Know Who(ノウフー)とは何か?ナレッジマネジメントの視点から定義と意義を詳しく解説
目次
- 1 Know Who(ノウフー)とは何か?ナレッジマネジメントの視点から定義と意義を詳しく解説
- 2 Know Who(ノウフー)の目的とメリット:ナレッジ共有で組織力・生産性向上や社内コミュニケーション活性化につながる効果
- 3 Know WhoとKnow Howの違い:『誰が知っているか』に注目する視点と『ノウハウ共有』のアプローチの比較
- 4 Know Whoが注目される背景:人材不足やノウハウ共有の課題を克服し企業競争力を維持する必要性
- 5 Know Whoの運用方法・管理方法:人材管理システムや社内SNSを活用したKnow Who情報の共有・管理手法
- 6 Know Whoの導入事例・活用例:人材データベースでスキルを可視化し技術伝承に成功、社内人材活用を促進した事例
- 7 Know Who導入・構築のポイント:成功に向けた組織体制整備と運用ルール策定、データ更新の工夫
Know Who(ノウフー)とは何か?ナレッジマネジメントの視点から定義と意義を詳しく解説
Know Whoの定義と概要
Know Who(ノウフー)とは、社員が持つ知識やスキル、経験などに関する情報を共有・検索できる仕組みを指します。ナレッジマネジメントの一環として生まれた考え方で、文字通り「誰が何を知っているのか」を可視化することが特徴です。従来のナレッジマネジメントでは文書やデータベースにノウハウを蓄積するKnow Howの共有が中心でしたが、Know Whoでは「知識を持っている人」に焦点を当てます。つまり、組織内の各メンバーの専門知識・技術・経験を一覧化し、必要に応じてその人を見つけ出して直接知恵を借りられるようにする取り組みです。このようなKnow Whoの仕組みにより、組織全体で知識を有効活用し、最適な人材同士を結びつけて問題解決やイノベーションに繋げることができます。
ナレッジマネジメントにおける位置付け
ナレッジマネジメントの文脈では、Know Whoは知識共有戦略の重要な一部として位置付けられます。多くの企業はマニュアルやデータベースにノウハウを蓄積することで知識を共有しようとしますが、暗黙知(文章化しにくい知恵や経験)はすべてを形式知化することが困難です。そのため、ナレッジマネジメント・システムに全てのノウハウを格納するのは難しく、「見える化できないノウハウ」も数多く存在します。ここでKnow Whoのアプローチが役立ちます。ノウハウそのものを無理に文章化するのではなく、誰がそのノウハウを持っているかという点を明らかにすることで、知識の共有を容易にするのです。つまり、Know Whoは従来のKnow How重視の仕組みを補完し、組織内の人脈と知識のネットワークを形成することで、ナレッジマネジメントの効果を高める役割を果たしています。
「誰が知っているか」を重視する意義
Know Whoが「誰が知っているか」に注目することには大きな意義があります。業務で何か課題に直面した際、必要なノウハウがマニュアルや社内資料に見当たらない場合も少なくありません。そのようなときでも、社内でその知識を持つエキスパートを見つけ出し、直接アドバイスをもらえれば問題解決をスピーディーに図れます。実際、ある人物が「何を知っているか」を把握できていれば、新規プロジェクト立ち上げ時に最適なメンバーを迅速に招集することができ、業務を円滑に進められます。また、熟練者に直接質問することで、文章では伝わりにくいニュアンスや現場経験に基づく知恵も共有でき、より確実な知識伝達が可能となります。このように「誰に聞けばよいのか」が明確になるKnow Whoの仕組みは、組織内の問題解決力と対応速度を向上させるのに役立ちます。
組織の記憶としてのKnow Who
組織は人々の集合であり、一種の「記憶」を持つと例えられることがあります。しかし組織の記憶として本当に重要なのは、組織全体がすべての知識を網羅して覚えていることではなく、「組織の中で誰が何を知っているか」を把握していることです。例えば、新たな業務やプロジェクトが発生した際、組織内で誰がその領域に詳しいかが分かれば、最適な人選によってスムーズにプロジェクトを進行できます。逆に、それが分からなければ、既に社内にある知見を活用できず非効率になってしまいます。Know Whoの仕組みを導入すると、組織の記憶力が強化され、組織全体の対応力・競争力が高まります。言い換えれば、Know Whoは組織における知の地図であり、必要なときに必要な知恵にアクセスするための「組織の脳」の一部と言えるでしょう。
