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熱中症対策の義務化とは|企業がやること・罰則と2026年ガイドラインの要点

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職場の熱中症対策は、2025年6月1日から労働安全衛生規則で罰則つきの義務になりました。企業が求められるのは、熱中症の疑いがある人を見つけたときの報告体制の整備、症状の悪化を防ぐ手順の作成、その両方を作業者へ周知することの3つです。この記事では、対象になる作業の線引きと罰則、厚生労働省の通達が示す体制と周知の具体的な方法を整理し、2026年3月に策定された新ガイドラインで何が変わったかを一次情報から確認します。後半では、連絡網の掲示で足りる職場と、WBGTセンサーやウェアラブルで報告の流れを仕組みにしたほうがよい職場の分かれ目を示します。

まとめ|熱中症対策の義務化で企業が満たす3つの措置と2026年の要点

義務の対象は、WBGT28度以上または気温31度以上の場所で、継続1時間以上か1日4時間超が見込まれる作業です。業種や企業規模による除外はありません。該当する作業があるなら、作業開始前までに「誰に・どうやって報告するか」「見つけたら何をするか」を作業場ごとに決め、全員に伝えておく必要があります。

違反すると、行為者は6か月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金、法人にも50万円以下の罰金が科されることがあります。

2026年3月には、2021年の予防基本対策要綱が廃止され、新しいガイドラインに置き換わりました。重篤化の防止に加えて、発症そのものを減らす対策が前面に出ています。体制の組み方は、屋内中心で少人数なら連絡網と朝礼で足り、複数の現場や協力会社、単独作業を抱える会社ほど、測定値と報告の記録を仕組みで残す価値が大きくなります。

熱中症対策の義務化の中身|安衛則第612条の2が定める報告体制と手順

義務化の根拠は、労働安全衛生規則に新設された1条です。労働安全衛生法の規模別の義務と改正の施行日の中で位置づけると、健康障害の防止措置を事業者に課す法第22条にもとづく規定にあたります。

2025年6月1日施行の改正省令で新設された第612条の2の2つの項

改正省令(令和7年厚生労働省令第57号)は2025年4月15日に公布され、6月1日に施行されました。新設された労働安全衛生規則第612条の2は2つの項でできています。

  1. 第1項:作業従事者が熱中症の自覚症状を訴えた場合や、他の作業従事者が熱中症の疑いに気づいた場合に、その旨を報告させる体制を整備し、周知する
  2. 第2項:作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察や処置など、症状の悪化を防ぐ措置の内容と実施手順を作業場ごとに定め、周知する

どちらも「あらかじめ」行う義務です。熱中症が起きてから連絡先を探す状態は、条文の要件を満たしません。2026年9月時点でe-Govに掲載されている現行の条文は「作業従事者」という語を使っており、同じ場所で作業する一人親方など労働者以外の人も周知の相手に含まれます。

WBGT28度・気温31度で連続1時間か1日4時間超が対象作業になる線引き

条文は「暑熱な場所において連続して行われる作業等」とだけ書いており、数値は施行通達が定めています。暑熱な場所はWBGT28度以上または気温31度以上の場所で、そこで継続して1時間以上、または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業が対象です。

出張先での作業や、作業場所の間の移動も含まれます。臨時の作業でも、条件を満たす見込みがあれば対象です。WBGTの測り方や、作業の強さと暑さへの慣れで変わる基準値は、WBGT(暑さ指数)の計算式と職場の基準値で詳しく扱っています。義務の入口は28度でも、重い作業を暑さに慣れていない人が行う場合の基準値は23度と、ずっと低くなります。

罰則は6か月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金で法人にも科される両罰規定

第612条の2は労働安全衛生法第22条にもとづく措置義務です。第22条の違反は第119条の対象で、違反行為をした者は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されます。第122条の両罰規定により、法人にも50万円以下の罰金が科されることがあります。

罰則より重いのは、死亡災害が起きた後の責任です。報告体制も手順も無い状態で作業者が亡くなれば、刑事責任に加えて安全配慮義務違反による損害賠償が問われます。

通達で決まっている実務の細部|基発0520第6号が示す体制と周知の方法

「何をどこまで用意すれば足りるか」は、条文ではなく施行通達(基発0520第6号・令和7年5月20日)に書かれています。企業の担当者が確認すべき箇所は次の4つです。

