で管理したい、といった条件が重なる会社です。この組み合わせは製品の標準設定に載りにくく、毎月の残高確認が表計算の手作業に戻る原因になります。一創の勤怠管理システム開発では、就業規則と労使協定の内容を、子のマスタ、対象終了日の判定、時間単位の残高、給与へ渡す区分コードに落とすところから設計を進めます。
見送るべき場面もはっきりしています。対象の子を持つ社員が数人で、法定どおりの運用しかしていない会社が、看護等休暇の管理のためだけにシステムを作るのは割に合いません。協定から6か月未満の除外を外し、既存の勤怠で対象年齢の判定を小3修了に直すところから始めれば十分です。
よくある質問
看護休暇について、人事・労務の担当者や子育て中の従業員からよく出る質問をまとめました。
看護休暇は有給ですか、無給ですか?
法律上は無給でもかまいません。育児介護休業法には子の看護等休暇の日の賃金を支払うよう求める規定がなく、有給か無給かは会社が就業規則で決めます。ただし年次有給休暇とは別に取らせる必要があり、年休の消化を条件にすることはできません。無給にする場合も、休んだ時間を超えて給与を減らすことや、賞与・昇給の算定で欠勤と同じに扱うことは不利益な取扱いになります。一定の日数までを有給にしている会社もあるので、まず自社の就業規則を確認してください。
看護休暇と介護休暇は同じ年度に両方取れますか?
取れます。子の看護等休暇は育児介護休業法16条の2、介護休暇は16条の5に根拠がある別の制度で、日数の枠も別です。小学3年生の子の看護で年5日、要介護状態の親の通院付添いで年5日というように、同じ年度にそれぞれ上限まで使えます。どちらも時間単位で取れて、始業か終業に連続する取り方が法定の範囲という点は2つに共通です。勤怠システムでは2つを別の残高として持たないと、一方を使った分が他方の残りから引かれる誤りが起きます。
子どもの授業参観や運動会で看護休暇を取れますか?
法定の取得事由には入っていません。2025年4月の改正で加わった行事は、施行規則33条の2が定める「入園、卒園又は入学の式典その他これに準ずる式典」です。授業参観や運動会、保護者面談はこの列挙に含まれていないため、会社が法定を上回る扱いとして就業規則で対象に加えている場合に限り取れます。会社が対象に含めていなければ、年次有給休暇などで対応することになります。上乗せで認める会社は、法定分と区分を分けて残高を管理すると判定がぶれません。
小学4年生の子の看護に看護休暇は使えますか?
使えません。対象は小学校第3学年修了前の子、つまり9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子で、小学4年生になった4月1日からは対象外です。ただし、その時点で別に小学3年生以下の子がいれば、その子のための看護等休暇は引き続き取れます。法定を上回る扱いとして小学6年生までを対象にしている会社もあるため、就業規則の対象年齢を確認してください。2025年3月までは対象が小学校入学前まででした。
パートやアルバイトでも看護休暇を取れますか?
取れます。対象は日々雇用される人を除く全ての労働者で、雇用形態や性別、勤続年数の要件はありません。2025年3月までは労使協定で継続雇用期間6か月未満の人を除外できましたが、2025年4月1日にこの仕組みは廃止されました。現在、協定で除外できるのは週の所定労働日数が2日以下の人だけです。1日の所定労働時間が短いパートも時間単位で申し出られ、1日分の時間数は所定労働時間を1時間単位に切り上げた値になります。
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