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道路運送法とは:事業区分・許可・罰則と点呼記録の保存年限をシステム要件で整理

道路運送法とは:事業区分・許可・罰則と点呼記録の保存年限をシステム要件で整理

道路運送法は、バスやタクシーのように他人の求めに応じて有償で人を運ぶ事業について、許可の取り方と安全の守り方を定めた法律です。昭和26年の制定で、2025年6月1日には罰則の「懲役」が「拘禁刑」に置き換わりました。この記事では、旅客自動車運送事業の4区分と許可制、白ナンバーの有償運送禁止と日本版ライドシェアの位置づけを条文で確認します。そのうえで、運行管理者の選任数と点呼の確認項目、事業区分によって1年・3年・90日に分かれる記録の保存年限を、運行管理システムの設計にどう落とすかまで扱います。

まとめ:道路運送法の旅客運送許可制と運行管理で先に押さえる記録義務

道路運送法の骨格は2つです。1つは、有償で人を運ぶ事業を国土交通大臣の許可制にし、白ナンバーの自家用車による有償運送を原則として禁じる入口の規制。もう1つは、許可を得た事業者に運行管理者の選任と点呼、運行の記録と保存を義務づける運営中の規制です。

検索で多く読まれる白タクや罰則の話は前者に属します。一方、実務で監査の対象になり、システム化の効果が大きいのは後者です。点呼記録は原則1年、貸切バスは電磁的記録で3年、点呼の録画は90日、事故記録は全区分で3年と、同じ会社の中でも保存年限が割れます。保存期限を記録ごとに持たせ、区分を誤って一括削除しない設計にしておくこと。これが運行管理システムで最初に決めるべき要件です。

道路運送法の目的と対象範囲:旅客・貨物・自動車道の三区分と関連法の違い

道路運送事業の定義と貨物自動車運送事業法へ切り出された貨物の扱い

道路運送法の第2条は、「道路運送事業」を旅客自動車運送事業、貨物自動車運送事業、自動車道事業の3つと定義しています。ただし貨物については同条第4項で「貨物自動車運送事業法による貨物自動車運送事業をいう」と書かれており、事業許可や運行管理の中身は貨物自動車運送事業法側に移っています。

結果として、道路運送法の条文の大半は旅客運送の規定です。トラック運送会社が許可申請で読むのは貨物自動車運送事業法と、その下の輸送安全規則のほうになります。一般貨物の許可で問われる計画の作り方は一般貨物の許可で問われる資金計画と事業計画書の書き方で扱っているので、貨物の方はそちらが近いはずです。

道路交通法・道路運送車両法との違いを規制対象の三軸で見分ける方法

名前の似た法律が3本あり、混同されやすい部分です。規制の対象で分けると見分けがつきます。

法律 規制する対象 代表的な義務
道路運送法 運送の事業 事業許可、運行管理者の選任、点呼と記録
道路交通法 道路を通行する人と車 交通ルール、運転免許、安全運転管理者
道路運送車両法 車両そのもの 登録、保安基準、点検整備、車検

実務で取り違えが多いのはアルコールチェックです。緑ナンバーの事業者は道路運送法の下の運輸規則で点呼時に検知器を使います。白ナンバーの社用車を一定台数以上使う会社での確認は、道路交通法の安全運転管理者制度に基づくものです。後者の運用は安全運転管理者とアルコールチェックの実務を扱った社用車の車両管理の記事にまとめています。

旅客自動車運送事業の4種類と許可制:乗合・貸切・乗用・特定の線引き

第3条の4区分をバス・タクシー・送迎の具体例に当てはめた対応表

第3条は旅客自動車運送事業を、不特定の需要に応える一般旅客と、特定の者の需要に応える特定旅客に分け、一般をさらに3つに分けています。

区分 条文上の定義 具体例
一般乗合 乗合旅客を運送する 路線バス、コミュニティバス、高速バス
一般貸切 1個の契約で省令の定員以上の車を貸し切る 観光バス、団体輸送
一般乗用 1個の契約で省令の定員未満の車を貸し切る タクシー、ハイヤー、介護タクシー
特定 特定の者の需要に応じ一定範囲の旅客を運ぶ 工場の従業員送迎、施設の送迎の受託

どの区分に当たるかで、運行管理者の選任基準も記録の保存年限も変わります。複数の区分を持つ事業者では、営業所や車両ごとに区分をマスタで持たせないと、後の章で触れる保存期限の計算が崩れます。