責任者の連絡先と連絡方法を明示し作業中は随時報告を受けられる状態

報告体制の整備には、作業場の責任者など報告を受ける人の連絡先と連絡方法を定めて明示し、作業中はいつでも報告を受けられる状態を保つことが含まれます。責任者が会議中で電話に出られない、夜間作業の時間帯に連絡先が不在、という状態は体制として弱い部分です。

通達は、電話を待つだけでなく、早期発見の方法として次の組み合わせを推奨しています。

  • 責任者等による作業場所の巡視
  • 2人以上で互いの体調を確認するバディ制
  • ウェアラブルデバイスを用いたリスク管理
  • 責任者と作業者の双方向の定期連絡

同じ作業者が一定期間続けて作業する場合、一度整備して周知した体制を作業日ごとにやり直す必要はありません。

作業離脱・身体冷却・搬送先を決める手順と帰宅後の急変への備え

手順には、作業からの離脱、身体の冷却、医療機関への搬送の流れを入れることが必要です。通達は、事業場の緊急連絡網と、搬送先の医療機関の連絡先と所在地も手順に記載することが望ましいとしています。身体の冷却は、作業着を脱がせて水をかける、アイスバスに入れる、涼しい休憩所に移す、アイススラリーを飲ませるといった方法が例示されています。

見落としやすいのは、回復したように見えた後です。熱中症は帰宅後に悪化することがあるため、体調が急変したときに本人や家族が救急要請する、会社から様子を確認する連絡を入れる、といった対応も事前に決めておきます。手順は通達の別添2(手順例①②)を参考にしてよく、作業の実態に合わせた独自の手順でも構いません。判断に迷う場合は#7119などの相談窓口に相談する流れを入れておくと、現場が迷いません。

掲示・メール・朝礼を組み合わせる周知と記録保存が要件ではない点

周知の方法は、見やすい場所への掲示、メールの送付、文書の配布、朝礼での口頭伝達のいずれでも構いません。ただし内容が複雑な場合や、朝礼に出ない人がいる場合は、複数の手段を組み合わせるよう求めています。

周知した記録の保存は法令上の要件ではありません。一方で通達は、労働基準監督署の確認には事業者として適切に対応するよう求めています。誰にいつ伝えたかを説明できない会社は、監督署の確認の場面で周知したことを示しにくくなります。

建設現場の混在作業では元方と関係請負人のすべての事業者に義務

同じ作業場で複数の事業者が作業する場合、元方事業者と関係請負人のいずれにも措置義務が生じます。措置が行われていなければ、元方だけでなく、その作業場に関わるすべての事業者に違反が生じます。

通達は、各事業者が共同で1つの緊急連絡先を定めて掲示する方法や、メール、文書で周知する方法を例に挙げています。協力会社ごとに連絡先がばらばらな現場では、誰に報告すればよいかを作業者が即答できません。現場の情報共有の全体像は、建設DXの着手順と投資判断の線引きで整理しています。

2026年3月の新ガイドラインで変わった点|旧要綱の廃止と発症を減らす対策

義務化から1年を待たずに、厚生労働省は職場の熱中症対策の基本文書を差し替えました。上位の解説記事の多くは2025年の規則改正で止まっているため、ここで変更点を確認しておきます。

基発0318第1号で2021年の予防基本対策要綱を廃止しガイドラインへ一本化

2026年3月18日の基発0318第1号で「職場における熱中症防止のためのガイドライン」が策定され、2021年4月20日の基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱」は廃止されました。ガイドラインは、業種や作業場所ごとに制約が違うことを前提に、一律の対策ではなく複数の選択肢から事業者が選ぶ形をとっています。

体制面では、衛生管理者(50人未満の事業場では安全衛生推進者または衛生推進者)を中心に対策を検討させ、職長など現場の管理者に担わせる場合は、教育を受けた人から熱中症予防管理者を選任するとしています。準備の時期は、おおむね4月中までが目安です。

暑熱順化は7日以上・4日離れると失われ始める数値とスポットワーク

発症を減らす対策として具体的な数値が入ったのが、暑熱順化です。ガイドラインは、7日以上かけて暑熱環境での負荷と作業時間を少しずつ増やす方法を示し、熱へのばく露が途切れると4日後には順化の喪失が始まり、3〜4週間で完全に失われるとしています。

実務への影響が大きいのは、夏季休暇明けと新規入職者です。入職1週間未満の人と、4日以上現場を離れていた人をあらかじめ把握し、巡視の頻度を増やすよう求めています。スポットワークで短期間だけ働く人は、順化していると確実に把握できる場合を除き、原則として順化していない人として扱うことが望ましいとされました。日雇いや短期アルバイトを夏に増やす事業者は、シフト表の段階で順化の有無を管理する必要があります。

