ストックオプションの行使価格の決め方|上場・非上場と税制適格で変わる基準【2026年版】
ストックオプションの行使価格は、いくらに設定するかで税負担とインセンティブ効果が大きく変わります。決め方の出発点は「付与契約を結んだ時点の時価以上」の1点ですが、その時価を上場企業は市場株価で、非上場企業はセーフハーバールールで算定する違いがあります。この記事では、行使価格と発行価額・評価単価の区別、税制適格の行使価額要件、セーフハーバーによる株価算定、1円ストックオプションが成立する条件、高く設定すべきか低く設定すべきかの判断軸を、租税特別措置法と令和6年度税制改正に沿って整理します。
目次
行使価格の決め方の要点まとめと上場・非上場で分かれる設定の判断軸
結論から述べます。ストックオプションの行使価格は、付与契約を締結した時点の1株当たりの時価以上に設定するのが大原則です。上場企業は付与時の市場株価(前日終値など)を基準にし、非上場企業は市場価格がないため株価算定を行ったうえで、その評価額以上に設定します。税制適格を狙うなら、時価を下回る行使価格は認められません。租税特別措置法第29条の2第1項第3号が「契約締結時の1株当たりの価額に相当する金額以上」と定めているためです。
非上場企業では、2023年7月の国税庁通達で算定方法が明確化され、財産評価基本通達による特例方式(純資産価額方式・配当還元方式)で評価した株価以上であれば要件を満たします。これがセーフハーバールールです。行使価格を低くするほど付与対象者の利益は大きくなりますが、時価との差額が株式報酬費用として計上され、年間の権利行使価額の限度額を超えれば非適格になります。最終的には、上場か非上場か、税制適格・非適格・有償のどれを狙うか、設立から何年かの3点から逆算して決めるのが、もっとも誤りの少ない進め方です。
行使価格(権利行使価額)の意味と発行価額・公正な評価単価との違い
行使価格は、ストックオプションを語るうえで似た用語が多く、混同が起きやすい概念です。最初に3つの言葉を切り分けておくと、後の判断が速くなります。
行使価格とは|あらかじめ定めた価格で自社株を取得できる金額の意味
行使価格(権利行使価額)とは、ストックオプションを行使して株式を取得するときに1株あたり会社へ払い込む金額です。会社法上のストックオプションは新株予約権であり、この払込金額があらかじめ定められています。たとえば行使価格が1株1,000円で行使時の株価が3,000円なら、1株あたり2,000円分の含み益が生まれます。逆に株価が1,000円を下回れば行使せず権利を放棄すればよく、追加の損失は発生しません。下振れの損がなく上振れの利だけを取れる構造が、成功報酬として設計できる理由です。設計目的や類型の全体像は、ストックオプション制度の基本仕組みと導入目的の整理であわせて確認できます。
行使価格と発行価額(払込金額)の違いと無償型・有償型での扱い
発行価額(発行価格)は、ストックオプションそのもの、つまり新株予約権を受け取る時点で支払う金額です。行使価格が「株式を買うときの値段」であるのに対し、発行価額は「権利を買うときの値段」にあたります。税制適格や通常の無償型は付与時の払込みを要しない無償発行のため、発行価額は実質的に問題になりません。一方、有償ストックオプションは新株予約権を時価相当額で購入するため、付与対象者が発行価額を払い込みます。登記実務でも「払込金額(発行価額)」と「行使価額」は別個の登記事項であり、取り違えると課税関係や会計処理の議論がかみ合いません。
行使価格と公正な評価単価(オプション理論価値)を混同しない区別
もう1つ区別すべきが、行使価格と公正な評価単価です。公正な評価単価は、ブラック・ショールズ・モデルや二項モデルでオプションの理論価値を算定した1個あたりの価額で、会計上の費用計上に使われます。算定には株価・行使価格・満期までの期間・ボラティリティ・無リスク利子率などを用いますが、行使価格はその入力変数の1つにすぎません。ボラティリティの考え方はボラティリティとは何かを解説した記事で詳しく触れています。行使価格は「払い込む金額」、評価単価は「権利の理論価値」という別物です。
行使価格を決める大原則と上場企業・非上場企業で異なる時価算定の方法