Know Whoによる知識の有効活用
Know Whoの導入により、組織内に眠っていた知識資源を最大限に有効活用できるようになります。従業員一人ひとりが持つスキルや経験が可視化されることで、「誰が何に詳しいか」を軸とした社内のネットワークが構築されます。その結果、従来は埋もれていた知見が必要な場面で適切に引き出され、問題解決や意思決定の質が向上します。知識の属人化(ある人だけが知っていて他に共有されていない状態)を防ぎ、組織全体で知恵を共有する文化を醸成できるのも大きな利点です。つまり、Know Whoはノウハウを持つ人とそれを必要とする人を迅速に結びつけ、組織全体の生産性と組織力を高めることに寄与します。まさにKnow Whoの目的は、ノウハウの担い手と必要とする人材をスピーディーにマッチングさせて組織力を向上させることにあります。
Know Who(ノウフー)の目的とメリット:ナレッジ共有で組織力・生産性向上や社内コミュニケーション活性化につながる効果
組織力の向上
Know Whoの取り組みにより得られるメリットの一つが組織力の向上です。社内の知見が結集され、必要な知識に迅速にアクセスできる環境が整うことで、組織全体の問題解決能力や適応力が高まります。社員同士が知識やスキルを補完し合うことでコラボレーションが活発になり、新たな価値創出やイノベーションにつながるケースもあります。また、知識が個人ではなく組織の共有資産となることで属人的なボトルネックが減り、意思決定の迅速化やサービス品質の向上にも寄与します。Know Whoによって形成された「知のネットワーク」は、組織を一つのチームとしてより強固にし、変化の激しいビジネス環境でも競争力を維持・強化する土台となります。言い換えれば、個々の社員が持つ知識を組織全体で共有・活用することで、バラバラだった知恵が結集され、より強力な組織体になれるということです。
業務効率・生産性の向上
Know Whoは業務効率の改善と生産性向上にも寄与します。社員が自身の問題や疑問に直面したとき、適切な社内の専門家を即座に見つけ出して質問できれば、回答を得るまでの時間が大幅に短縮されます。その結果、無駄な調査や試行錯誤に費やす時間が減り、業務をスムーズに進めることができます。例えば、一人の社員が独力で試行錯誤すれば丸一日かかる課題も、社内の詳しい人に相談すれば数時間で解決できるといった具合に、大幅な時間短縮が期待できます。既に社内にある知識を再利用できれば、新たに一から解決策を考案する必要が減り、二重作業の防止にもつながります。同様に、知見を持つ人から直接アドバイスを受けられることで、問題の早期解決だけでなく、社員の学習スピードも高まります。それによりチーム全体の生産性が底上げされ、限られたリソースでより多くの成果を上げられるようになるでしょう。
社内コミュニケーションの活性化
Know Whoの導入は社内コミュニケーションの活性化にもつながります。社内SNSやイントラネット上で「誰が何を知っているか」を共有すると、部署や世代を超えた社員同士のつながりが生まれます。実際に、社内のQ&Aプラットフォームでは「この問題は誰に聞けばよいのか?」という投稿をきっかけに、今まで交流のなかった社員同士がコミュニケーションを取るようになるケースが多く見られます。SNSを活用したKnow Whoではカジュアルな雰囲気で気軽に質問・回答ができるため、ちょっとした疑問でも遠慮なく発信でき、社員同士の助け合いが促進されます。その結果、知識の共有だけでなく人間関係の構築にも寄与し、社内の風通しが良くなります。ブログ機能などを通じて社員個人の人柄や専門性が見える化すると、互いに声をかけやすい雰囲気が生まれ、組織全体のコミュニケーションがさらに活発化します。
ナレッジ共有の促進
