HACCPの温度管理とは?基準値と記録頻度の決め方、IoT自動記録への移行判断
HACCPの温度管理でつまずくのは、75℃や10℃という数値そのものではありません。誰が、どの設備で、どの頻度で測り、基準から外れた日に何を書いて製品をどう処置するか。この四つが決まっていないと、記録用紙は数字で埋まっているのに監査で説明できません。この記事では、大量調理施設衛生管理マニュアルと小規模飲食店向け手引書の二つから数値基準と記録の様式を確定し、温度計の許容差と校正、自動化できる範囲、紙と監視サービスと受託開発の選び方までを扱います。制度そのものの解説はHACCP(ハサップ)とは何か、食品安全システムの全体像と導入意義に譲り、ここでは温度だけを扱います。
まとめ:基準値の一覧より、逸脱した日に何を書くかを先に決める
温度管理の設計は、基準値を並べるところからではなく、逸脱したときの処置を決めるところから始めると崩れません。冷蔵庫が12℃を示した朝に、誰が何を確認し、中の食材をどうし、どの欄に何を書くか。ここが空白のまま測り始めた現場は、逸脱を見つけた時点で手が止まります。
測る対象は二種類あります。製品の中心温度と、設備の庫内温度です。前者は食品にプローブを刺すため人の作業が残り、後者は設備に張り付いた値なのでセンサーで連続的に取れます。IoT化の議論は、この線引きを引いてから始めてください。庫内温度を自動で拾えば記録の抜けはほぼ消えますが、加熱工程の中心温度は自動化できません。
数値の根拠も二層に分かれます。同一メニューを1回300食以上または1日750食以上出す施設には大量調理施設衛生管理マニュアルが適用され、それ以外は業種別手引書に沿って自分で頻度と基準を決めます。条文である別表第18は、頻度も保存年限も指定していません。
温度がCCPになる工程と、一般衛生管理の庫内確認で足りる工程の切り分け
重要管理点として管理するのか、一般衛生管理の日常点検として回すのかで、記録の粒度も逸脱時の重さも変わります。切り分けが曖昧なまま帳票を作ると、冷蔵庫が0.5℃超えただけで製品回収を判断する羽目になり、運用が続きません。
別表第18の第2号から第5号が温度を管理基準に引き上げる条件
食品衛生法施行規則 別表第18の第2号は、重要管理点を「危害要因の発生を防止し、排除し、又は許容できる水準にまで低減するために管理措置を講ずることが不可欠な工程」と定義しました。加熱殺菌はこの定義に当てはまります。生の鶏肉に付いたカンピロバクターを許容水準まで下げる手段が、その工程の加熱しかないからです。
一方で冷蔵庫の庫内温度は、菌を減らす工程ではなく増やさないための条件です。多くの業種別手引書が庫内温度の確認を一般衛生管理側に置くのもこのため。逸脱しても直ちに廃棄とはならず、食材の状態を見て使用可否を判断します。危害要因分析からCCPを決める手順はHACCPの7原則12手順の実装手順と成果物の作り方で、庫内点検を含む一般衛生管理14項目の割り付けは食品工場の衛生管理を一般衛生管理14項目から設計する手順で扱っています。
加熱・冷却・保冷で変わる測定対象と、自動化できるかどうかの境界
温度管理は三つの場面に分かれ、測る対象が違います。加熱では製品の中心温度を、冷却では時間の経過を、保冷では設備の庫内温度を見ます。
| 場面 | 測る対象 | 記録する値 | 自動化 |
|---|---|---|---|
| 加熱 | 製品の中心部 | 温度と加熱時間 | 不可 |
| 冷却 | 製品の中心部と時刻 | 開始時刻と終了時刻 | 一部可 |
| 保冷・保温 | 設備の庫内 | 庫内温度と時刻 | 可 |
| 受入 | 納品物の品温 | 品温と納品時刻 | 不可 |
製品を測る工程は、プローブを刺す人の手が要るため自動化できません。ここを踏まえずにセンサーを導入すると、庫内温度だけが自動で貯まり、加熱記録は紙のまま二重運用になります。
加熱と冷却と保存で分かれる数値基準を、適用範囲とセットで確定する
温度の数値は、どの文書に書かれた数値なのかを添えないと現場で守られません。大量調理施設衛生管理マニュアルの適用は、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上提供する調理施設に限られます。それでも多くの手引書が数値の出所として参照しており、自社基準を決めるときの物差しになっています。
中心部75℃1分間以上と、二枚貝等の85〜90℃90秒間以上の使い分け