行使価格の決め方は、税制適格を狙うか否かにかかわらず、「付与契約時の時価」を起点に置く点で共通します。違いが出るのは、その時価をどう測るかです。
行使価格決定の大原則となる「付与契約時の時価を起点にする」考え方
行使価格を時価より低く設定すると、付与時点で既に利益が確定しているとみなされ、無償で経済的価値を移転したのと同じ扱いになります。そのため税制適格では時価以上が必須要件とされ、通常型も「付与時の時価以上」で設計するのが基本線です。逆に大幅に高く設定すれば、株価がその水準を超えるまで利益が出ず、報酬としての効き目が弱まります。決め方の軸は、起点の時価を正しく把握し、そこから意図的に上下させる点にあります。
上場企業の決め方|付与前日終値など市場株価を基準にした行使価格
上場企業は市場で株価が形成されているため、時価の把握は比較的単純です。実務では、付与決議日の前日終値や付与前1か月程度の平均株価などを基準に、それ以上で行使価格を設定します。通常型は株価が上昇した分だけ利益が生じる設計です。一方、行使価格を1株1円とする株式報酬型(退職金型)も広く用いられ、目的も会計処理も通常型とは異なります。証券会社の管理システム等で、付与のたびに基準株価を記録します。
非上場企業の決め方|市場価格が無く株価算定が必須になる事情
非上場企業には市場価格が存在しないため、行使価格の前提となる時価を自前で算定しなければなりません。ここが上場企業との最大の違いです。算定方法を誤ると、税制適格を否認されたり、想定外の株式報酬費用が発生したりします。従来は「どの株価が税務上の時価なのか」が不明確で、税務否認を恐れた発行会社が行使価格を必要以上に高く設定し、結果としてインセンティブが弱まる事態が起きていました。この課題に対応して整備されたのが、次章で扱うセーフハーバールールです。
税制適格ストックオプションの行使価額要件とセーフハーバーによる株価算定
税制適格ストックオプションは、行使時の課税を株式売却時まで繰り延べ、売却益に対し申告分離課税の20.315%だけで済む優遇制度です。この優遇を受けるための要件の1つが行使価額要件であり、行使価格の決め方を左右します。
行使価額要件の根拠|措法29条の2が定める「契約時の価額以上」
行使価額要件の条文上の根拠は、租税特別措置法第29条の2第1項第3号です。同号は、行使に係る1株当たりの権利行使価額を、契約締結時の1株当たりの価額に相当する金額以上とするよう定めています。この要件を1つでも外すと税制非適格となり、行使時に時価と行使価格の差額が給与所得として総合課税され、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせた最高税率は約55%という水準です。適格なら売却時の20.315%で完結するため、想定利益が大きい幹部人材ほど、行使価格を時価以上に保つ意味が大きくなります。
セーフハーバールールが2023年通達29の2-1で明確化された経緯
「契約時の1株当たりの価額」は、取引相場のない株式について算定ルールが明示されておらず、非上場企業の税務実務を不安定にする一因でした。自民党のスタートアップ小委員会が米国の409Aセーフハーバーの日本版を求めたことを受け、国税庁は2023年7月7日に租税特別措置法関係通達29の2-1を新設しました。これにより、原則方式として所得税基本通達23〜35共-9の例による算定が明示され、一定の条件下では特例方式として財産評価基本通達の例による算定も認められました。特例方式で算定した株価以上に行使価格を設定すれば要件を満たす、という免責の枠組みがセーフハーバールールです。
原則方式と特例方式の違いと取引相場のない株式での使い分けの判断
非上場企業の株価算定は、原則方式と特例方式の2系統に整理されます。どちらを選ぶかで行使価格の水準が変わるため、自社の状況に当てはめて判断します。
| 区分 | 原則方式 | 特例方式(セーフハーバー) |
|---|---|---|
| 根拠 | 所得税基本通達23〜35共-9の例 | 財産評価基本通達の例 |
| 主な算定手法 | 類似業種比準・純資産価額など | 純資産価額方式・配当還元方式 |
| 行使価格の水準 | 相対的に高くなりやすい | 低く算定されやすい |
