アルコールチェック義務化とは、白ナンバーの社用車を一定台数以上使う事業所に、安全運転管理者による酒気帯びの確認と記録の1年保存を求める道路交通法施行規則の改正です。2022年4月に目視等による確認が始まり、2023年12月からはアルコール検知器を使った確認が必須になりました。この記事では、対象になる事業所の数え方、警察庁通達が定める確認方法と記録8項目、直行直帰の扱い、罰則の構造、そして記録を紙・Excel・アプリのどれで持つかの判断を、警察庁の通達とQ&Aをもとに整理します。
まとめ|義務化への対応は選任・検知器・記録の3点が毎日回るかで決まる
対象かどうかは台数で決まります。乗車定員11人以上の車が1台、またはそれ以外の車が5台あれば、その拠点で安全運転管理者を選び、15日以内に届け出なければなりません。選任を怠った場合の罰金は、2022年10月から50万円以下です。
選任した後は、業務の開始前と終了後に検知器で確認し、8項目を記録して1年残します。制度上、難しいのは、毎日一度も漏らさず確認を続けることです。運転者が10人程度で全員が営業所に出社するなら、紙の記録簿で足ります。直行直帰が多い、拠点が複数ある、確認漏れを翌朝ではなく当日中に知りたい、という条件が1つでも当てはまるなら、記録をアプリへ移す価値が出てきます。
アルコールチェック義務化の対象事業所と台数の数え方・届出の期限
義務を負うのは会社全体ではなく、車の「使用の本拠」ごと、つまり拠点単位です。警察庁の安全運転管理者制度の概要をもとに、判定の手順を確認します。
乗車定員11人以上は1台・その他の自動車は5台以上で拠点ごとに判定
選任が必要になるのは、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使う拠点です。大型自動二輪車と普通自動二輪車は1台を0.5台として数えます。本社に3台、支店に4台なら、会社全体では7台でも、どちらの拠点も5台に届かないため選任義務はかかりません。
数えるのは、その拠点を本拠として業務に使う自家用自動車です。リース車や従業員の私有車を業務に使っている場合の扱いは、拠点を管轄する警察署に確認してから台数を確定させてください。営業車が増えた拠点が知らないうちに5台を超えていた、という漏れが起きやすいので、車両台帳を拠点別に集計できる形にしておくと判定が速くなります。
20台以上で必要になる副安全運転管理者と年齢・実務経験の要件
台数が20台以上40台未満の拠点では副安全運転管理者を1人、40台以上では20台増えるごとに1人を追加します。
| 区分 | 年齢 | 実務経験 |
|---|---|---|
| 安全運転管理者 | 20歳以上(副を置く場合30歳以上) | 運転の管理に関し2年以上 |
| 副安全運転管理者 | 20歳以上 | 運転の管理に関し1年以上 |
過去2年以内に酒気帯び運転などをした人や、公安委員会から解任命令を受けた人は選べません。選任した日から15日以内に、拠点を管轄する都道府県公安委員会へ届け出ます。人事異動で管理者が替わったときも届出が要るため、異動の手続きに組み込んでおくのが確実です。
緑ナンバーの運送事業者が対象外になる理由と白ナンバーとの線引き
運行管理者を置く自動車運送事業者などの拠点は、安全運転管理者制度の対象外です。緑ナンバーの事業者には、貨物自動車運送事業輸送安全規則などに基づく点呼の義務が別にかかっています。
| 区分 | 確認する人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 白ナンバー(自家用) | 安全運転管理者 | 道路交通法施行規則第9条の10 |
| 緑ナンバー(事業用) | 運行管理者 | 輸送安全規則などの点呼規定 |
同じ会社に運送部門と営業部門がある場合、運送部門は運行管理者の点呼、営業車の拠点は安全運転管理者の確認、と拠点ごとに別の制度で管理します。緑ナンバー側の点呼要件は運行管理システムの定義と法定の点呼記録で扱っています。
2022年4月と2023年12月の2段階施行と業務の開始前後に行う確認方法
義務化は一度に始まったわけではありません。警察庁の「安全運転管理者の業務の拡充等」によると、令和3年の施行規則改正で2段階に分けて施行されました。
目視等の確認から検知器必須へ延期を挟んで移った施行時期の経緯