2025年の死傷者1,803人・死亡者19人が示す重篤化防止と発症抑制の差

2026年5月27日に公表された2025年の職場における熱中症の死傷災害(確定値)では、死傷者は1,803人と前年から約43%増え、統計開始以来の最多でした。一方、死亡者は19人で前年から約39%減っています。厚生労働省は、改正規則により重篤化を防ぐ対策が進み、死亡災害の防止が一定程度図られたと推測しています。

数字が示すのは、報告体制と手順で「死なせない」効果は出始めたが、「倒れる人」は減っていないということです。2026年のガイドラインが暑熱順化や作業前の体調確認を厚く書いたのはこのためです。義務の3点を整えた会社も、次は発症を減らす側の対策が問われます。

企業の熱中症対策を何で満たすか|紙・チャット・IoTで比べる報告体制

義務の3点は、紙の連絡網と朝礼だけでも満たせます。仕組みにするかどうかは、作業場の数、作業者の働き方、測定と記録の手間で決まります。

方式 向いている職場 WBGTの把握 報告と記録
掲示・紙の連絡網 屋内中心・1拠点・少人数 測定器の目視と記入 電話。記録は手書き
チャット・安否確認ツール 拠点が複数・全員がスマホを持つ 測定器か環境省の公表値 一斉通知と既読で周知を残せる
WBGTセンサーとウェアラブル 屋外の複数現場・単独作業・協力会社 現場ごとに自動計測 基準超過と異常の通知、時系列の記録

下の段に行くほど費用はかかりますが、「誰がいつ報告を受け、いつ周知したか」を後から説明できる範囲が広がります。

連絡網の掲示と朝礼で足りる屋内中心で1拠点の事業場の運用条件

作業場が1か所で、責任者が常に現場にいて、対象作業が工場内の一部に限られるなら、仕組みへの投資は要りません。通達の別添1(掲示例)と別添2(手順例)を作業場ごとに書き換え、休憩所と作業場に掲示し、朝礼で読み上げれば義務は満たせます。

この規模で先にやるべきことは、JIS Z 8504またはJIS B 7922に適合したWBGT指数計を用意することです。ガイドラインは、黒球のない測定器では屋外や輻射熱のある屋内で正しく測れない場合があると注意しています。直射日光下、炉などの熱源の近く、冷房の無い風通しの悪い屋内では実測が必要です。

WBGTセンサーの自動計測と基準超過アラートで判断を記録に残す構成

屋外の現場が複数ある会社で負担になるのは、各現場の責任者が測定器を読み、判断し、記録する作業です。WBGTセンサーを現場ごとに置き、測定値をクラウドへ送り、作業に応じた基準値を超えたら責任者のスマートフォンへ通知する構成にすると、測定と判断の記録が自動で残ります。

センサーの値を集める部分が難しくなるのは、現場に電源や回線が無い場合です。LTEや省電力の無線でまとめて送る中継機の選び方は、IoTゲートウェイの役割とクラウド直結との使い分けが参考になります。環境省熱中症予防情報サイトの地点別の値を併せて取り込めば、翌日の作業計画を前日に組み替える判断にも使えます。

ウェアラブルの心拍と体温の監視は単独では足りず巡視やバディと組み合わせる

通達もガイドラインも、ウェアラブルデバイスは着用者の状態を必ずしも正確に把握できないため、他の方法と組み合わせるよう求めています。機器を配っただけで報告体制を整えたことにはなりません。

通知の条件を決める材料は、ガイドラインにあります。心拍数が数分間続けて「180から年齢を引いた値」を超える、作業強度のピークから1分後の心拍数が120を超える、休憩中の体温が作業開始前に戻らない、作業開始前から体重が1.5%を超えて減る、といった兆候は熱へのばく露を止める目安とされています。ウェアラブルの通知はこれらを閾値にし、通知を受けた責任者が声をかけて確認するところまでを手順に書くと、巡視やバディ制と役割が重なりません。単独作業が避けられない現場ほど、この組み合わせの価値が大きくなります。