第4条の許可と第6条の審査基準、無許可経営に科される拘禁刑と罰金

一般旅客自動車運送事業を経営するには、第4条で国土交通大臣の許可が要ります。許可は乗合・貸切・乗用の種別ごとに出るため、タクシー会社が貸切バスを始めるなら別の許可を取り直します。第6条の審査基準は、輸送の安全を確保する計画であること、事業を適確に遂行する計画と能力があることの3点です。

無許可で一般旅客自動車運送事業を経営すると、第96条により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。e-Govに収録された2025年6月1日施行版から、刑の名称が「懲役」から「拘禁刑」に改められました。古い解説記事は「懲役」のまま残っているので、社内規程や教育資料を作るときは現行の条文から引き直してください。

白ナンバーの有償運送禁止と例外:第78条の3つの抜け道と日本版ライドシェア

第78条第2号の自家用有償旅客運送と市町村・NPOが受ける登録制度

第78条は、事業用以外の自家用自動車を有償で運送に使うことを原則禁止し、例外を3つだけ置いています。第1号が災害で緊急を要するとき、第2号が市町村やNPO法人などによる自家用有償旅客運送、第3号が公共の福祉のためやむを得ず国土交通大臣の許可を受けて地域や期間を限るときです。

第2号の自家用有償旅客運送は許可ではなく、第79条の登録制です。申請書には運送の区域や車両数に加えて、運行管理の体制を書いた書類の添付が求められます(第79条の2)。タクシー事業者が運行管理などに協力する「事業者協力型」も同条で定義されています。第78条に違反した場合は第97条で1年以下の拘禁刑もしくは150万円以下の罰金、またはその併科となり、白タク行為はここに当たります。

第78条第3号の許可で動く日本版ライドシェアとタクシー会社の運行管理責任

日本版ライドシェアは令和6年3月に創設された制度で、中国運輸局の制度案内によれば、タクシー配車アプリのデータなどから営業区域ごとに不足する時期・時間帯・車両数を特定し、第78条第3号の許可を得て運行します。運送の主体はタクシー事業者で、一般ドライバーと自家用車はその管理下に入ります。

システム面で効いてくるのは旅客自動車運送事業運輸規則の第48条第2項です。第3号の許可で自家用車を使う場合も、運行管理者は点呼や記録を含む業務を通常の事業用自動車に準じて行うと定めています。つまりタクシー会社は、雇用関係の薄い一般ドライバーについても点呼記録と業務記録を残す必要がある。既存の運行管理システムがドライバーを「自社の乗務員台帳に載った社員」だけで設計している場合、ここで改修が発生します。

運行管理者と点呼の義務:営業所ごとの選任数と点呼で確認する4項目

運輸規則第47条の9の選任数を車両台数から計算する式と統括運行管理者

道路運送法第23条は、営業所ごとに運行管理者資格者証を持つ人から運行管理者を選ぶよう求めています。何人必要かは運輸規則第47条の9の表で、区分ごとに計算式が違います。

  • 一般乗用(タクシー):事業用自動車5両以上の営業所で、車両数を40で割った数(端数切り捨て)に1を足した人数
  • 一般乗合・特定:定員11人以上の車を管理する営業所と、定員10人以下の車5両以上の営業所で、同じく40で割って1を足す
  • 一般貸切:19両以下は2人(4両以下で運輸局長が認めれば1人)、20〜99両は20で割って1を足す、100両以上は100を引いた数を30で割って6を足す

たとえばタクシー120両の営業所なら120÷40=3、1を足して4人です。貸切バス150両なら(150−100)÷30=1.66で切り捨て1、6を足して7人になります。複数を選任する営業所は統括運行管理者も置く必要があり、補助者の選任によって業務を手伝わせることも可能です。車両の増減で必要人数が変わるため、車両マスタと選任者リストを突き合わせて不足を警告する機能は小さな実装で効果が出ます。

乗務前・乗務後・中間点呼で確認する項目とアルコール検知器の常備義務

運輸規則第24条第1項は、業務を始める運転者に対し、対面か国土交通大臣が定める方法で点呼を行い、次の事項の報告を求めて確認し、必要な指示を与えるよう定めています。

  1. 道路運送車両法に基づく日常点検の実施またはその確認
  2. 酒気帯びの有無
  3. 疾病、疲労、睡眠不足などで安全に運転できないおそれの有無
  4. 特定自動運行保安員については自動運行装置の設定状況