- 2022年4月1日:運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などで酒気帯びを確認し、記録を1年保存する義務が始まる
- 2022年10月1日:検知器による確認の施行予定日。検知器の供給不足から、当分の間は適用しない暫定措置が取られる
- 2023年12月1日:暫定措置が廃止され、検知器による確認と、検知器を常時有効に保持する義務が始まる
現在は、目視等の確認と検知器による確認の両方を行うのが前提です。検知器で0.00を確認しても、顔色や受け答えを見ていなければ確認の半分が抜けている扱いになります。
運転のたびではなく出勤時と退勤時に行えば足りる確認のタイミング
確認の対象は「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者」ですが、ここでいう運転は一連の業務としての運転を指します。令和6年12月27日付けの警察庁通達は、個々の運転の直前や直後に毎回行う必要はなく、業務の開始前や出勤時、終了後や退勤時に行えば足りると明記しています。
1日に5回客先を回る営業担当でも、確認は朝と夕方の2回で済みます。逆に、昼休みに飲酒の機会がある職場で午後だけ運転する人がいる場合は、午後の運転開始前を「業務の開始前」として扱う運用を社内で決めておく必要があります。
直行直帰でカメラや携帯電話を使って対面に準じた確認を行う方法
確認は対面が原則ですが、直行直帰などで対面が難しい場合は、運転者に携帯型の検知器を持たせたうえで次のどちらかの方法で行えます。
- カメラやモニター越しに、顔色や声の調子と検知器の測定結果をあわせて確認する
- 携帯電話や業務無線で直接話し、声の調子を確認しながら測定結果を報告させる
メールやチャットで数値だけを送らせる方法は、運転者と直接対話していないため例に含まれていません。数値の写真を送らせる運用でも、別途電話で声を確認する手順を組み合わせてください。
令和6年12月の警察庁通達で変わった補助者・他拠点・自動点呼の扱い
令和6年12月27日の通達は、規制改革推進会議の答申を受けて出されたもので、令和5年8月15日の旧通達を廃止して置き換えました。競合する解説記事の多くが旧通達の時点で止まっているため、ここで差分を押さえておきます。
副安全運転管理者や外部委託先に確認を任せるときの指定と指導の条件
確認は安全運転管理者が行うのが原則です。ただし、不在や他の業務で時間が取れない場合には、副安全運転管理者、確認業務を委託した事業者、その他の補助者に確認させてかまわないとされました。旧通達になかった「委託した事業者」が明記された点が大きな変化です。
条件は2つあります。あらかじめ補助者を指定して確認方法を指導・教育しておくこと、そして酒気帯びを見つけたときに安全運転管理者へすぐ報告し、運転中止の指示が確実に出る経路を作っておくことです。早朝の確認を外部のコールセンターに任せる場合も、管理者への連絡手順と連絡がつかないときの代行者を契約書か社内規程に書いておきます。
出張先の拠点で確認を受ける場合に所属拠点へ報告させる2つの要件
出張先に同じ会社の別の拠点があり、そこにも安全運転管理者がいる場合は、出張先で確認を受けられます。出張先の管理者が目視等で確認し、その立会いのもとで出張先の検知器を使わせること、結果を所属拠点の管理者へ本人か運転者から電話などで報告させること、の両方がそろえば確認済みとして扱えます。
記録をどちらの拠点に残すかは通達に定めがないため、所属拠点の記録簿に出張先の確認者名と方法を書き込む運用が分かりやすいでしょう。拠点ごとに別々の紙で持っていると、この突き合わせで1件ずつ電話確認が発生します。
白ナンバーでも国交省認定の自動点呼機器で確認できるとしたQ&A
警察庁のQ&AのQ10は、緑ナンバー向けに国土交通省の認定を受けた自動点呼機器を、白ナンバーの事業者が点呼と酒気帯び確認に使うことは差し支えないと答えています。認定機器であれば対面と同視できるという考え方です。
一方で、機器の機能の一部を使わない方法は点呼と認められないとも書かれています。生体認証を切って共用IDで測る、といった使い方はできません。認定機器の要件と記録項目は自動点呼システムの認定要件と記録項目で詳しく扱っています。
記録8項目と1年保存・検知器の常時有効保持を満たす記録簿の設計
記録は様式が決まっていません。決まっているのは中身と保存期間です。