| 向くケース | 直近に増資・株式売買の実例がある | 売買実例がなく低い行使価格にしたい |
直近6か月以内に増資や第三者との株式売買の実例がある場合、その取引価格が時価とみなされるため、行使価格はその水準以上に置く必要があります。売買実例がなければ、特例方式で評価した株価を行使価格の下限として使えます。実務では、低い行使価格を実現しやすい特例方式が選ばれる場面が多くなります。
特例方式(純資産価額方式・配当還元方式)で評価額が下がる理由
特例方式で行使価格を低く設定できるのは、評価手法の性質によります。純資産価額方式は、相続税評価額ベースで資産から負債を差し引いた純資産を発行済株式数で割って1株価額を出すため、創業初期で純資産が乏しい会社では評価額が小さくなります。配当還元方式は、同族株主等に該当しない役員・従業員に選択でき、配当実績がなくても最低配当2.5円を基準に評価するため、原則方式より低い株価になりやすい手法です。配当を実施していないスタートアップでは、評価額がさらに下がる傾向があります。
優先株式や中心的な同族株主などセーフハーバー適用時の注意点
セーフハーバーには適用上の落とし穴があります。第一に、ベンチャーキャピタルへ優先株式を発行している場合です。残余財産の優先分配を受ける参加型種類株式があるときは、純資産価額から優先株式への分配額を控除して普通株式1株あたりの価額を算定します。控除を忘れると普通株式の価額を過大に見積もり、行使価格を不必要に高くしてしまいます。第二に、付与対象者が中心的な同族株主に該当する場合です。会社規模を小会社とみなして純資産価額方式等で評価することになり、配当還元方式によるセーフハーバー評価が使えない可能性があります。優先株式の有無と付与対象者の属性は、決定前に必ず確認します。
1円ストックオプションが成立する条件と株式報酬費用が生じる仕組み
セーフハーバーの整備により、非上場企業でも行使価格を1円に設定する「1円ストックオプション」が実務上可能になりました。ただし、上場企業の1円ストックオプションとは意味が異なり、会計上の負担も伴います。
非上場で行使価格1円が可能になる純資産価額マイナスの条件
純資産価額方式で算定した1株あたりの価額がマイナス、つまり資産より負債が大きい債務超過であれば、税務上の評価額はゼロ以下となります。このとき行使価格は備忘価額として1株1円以上で設定すればよく、行使価格を1円とする設計が成り立ちます。赤字先行で純資産が積み上がっていないシード期からシリーズA前後のスタートアップが、この条件に当てはまりやすい局面です。1円なら行使時の払込みがほぼ無視できるため、上場やM&Aによる売却益をそのまま受け取れます。
上場企業の株式報酬型(1円)ストックオプションとの位置づけの違い
同じ「1円」でも、上場企業の株式報酬型ストックオプションは別の制度趣旨です。上場企業の1円型は、退職金や役員報酬の一部を株式で支給する目的で行使価格を1株1円に固定し、付与時点で時価との差額分の含み益を持たせる設計で、退職時に行使する前提で組まれます。これに対し非上場の1円ストックオプションは、債務超過という株価算定の結果として1円になるものであり、両者は出発点が違います。「1円ストックオプション」で検索すると両者の事例が混在するため、自社がどちらの文脈にいるかを切り分けて読みます。
行使価格を時価より低くした場合に生じる株式報酬費用の会計処理
行使価格を時価より低く設定すると、その差額が会計上の費用になります。非上場企業は公正な評価単価に代えて本源的価値、すなわち「株価から行使価格を差し引いた額」で会計処理ができますが、セーフハーバーで低い行使価格を選ぶと本源的価値がプラスになり、株式報酬費用が発生します。導入前は安全を優先して行使価格を高くする例が多く費用計上は不要でしたが、低い行使価格が選べるようになり、計上が必要なケースが増えました。この費用は権利確定期間にわたり各期へ按分し、相手科目を新株予約権として処理します。会計処理の組み立て方は株式報酬制度とストックオプションの会計処理の違いで体系的に整理しています。
株式報酬費用がIPO準備・会計監査で論点になる際の実務上の負担