報告体制のシステム化を見送る場面と個別開発を検討する多拠点の分岐

熱中症対策の製品は多く、どれを入れれば義務を果たせるかという聞き方をされがちです。判断の順番は逆で、先に手順を紙で書き、回らない箇所だけを仕組みにします。

既製の安否確認やチャットで足りる会社と投資が過剰になる失敗例

全員が社用スマートフォンを持ち、拠点が数か所程度なら、既に使っているチャットや安否確認サービスで足ります。報告先の一斉周知、既読の確認、体調不良の報告フォームは標準機能で作れます。安否確認システムの仕組みと費用相場を見て、手持ちのツールで代わりになる機能を先に確かめてください。

失敗しやすいのは、手順を決める前に全員分のウェアラブルを買う進め方です。通知を誰が受け、何分以内に誰が現場へ行くかが決まっていないと、夜間や休日の通知が放置され、機器が使われなくなります。1拠点の工場でWBGTセンサーと専用アプリを一から開発するのも過剰です。この規模は、市販の指数計と掲示で十分に義務を満たせます。

複数現場・協力会社・単独作業を抱える会社で開発対象になる機能

日々変わる複数の現場に、協力会社の作業者と一人親方が混在し、単独で作業する人もいる会社では、既製品の組み合わせでは連絡先と記録がばらけます。通達が求める「共同で1つの緊急連絡先」を現場ごとに作り替え、協力会社の作業者にも周知を届ける作業は、現場が増えるほど手作業では回りません。

この場合に作る価値があるのは、現場ごとのWBGT計測と基準超過の通知、協力会社を含む作業者への手順の配信と既読の記録、入職日と休暇から暑熱順化が必要な人を抽出する機能、体調報告とウェアラブル通知を1つの画面で責任者が受ける機能の4つです。センサーの選定から通知の設計、既存の勤怠や作業員名簿との連携まで、AI/IoTソリューションの受託開発で相談できます。

よくある質問

熱中症対策の義務化について、企業の担当者からよく検索される質問に、条文と厚生労働省の資料の範囲で答えます。

熱中症対策の義務化は何人以上の会社が対象ですか?

人数や業種による区分はありません。第612条の2は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行う事業者すべてに適用されます。従業員が数人の会社でも、WBGT28度以上または気温31度以上の場所で、継続1時間以上か1日4時間超の作業が見込まれるなら、報告体制と手順を整えて周知する必要があります。反対に大企業でも、対象作業が無い事業場には義務が生じません。まず自社の作業が条件に当たるかを事業場ごとに確認してください。

事務所や冷房のある屋内の作業も熱中症対策の義務の対象になりますか?

冷房が効いていてWBGT28度未満かつ気温31度未満に保たれている事務所なら、対象作業には当たりません。ただし、冷房の無い倉庫、厨房、炉の近くの工場、夜間に空調が止まるビルでの作業は、屋内でも条件を満たすことがあります。ガイドラインが求めているのは、屋内で冷房が無く風通しが悪い場所では、公表値ではなく作業場所で実測することです。外回りの営業や配送など、移動中の屋外も条件を満たせば対象に含まれます。

WBGTは必ず測定器で測らないといけませんか?

原則は作業場所での実測です。ただし通達は、風通しのよい屋外作業については、天気予報やスマートフォンのアプリ、環境省の熱中症予防情報サイトで判断できる場合はそれでも差し支えないとしています。直射日光下の作業、熱源の近く、冷房の無い屋内では公表値が実測より低く出ることがあるため、JIS Z 8504またはJIS B 7922に適合した指数計で測ってください。黒球の無い簡易な測定器は、屋外では正しい値を示さない場合があります。

厚生労働省の様式やひな形はありますか?

決まった様式はありません。施行通達の別添1に報告先の掲示例、別添2に症状を見つけたときの手順例①と②が示されており、同じ手順例はガイドラインの末尾にも載っています。責任者の名前と電話番号、搬送先の医療機関の名前・住所・電話番号を書き込めば使える形です。手順例をそのまま使う必要はなく、作業場所と作業内容に合わせた独自の手順で構いません。教材は厚生労働省の職場における熱中症予防情報のサイトにまとまっています。

熱中症対策の設備やシステムに使える補助金はありますか?

熱中症対策だけを目的とした国の制度は年度ごとに変わるため、申請する年度の公募要領で確認してください。WBGTの自動計測や報告の仕組みをシステムとして導入する場合は、IT導入系の補助金の対象になることがあります。制度ごとの補助額や対象経費は、システム開発で使える補助金一覧で整理しています。業種団体や自治体が独自に暑熱対策の助成を出している例もあるため、所在地の自治体の情報も併せて確認してください。

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