物流効率化法とは、旧「物流総合効率化法」を2024年に改正・改称した法律で、正式名称を「物資の流通の効率化に関する法律」といいます。2025年4月にすべての荷主と物流事業者へ努力義務がかかり、2026年4月からは年間の取扱貨物が9万トン以上の荷主などが「特定事業者」として中長期計画・定期報告・物流統括管理者(CLO)の選任を義務づけられました。この記事では、改正前後で何が変わったか、自社が対象かどうかの判定方法、2026年度の提出期限と罰則を整理します。そのうえで、定期報告に必要な荷待ち・荷役時間の記録をどのデータ項目で取ればよいかまで、システム要件に置き換えて解説します。
まとめ:物流効率化法の改正で荷主に生じた義務と2026年度の提出期限
改正の核心は、物流の効率化を「物流事業者の努力」から「荷主を含む全員の責任」へ移したことです。発荷主も着荷主も、トラック運転者の荷待ち時間と荷役時間を減らし、1台あたりの積載量を増やすよう努めなければなりません。
前年度の取扱貨物が9万トン以上なら特定荷主です。翌年度の5月末日までに届け出て、役員クラスからCLOを選び、中長期計画と毎年の定期報告を出します。2026年度に指定された企業は、初回の中長期計画が2026年10月末、初回の定期報告が2027年7月末の締切です。
実務で最初に手を付けるのは、施設ごとに「到着・荷役開始・荷役終了」の時刻を記録する仕組みです。時刻が無ければ計画も報告も書けません。基準未満の企業も努力義務は負うため、記録の取り方だけは今のうちに決めておくべきです。
物流効率化法とは何か|旧物流総合効率化法からの改称と2段階施行の全体像
同じ法律が、2024年の改正を境に性格を大きく変えました。名前が2つ流通しているのはそのためです。
旧物流総合効率化法の認定制度と2024年改正で加わった規制的措置
改正前の正式名称は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(平成17年法律第85号)で、略して物流総合効率化法と呼ばれていました。中身は支援法です。2社以上が連携して輸送網の集約、モーダルシフト、輸配送の共同化に取り組む「総合効率化計画」を国が認定し、営業倉庫の税制特例や計画策定経費の補助を与える仕組みでした。
2024年5月15日公布の改正法(令和6年法律第23号)で、法律名は「物資の流通の効率化に関する法律」に改められ、荷主と物流事業者への義務づけが加わりました。国土交通省の物流効率化法に基づく支援のページのとおり、認定制度そのものは改正後も続いています。つまり今の物流効率化法は「支援」と「規制」の2本立てです。
2025年4月の努力義務と2026年4月の特定事業者規制という2段階施行
改正法は2回に分けて施行されました。国土交通省の物流効率化法の解説ページによると、第1段階の2025年4月1日に、すべての荷主・物流事業者への努力義務と、国が定める判断基準が始まりました。第2段階の2026年4月1日には、一定規模以上の事業者を特定事業者に指定し、計画や報告を義務づける規制的措置が施行されています。
同じ改正法で貨物自動車運送事業法も改められ、元請けトラック事業者の実運送体制管理簿の作成や運送契約の書面交付が加わりました。こちらはトラック事業者側の義務で、荷主向けの物流効率化法とは条文の置き場所が違います。2024年問題との関係は物流の2024年問題の解説で整理しています。
対象となる事業者区分と努力義務|第一種・第二種荷主から倉庫業者までの範囲
努力義務の対象は5つの区分に分かれます。荷主(第一種・第二種)、連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)、貨物自動車運送事業者等、貨物自動車関連事業者(倉庫業者・港湾運送事業者など)です。
発荷主が第一種荷主・着荷主が第二種荷主となる原則と引取物流の例外
区分を分けるのは「運送契約を誰が結ぶか」です。改正物流効率化法ポータルの荷主の定義によると、第一種荷主はトラック事業者と継続して運送契約を結ぶ者、第二種荷主は契約を結ばずに他社の運転者から貨物を受け取る、または引き渡す者を指します。
普通は発荷主が第一種、着荷主が第二種です。ただし、受け取る側が自分でトラックを手配する引取物流では立場が逆になります。メーカーが部品を引き取りに行く調達物流がこの典型で、1社が第一種と第二種の両方に当たることも珍しくありません。物流子会社や3PL事業者に運送契約を任せている場合、荷主に当たるのは委託した親会社側です。
