配車とは、受注した荷物ごとに「どの車両で、どのドライバーが、どの順番で運ぶか」を決め、運行を指示する物流の業務です。運送会社では配車係(配車担当)がこの割当を毎日組んでおり、翌日分の受注が締まる夕方から夜にかけて作業が集中します。この記事では、配車業務の流れを受注から実績記録まで5工程に分け、配車係が同時に見ている制約条件を具体化します。2024年4月に適用された改善基準告示の拘束時間、2025年4月施行の実運送体制管理簿が配車計画に何を求めるかも、公的資料の数値で整理しました。最後に、Excelの配車表を続けてよい条件とシステム化に進む条件を言い切ります。
まとめ|配車の意味と、Excel配車表からシステム化へ進む判断の目安
配車の中身は、荷物と車両とドライバーの組み合わせを決める作業です。運送の現場で配車係が担い、運行管理者(国家資格)が担う安全管理とは役割が分かれています。
難しさの正体は、条件の多さよりも、条件の多くが配車係の頭の中にしか無いことにあります。荷主ごとの受付時間、車格の制限、ドライバーごとの得手不得手。こうした暗黙のルールが引き継げず、担当者が休むと配車が止まります。2024年4月からは改善基準告示で1日の拘束時間が原則13時間以内、休息期間は継続9時間以上が下限となり、配車表の段階で労働時間の上限を守る必要が出ました。元請として他社のトラックに1.5トン以上の貨物を任せるなら、実運送体制管理簿の記録も配車の後工程に加わります。
判断の目安は台数と変動です。保有車両10台前後で固定ルートが中心なら、Excel配車表の改良で足ります。車両30台を超え、スポット案件や傭車が日常的に入るなら、配車のシステム化で回収できる工数が出てきます。
配車とは何か|物流の配車業務が担う荷物・車両・ドライバーの割当
「配車」という言葉は、タクシーの配車アプリや社用車の予約にも使われます。この記事で扱うのは、トラック運送における貨物の配車です。
配車の定義と、配送・運行管理・傭車との言葉の違いを1表で整理
物流の現場では、似た言葉が工程ごとに使い分けられています。配車はその中で「割当を決める」工程を指し、実際に走る配送や、安全を管理する運行管理とは別物です。
| 用語 | 意味 | 主な担い手 |
|---|---|---|
| 配車 | 荷物に車両と乗務員を割り当てる | 配車係 |
| 配車計画 | 翌日以降の割当と順番の一覧 | 配車係 |
| 配送 | 決まった計画どおりに運ぶ | ドライバー |
| 運行管理 | 点呼・乗務記録などの安全管理 | 運行管理者 |
| 傭車 | 自社車両で足りない分を他社に委託 | 配車係が手配 |
| 配車表 | 配車計画を一覧にした帳票 | 配車係が作成 |
実務で混同が起きやすいのは配車と配送です。配車が「誰が運ぶか」を決めるのに対し、配送は「決まった計画を実行する」工程になります。システムの名前でも同じ区別があり、受注から配送指示までを広く扱うのは配送管理システム(TMS)、車両の点検や保険を扱うのは車両管理システムです。
配車係と運行管理者の違い|資格の要否と配車業務における法律上の責任の分担
配車係に法定の資格はありません。社内の職務名であり、ドライバー経験者や事務職が任されることが多い仕事です。
運行管理者は違います。貨物自動車運送事業法にもとづき、一定数以上の事業用自動車を持つ営業所には、運行管理者試験に合格した者などを選任する義務があります。点呼、乗務記録の管理、過労運転の防止が運行管理者の職務です。
両者の仕事は、拘束時間の扱いでぶつかります。配車係が荷主の都合で長い運行を組んでも、運行管理者の立場では過労運転の防止義務に反する計画は通せません。小規模な会社では1人が両方を兼ねることも珍しくなく、その場合は配車を組む段階で労働時間の上限を同時に確かめる形になります。
配車業務の流れ|受注締めから配車計画・運行指示・実績記録までの5工程
配車業務は、次の5工程が毎日繰り返される仕事です。
- 受注の取りまとめ:荷主からの依頼を電話・FAX・メール・Webで受け、翌日分を締める
