荷待ち時間とは、トラックドライバーが集貨や配達の場所で、荷主の都合により貨物の受渡しのために待たされた時間です。運送会社には30分以上の荷待ちを業務記録に残す義務があり、2025年4月からは全車両が対象になりました。荷主側には2時間以内ルールと物流効率化法の努力義務がかかります。この記事では、法令ごとに異なる数え方を計算例で比べ、待機時間料の目安、通報窓口、計測方法の選び方まで整理しました。
まとめ:荷待ち時間の定義と2時間ルール、荷主と運送会社がそろえるべき記録
荷待ち時間は「荷主の都合で受渡しのために待った時間」です。荷役作業そのものと、運送会社都合の早着、業務から離れて取る休憩は含みません。ただし数え始めの時刻は制度ごとに違います。物流効率化法では、到着時刻を指示していれば、指示時刻より早く着いた分を数えません。
目標値は、1回の受渡しで荷待ちと荷役の合計を2時間以内、達成済みなら1時間以内です。国は2028年度までに1運行あたり2時間以内を掲げています。荷主がまず手を付けるべきは、施設ごとに到着・荷役開始・荷役終了の時刻を残すことです。時刻があれば、運送会社の記録や待機時間料の請求とも照合できます。
荷待ち時間とは何か|荷主都合の待機と荷役等時間・休憩との境界線
荷待ち時間という言葉は、運送会社の記録義務、荷主の努力義務、ドライバーの労働時間の3つの文脈で使われます。どの文脈でも共通する中身から押さえます。
荷主の都合で受渡しのために待機した時間という物流効率化法の定義
経済産業省の物流効率化法 解説パンフレット(荷主・連鎖化事業者向け、2025年4月時点版)は、荷待ち時間を「トラックドライバーが集貨又は配達を行うべき場所(その周辺も含む)において、荷主の都合により貨物の受渡しのために待機した時間」と定めています。
対になるのが荷役等時間です。荷積み・荷卸し、検品、荷造り、棚入れ、ラベル貼り、荷主の荷役への立会いなど、運転に附帯する業務の開始から終了までを指します。両方を合わせて「荷待ち時間等」と呼び、荷主はこの合計を短くする努力義務を負います。
門の外での順番待ちは含み、指示された休憩と運送会社都合の待機は除く境界
同じパンフレットによると、荷待ちが起きる場所には施設の周辺も入ります。構内に入れず門の外の路上で待たせている時間も、荷主の荷待ち時間です。対象の施設は、荷主自身が管理する施設と、寄託契約を結んだ外部倉庫の2種類です。
除外されるものは2つあります。バースに着いた後、業務上の指示で休憩する時間と、運送会社の都合で指示時刻に遅れて順番が後ろにずれた分の待機です。ただし、すぐ車を動かせる状態での待機は休憩に当たらず、荷役等時間として扱われます。
車内待機を命じられた荷待ち時間を労働時間とする厚生労働省の見解
ドライバーの労務管理の面では、荷待ちは原則として働いている時間です。厚生労働省の確かめよう労働条件のQ&Aは、使用者などから車内での待機を義務づけられている限り、荷待ち時間は労働時間に該当すると答えています。指示を受けず、労働から離れることが保障されていれば休憩時間です。
労働時間に入る以上、荷待ちが長い荷主のもとでは、運送会社は拘束時間の上限を守る運行が組めません。拘束時間・休息期間の上限と運行管理の関係は改善基準告示の解説で詳しく扱っています。
荷待ち時間の3つの数え方|乗務記録・3省ガイドライン・物流効率化法の違い
「荷待ちは何分だったか」は、どの制度の物差しで測るかで答えが変わります。運送会社と荷主の数字が食い違う原因の多くはここにあります。
30分以上の荷待ちを業務記録に残す輸送安全規則と2025年4月の全車両化
運送会社側の義務は、貨物自動車運送事業輸送安全規則の業務記録(乗務記録)です。2017年7月1日から、荷主の都合で30分以上待機したときは、集貨地点等、到着と出発の日時、荷積み・荷卸しの開始と終了の日時を記録しなければなりません。2019年6月15日からは荷役作業等の記録も加わりました。
当初の対象は車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上でした。近畿運輸局の業務記録の記録義務に関するチラシによると、2024年10月1日公布の改正で、2025年4月1日から全車両に広がっています。記録は最低1年間の保存が必要です。小型車で配送を受けている荷主も、運送会社から到着時刻の確認を求められる場面が増えます。
到着から出発までを基準にする3省ガイドラインと荷役開始までの物流効率化法
荷主向けの物差しは2つあります。2023年6月に経済産業省・農林水産省・国土交通省が出した物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドラインは、到着日時から出発日時までのうち、荷積み・荷卸し・附帯業務と休憩を引いた残りを荷待ち時間としています。そのうえで、運送会社都合の早着は荷主に把握できないため、荷主は荷主都合の分を把握すればよいと注記しました。