Know Whoの仕組みは社内のナレッジ共有を強力に後押しします。社内には「この資料を作成したのは誰だろう?」「特定の知識・能力を有する社員と交流したい」といったニーズが存在します。Know Whoを通じてそうした知識の持ち主を簡単に見つけられるようになると、社員同士が自発的に情報交換を行う頻度が高まります。暗黙知や現場のノウハウが対話を通じて共有され、従来は部署内に留まっていた知見が組織全体に広がりやすくなります。特に、専門知識を持つ人が自らの知識を提供し、それが評価される風土ができれば、社員のナレッジマインド(知識を共有しようとする意欲)も向上します。たとえば、社内ブログなどの仕組みと組み合わせれば、社員が自分の経験を発信し、それを見た他の社員がコメントや質問を通じて知識交流を図るといった双方向の共有も実現できます。そのようなやり取りが増えるほど、ナレッジ共有の文化が組織に根づいていくでしょう。Know Whoはこのように、単なる情報データベース以上に人を介した知識の流通を促し、社内のナレッジ循環を活性化します。
人材育成・スキル継承への効果
Know Whoの活用は人材育成やスキルの継承にも大きな効果をもたらします。新人や若手社員が、社内の熟練者や専門家を容易に見つけて質問や相談ができるようになるため、現場でのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が活発になります。これにより、経験豊富な社員の知識やノウハウが次世代に伝わりやすくなり、組織内での技術伝承が促進されます。特に、将来的に退職・異動などで失われる可能性のある重要な技能については、Know Whoの情報をもとに誰がその技能を持っているかを把握し、計画的に後継者への教育を行うことができます。また、社内で専門性が認知されることでベテラン社員のモチベーションも向上し、自分の知識を積極的に共有しようという意識が芽生える効果も期待できます。Know Whoはこのように、人材育成の効率化と組織的な知識継承の仕組み作りに貢献し、長期的な組織力の維持・向上につながります。
Know WhoとKnow Howの違い:『誰が知っているか』に注目する視点と『ノウハウ共有』のアプローチの比較
Know Howの定義と特徴
Know How(ノウハウ)とは、業務や専門分野に関する知識・技術、問題解決のための方法論などを指す言葉です。例えば、熟練営業担当者が長年の経験で身に付けた顧客対応のコツや、ベテラン技術者の高度な作業手順などは典型的なノウハウの例でしょう。一般的に、経験によって培われたコツや暗黙知も含まれ、文書でマニュアル化できるものもあれば、言語化しにくい職人的な技能も含まれます。企業ではノウハウの蓄積と共有が人材育成や競争力強化の鍵とされ、研修やマニュアル整備などによってノウハウを組織に蓄えようとします。Know Howは各社員が持つ「やり方の知識」であり、それを共有することで業務標準化や品質向上を図ることができます。しかし、一人の社員が習得できるノウハウの量や範囲には限界があり、属人的な暗黙知は共有が難しいという課題もあります。
Know Whoの定義と特徴
一方、Know Who(ノウフー)とは「誰がどんなノウハウを持っているか」を明らかにする考え方です。先述のように、一人の人間が習得できるKnow Howには限界があるため、誰がそのノウハウを持っているかを検索できる仕組みを作ろうという発想から生まれました。実際、ノウハウを全てシステムに見える化するのは困難であるため、別の角度から楽に解決しようという発想がKnow Who誕生のきっかけとなりました。Know Whoでは知識そのものではなく、その知識を持つ「人」に焦点を当てます。例えば、特殊な問題に直面した社員がいれば、その分野の経験者を探して直接助言をもらう、といったアプローチです。このようにKnow Whoは、組織内の人的ネットワークと情報を活用して課題解決や知識共有を図る点が特徴であり、Know Howの共有を補完する新しいナレッジマネジメント手法として注目されています。
情報共有のアプローチの違い