マニュアルのⅡ-2は、加熱調理食品について「中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85〜90℃で90秒間以上)又はこれと同等以上まで加熱されていることを確認するとともに、温度と時間の記録を行うこと」と定めました。最終改正の平成29年6月16日付け生食発0616第1号でも、この数値は変わっていません。
実務で分かれるのは、二枚貝等をどこまで広げるかです。かき・あさり・しじみのように内臓ごと食べる貝は85〜90℃側で扱います。判断に迷う原材料は、受入の段階で加熱条件を紐付けておくと現場で止まりません。
末尾の「又はこれと同等以上」という一文も見落とせません。低温調理のように63℃で長時間かける手法は、同等以上の根拠を自社で示せる場合に限って採用できます。温度と保持時間の組み合わせを計画書に書き、根拠の資料を残してください。
30分以内に20℃付近という冷却条件と、記録に残す2つの時刻
加熱後の冷却の目的は、食中毒菌の発育至適温度帯である約20℃〜50℃を通過する時間を短くすることにあります。マニュアルは、冷却機を使うか清潔な容器に小分けするなどして、30分以内に中心温度を20℃付近まで、または60分以内に10℃付近まで下げるよう求めました。
ここで記録するのは温度ではなく時刻です。冷却開始時刻と冷却終了時刻の2つを書きます。決めた方法で冷やしたことを時刻で証明する組み立てになっている点が、加熱記録との大きな違いになります。
調理後の扱いも時刻で管理します。提供まで30分以上かかる場合は、温かい料理なら保温食缶へ移した時刻を、それ以外は10℃以下で保存したうえで保冷設備への搬入時刻・庫内温度・搬出時刻を記録。喫食は調理終了後2時間以内が望ましいとされています。
別添1の保存温度は品目ごとに違う、10℃以下でまとめない設計
冷蔵は10℃以下、と一括りにした帳票をよく見かけますが、マニュアル別添1は品目ごとに異なる温度を示しています。同じ庫内でも要求される温度は同じではありません。
| 品目 | 保存温度 |
|---|---|
| 食肉・鯨肉、殻付卵 | 10℃以下 |
| 生鮮魚介類 | 5℃以下 |
| 液卵 | 8℃以下 |
| 生鮮果実・野菜 | 10℃前後 |
| 冷凍食品、生食用冷凍かき | -15℃以下 |
| 凍結卵 | -18℃以下 |
| ナッツ類、チョコレート | 15℃以下 |
生鮮魚介類を扱う施設が庫内設定を10℃以下のままにしていると、条文上の保存基準を割ります。魚を置く冷蔵庫だけ設定を下げるか、置き場所を分けるかの判断が要ります。
なお、これらの保存基準の出どころである「食品、添加物等の規格基準」は、2024年4月1日に食品衛生基準行政が厚生労働省から消費者庁へ移管され、所管が変わりました。監視指導は厚生労働省に残ります。基準値を調べ直すときの参照先が二つに分かれた点を押さえてください。
庫内温度の確認頻度と記録の保管期間を、条文と手引書の差から決める
頻度を何回にすればよいか、という質問に条文は答えを持ちません。別表第18は頻度も保存年限も書いておらず、決めるのは事業者側です。裏を返せば、計画書に書いた頻度が自社の基準になります。
始業前・作業中・業務終了後という選択肢と、1日の最後に書く運用
日本食品衛生協会が令和6年1月に改訂した小規模な一般飲食店事業者向け手引書は、冷蔵・冷凍庫の温度確認について、実施タイミングを「始業前・作業中・業務終了後・その他」から選ぶ様式にしています。方法は温度計で庫内温度を確認し、冷蔵は10℃以下、冷凍は-15℃以下を基準に置きました。
記録のタイミングも明記されています。1日の最後に実施の結果を記録し、問題があった場合はその内容を書き留める運用です。測るたびに書くのではなく、1日1行にまとめる。回数を増やすほど抜けが目立つため、守れる回数を決めて、守れなかった日の理由を書ける欄を作るほうが監査での説明は通ります。
記録の保管は1年間程度という手引書の目安と、条文に年限が無い理由
別表第18の第7号は「営業の規模や業態に応じて、前各号に規定する措置の内容に関する書面とその実施の記録を作成すること」とだけ書いており、保存期間には触れていません。年限を条文で縛らず、業態に委ねる建て付けです。
実務の目安は手引書側にあります。前掲の飲食店向け手引書は「一連の記録は1年間程度は保管しておきましょう」と示し、大量調理施設衛生管理マニュアルも原材料の記録や検査結果について1年間保管と指定しました。