確認者名から指示事項まで警察庁通達が求める8項目と記録の具体例
通達とQ&AのQ7は、次の8項目を記録して1年間保存するよう求めています。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 確認者名 | 佐藤(副安全運転管理者) |
| 運転者の氏名 | 山田 太郎 |
| 自動車登録番号等 | 品川500あ1234 |
| 確認の日時 | 2026-11-09 08:12 |
| 確認の方法 | 対面・検知器使用/直行のため電話 |
| 酒気帯びの有無 | 無(0.00mg/L) |
| 指示事項 | 雨天のため首都高経由を避ける |
| その他必要な事項 | 検知器の機器番号など |
見落としやすいのは「確認の方法」です。対面でない場合は具体的な方法を書くことになっており、「電話」「ビデオ通話」の区別が残っていないと、直行直帰の確認が適法だったかを後から示せません。
酒気帯びありの記録を消せず修正前後を残す1年保存の運用ルール
保存期間は1年です。紙なら月ごとに綴じて13か月目に廃棄、Excelなら月別シートで同じ扱いにできます。問題になりやすいのは修正の扱いで、検知器の値を後から書き換えられる記録では、飲酒運転が起きたときに会社の確認体制を説明できません。
白ナンバーの記録に改ざん防止の仕様は法令上求められていませんが、警察庁は業務中の飲酒運転を検挙した場合に管理者の業務の実施状況を確認する方針を通達で示しています。修正は取り消し線で残す、Excelならシートを保護して入力欄だけ開ける、程度の手当ては最初から入れておくのが無難です。
常時有効に保持するための検知器の保守記録と個人購入品の管理上の扱い
検知器は、呼気中のアルコールの有無か濃度を警告音・警告灯・数値などで示せれば足り、特定の性能は求められていません。そのかわり「常時有効に保持」として、取扱説明書どおりに使い、定期的に故障の有無を確かめる義務があります。センサーには使用回数や使用期限が設定されている製品が多く、期限切れの機器で確認しても有効な確認とは言いにくくなります。
検知器は基本的に会社が購入するものとされ、個人購入品を使う場合は会社の機器と同等の点検をしていることが条件です。機器番号、使用開始日、点検日を一覧にしておけば、この条件を記録で示せます。
安全運転管理者の選任義務違反の罰則と事故時に問われる会社の責任の範囲
罰則は「アルコールチェックをしなかった罰金」という形では定められていません。罰則の構造を分けて理解しておくと、何を優先して整えるべきかが見えます。
選任義務違反は50万円以下の罰金・確認の不備は是正措置命令の対象
直接の罰金があるのは、安全運転管理者を選任しなかった場合です。2022年10月1日から、5万円以下の罰金が50万円以下の罰金へ引き上げられました。選任届を出していない拠点が見つかった時点で、この罰則の対象になります。
選任はしているが確認や記録が不十分な場合は、公安委員会による管理者の解任命令や、使用者に対する是正措置命令の対象になります。通達は、飲酒運転の原因が管理者に必要な権限を与えていなかったことにある場合、道路交通法第74条の3第8項による是正措置命令を検討するよう警察に求めています。管理者の肩書きだけを与えて、確認の時間も人手も割り当てない体制は、この条文に当てはまる典型です。
業務中の飲酒運転で背後責任として管理者の選任と記録が調べられる経路
通達は、業務中の飲酒運転などを検挙した場合に、背後責任を徹底して捜査し、管理者の選任の有無と業務の実施状況を確認するよう指示しています。事故が起きてから記録の有無を問われる、という順序です。
この場面で会社を守るのは、事故当日だけでなく過去1年分の記録が欠けなく残っていることです。月に数日でも空欄があれば、確認体制が日常的に機能していなかった材料になります。記録の網羅性を毎日確かめる仕組みを持つかどうかが、紙とアプリを分ける実質的な差です。
記録を紙やExcelで続けるかアプリへ移すかを分ける運用上の判断基準
記録の手段は、拠点数と直行直帰の多さで決めます。費用ではなく、確認漏れに気づける速さで比べてください。
出社前提で運転者10人程度の単一拠点なら紙の記録簿で足りる理由
運転者が10人程度で、全員が毎朝同じ営業所に出社し、管理者がその場で検知器を見られるなら、紙の記録簿で問題ありません。確認漏れは記入欄の空白でその日のうちに分かり、1年分でもファイル1冊に収まります。