Know HowとKnow Whoでは、知識を共有するためのアプローチが大きく異なります。Know How型の共有は、知識そのものを文書化・データ化して蓄積する方法です。マニュアルやナレッジベースを整備し、社員はそれを参照することで必要な情報を得ます。一方、Know Who型の共有は、知識の所在(それを持っている人物)を明確にして、直接その人に聞けるようにする方法です。データベース化された人材プロフィールや社内SNS・掲示板を活用し、社員同士が質問・回答を行うことで知識がやり取りされます。つまり、Know Howは「知識コンテンツ」を中心としたアプローチであるのに対し、Know Whoは「人と人のつながり」を中心としたアプローチと言えます。どちらも社内の知を共有する手段ですが、その手法やプロセスに明確な違いがあります。
メリット・役割の違い
Know Howの共有とKnow Whoの共有では、それぞれメリットや果たす役割に違いがあります。Know Howの共有は知識を形式知として蓄積するため、情報が標準化され組織内の誰もが参照できるという利点があります。属人的な要素を排除し、ドキュメントさえあれば人に依存せず業務を進められる点で、ノウハウの資産化に優れています。一方、Know Whoの共有は人を介したナレッジ交換により、マニュアル化が難しい複雑な課題にも対処できる柔軟性がメリットです。特に、文章では伝えにくい暗黙知や状況依存の知恵も、人と人の対話であれば共有しやすくなります。また、Know Whoは知見を持つ人材と問題を抱える人材を結びつけることで、組織の持つ専門知識を最大限に引き出す役割を果たします。総じて、Know Howは知識そのものを広く展開することで業務の効率と均質化に貢献し、Know Whoは必要な知恵を必要なときに引き出すことで臨機応変な問題解決と知識伝達に貢献すると言えます。
両者の補完関係
Know HowとKnow Whoは対立する概念ではなく、互いに補完関係にあります。効果的なナレッジマネジメントには両者のバランスが重要です。例えば、Know Whoで「あの人に聞けば分かる」となっているノウハウについても、可能なものはマニュアル化するなど形式知として残しておくことが推奨されます。特定の有能な社員にばかりノウハウが集中し、「その人に聞かなければ分からない」状態が続くのはリスクです。そうした属人的な状況を避けるため、日頃から重要なノウハウは文章や図解・動画で記録したり、若手への引き継ぎ期間を設けたりして共有していくことが大切です。逆に、マニュアルやデータだけに頼ってコミュニケーションが不足すると、暗黙知の共有や組織内の協力体制が弱まる恐れがあります。したがって、明文化できる知識はKnow Howとして蓄積しつつ、現場の知恵や経験はKnow Whoのネットワークで補完するという二本立ての戦略が有効です。Know HowとKnow Whoを両輪で推進することで、組織の知識資産を盤石なものとし、どちらか一方に偏ることで生じるリスクを軽減できます。なお、こうした知識共有の取り組み全体の位置づけはナレッジマネジメントとは何かを解説した記事で整理しています。
Know Whoが注目される背景:人材不足やノウハウ共有の課題を克服し企業競争力を維持する必要性
深刻化する人材不足
昨今、多くの業界で人材不足が深刻化しています。少子高齢化による労働力人口の減少や高度なデジタルスキル人材の需要増などが要因となり、必要な人材を十分に確保できない企業が増えています。人材不足が続くと、限られた社員一人ひとりの役割が大きくなり、一人が担う業務範囲や責任が広がります。そのような状況下では、組織に存在する知識やスキルを最大限活用することが不可欠です。新しい人材を外部から補充するのが難しい分、社内の既存人材が持つ知見を共有・活用して生産性を維持・向上させる必要があります。実際、人手不足の影響で、売上機会の喪失や既存社員への過重労働、さらには熟練者から若手への技術継承が滞るといった深刻な事態も報告されています。Know Whoが注目される背景には、まさにこの人材不足の問題があり、組織内の「知っている人」を有効に活かすことで人材不足の影響を緩和しようという狙いがあるのです。
個人のノウハウ習得の限界