株式報酬費用は現金支出を伴わない会計上の費用であり、税制適格ストックオプションを発行している場合は税務上の損金にもなりません。それでも損益計算書上は営業利益を押し下げるため、IPOを計画する企業では会計監査の論点になります。過年度の発行分があれば、期首の利益剰余金残高への影響を含めて株価算定書の信頼性が検討され、第三者算定機関の鑑定書の取得費用や追加の監査報酬が生じることもあります。インセンティブを優先して安易に1円へ寄せると、上場準備の段階でコストとして跳ね返ります。
行使価格を高くするか低くするかの判断軸と税制区分からの逆算設計
ここからは独自の判断軸です。行使価格を時価ぎりぎりまで下げるか、あえて高めに置くかは、玉虫色にせず条件ごとに結論を出せます。
行使価格を高く設定する場合のインセンティブ低下という弊害
行使価格を高くする最大の弊害は、インセンティブが効きにくくなることです。株価が行使価格を超えてはじめて利益が出るため、行使価格が高いほど利益が出る株価のハードルが上がります。かつて非上場企業が税務否認を恐れて高く設定していたのは、この弊害を承知のうえでの防御策でした。セーフハーバーで適正な行使価格を選べる現在、税務リスク回避だけを理由に高くするのは合理性を欠きます。後から入社した人材ほど株価評価が上がって行使価格が高くなり、利益余地が縮む問題もあるため、高めの設定は原則として避ける判断が妥当です。
行使価格を低く設定する場合の費用発生と付与者間で生じる不公平
行使価格を低くすれば付与対象者の利益は増えますが、代償が2つあります。1つは前章の株式報酬費用で、低くするほど本源的価値が膨らみ、計上額が増えます。もう1つは付与時期による不公平です。導入前に高い行使価格で付与を受けた既存の従業員と、導入後に1円に近い行使価格で付与を受ける新規の従業員との間で、同じ貢献でも手取りに差が出ます。是正には既発行分の引き下げや、いったん放棄させての再付与がありますが、いずれも手続きと会計処理を伴います。低く設定するなら、費用と社内公平性の両面を見極めることが前提です。
上場・非上場と税制区分から逆算して行使価格を決める結論
判断の軸は、上場の有無と狙う税制区分の組み合わせで整理できます。次の対応関係から逆算すると、迷いが減ります。
| 会社の状況 | 狙う区分 | 行使価格の決め方 |
|---|---|---|
| 非上場・赤字先行 | 税制適格 | 特例方式で算定、純資産マイナスなら1円も可 |
| 非上場・増資実績あり | 税制適格 | 直近の増資単価以上に設定 |
| 上場・通常型 | 税制適格 | 付与前日終値など市場株価以上に設定 |
| 上場・退職金型 | 非適格(株式報酬型) | 行使価格を1円に固定 |
| 社外協力者など | 有償 | 発行価額を時価で払込、行使価格も時価以上 |
非上場のスタートアップが社内の役員・従業員に付与するなら、コストの低い税制適格を基本線にし、特例方式で行使価格を時価まで下げるのが定石です。適格要件を満たせない社外協力者には有償型を上乗せします。この設計を早期に固めておけば、後のラウンドでの希薄化交渉も進めやすくなります。
行使価格の設定でつまずく失敗パターンと付与前の実務チェック項目
行使価格そのものの算定が正しくても、運用と手続きでつまずく失敗があります。発生頻度の高いものから押さえます。
年間権利行使価額の限度額1,200万円超過で非適格化する失敗
税制適格ストックオプションには、行使価格そのものではなく、1年あたりに行使できる権利行使価額の合計に上限があります。従来は一律1,200万円でしたが、令和6年度税制改正により2024年4月1日から区分が変わりました。設立5年未満は2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満は3,600万円、それ以外は1,200万円が上限です。判定は付与決議日が基準で、複数社からの付与は個人単位で合算します。限度額を超えた回は、超過分だけでなくその回の全額が非適格です。行使価格を低く抑えるほど1年に行使できる個数が増えるため、限度額との関係も設計時に試算します。
付与決議の行使価額と契約・登記の記載が食い違う失敗の回避