- 配車計画の作成:荷物ごとに車両とドライバーを割り当て、積み順と回る順番を決める
- 傭車の手配:自社車両で足りない便を協力会社に依頼する
- 運行指示と当日対応:ドライバーへ指示を出し、渋滞・追加・キャンセルに合わせて組み替える
- 実績の記録:運行実績を残し、運賃計算・請求・法定の記録へつなぐ
競合の解説記事は2と4に紙幅を割きがちです。しかし配車係の負荷は、1の受注の形式がばらばらな点と、5の記録が別の帳票に二重入力される点に偏って出ます。
受注締めから翌日の配車計画確定まで、夕方に集中する作業の中身
荷主の出荷指示は、多くが前日の午後に届きます。受注を締めてから翌朝の出発までの数時間で、配車計画を確定しなければなりません。
この時間帯に配車係がしているのは、受注データの転記です。FAXの出荷依頼を手で打ち込み、荷主ごとに形式が違うExcelを貼り合わせる。割当を考える前に、材料をそろえる作業だけで締めから出発までの時間の多くが消えていきます。
システム化の効果が最初に出るのは、ここです。荷主からの受注をWebの入力画面やCSV取込に寄せるだけで、転記の時間が削れます。割当そのものの自動化より先に手を付けたほうが、投資の回収は早く済みます。
配車計画で配車係が同時に見ている制約条件と割当における優先順位の付け方
配車計画を組むとき、配車係は次の条件を同時に満たす組み合わせを探しています。上ほど外せない条件です。
- 法令上の上限:拘束時間・休息期間・連続運転時間(後述の改善基準告示)
- 荷主の指定:着時間、納品先の受付時間、車格の指定(4トン車まで等)
- 車両の条件:積載重量と容積、冷凍・冷蔵の有無、パワーゲートの有無
- ドライバーの条件:免許の種類、納品先への習熟、帰庫時間の希望
- 効率:積載率、空車回送の距離、高速道路の利用
経験の浅い担当者が失敗しやすいのは、下の「効率」から考えて上の条件を後から当てはめる組み方です。積載率の高い計画を作っても、納品先の受付時間に間に合わなければ組み直しになります。外せない条件から順に絞り込み、残った候補の中で効率を比べる。この順番を守るだけで手戻りは減ります。
当日の変更対応と傭車手配、運行実績を記録に残すまでの配車業務の後工程
配車計画は、当日の朝には崩れ始めます。荷物の追加、出荷遅れ、ドライバーの急な欠勤、渋滞。配車係は電話で状況を集め、空いている車両に荷物を振り直します。
自社車両で足りないときは傭車を手配します。協力会社に電話で空き車両を聞き、運賃と時間を決める作業です。ここで決めた委託先・区間・貨物の内容は、元請として後で記録に残す対象になります。
運行が終われば、実績を運賃計算と請求に回します。配車表と運転日報と請求書が別々のファイルだと、同じ便の情報を3回入力することになりかねません。運送業の請求まで含めた一元管理は運送業のシステムの全体像で整理しています。
配車業務が難しい理由|属人化・Excel配車表の限界・2024年問題の制約
配車が「ベテランにしかできない仕事」と言われるのには構造的な理由があります。ここでは属人化、Excelの限界、法令上の上限の3つの面から分解します。
ベテラン配車係の頭の中にある割当ルールが他の担当者に引き継げない構造
配車の条件のうち、紙やシステムに書かれているのは車両の積載量や荷主の指定時間など一部にすぎません。「この納品先は朝一番に入らないと荷受けが混む」「このドライバーは山道の現場に慣れている」。こうした判断材料の大半は、配車係の経験として蓄積されています。
この状態では、担当者が休んだ日や退職した後に配車の質が落ちます。引き継ぎのたびに数か月かけて条件を覚え直すことになり、その間はミスが増えます。
解き方は、暗黙のルールを「条件」として書き出すことです。納品先ごとの受付時間と車格制限、ドライバーごとの対応可能な現場を一覧にするだけでも、他の担当者が同じ配車表を組めるようになります。システムを入れるかどうかは、この書き出しが済んでから決めても遅くありません。