業務後の点呼では車両・道路・運行の状況の報告と酒気帯びの確認を行います。夜間に長距離を走る貸切バスには、業務の途中で少なくとも1回の中間点呼も必要です。アルコール検知器は営業所ごとに備えて常時有効に保ち、酒気帯びの確認は目視に加えて所属営業所の検知器で行います。検知器の故障や校正切れをシステムで管理していないと、点呼そのものが要件を満たさなくなる点には注意が要ります。

遠隔点呼と業務前後の自動点呼を定める令和5年告示第266号と改正の経緯

対面と同等の効果を持つ点呼の方法は、令和5年国土交通省告示第266号で遠隔点呼・業務前自動点呼・業務後自動点呼の3つに整理されました。国土交通省の運行管理高度化ワーキンググループのページには、この告示と令和6年告示第278号、令和7年告示第347号、令和8年告示第792号の3回の改正が掲載されています。

手続き面では、遠隔点呼と自動点呼の実施届出は原則として実施予定日の10日前まで、他社の営業所に点呼を任せる事業者間遠隔点呼は業務の管理受委託の許可申請が2か月前までと示されています。告示は毎年のように改正されているので、機器を選ぶ時点で改正後全文を確認する運用にしてください。

事業区分で変わる記録の保存年限:1年・3年・90日をシステムで管理する設計

点呼記録・業務記録・運行記録計・事故記録の保存年限を区分別に並べた表

運輸規則の記録義務を、2025年4月1日施行版の条文から区分別に並べると次のとおりです。

記録(根拠条文) 一般乗合 一般貸切 一般乗用 特定
点呼記録(第24条第5項) 1年 電磁的記録で3年 1年 1年
点呼の録音・録画(第24条第6項) なし 90日 なし なし
呼気検査の写真(第24条第7項) なし 90日(録画時は不要) なし なし
業務記録(第25条) 1年 3年 1年(車両ごとに整理) 1年
運行記録計(第26条) 1年(100km超の系統など) 電磁的記録で3年 指定地域で1年 規定なし
事故の記録(第26条の2) 3年 3年 3年 3年
指導監督の記録(第38条) 3年 3年 3年 3年
退職者の乗務員等台帳(第37条第2項) 3年 3年 3年 3年

表から読み取れるのは、貸切バスだけ保存年限が長く、しかも電磁的記録が前提になっている点です。タクシーの業務記録は乗車区間と走行距離計の積算キロ数まで記録させ、車両ごとに整理して保存します。運転時間の上限側の基準は運輸規則第21条で国の告示に委ねられており、判定ロジックは拘束時間・休息期間の上限を運行管理システムの判定要件に翻訳した改善基準告示の記事で扱っています。

点呼記録の必須5項目をデータ項目に落とすときの主キーと保存期限の持ち方

第24条第5項が点呼記録に求めるのは、点呼を行った者と受けた運転者等の氏名、自動車登録番号など車両を識別できる表示、点呼の日時、点呼の方法、その他必要な事項の5つです。これに報告・確認・指示の内容が加わります。データ設計では、点呼1回を1レコードにし、運転者ID・車両ID・営業所ID・点呼区分(業務前・中間・業務後)・方法(対面・遠隔・自動)・実施者IDを列で持たせます。

肝心なのは保存期限の持ち方です。営業所の事業区分を毎回参照して期限を計算すると、区分の変更や営業所の統廃合で過去の記録の期限まで変わってしまう。レコード作成時に「保存期限日」を確定値として書き込み、削除バッチはその列だけを見る作りにしてください。録画ファイルのように90日で消してよいものと、3年残すテキスト記録は、保存先も分けておくとストレージ費用の見積もりが立てやすくなります。

退職者の乗務員等台帳を3年残す処理で見落としやすい削除バッチの失敗パターン

よくある失敗は、汎用の人事システムに合わせて「退職フラグが立ったら台帳を論理削除し、1年後に物理削除」という処理を流用するケースです。運輸規則第37条第2項は、運転者でなくなった年月日と理由を台帳に書き込み、3年間保存するよう求めています。1年で消すと、監査で退職者の運転経歴や事故歴を出せません。

もう1つは、乗合と貸切を両方持つ事業者が、点呼記録を作成日から一律1年で削除する設定にしてしまう例です。貸切分は電磁的記録で3年残す義務があるので、この設定は貸切分だけ違反になります。区分を混在させた会社ほど、記録単位で期限を持たせる設計の価値が出ます。