物流効率化法は引き算ではなく、始点と終点で数えます。終点は荷役等の開始時刻で、始点は到着時刻の指示があるかどうかで変わります。
同じ1回の荷受けで荷待ち時間が70分にも40分にもなる指示時刻の扱い
解説パンフレットの算定方法を、指示時刻9時・荷役開始9時40分の荷受けに当てはめると、次のようになります。
| 到着のしかた | 到着時刻 | 荷待ち時間の始点 | 荷待ち時間 |
|---|---|---|---|
| 到着時刻の指示なし | 8時30分 | 到着(受付)時刻 | 70分 |
| 指示時刻より前に到着 | 8時30分 | 指示時刻の9時 | 40分 |
| 指示時刻帯の中で到着 | 9時00分 | 到着時刻 | 40分 |
| 指示時刻より後に到着 | 9時20分 | 到着時刻 | 20分 |
到着時刻を指示しているかどうかで、同じ8時30分着でも30分の差が出ます。ドライバーの記録は到着時刻から始まるので、荷主の集計より長く出るのが普通です。逆に言えば、時刻を指示していない荷主は早着分まで自社の荷待ちに数えられてしまいます。予約や時間帯指定は、待ちを減らすためだけでなく、数え方の始点を決めるためにも要るのです。
荷待ち時間の目標値|1回1時間以内・1運行2時間以内と2028年度までの国の目標
「荷待ち時間 2時間」で検索されるルールには、ガイドライン上の目標と国の政策目標の2層があります。
3省ガイドラインの2時間以内ルールと1時間以内の努力目標が求める範囲
3省ガイドラインは、荷主に対して荷待ちと荷役作業等の時間を計2時間以内とするよう求めています。すでに2時間以内の荷主は、目標を1時間以内に置いてさらに縮めるという二段構えです。2時間は荷待ち単独ではなく、荷役との合計である点に注意してください。
根拠となった推計も同じ文書にあります。1運行の平均拘束時間のうち荷待ちと荷役等は計約3時間とされ、これを各荷主の取組で1時間以上縮めることが基本的な考え方です。発荷主と着荷主の両方に当てはまるため、受け取る側の倉庫や店舗も対象から外れません。
物流効率化法の判断基準と特定荷主が施設別に報告する荷待ち時間の扱い
国土交通省の物流効率化法の質疑応答資料は、国の目標を「2028年度までに1運行あたりの荷待ち・荷役時間を2時間以内」とし、2028年度までとは2029年3月末までを指すと答えています。1回の受渡しごとでは1時間以内です。
年9万トン以上を扱う特定荷主は、定期報告で施設ごとの荷待ち時間等の平均を報告します。解説パンフレットでは、1回の受渡しの荷待ち時間等が1時間以内なら報告を省略できる案と、四半期ごとに連続5営業日以上を計測するサンプリングの案が示されています(2025年4月時点の検討状況)。自社が指定に当たるかは特定荷主の判定方法の解説、計画と報告の期限は物流効率化法の改正点と提出期限の記事で確認できます。
荷待ち時間の料金と通報|標準的な運賃の待機時間料とトラック・物流Gメン
荷待ちは、運送会社が料金を請求できる対象であり、行政が荷主に是正を求める対象でもあります。
中型車で30分1,760円の待機時間料と2時間超で5割増しになる割増率
国土交通省は2024年3月22日に標準的な運賃を告示し直しました。改正の概要資料に載る中型車(4トンクラス)の30分あたりの単価は、次のとおりです。
| 料金の種類 | 30分あたりの単価(中型車) |
|---|---|
| 待機時間料 | 1,760円 |
| 積込料・取卸料(機械荷役) | 2,180円 |
| 積込料・取卸料(手荷役) | 2,100円 |
荷待ちと荷役の合計が2時間を超えた場合は、割増率5割を加算します。標準的な運賃は運賃交渉の目安であり、請求額を縛るものではありません。それでも、業務記録に残った到着と荷役開始の時刻は、運送会社が待機時間料を請求する根拠になります。荷主側に時刻の記録がなければ、請求額を検証できないまま支払うことになります。
国土交通省の目安箱と厚生労働省の情報メール窓口で受け付ける荷待ちの通報
長時間の荷待ちは、国土交通省の荷主等の違反原因行為の通報窓口(目安箱)に情報提供できます。受け止めるのは、2024年11月1日に総勢360名規模へ拡充されたトラック・物流Gメンです。2026年9月30日時点の実績は、働きかけ2,578件、要請197件、勧告5件で、勧告を受けた企業名は公表されています。
労働時間の観点では、厚生労働省も長時間の荷待ちに関する情報メール窓口を設けています。取引上の問題は国土交通省、ドライバーの長時間労働は厚生労働省という分担です。荷主にとっては、記録が通報の材料にもなる以上、自社の施設で何分待たせているかを先に知っておくほうが安全です。
荷待ち時間の計測方法|手書きの受付簿からバース予約・位置情報までの選び方
前の章までの数え方を実際の数字にするには、到着、指示時刻、荷役開始、荷役終了の4つの時刻が要ります。取得方法ごとに、どの時刻が抜けやすいかが違います。
受付簿・デジタコ・バース予約・位置情報で取れる時刻と抜けやすい時刻の比較
| 取得方法 | 取れる時刻 | 抜けやすい時刻 | 向く規模 |