判断基準が示す1回2時間以内の荷待ちと積載効率44%という国の目標値
努力義務の中身は、荷主判断基準省令が定める3つの取組です。積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮で、荷主の判断基準のページにはトラック予約受付システムの導入やパレットの標準化、事前出荷情報の利用などの措置が並んでいます。
数値目標は荷主判断基準の解説書(2026年3月版)に書かれています。荷主は1回の受渡しごとの荷待ち・荷役時間を原則1時間以内に設定し、やむを得ない場合でも2時間を超えないようにします。国全体では令和10年度までに、5割の運行で荷待ち等を1時間削り、積載効率を全車両平均44%へ上げる目標です。目標の水準は個社の努力では動かせないため、荷主は「自社施設の1回あたり時間」を測れる状態を先に作ることになります。
特定事業者の指定基準と義務|9万トン・150台・70万トンの判定と罰則の一覧
努力義務を負う事業者のうち、規模の大きい者が特定事業者に指定されます。指定基準は事業者区分ごとに次のとおりです。
| 区分 | 指定基準(前年度実績) | CLO選任 |
|---|---|---|
| 特定荷主(第一種・第二種) | 取扱貨物の重量9万トン以上 | 必要 |
| 特定連鎖化事業者 | 取扱貨物の重量9万トン以上 | 必要 |
| 特定貨物自動車運送事業者等 | 保有車両台数150台以上 | 不要 |
| 特定倉庫業者 | 貨物の保管量70万トン以上 | 不要 |
以下では、対象が最も多い特定荷主を中心に説明します。
前年度の取扱貨物重量で判定する9万トン基準と8通りの重量算定方法
判定は年度単位(4月〜翌3月)の取扱貨物重量で行います。特定事業者の指定のページによると、9万トンは重量の多い順に並べて全体の50%をカバーする水準として決められました。第一種と第二種は別々に数え、どちらか一方でも9万トン以上なら届出が要ります。
重量を実測していない企業のために、届出省令は8通りの算定方法を認めています。実測、単位重量×個数、容積からの換算、トラックの積載量×台数、売上額や仕入額を単位重量あたりの額で割る方法、契約書記載の重量などです。軽い商品を扱う小売や卸でも、売上額から換算すれば判定できます。重量の記載は届出書では任意で、9万トン以上が確実なら精密な算定までは求められていません。
中長期計画・定期報告・物流統括管理者の選任という3つの義務の中身
特定荷主には、次の3つの義務が課されています。1つ目の中長期計画は、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮について、実施する措置と目標、時期を最長5年分まとめる計画書です。2つ目の定期報告は、判断基準の遵守状況をチェックリストで答え、施設ごとの荷待ち時間等の実績を報告するものです。
3つ目のCLOは、物流統括管理者の選任のページで「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」と定められ、役員などの経営幹部から選びます。物流部長を充てれば済む役職ではありません。業務は計画の作成、部門間の連携体制づくり、設備投資やデジタル化の計画など9項目に及び、販売・調達・生産の部門を動かす権限が前提になっています。
届出懈怠50万円以下から命令違反100万円以下までの罰則と勧告・公表
罰則は解説書の一覧で確認できます。指定基準を超えたのに届け出ない、中長期計画を出さない、定期報告をしない、または虚偽の報告をした場合は50万円以下の罰金です。CLOを選任しない場合と国の命令に違反した場合は100万円以下の罰金、CLOの選任・解任の届出を怠った場合は20万円以下の過料となっています。
取組そのものが不十分なときは段階を踏みます。判断基準に照らして著しく不十分なら勧告、従わなければ企業名の公表、さらに正当な理由なく措置を取らなければ命令です。命令に違反した時点で100万円以下の罰金の対象になるため、勧告の段階で計画を立て直すことになります。
2026年度の提出スケジュール|5月末の届出から10月末の計画、翌年7月の報告
特定荷主の手続はすべてe-Gov電子申請で行い、事前にGビズIDの取得が必要です。期限は経済産業省の「物流効率化法」対応の手引書(特定荷主編・第1.1版)にまとまっています。