運行管理システムの内製範囲:認定機器は買い、記録の統合と監査出力を作る判断

自動点呼機器を自作しない理由と認定機器一覧から選ぶときの確認事項

業務前・業務後の自動点呼に使う機器は、国土交通省の認定を受けたものに限られ、認定機器の一覧が公開されています。受託開発で機器そのものを作るのは割に合いません。認定の取得に時間とコストがかかるうえ、告示の改正のたびに要件の追随が必要になるからです。

選ぶときに見るべきなのは、機器が残す記録をどの形式で外へ出せるかです。CSVやAPIで点呼記録を取り出せない機器を選ぶと、業務記録や運行記録計のデータと突き合わせられず、監査対応が紙と画面の往復に戻ります。デジタコやテレマティクス側のデータ取得の選択肢はデジタコ連携の仕組みを扱った車両運行管理IoTの記事が参考になります。

受託開発で作る価値がある統合レイヤーと、パッケージで足りる事業者の条件

作る価値があるのは、点呼機器・デジタコ・配車・勤怠に散らばった記録を運転者と車両で突き合わせ、保存期限と監査用の出力を一元管理する統合レイヤーです。区分が複数ある事業者、日本版ライドシェアで一般ドライバーを抱えたタクシー会社、営業所間で遠隔点呼を回す事業者では、パッケージの標準機能で吸収しきれない差分が出ます。こうした要件の整理から実装までは運送事業者向けの物流システム開発でご相談いただけます。

逆に、単一区分で1営業所、車両が数十両までのタクシー会社や送迎事業者なら、統合レイヤーの開発は過剰です。点呼・日報・台帳を一通り備えたクラウドのパッケージで、条文の記録義務を満たすことが可能です。判断の線は「保存年限が2種類以上混在するか」と「自社の乗務員台帳に載らない運転者がいるか」の2点で、どちらにも当てはまらなければパッケージを選び、浮いた予算を配車側に回したほうが成果が出ます。配車や請求まで含めた全体像は配車・運行・請求の一元管理を扱った運送業のシステムの記事で整理しています。

道路運送法でよくある質問:白タク・点呼記録・運行管理者の疑問

道路運送法と運行管理の実務について、検索の多い質問に条文ベースで答えます。

道路運送法と道路交通法の違いは何ですか?

道路運送法は運送の「事業」を、道路交通法は道路を通る人と車の「通行」を規制します。バス会社が許可を取る、運行管理者を選ぶ、点呼を記録するといった義務は道路運送法側です。信号や速度、運転免許、白ナンバー社用車の安全運転管理者は道路交通法側にあたります。緑ナンバーの事業者はどちらの法律も守る必要があり、アルコールチェックはそれぞれの制度で根拠条文が別になります。

白ナンバーで送迎して料金を受け取ると違反になりますか?

原則として違反です。第78条は自家用自動車を有償で運送に使うことを、災害時、登録を受けた自家用有償旅客運送、国土交通大臣の許可を受けた場合の3つを除いて禁じています。違反すると第97条により1年以下の拘禁刑もしくは150万円以下の罰金、またはその併科です。謝礼や実費の受け取りが「有償」に当たるかは国の通達で判断基準が示されているため、個別のケースは管轄の運輸支局に確認してください。

点呼記録は紙で保存してもよいですか?

一般乗合・一般乗用・特定の事業者は、運輸規則第24条第5項に保存の形式の指定がなく、記録すべき事項がそろっていれば紙でも保存できます。一般貸切は、記録した電磁的記録を3年間保存すると定められているので電子化が前提です。さらに貸切は点呼の録音・録画を90日保存する義務もあり、紙だけでは要件を満たせません。

運行管理者は車両が何台から必要ですか?

区分で異なります。タクシーなど一般乗用は事業用自動車5両以上の営業所で選任が必要です。一般乗合と特定は、定員11人以上の車を扱う営業所か、定員10人以下の車が5両以上の営業所が対象になります。一般貸切は台数に関係なく全営業所で選任が必要で、19両以下なら原則2人です。人数は運輸規則第47条の9の計算式で決まります。

トラック運送会社にも道路運送法は適用されますか?

貨物の事業許可や運行管理、点呼の規定は貨物自動車運送事業法と貨物自動車運送事業輸送安全規則にあり、トラック運送会社が主に従うのはそちらです。ただし道路運送法第78条の自家用自動車の有償運送禁止は、条文上、旅客と貨物を区別していません。白ナンバーのトラックで他人の荷物を運んで運賃を受け取る行為は、事業許可の問題とあわせて注意が必要です。

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