Excel配車表が回らなくなる4つの兆候と、壊れ始める規模の目安
Excelの配車表は、少ない台数では十分に機能します。限界が来るのは、次の兆候が出始めたときです。
- 同じファイルを複数人で開けず、配車係が1人に固定されている
- 当日の組み替えの履歴が残らず、前日の計画と実績の差が追えない
- 配車表から運転日報・請求書へ同じ情報を手で写している
- 拘束時間の集計を月末にまとめて行い、上限超過に後から気づく
規模の目安としては、保有車両が30台前後、1日の配送先が50件を超えるあたりで、上の兆候のうち2つ以上が同時に出る会社が増えます。特に4つ目は法令違反に直結するため、この兆候が出ていれば台数にかかわらず手を打つべきです。
改善基準告示の拘束時間・休息期間が配車計画に課す具体的な上限
2024年4月から、トラック運転者に年960時間の時間外労働の上限が適用され、あわせて改善基準告示も改正されました。厚生労働省のトラック運転者の改善基準告示のページに示されている基準のうち、配車計画に直接効くのは次の数値です。
| 項目 | 原則 | 例外・特例 |
|---|---|---|
| 1日の拘束時間 | 13時間以内 | 延長15時間・長距離16時間 |
| 休息期間 | 継続11時間(努力) | 下限は継続9時間 |
| 1か月の拘束時間 | 284時間以内 | 労使協定で310時間 |
| 1年の拘束時間 | 3,300時間以内 | 労使協定で3,400時間 |
| 運転時間 | 2日平均で1日9時間 | 2週平均で週44時間 |
| 連続運転時間 | 4時間以内 | やむを得ない場合30分延長 |
配車の実務で問題になるのは、1日単位の上限だけでは足りない点です。休息期間が9時間を下回る運行は組めず、前日の帰庫が遅かったドライバーは翌朝の早い便に入れられません。月284時間・年3,300時間の上限も、日々の配車の積み重ねで決まります。
つまり配車係は、翌日の割当を決める時点で、そのドライバーの前日の終業時刻と当月の累計拘束時間を知っている必要があります。Excelで月末に集計する運用では、この確認が配車の後に回ってしまいます。
実運送体制管理簿の作成義務と、配車表をそのまま記録に使う条件
2025年4月1日施行の改正貨物自動車運送事業法で、元請事業者に実運送体制管理簿の作成・保存が義務づけられました。国土交通省の改正貨物自動車運送事業法の解説ページによると、2026年4月1日からは貨物利用運送事業者にも作成義務が広がっています。
関東運輸局が公開している改正貨物自動車運送事業法Q&Aの問4-1では、真荷主から引き受けた1.5トン以上の貨物を他の運送事業者に任せたとき、運送ごとに次の3項目を記録し、運送完了日から1年間営業所に保存するとしています。
- 実運送事業者の商号または名称
- 実運送を行う貨物の内容と区間
- 実運送事業者の請負階層(一次下請・二次下請など)
配車係にとって大事なのは問4-16と問4-17の回答です。決まった様式は無く、必要事項が書かれていれば既存の配車表も使えるとされています。電磁的記録での作成・保存も認められており、問4-15では1か月分をまとめて月末や翌月初めに作成してもよいとしています。
傭車の手配欄に「委託先」「区間」「貨物」「請負階層」の4列を足せば、配車表がそのまま管理簿を兼ねられます。別の帳票を新しく作るより、配車表の列を増やすほうが入力漏れは起きにくいはずです。
配車業務のシステム化を判断する基準|Excel継続・パッケージ・受託開発
配車の課題が見えたら、次は何で解くかです。選択肢はExcelの改良、配車管理パッケージ、受託開発の3つで、どれが合うかは台数と業務の独自性で決まります。システムの機能や種類は配車管理システムとは何かで詳しく扱っているため、ここでは選び分けの条件に絞ります。
Excel配車表のまま続けてよい条件と、システム化を見送る場面
次の条件がそろう会社は、システムを入れずにExcelの改良で済ませるほうが合理的です。
- 保有車両が10台前後で、配車係が1人で回せている