2026年10月末が締切の初回中長期計画と5年ごとに出し直す再提出ルール
届出の期限は、取扱貨物の重量が基準を上回った年度の翌年度の5月末日です。2025年度の実績で基準を超えた企業は2026年5月末までに届け出て、指定の通知を受け取っています。CLOの選任日は、この指定通知を受け取った日以降の日付で届け出る決まりです。事前に社内で決めていても、届出上の日付は通知後になります。
中長期計画は、本来は指定を受けた年度の7月末日が締切ですが、2026年度に限り10月末日まで延びています。計画期間は最長5年で、内容を変えなければ次の提出は最終年度の翌年度の7月末です。中長期的な計画の作成のページでも、変更がない限り5年に一度の提出と説明されています。
2027年7月末に初回提出となる定期報告と1時間以内の報告省略要件
定期報告は、指定を受けた年度の翌年度から毎年度7月末日までに出します。2026年度に指定された企業なら、2026年4月〜2027年3月の実績を2027年7月末までに報告することになります。つまり、計測は2026年度の途中からすでに始まっていなければ間に合いません。
定期報告のページでは、施設の荷待ち時間等が1時間以内の場合や、危険物・重量物のように安全上短縮が難しい場合は、時間の報告を省略できるとされています。ただし、1時間以内であることを示すにも計測は要ります。省略できるのは報告の記載であって、記録ではありません。
定期報告をシステム要件に翻訳する|荷待ち・荷役時間の計測データ設計
ここからは、報告様式が求める数字を、どのデータをどの粒度で持てば作れるかに置き換えます。荷待ち時間の集計SQLまで踏み込んだ実装例は物流DXの進め方の解説で扱っているため、本記事では項目の定義に絞ります。
到着・荷役開始・荷役終了の3時刻を施設別に取る計測項目の定義
荷待ち時間と荷役等時間の算定方法のページによると、荷待ち時間は運転者が集貨・配達場所に着いた時刻から荷役を始めた時刻まで、荷役等時間は荷役の開始から終了までです。到着時刻を荷主が指定している場合は、指定時刻から数える場合があります。
そのため1運行1行のレコードに、最低でも次の項目を持たせます。
- 施設コード(報告は施設ごとの平均で行うため)
- 到着時刻と、到着時刻の指定がある場合は指定時刻
- 荷役開始時刻と荷役終了時刻
- 運送事業者、車番、荷主区分(第一種か第二種か)
荷待ちと荷役は分けて計測するのが原則です。「入構から出発まで」の滞在時間だけを取っている仕組みは、そのままでは報告に使えません。
四半期ごと5営業日以上のサンプリング計測と全数計測の分かれ目
すべての運行を毎日記録する必要はありません。定期報告のページが示す最低限の水準は、年間取扱重量の大きい施設を対象に、四半期ごとに5営業日以上、その期間の全運行を計測することです。年に20営業日分の記録があれば報告の要件は満たせます。
サンプリングで足りる企業は、紙の受付簿やExcelの入力表でも回ります。全数計測に切り替えるべきなのは、荷待ちが1時間を超える施設があって改善の効果を毎月追いたい場合と、運送会社から荷待ち料金を請求され、その根拠を照合する必要がある場合です。この2つに当たるなら、バース予約管理システムの受付記録から時刻を自動で取る構成のほうが入力漏れを防げます。
取扱貨物重量の年度集計を出荷・仕入データから作る方法と注意点
毎年の指定判定にも、年度ごとの取扱貨物重量の集計が必要です。販売管理や基幹システムに出荷明細と商品マスタの単位重量があれば、出荷数量×単位重量で第一種荷主としての重量を出せます。入荷側も同じ式で第二種の重量になります。
注意するのは、商品マスタに重量が入っていない品目と、物流子会社経由の出荷です。重量欠損の品目は売上額からの換算で補い、どの方法で数えたかを年度ごとに記録しておきます。システム間で出荷データの形式がそろっていない場合は、物流のデータ連携の設計を先に見直すと集計の手間が減ります。省エネ法の荷主報告で輸送トンキロを集計している企業は、その基礎データを流用できるため省エネ法の定期報告の解説もあわせて確認してください。
システム投資を急ぐべき企業と見送ってよい企業|特定荷主かどうかで分ける判断
法対応を理由にした大型の物流システム導入は、条件がそろわないと入力が続かずに止まります。判断の軸は「特定荷主か」と「施設と運送会社の数」の2つです。