賞味期限の長い加工食品では1年で足りません。期限の末日を過ぎた後も遡れるよう、賞味期限に半年程度を足した期間を自社基準にしておくと、回収時にロットを追えます。保存年限を含む制度面の要件はHACCP義務化の施行時期と対象範囲、記録保存の実務要件で整理しています。
逸脱した日に記録へ書く4項目と、製品の措置を先に決めておく効果
別表第18の第5号は、管理基準を逸脱したことが判明した場合の改善措置を、あらかじめ設定しておくよう求めています。逸脱してから考えるのではなく、決めておくのが条文の趣旨。記録に残す項目は次の4つに整理できます。
- 事実:いつ、どの設備が、何℃だったか
- 原因:扉の開放、除霜の遅れ、設定ミス、故障のいずれか
- 設備の処置:設定変更、修理依頼、代替設備への移動
- 製品の措置:そのまま使用、加熱して提供、廃棄
4項目のうち現場が最も詰まるのが製品の措置です。手引書の記載例には「サラダチキンの鶏むね肉の中心温度が63℃にならなかったため、加熱時間を延長した」と載っています。設備の話で終わらせず、製品をどうしたかまで書く。逸脱の記録をロットで結び付ける設計はトレーサビリティの意味と2種類の追跡、システム化の判断も参考になります。
測る側の精度と校正を、管理基準の余裕幅として設計に織り込む手順
75℃という管理基準は、測る道具の誤差を含んだ数値です。温度計が0.7℃低く出る個体なら、表示75℃の実温度は74.3℃かもしれません。誤差をどこで吸収するか決めないと、満たしたつもりの記録が残ります。
中心温度を3点以上測る理由と、熱が通りにくい具材を選ぶ判断軸
マニュアル別添2は、揚げ物・焼き物・蒸し物について、校正された温度計で中心温度を3点以上測り、全点が75℃以上に達した時点からさらに1分以上加熱を続けるよう定めています。煮物・炒め物は最も熱が通りにくい具材を選んで3点以上、煮物は1点以上でよいとされました。
3点という数字の意図は、平均を取ることではありません。狙いはばらつきの下限を捉えること。だからこそ具材の選び方に「最も熱が通りにくい」という条件が付きます。同じ釜の中でも、肉の塊と薄切りでは到達温度が違います。
焼き物・蒸し物で複数回同じ作業を繰り返す場合は、条件を確立した後の測定を1点のみとしてよい、という緩和もあります。揚げ物では油温が設定温度以上であることの確認と記録が別途必要。緩和を知らずに毎回3点測っている現場は、作業負荷を無用に抱えています。
測温抵抗体のクラスAとクラスBで変わる許容差と管理基準の置き方
温度計の誤差は規格で決まっています。JIS C 1604:2013はPt100などの測温抵抗体を4区分に分け、許容差を温度の関数で定めました。
| 区分 | 許容差の式 | 75℃での幅 | -20℃での幅 |
|---|---|---|---|
| クラスAA | ±(0.10+0.0017|t|) | ±0.23℃ | ±0.13℃ |
| クラスA | ±(0.15+0.002|t|) | ±0.30℃ | ±0.19℃ |
| クラスB | ±(0.30+0.005|t|) | ±0.68℃ | ±0.40℃ |
クラスBの温度計で75℃ちょうどを狙うと、実温度が74.3℃だった可能性を排除できません。加熱の管理基準を76℃に置くか、クラスA以上の中心温度計を使う。前者は運用で吸収する方法、後者は機器で吸収する方法です。
庫内監視のセンサーには、コストの関係でサーミスタが使われます。個体差が大きく経年で特性がずれるため、冷蔵10℃以下の判定なら実用上は足りますが、CCPの判定に使うなら測温抵抗体を選ぶほうが説明しやすくなります。
社内点検と外部校正を二層に分け、頻度を逸脱コストから決める判断
マニュアルは「校正された温度計」と書くだけで、頻度には触れていません。ここも事業者が決める領域。実務では二層に分けると回ります。
- 社内点検:氷水で0℃付近を確認する。月1回、または落下など衝撃があった都度
- 外部校正:試験成績書が出る校正機関に年1回出す。基準器となる1本だけでよい
全ての温度計を外部校正に出す必要はありません。基準器を1本だけ外部校正し、現場の温度計はその基準器と同一条件で読み合わせる。費用は1本分で済みます。頻度を上げるべきなのは、逸脱したときの損失が大きい工程です。1ロット数百万円の製品と、その日に売り切る惣菜が同じ頻度である必要はありません。