一人の社員が身につけられるノウハウには限界があります。業務上重要な知識や技術はできるだけ多くの人が習得することが望ましいものの、近年の業務は高度化・専門化が進み、個人が習得できる範囲にはどうしても限りがあります。例えば、一人のエンジニアが全てのプログラミング言語やツールに精通するのは現実的に難しく、不得意な分野では多くの時間を要してしまうでしょう。無理に一人で多くのノウハウを詰め込もうとすると、かえって知識の質が低下したり習熟が中途半端になったりする恐れも指摘されています。このため、個々の社員に過度に負担をかけるのではなく、「誰がどのノウハウを持っているか」を組織で把握し、必要に応じて適切な人から知見を借りるほうが効率的です。Know Whoが注目される背景には、一人のスーパーマンに頼るのではなく組織全体で知を補完し合う必要性が高まっていることが挙げられます。
マニュアル共有の限界
ナレッジ共有の一般的手法としてマニュアルや業務手順書の整備がありますが、それが十分に活用されていないケースも多く見られます。実際、「社内にマニュアルはあるが誰も読まない」と嘆く声も少なくありません。せっかくノウハウを文章化しても、社員がその存在を知らずに参照しなかったり、読んでも理解・応用が難しかったりすることがあります。また、現場ではマニュアルを読む時間がなく、結局詳しい人に直接聞いてしまう、といった状況も起こりがちです。その結果、形式知として資料に落とし込んだ知識が現場で活かされず、せっかくのナレッジが宝の持ち腐れになってしまう課題があります。Know Whoが注目される背景には、このように既存のナレッジ共有施策(マニュアル整備など)が十分機能していない現状を打破し、知識を人を通じて動かす必要性がある点も挙げられます。
企業競争力維持の必要性
激しい市場競争の中で競争力維持するためにも、組織内の知の活用が欠かせません。例えば、製造業などでは「団塊の世代」の大量退職によって技能伝承の断絶が懸念され、一部では「2007年問題」と称されたほどでした。熟練社員の引退により組織の持つノウハウが社外に流出してしまう恐れがあり、そうした組織知の損失は競争力の低下に直結しかねません。したがって、ノウハウを組織内に留めつつ必要な人に引き継ぐ仕組み作りが急務となっています。Know Whoに注目が集まる背景には、人材不足やノウハウ共有の課題に加えて、限られた人材と知識で如何に競争優位を保つかという企業戦略上のニーズも存在します。グローバル市場でも専門人材の奪い合いが起きる中、自社内の知をしっかり管理・共有できるかどうかが将来の勝敗を分けるといっても過言ではありません。組織内の「誰が何を知っているか」を把握し適材適所で活用することは、変化の激しいビジネス環境で柔軟かつ迅速に対応するための土台となるのです。
世代交代と知識流出のリスク
大量退職などによる組織知の流出リスクもKnow Whoが注目される背景要因です。実際、製造業やインフラ業界ではベテラン社員の大量退職による技能伝承の危機が叫ばれ、各社が人材データベースの整備やOJT強化などに乗り出しています。特に団塊の世代をはじめ経験豊富な人材が一斉に職場を離れると、「誰に何を聞けばいいのかわからない」という状況に陥りかねません。多くの企業にとって、こうした世代交代による知識の断絶を防ぐことは喫緊の課題となっています。人材が企業内に在職中にその持つノウハウを何らかの形で残しておかなければ、退職とともに貴重な知見が組織から失われてしまいます。Know Whoの仕組みを構築し、誰がどんな知識を持っているかを可視化しておくことは、世代交代期における技術・知識の継承プランを立てる上でも大いに役立ちます。こうした知識流出のリスクに対処し、限られた人材リソースで組織力を維持するためにも、Know Whoへの注目が高まっているのです。
Know Whoの運用方法・管理方法:人材管理システムや社内SNSを活用したKnow Who情報の共有・管理手法
人材管理システムの活用
Know Whoの情報を管理する基本として、社内の人材管理システムを活用する方法があります。社員一人ひとりの専門分野・技術分野・スキル・資格・経験年数などのプロフィール情報を登録し、クラウド上で一元管理するものです。このようにデータベース化しておけば、検索によって「誰がどのような能力を持っているか」を即座に可視化できます。例えば、新プロジェクトのメンバー選定時に特定のスキルを持つ人材をシステム上で検索し、候補者をリストアップするといった使い方が可能です。人材管理システムによって社員の強み・弱みを把握できれば、人材育成計画や適材適所の配置にも役立ち、Know Who情報を日常の人事戦略に組み込むことができます。なお、社員自身が定期的にプロフィールを更新し、最新のスキル情報を反映できる運用とすることもポイントです。