|---|---|---|---|
| 紙・表計算の受付簿 | 受付、荷役開始・終了 | 門外での到着 | 1日数台の施設 |
| 運送会社のデジタコ | 到着、出発 | 荷役開始(荷主側に渡らない) | 照合用 |
| バース予約システム | 予約時刻、受付、着床 | 予約外の飛び込み便 | 1日数十台の拠点 |
| 位置情報・入退場記録 | 敷地への到着、退場 | 荷役の開始と終了 | 多拠点・全数計測 |
1つの方法で4つの時刻がそろうことはまずありません。予約時刻と着床をバース予約で、敷地への到着を入退場記録で取るように、組み合わせて欠けを埋めます。バース予約の運用はバース予約システムの仕組みと荷待ち削減の解説、位置情報から時刻を自動で取る構成は輸配送管理のIoTシステムの記事で扱っています。
荷待ち時間の削減に向けて計測から始める荷主と運用を先に直す荷主の判断
計測の仕組みに投資すべきかどうかは、荷待ちの長さと原因の見え方で決まります。
1回1時間を超える施設が複数ある荷主が計測の仕組み化を急ぐべき条件
1回の受渡しで荷待ち時間等が1時間を超える施設が2つ以上あるなら、時刻の取得をシステムに持たせるべきです。報告の省略が使えないうえ、改善策の効果を施設ごとに比べないと、どこから手を付けるべきかが決まらないためです。運送会社から待機時間料を請求されている荷主も、照合のために同じ判断になります。
この場合も、新しいパッケージを入れる前に、受付・WMS・入退場の各システムにどの時刻が既にあるかを洗い出してください。既存の記録をつなぐだけで4時刻がそろう拠点は少なくありません。システム間の連携から設計したい場合は、物流システム開発として要件整理からお受けしています。
荷待ちの原因が朝の一斉指定にある荷主がシステム導入を見送ってよい場面
全便に「朝8時着」を指定していて、待ちがその時間帯に集中している荷主は、計測システムより先に指定時刻の分散です。原因が見えているなら、受付簿で1週間測るだけで改善前の数字は取れます。システムを入れても、一斉指定が残る限り待ちは減りません。
出荷が1日数台で、荷待ちが30分を超える日がほとんどない施設も、システム投資は見送って構いません。削減の打ち手を並べて優先順位を付けるなら、配送効率化の進め方と打ち手の優先順位が参考になります。
荷待ち時間についてよくある質問|記録・2時間ルール・料金・通報・着荷主
荷待ち時間について、検索の多い質問に答えます。
荷待ち時間は何分から記録しなければなりませんか?
運送会社の業務記録では、荷主の都合による待機が30分以上になったときが記録の対象です。記録するのは、集貨地点等、到着と出発の日時、荷積み・荷卸しの開始と終了の日時などで、最低1年間保存します。2025年4月1日から、車両の大きさにかかわらず全車両が対象になりました。荷主には同じ形の記録義務はありませんが、物流効率化法の努力義務に取り組むには、施設ごとの時刻の把握が前提になります。
荷待ち時間の2時間ルールとは何ですか?
2023年6月の3省ガイドラインが荷主に求めた目標で、1回の受渡しにかかる荷待ちと荷役作業等の合計を2時間以内にするというものです。2時間以内を達成している荷主は、1時間以内を目標にさらに短くするよう求められます。荷待ちだけで2時間ではない点に注意が必要です。国はこれとは別に、2028年度までに1運行あたり2時間以内、1回の受渡しごとに1時間以内という目標を掲げています。
荷待ち時間の料金は請求できますか?
請求できます。2024年3月に告示された標準的な運賃では、待機時間料が30分単位で設定され、中型車は30分あたり1,760円が目安です。荷待ちと荷役の合計が2時間を超えると、割増率5割が加わります。請求の根拠になるのは業務記録の到着時刻と荷役開始時刻なので、運送会社は記録を、荷主は受付の時刻を残しておくと、金額のすり合わせが早く済みます。
荷待ち時間の通報はどこにすればよいですか?
荷主や元請事業者による長時間の荷待ちは、国土交通省の違反原因行為の通報窓口(目安箱)か、最寄りの運輸局・運輸支局に情報提供できます。情報はトラック・物流Gメンが受け止め、働きかけ、要請、勧告の順に是正を求めます。ドライバーの長時間労働として相談したい場合は、厚生労働省の長時間の荷待ちに関する情報メール窓口が窓口です。
着荷主にも荷待ち時間を減らす義務はありますか?
着荷主も努力義務の対象です。物流効率化法では、運送契約を結ばずに貨物を受け取る着荷主も第二種荷主として、荷待ち時間と荷役等時間を短くする努力義務を負います。受け取る量が年9万トン以上なら特定荷主として、中長期計画と定期報告の義務も加わります。寄託先の外部倉庫で起きている荷待ちも、預けている荷主の対象施設に含まれる点に注意してください。荷待ち以外も含めた荷主の対応全体は物流2024年問題で荷主がやるべき対応の解説にまとめています。
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