IoT温度センサーで自動化する範囲と、人が測り続ける範囲の線引き
温度記録の自動化は、庫内温度に限れば効果がはっきり出ます。夜間や休日の記録が埋まり、扉の閉め忘れも当日中に分かる。ただし現場に置いた瞬間から、電波・欠測・除霜という三つの現実に向き合うことになります。
常時監視に向く庫内温度と、人の手が残る中心温度や受入確認の範囲
センサーで置き換えられるのは、設備に固定して測り続けられる値だけです。冷蔵庫・冷凍庫・保温設備の庫内温度、恒温室の室温、配送車の荷室温度がこれに当たります。
逆に、加熱後の中心温度、納品時の品温、原材料の外観確認は人が担います。受入検品は温度以外の項目と一体で行うため、温度だけ自動化しても帳票は分割できません。効果は手間より逸脱の発見の早さに出ます。店舗単位でセンサーを入れる場合の構成や費用感は店舗管理のIoTシステムとセンサー連携の仕組み、導入判断の基準で整理しています。
冷凍庫の金属庫体と厨房の電波環境から決める無線通信方式の選び方
冷凍庫の庫内は金属で囲われた空間で、電波はほとんど外に出ません。センサー本体を庫内に置く構成は、この一点で失敗します。プローブだけを庫内に入れ、本体は扉のパッキン脇から庫外へ出す。この配線ができるかを機種選定より先に現場で確認してください。
| 方式 | 周波数 | 向く場面 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| BLE | 2.4GHz | 厨房内で数台 | 到達距離が短い |
| Wi-Fi | 2.4/5GHz | 既設APがある店舗 | 電池の消耗が早い |
| LoRaWAN | 920MHz帯 | 広い工場・倉庫 | 送信量が小さい |
| LTE-M | 携帯網 | 配送車・遠隔拠点 | 通信費が継続 |
鉄骨と冷凍設備が並ぶ工場では、920MHz帯を使うLPWAが有利です。2.4GHz帯より波長が長く遮蔽物を回り込みやすいためで、国内ではARIB STD-T108に基づく機器が流通しています。1回に送れるデータ量は小さく、温度値を数分おきに送る用途と噛み合います。
送信間隔・欠測・時刻ずれという、監査で問われるデータ品質の設計
自動記録は、測れた値より測れなかった時間の説明で問われます。電池切れで3時間分のデータが無い日に、空欄のままにするのか、欠測として明示するのか。後者を選び、欠測が続いたら通知する設計にしておくと、監査で「気付いていなかった」と答えずに済みます。
送信間隔は5分から15分が実用域です。1分間隔にすると電池寿命が縮み、データ量も膨らみます。庫内温度の変化は緩やかなので、細かく取る価値は小さいと考えてください。
もう一つの落とし穴が時刻です。センサー側の時計がずれると、逸脱の発生時刻と作業日報が噛み合わなくなります。受信サーバ側の時刻を正としたうえで両方を保存する。この二重保持が、後から時系列を再構成するときに効きます。
除霜で必ず上がる庫内温度をアラートの対象から外す条件の作り方
冷凍庫は霜取りのために定期的に庫内を昇温させます。10℃以下というしきい値だけだと除霜のたびにアラートが鳴り、1週間で誰も見なくなります。鳴りっぱなしのアラートは無いのと同じです。
回避策は、しきい値に時間条件を足すことです。「10℃超が連続30分以上」のように継続時間で判定すれば、除霜による一時的な上昇は素通りします。加えて、しきい値の上下に0.5℃程度の不感帯を設けると、境界付近での通知の連打を抑えられます。
アラートの宛先も設計対象です。全員に送ると誰も動きません。一次受けを1人に決め、一定時間内に対応が入らなければ次の担当へ上げる。この段階設定まで作って、初めて自動監視が運用に乗ります。
紙の記録・温度監視サービス・受託開発のどれで足りるかの線引き
温度管理のシステム化は、規模と連携先で答えが変わります。ここでは判断を言い切ります。庫内温度を見たいだけなら開発は不要。正当化されるのは、温度データが他の業務データと結び付く必要があるときだけです。
温度計と紙の記録のままで足りる条件と、そのまま続けてよい規模
次の3つが揃うなら、紙のままで問題ありません。拠点が1か所、監視対象の設備が5台以下、逸脱が月に1回も起きていないこと。この規模では、削れる作業時間より機器の管理と電池交換の手間のほうが大きくなります。
紙をやめる契機は、記録が続かなくなったときではなく、遡って確認する回数が増えたときです。取引先の監査対応で過去3か月分を探すのに半日かかった、といった詰まりが出てから電子化を検討しても遅くありません。