特定荷主で複数施設の時刻記録が手作業の限界を超えるときの投資判断
特定荷主で、計測対象の施設が複数あり、施設ごとに出入りする運送会社が多い企業は、時刻記録の仕組み化を2026年度中に始めるべきです。四半期ごとに施設別平均を出し、翌年7月に報告し、5年計画の進み具合を毎年追う作業は、紙とExcelの転記では担当者1人に集中して止まりがちだからです。
この場合の打ち手は、新しいパッケージを丸ごと入れることではありません。既存のWMSや受付の仕組みに3時刻の入力を足し、出荷データの重量集計とつなぐだけで報告の大半は作れます。既存システムとの接続から設計したい場合は、物流システム開発として要件整理から相談を受け付けています。
基準未満の荷主が先に手を付ける納品条件の見直しとシステム投資の見送り条件
取扱貨物が9万トンに届かない企業は、計画も報告も義務ではありません。この段階で荷待ち管理のシステムを入れるのは過剰です。努力義務への対応は、リードタイムの確保、納品日の集約、時間指定の分散といった取引条件の見直しから始めるほうが効果が出ます。具体的な打ち手は配送効率化の進め方で優先順位をつけて整理しています。
ただし、売上の伸びで2〜3年以内に9万トンを超えそうな企業は例外です。指定された年度の途中から計測を始めると、初回の定期報告に間に合わない四半期が出ます。基準の8割を超えたあたりで、主要施設だけでも時刻の記録を始めておくのが安全です。
物流効率化法についてよくある質問|荷主の義務・選任対象・施行時期
物流効率化法の改正について、荷主企業の担当者から寄せられやすい質問をまとめました。
物流効率化法と物流総合効率化法は別の法律ですか?
同じ法律です。平成17年法律第85号の「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(通称:物流総合効率化法)が、2024年の改正で「物資の流通の効率化に関する法律」に改称されました。改正前からある総合効率化計画の認定と支援措置は残っており、そこに荷主・物流事業者への努力義務と特定事業者の規制が加わった構成です。「新物流効率化法」「改正物流効率化法」と呼ばれるのも、改正後の同じ法律を指しています。
特定荷主に該当しない中小企業にも義務はありますか?
特定荷主に該当しなくても、努力義務の対象です。2025年4月から、規模を問わずすべての荷主に、荷待ち時間と荷役等時間の短縮、積載効率の向上に努める義務がかかっています。違反しても罰則はありませんが、国は判断基準に基づいて指導・助言を行い、取組状況を調査して公表できます。中長期計画、定期報告、CLOの選任は特定荷主だけの義務で、9万トン未満なら届出も不要です。
物流統括管理者(CLO)には誰を選任すればよいですか?
事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者、つまり役員などの経営幹部から選びます。物流部門の責任者でも、経営判断に加わる立場でなければ要件を満たしません。手引書では、各社に籍を置くことを条件に、グループ会社の複数社のCLOを1人が兼ねることも認められています。選任は特定荷主の指定通知を受けた後に行い、遅滞なく届け出ます。
トラック運送会社や倉庫会社には何が義務づけられますか?
保有車両が150台以上のトラック事業者と、保管量が70万トン以上の倉庫業者は特定事業者として中長期計画と定期報告を出します。CLOの選任義務はありません。あわせて改正された貨物自動車運送事業法により、元請けのトラック事業者には実運送体制管理簿の作成と、運送契約時の書面交付が義務づけられました。管理簿は下請けに運送を任せる元請け、書面交付は運送契約を結ぶトラック事業者が対象で、どちらも150台の基準とは関係がありません。
改正物流効率化法はいつから施行されていますか?
2段階で施行されています。2025年4月1日に努力義務と判断基準が始まり、2026年4月1日に特定事業者の指定、中長期計画、定期報告、CLO選任の義務が始まりました。2026年度に指定された特定荷主は、中長期計画を2026年10月末までに、最初の定期報告を2027年7月末までに提出します。2027年度以降に指定される企業の中長期計画は、指定年度の7月末が締切です。
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