税制適格ストックオプションには、株式の交付が会社法第238条第1項に定める付与決議の事項に反しないことという要件もあります。付与決議で定めた行使価格と契約書・登記の行使価格が食い違うと、要件を満たさなくなる恐れがあります。セーフハーバー通達を踏まえて引き下げる場合も、付与決議の内容に反するときは行使価格を変更する決議が必要です。決議・契約・登記の3者で行使価格を一致させることが、後のトラブルを防ぎます。
株価が行使価格を下回った場合の行使見送り・条件変更の判断
付与後に株価が行使価格を下回ると、行使しても損になるため、権利を行使しなければ損失を回避できます。問題は、この状態が続いて報酬としての魅力が失われ、人材流出につながる場合です。対応策には、行使価格を引き下げるリプライシング、既存の権利を放棄させての再付与、現物株式型への切り替えなどがあります。ただし上場企業では株主総会の承認ハードルが高く、議決権行使助言会社が反対を推奨する傾向があり、税制適格を維持できるかどうかの見極めも要ります。安易な引き下げに走らず、既存株主への影響まで含めて判断します。
付与前に確認すべき株価算定書と限度額区分などのチェック項目
付与前のチェックを定型化しておくと、行使価格に関する失敗の多くは防げます。最低限、次の項目を順に確認します。
- 契約締結日時点の時価以上で行使価格を設定しているか
- 株価算定書を取得しているか(第三者算定が望ましい)
- セーフハーバーの適用可否と、優先株式の控除・同族株主判定を確認したか
- 年間の権利行使価額の限度額区分(1,200万円・2,400万円・3,600万円)を正しく選んでいるか
- 株式報酬費用の計上要否を見積もっているか
- 付与決議・契約書・登記で行使価格の記載が一致しているか
これらは付与のたびに使い回せるチェックリストとして整備しておくと、複数回付与でも品質を保てます。特に限度額区分は、前回の契約書を流用すると古い区分のまま残りやすいため、付与ごとに見直します。
ストックオプションの行使価格に関するよくある質問
行使価格の決め方について、検索でよく挙がる質問に簡潔に答えます。
行使価格と発行価額は何が違うのですか?
行使価格は株式を取得するときに1株あたり払い込む金額、発行価額は新株予約権そのものを受け取るときに支払う金額です。税制適格や無償型は発行価額の払込みが不要で、有償型は発行価額を時価相当額で払い込みます。登記上も別の事項です。買うのが「株式」か「権利」かで切り分けると整理しやすくなります。
非上場企業は行使価格をどうやって決めればよいですか?
非上場企業は市場価格がないため、まず株価を算定します。直近6か月以内に増資や株式売買の実例があればその価格を時価とし、なければ財産評価基本通達の特例方式(純資産価額方式・配当還元方式)で評価した株価以上に行使価格を設定します。税制適格を狙うなら、この算定額を下回らないことが要件です。第三者算定機関の株価算定書を取得しておくと、税務・会計で説明しやすくなります。
株価が行使価格を下回ったらどうなりますか?
行使価格より株価が低い間は、行使すると損になるため、権利を行使しなければ損失は生じません。株価が回復すれば、その時点で行使すればよいだけです。低迷が長引いてインセンティブが失われる場合は、行使価格の引き下げや再付与が検討されますが、株主総会の承認や税制適格の維持可否を確認する必要があります。
税制適格にするには行使価格をいくら以上にすればよいですか?
租税特別措置法第29条の2第1項第3号により、付与契約を締結した時点の1株当たりの時価以上です。上場企業は付与時の市場株価、非上場企業はセーフハーバーで算定した株価が下限になります。契約時の時価が1株1,000円なら、行使価格は1,000円以上です。時価を下回る設定は適格になりません。
一度決めた行使価格は後から変更できますか?
変更は可能ですが条件があります。セーフハーバー通達を踏まえて行使価格を引き下げる契約変更でも、変更後の行使価格が要件を満たしていれば、税制適格として認められる余地があります。ただし付与決議で定めた内容に反するときは、行使価格を変更する決議も必要です。上場企業のリプライシングは株主総会の承認ハードルが高く、慎重に進める必要があります。
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