社内イントラネットでのデータベース化
自社のイントラネット上に社員データベースを構築する方法も効果的です。専用の人材管理システムを導入せずとも、イントラネットの機能を活用して手軽にKnow Who情報の共有基盤を作ることができるため、多くの企業で取り入れられています。社員が自ら自分の得意分野やスキル、資格、過去の経歴などの情報を登録・更新できる仕組みをイントラネット内に用意します。蓄積されたデータは部署横断で共有され、カテゴリーやキーワードで検索可能です。これにより、必要な場面で最適な人材を素早く探し出し、すぐに連絡を取ることができます。例えば、新規プロジェクトの立ち上げ時に「○○に詳しい人」といった条件でイントラネット検索を行い、ヒットした社員に社内メッセージで問い合わせるといった運用が可能です。社内イントラネットを活用したKnow Whoのデータベース化は、社員自身に情報入力を促すことでデータの最新性を保ちやすく、日常業務の中で自然にKnow Who情報を共有・活用できる点がメリットです。
社内掲示板・Q&Aシステムの導入
Know Who情報を共有するもう一つの手段として、社内掲示板(Q&Aシステム)の活用が挙げられます。社内のイントラネット上に質問掲示板を設置し、社員が今知りたいことを投稿できるようにします。投稿を見た他の社員が、自分の知っている範囲で回答を書き込んだり、「それなら○○さんが詳しい」というように適切な回答者(ノウハウの持ち主)を紹介したりします。これにより、社内版「教えて掲示板」のような形でリアルタイムにノウハウ情報が共有されていきます。掲示板への質問・回答のやり取りを蓄積することで、過去のQ&Aが検索可能なナレッジベースにもなります。社内掲示板の利点は、社員が気軽に疑問を投げかけられる点で、ちょっとしたことでも質問しやすくなるため回答も集まりやすくなることです。このようなQ&Aシステムは社内コミュニケーションの促進にも寄与し、Know Whoの一つの運用形態として多くの企業で採用されています。
グループウェアの活用
社内のグループウェアをKnow Whoに活用する方法もあります。グループウェアとは社内のスケジュール管理やプロジェクト管理、掲示板機能などを備えた情報共有ツールですが、ほとんどの製品には掲示板・Q&Aの機能が含まれています。例えば、特定のスキルを持った人材が必要になった際、グループウェア内の掲示板に質問を書き込めば社内の誰かが情報を提供してくれるでしょう。結果的に「誰がその業務に詳しいか」にたどり着けるだけでなく、こうしたやり取り自体が社内のコミュニケーション活性化にもつながります。グループウェアは既に社内の業務インフラとして導入されているケースも多く、Know Who用途に新たなツールを導入せずとも既存機能で実現できる利点があります。ただし、掲示板に質問・回答する文化を根付かせる工夫は必要ですが、一度定着すれば組織全体で知識をやり取りできる有用な仕組みとなるでしょう。
社内SNSの活用
近年では社内SNS(ビジネス向けSNS)の活用も人気です。社内SNSは部署や役職を超えて社員同士が交流しやすいカジュアルなコミュニケーションツールで、心理的ハードルが低いため気軽に「教えて!」と質問できる雰囲気があります。SNS上で投稿にタグを付ける運用を行えば、発言が蓄積されデータベース化されるため、タグ検索によって「誰が何を知っているのか」を探すことも可能です。例えば、「#Excelマクロ」のようなタグで検索すれば、その話題に詳しい社員の投稿やコメントを辿ることができ、人脈作りにも役立ちます。社内SNSによるKnow Whoは、掲示板やグループウェア以上にカジュアルなやり取りが期待でき、些細な疑問でも遠慮なく投稿できるため回答が集まりやすいという特徴があります。その結果、社内のナレッジ共有だけでなく社員間の横のつながり強化にもつながり、組織の活性化に寄与します。
Know Whoの導入事例・活用例:人材データベースでスキルを可視化し技術伝承に成功、社内人材活用を促進した事例
製造業A社の事例:スキルデータベースで技術伝承を促進