市販の温度監視サービスで足りる条件と、そこで止めておくべき理由
センサーとクラウドをセットで提供する温度監視サービスは、庫内温度の連続記録とアラート通知に用途を限れば、比較的小さな月額で導入できます。多店舗の冷蔵設備を本部で見るだけなら、これで十分です。
ここで止めるべき理由は、開発を挟むと更新が止まるからです。センサーの機種変更やしきい値の見直しは、サービス側が吸収してくれる。自社開発すれば、その保守は自社で抱えることになります。記録の電子化そのものの機能要件や費用構造はHACCPシステムの機能要件と選び方、受託開発の判断で比較しています。
受託開発が正当化される4つの条件と、着手前に決める取り込み範囲
受託開発に踏み切る判断が成り立つのは、次のいずれか2つ以上に当てはまるときです。
- 温度データを製造ロットに紐付け、出荷後の追跡に使う
- 既設の設備制御盤やデータロガーから値を取り込む必要がある
- 生産管理・品質管理システムの検査記録と1つの画面で扱う
- 複数工場で帳票様式を統一し、本部で横並びに比較する
1つしか当てはまらないなら、市販サービスとCSV連携で凌ぐほうが安く済みます。とくにロット紐付けは、生産管理側にロット情報がある前提が必要。前提が無いまま温度側から作り始めると、後から二重にマスタを持つことになります。生産管理システムの機能とERP・MESとの違い、選び方の整理を先に済ませてください。
着手前に決めておくのは、取り込み範囲です。既設設備からの吸い上げは、通信仕様の開示可否で工数が数倍変わります。仕様を出してもらえるか、接点信号しか取れないかで方式が分かれるためです。センサー設置から既存設備との接続、データ基盤までを一括で設計するなら、AI・IoT開発でセンサーによる現場の可視化を手掛ける開発会社に現場調査の段階から入ってもらうと手戻りが減ります。
よくある質問
HACCPの温度管理について、現場から挙がることの多い質問を5つ取り上げます。
HACCPでは冷蔵庫を何℃以下にすればよいですか?
業種別手引書では冷蔵10℃以下、冷凍-15℃以下が基準です。ただし品目ごとの保存基準は別で、大量調理施設衛生管理マニュアル別添1では生鮮魚介類が5℃以下、液卵が8℃以下、凍結卵が-18℃以下。生鮮魚介類を保管する冷蔵庫は設定を下げるか、置き場所を分ける判断が要ります。
温度の記録は1日に何回とる必要がありますか?
回数を定めた条文はありません。別表第18はモニタリングを「連続的な又は相当の頻度による実施状況の把握」と書くにとどめ、頻度は事業者が決めて衛生管理計画に記載します。飲食店向け手引書は始業前・作業中・業務終了後から選ぶ様式を示しました。
温度の記録は紙のまま保存していても問題ありませんか?
問題ありません。条文は記録の作成を求めているだけで、媒体を指定していないためです。紙で支障が出るのは、遡って探す作業が増えたとき。過去分を探すのに時間がかかるようになったら、電子化を検討する時期にあたります。保管期間は手引書が1年間程度を目安として示しました。
中心温度計はどのくらいの頻度で校正すればよいですか?
大量調理施設衛生管理マニュアルは「校正された温度計」と書くのみで、頻度を定めていません。実務では、氷水で0℃付近を確認する社内点検を月1回程度、外部の校正機関への依頼を年1回程度に分けます。全数を外部に出す必要はなく、基準器1本を校正して現場の温度計と読み合わせる方式で足ります。
IoTの温度センサーを入れれば記録は全て自動になりますか?
自動になるのは設備の庫内温度だけです。加熱後の中心温度や納品時の品温は人が測って入力するため、記録は自動分と手入力分の二層に分かれます。導入時は冷凍庫の庫体で電波が遮られる点と、除霜による昇温をアラートから外す条件設計を先に確認してください。
関連記事
- HACCP(ハサップ)とは?食品安全システムの全体像と導入意義:温度管理の前提となるHACCP手法の解説。
- HACCPの7原則12手順とは?手順ごとの成果物と記録設計:どの工程を重要管理点にするかを決める手順。
- 食品工場の衛生管理は何から始めるか?一般衛生管理14項目と7S:庫内点検を含む一般衛生管理の設計。
- HACCPシステムとは?記録電子化の機能要件と選び方:温度記録を製品化する際の機能要件と費用。
- 店舗管理のIoTシステムとは?センサー連携の仕組みと費用:多店舗でセンサーを展開する構成と費用感。