- 運行の大半が固定ルートで、日々の組み替えが少ない
- 傭車がほとんど無く、実運送体制管理簿の対象になる運送が少ない
この規模でシステムを入れても、月額費用に見合う削減時間は出ません。代わりに、配車表へ拘束時間の累計列と傭車の記録列を足し、納品先ごとの条件一覧を別シートに作る。それだけで属人化と法令対応の大半は手当てできます。
逆に見送ってはいけないのは、拘束時間の上限超過が毎月のように起きている場合です。台数が少なくても、配車段階で労働時間を確かめる仕組みが無い状態は放置できません。
配車管理パッケージで足りる会社と、受託開発に進む会社の分かれ目
車両30台を超え、スポット案件や傭車が日常的に入るなら、配車管理パッケージの検討に入ります。製品の選び方と費用帯は配車管理システムの比較、配送先が多く割当そのものを計算させたい場合は自動配車システムの仕組みと導入条件で整理しています。
パッケージで足りるのは、運賃の計算方法や帳票が業界の標準に近い会社です。荷主ごとに独自の運賃表を持つ、既存の基幹システムと受注・請求を連携させたい、建設資材や生コンのように現場単位で配車が決まる。こうした条件が重なると、標準機能に合わせるための手作業が残り続けます。
この場合は、配車の条件と既存システムとの連携範囲を整理したうえで、必要な部分だけを作る受託開発が候補になります。一創では物流システム開発として、受注の取込から配車、運行実績、請求までの連携をご相談いただけます。
よくある質問
配車と配車業務について、よく調べられている疑問に短く答えます。
配車とは簡単に言うと何をする仕事ですか?
荷物ごとに、運ぶ車両とドライバー、回る順番を決める仕事です。運送会社では配車係が担当し、荷主からの受注を締めたあと、翌日分の配車計画を作ってドライバーに指示します。当日の追加やキャンセルに合わせた組み替え、自社車両が足りないときの傭車の手配、運行が終わった後の実績記録までが配車業務の範囲です。タクシーの配車アプリとは別の意味で、物流では貨物の割当を指します。
配車係になるのに必要な資格はありますか?
配車係に法定の資格はありません。ただし営業所には運行管理者の選任が義務づけられており、運行管理者は運行管理者試験の合格などが条件の国家資格です。配車係が運行管理者を兼ねる会社もあり、拘束時間や休息期間の上限を配車の段階で確かめる立場になるため、運行管理者の資格を取っておくと配車の判断に法令の根拠を持てます。普通自動車以外の車両を扱うなら、車格ごとの免許区分の知識も必要です。
配車計画と配送計画は同じ意味ですか?
重なる部分はありますが、焦点が違います。配車計画は「どの荷物をどの車両とドライバーに割り当てるか」を決めるもので、配送計画は割り当てた車両が「どの順番で、どの道を通って回るか」まで含めた計画を指すことが多い言葉です。実務では1枚の配車表に両方を書き込む会社が大半です。システムでは、割当を扱う配車管理と、ルートの計算を扱う配送計画の機能が別の画面に分かれていることがあります。
配車業務はなぜ難しいと言われるのですか?
条件が多いうえ、その多くが担当者の経験として頭の中にしか無いためです。荷主の指定時間、納品先の受付時間、車両の積載量、ドライバーの免許と習熟度、さらに2024年4月以降は改善基準告示の拘束時間と休息期間の上限まで同時に満たす必要があります。限られた時間で組み、当日には変更が入る。この負荷が1人に集中し、引き継ぎが難しくなる点が難しさの本質です。
建設業や製造業の配車も同じ考え方で組めますか?
割当を決めるという骨格は同じですが、条件の種類が変わります。建設業では、ダンプや生コン車を現場の打設時刻に合わせて回す、重機を回送するといった現場単位の制約が中心です。製造業では工場の出荷バースの枠と生産計画が起点になります。業種ごとの違いは建設業の配車システムで、ダンプ・生コン・重機回送の要件として詳しく扱っています。
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