ある大手製造業では、社内にスキルデータベース(スキルマップ)を構築し、ベテラン技術者の持つ技能を「見える化」しました。トヨタ自動車なども早くからスキルマップを導入し、職人技術の継承に取り組んでいることが知られています。これにより、組織内で失われつつある技術や技能を特定し、次世代へ継承するための計画を立てやすくなりました。熟練工と若手社員をデータベースを通じてマッチングし、OJTを強化することで暗黙知の伝承に成功しています。実際、この取り組みを通じて退職者が持つノウハウを着実に若手に引き継ぐことができ、生産性や品質の維持に貢献しました。Know Whoを活用したこの事例は、製造現場での技術伝承の課題を克服し、社内人材を最大限に活用した成功例と言えます。
NTT東日本の事例:社内SNSでKnow Who情報を共有
NTT東日本では2005年に社内SNSを導入し、社員同士の情報交換を促進しました。導入から2年後の2007年には7,500人以上(グループ全体の約15%)、3年後の2009年には8,300人(社員の約80%)が参加し、2013年にはグループ会社も含めて14,000名が利用する国内最大規模の社内ネットワークに成長しました。SNS内で特に活用されたのがQ&Aコーナーで、「○○については誰に聞けばいいか?」といったKnow Who的な質問が数多く寄せられました。この仕組みにより、社員は自社内に適切な知見を持つ人物をすぐに見つけ出すことができるようになり、問題解決のスピードが飛躍的に向上しました。また、大規模な組織で部署間の壁を越えたコミュニケーションが生まれ、Know Whoを通じて社内の連携強化にもつながったと報告されています。
ジョンソン・エンド・ジョンソン社の事例:ナレッジポータルとブログでKnow Whoを実現
外資系メーカーであるジョンソン・エンド・ジョンソンでは、2001年に社内ナレッジポータルを立ち上げました。さらに2005年以降、SNSを活用した社員の個人ブログや社内ブログの機能を追加し、情報共有を強化しています。ブログと検索機能によって「誰が何を知っているのか」を知ることができるようになり、社員は必要な知見を持つ同僚をすぐに見つけられるようになりました。また、個人ブログを通じて社員一人ひとりの人柄や専門性が可視化されたことで、「この人に聞いてみよう」と声をかけやすい雰囲気が醸成され、社内コミュニケーションの活発化に寄与したとされています。この事例は、ブログというカジュアルな情報発信ツールを活用してKnow Whoの効果を高めた成功例と言えます。
損保ジャパン日本興亜社の事例:ポータルにKnow Who機能を導入
損害保険ジャパン日本興亜株式会社では、社内ポータルサイト「損保ジャパンの窓」を通じてKnow Whoを推進しています。このポータルは「現場の状況が経営層に届かない」「電話での情報共有に限界がある」「組織内の情報共有が不十分」などの課題を解決するために作られた経緯があり、情報共有とコミュニケーションに重点が置かれています。具体的には、社内ポータル上にQ&Aコーナーや社員のブログ機能、そして直接「ノウフー」と名付けられたコミュニケーションツールが導入されました。この「ノウフー」機能により、仕事に関する相談事項の見える化や、失敗事例などのリアルタイム共有、社員自身の新たな気づきの発見に役立っているそうです。社内ポータルを活用した本事例は、Know Whoの考え方を直球で取り入れ、大規模組織での情報共有と社員間コミュニケーションを飛躍的に向上させた好例と言えるでしょう。
社内人材活用の事例:スキルの可視化で適材適所を実現
とあるIT企業では、Know Whoの仕組みにより社内人材のスキルを見える化したことで、従来は外部に委託していた専門業務を社内人材で賄えるようになった事例があります。例えば、新しい顧客プロジェクトで特定のプログラミング言語の専門知識が必要になった際、Know Whoデータベースを検索することで他部署にそのスキルを持つ社員を発見し、プロジェクトチームに抜擢しました。これにより、外部採用やアウトソーシングに頼らず適材適所の人員配置を実現し、コスト削減と社内リソースの有効活用につなげました。さらに、社内の人材が新たな機会に挑戦できる環境が整備されたことで社員のモチベーションも向上し、組織全体のエンゲージメント強化という副次的効果も得られています。このようにKnow Whoを活用した社内人材可視化の取り組みは、人材不足の時代において社内リソースを最大限に活かす有効な戦略となっています。