この規模でアプリを入れても、端末の配布やアカウント管理の手間が増えるだけです。数値を自動で取り込む検知器に買い替える必要もありません。社用車管理全体の進め方は安全運転管理者とアルコールチェックを含む社用車の車両管理の実務で整理しています。
直行直帰や複数拠点で確認漏れを当日中に検知したい場合のアプリ化
直行直帰が日常的にある、拠点が3つ以上ある、補助者や外部委託先が確認に入る、のいずれかに当てはまるなら、記録をアプリへ移すべきです。紙やExcelでは、誰がまだ確認を受けていないかを、その日の運転が始まる前に把握できません。
アプリ化で得られるのは、未実施者の一覧が朝のうちに出ること、確認方法と検知器番号が選択式で揃うこと、拠点をまたいだ確認が1つの記録にまとまること、の3点です。スマホで点検や運転記録まで扱う製品の選び方は車両管理アプリの機能と選び方で比べています。
既製の記録アプリで足りない社内システムとの連携を個別開発で補う場合の範囲
酒気帯び確認の記録だけなら、既製のクラウドサービスで十分です。個別開発が要るのは、確認結果を勤怠の打刻や車両の予約、配車の可否判定とつなぎたい場合に限られます。たとえば「確認未実施の運転者には社用車の鍵の貸出予約を通さない」「検知器の使用期限が近づいたら管理者に通知する」といった処理は、既製品の設定では作れないことが多い部分です。
この場合も、検知器そのものに手を入れる必要はありません。検知器やクラウドサービスが出すCSVやAPIを受け口にして、社内の台帳や勤怠システムへ取り込む構成が現実的です。既存の業務システムとつなぐ記録の仕組みを検討する場合は、業務用・Webアプリ開発の窓口で、現在の記録簿と車両台帳の形から相談できます。車両台帳ごと整える場合は車両管理システムの機能と導入判断もあわせて確認してください。
よくある質問
アルコールチェック義務化について、問い合わせの多い質問に警察庁の通達とQ&Aに沿って答えます。
社用車が4台しかない会社でもアルコールチェックは必要ですか?
乗車定員11人以上の車がなく、その他の車が拠点ごとに4台以下なら、安全運転管理者の選任義務はなく、法令上のアルコールチェック義務もかかりません。ただし台数は会社全体ではなく拠点ごとに数え、大型・普通自動二輪は1台を0.5台として計算します。増車で5台に達した時点で義務が生じるため、台数が4台前後の拠点は、増車の手続きに選任と届出の確認を組み込んでおくと漏れを防げます。
アルコールチェックの記録は紙とデータのどちらで残せばよいですか?
様式の指定はなく、紙でもExcelでもアプリでもかまいません。求められているのは、確認者名、運転者、自動車登録番号等、日時、方法、酒気帯びの有無、指示事項、その他必要な事項の8項目を記録し、1年間保存することです。直行直帰が多い場合は「確認の方法」に電話やビデオ通話の別を残せる形式を選んでください。
アルコールチェックをしなかった場合の罰則はありますか?
確認そのものを怠ったことへの罰金は定められていません。罰金があるのは安全運転管理者を選任しなかった場合で、2022年10月から50万円以下です。確認や記録の不備は、公安委員会による管理者の解任命令や、使用者への是正措置命令の対象になります。業務中に飲酒運転が起きれば、警察は管理者の選任と業務の実施状況を調べます。
直行直帰の社員のアルコールチェックはどう行えばよいですか?
運転者に携帯型の検知器を持たせ、カメラやモニター越しに顔色や声の調子と測定結果を確認するか、携帯電話や業務無線で直接話しながら測定結果を報告させます。数値だけをメールで送らせる方法は、通達が示す例に含まれていません。記録には「電話で声の調子を確認」のように、対面でない具体的な方法を書き残します。
安全運転管理者が休みの日は誰が確認すればよいですか?
副安全運転管理者、確認業務を委託した事業者、その他の補助者に確認させることができます。条件は、安全運転管理者があらかじめ補助者を指定し、確認方法を指導しておくことと、酒気帯びを見つけたときに管理者へすぐ報告して運転中止の指示が出る体制を作っておくことです。補助者の氏名は記録の確認者名欄に残します。
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