Know Who導入・構築のポイント:成功に向けた組織体制整備と運用ルール策定、データ更新の工夫
組織体制の整備
Know Who導入を成功させるには、まず社内の組織体制を整えることが重要です。経営層の理解とコミットメントを得て、全社横断的に取り組むプロジェクトとして位置付ける必要があります。具体的には、Know Who推進のための専任チームや責任者を設置し、各部署からキーパーソンを集めてプロジェクト体制を構築します。さらに、現場の声を反映できるように現場代表者も巻き込み、トップダウンとボトムアップ両面からの推進体制を敷きます。組織として「知の共有」を優先課題と捉え、人事部門やIT部門が連携して基盤整備・運用に当たることで、Know Who導入はスムーズに進むでしょう。また、トップマネジメントから積極的にメッセージを発信し、Know Whoの重要性を社員に訴求することも体制整備の一環です。
運用ルールの策定
Know Whoシステムを効果的に機能させるには、明確な運用ルールの策定が欠かせません。例えば、全社員が半年ごとに自身のスキル情報をプロフィールで更新することや、データの公開範囲(社内全員に公開か一部メンバー限定か)など、事前に取り決めておくべき事項があります。質問掲示板やSNSを運用する場合も、質問のタグ付け方法や回答のガイドライン、基本的なマナーなどを定めて共有します。ルール策定にあたっては、現場の意見を取り入れつつ、ルールが煩雑になり過ぎないよう注意が必要です。適切なルールは、社員が安心してKnow Whoシステムを利用できる基盤となり、継続的な活用につながります。
データの定期更新とメンテナンス
Know Whoの情報は常に最新で正確であることが重要です。そのため、データの定期更新とメンテナンスの仕組みを構築します。例えば、半期ごとに社員に自身のスキル・担当業務の変更点をプロフィールに反映してもらう仕組みや、新たな知識を得た際に随時報告・登録する文化を促します。また、人事異動や組織変更のタイミングでデータベースを見直し、役職・部署の情報を最新化することも欠かせません。担当者(Know Who管理者)を決めて定期的にデータをチェックし、重複や誤りがあれば修正する運用も有効です。データを常にフレッシュな状態に保つことで、ユーザーである社員から信頼されるシステムとなり、使われ続けるKnow Whoになります。
従業員への周知と教育
新しいKnow Whoシステムを導入しても、社員が使い方を理解し積極的に利用しなければ効果は出ません。そこで、全社員への周知と教育を徹底します。システム導入時に社内説明会やトレーニングを実施し、プロフィールの登録方法、検索の仕方、質問掲示板の利用方法などを具体的に教えます。また、イントラニュースやメールで定期的に利用促進の案内を行い、優れた活用事例を共有して社員のモチベーションを高めます。初期段階では積極的に社員に働きかけ、「困ったらまずKnow Whoで探そう」という文化を醸成することが大切です。さらに、初期段階でKnow Whoを活用して成果を上げた社員を「Know Whoチャンピオン」として表彰し、その成功事例を社内報などで紹介する取り組みも有効でしょう。そうした利用促進策により、システムが社内に定着し、社員自らがKnow Whoの価値を実感できるようになります。
Know Howとのバランス
最後に、Know Who導入にあたっては、Know Whoに依存しすぎず既存のKnow How共有とのバランスを取ることもポイントです。優秀な特定社員に問い合わせが集中しすぎて負荷が偏らないようにしたり、口頭で得た知識を可能な範囲でマニュアル等に蓄積しておくなど、Know HowとKnow Whoを補完的に運用する仕組みを整えます。例えば、よくある質問や共有すべきノウハウはFAQとしてまとめ、誰もが参照できるようにする一方、個別性の高い問題はKnow Whoネットワークで解決するといった使い分けが考えられます。Know Whoは万能ではないため、Know Howの蓄積も並行して行い、組織の知識資産を二重三重に支える体制を構築することが成功の鍵となります。