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持株会の確定申告のやり方|配当・売却・退会の書き方と取得費【令和8年分】

持株会の確定申告のやり方|配当・売却・退会の書き方と取得費【令和8年分】

持株会は給与天引きで自社株を積み立てる制度ですが、税金の手続きまで会社が済ませてくれるわけではありません。拠出金そのものには課税されない一方、配当金を受け取ったとき、株式を売ったとき、退会して端株を現金で精算したときには、確定申告が要るかどうかを自分で判断します。この記事では、申告が必要になる条件、配当の課税方式の選び方、退会精算書の数字を申告書へ書き写す手順、確定申告書等作成コーナーでの入力の流れを、令和8年分(2027年2〜3月に申告する分)の数値で説明します。

まとめ

持株会で確定申告が問題になるのは、配当・売却・退会精算の3場面です。判断の要点は次のとおりです。

  • 給与収入2,000万円以下で、1か所から受ける給与の全部が源泉徴収の対象となる人は、給与・退職所得以外の所得の合計が年20万円以下なら、原則として所得税の確定申告は不要です。住民税にはこの扱いがなく、端株の精算益のように源泉徴収されていない所得は市区町村への申告が別に必要です。
  • 上場会社の持株会の配当は、源泉徴収20.315%で済ませる確定申告不要制度を選べます。配当を含めた課税総所得金額695万円未満は、総合課税が有利かを検討する目安です。ただし、配当控除の適用範囲や申告に伴う所得控除の減少、家族の控除・保険料への影響まで含めて比較します。
  • 退会で単元株を証券会社の特定口座(源泉徴収あり)へ振り替えれば、持株会での取得価額が引き継がれ、後の売却は原則として申告不要です。一般口座では取得価額の自動管理がないため、持株会の記録を基に年間の譲渡損益を自分で計算し、申告義務がある場合に確定申告します。
  • 退会時に現金で精算される端株は譲渡所得の対象です。売却代金から取得費(退会精算書の「簿価単価」×株数)と売却手数料を差し引き、計算明細書から申告書第三表へ転記します。精算金に含まれる未投資の拠出金の返還分は売却代金に入れません。
  • 非上場会社の持株会は扱いが違います。配当は所得税等20.42%だけが源泉徴収され、申告不要を選べるのは少額配当に限られ、その場合も住民税の申告は必要です。
  • 申告すると合計所得金額が増えます。令和8年分から扶養親族・同一生計配偶者の所得要件は62万円以下(給与収入だけなら136万円以下)です。

持株会で確定申告が必要になる場面と不要な場面

拠出金が給与から天引きされた時点では、株式を買う資金が移動しただけなので課税は生じません。申告の要否を考える必要が出てくるのは、配当が出たときと、株式を手放して現金を受け取ったときです。

奨励金・配当・売却益の所得区分

一つの持株会から生まれる所得は3種類に分かれます。会社が拠出額に上乗せする奨励金は給与所得(所得税法28条)、配当金は配当所得(同24条)、株式を売った利益は譲渡所得です。日本証券業協会「持株制度に関するガイドライン」は税務上の取扱いとして、奨励金は会員の給与として課税され、毎月支給なら毎月の給与に、年1回支給なら賞与に加算して源泉徴収するとしています。つまり奨励金は源泉徴収と年末調整で処理が終わっているのが通常です。源泉徴収票の支払金額に奨励金が含まれていれば給与として課税済みで、奨励金のために別途申告する必要はありません。課税済みの奨励金で買った株式の取得費には、その奨励金の額も含まれます。

なお、拠出金は所得控除の対象ではないため、源泉徴収票の控除欄に持株会の拠出額は載りません。拠出段階で税が軽くなる仕組みはなく、この点がiDeCoとの大きな違いです。

20万円ルールの適用範囲と住民税

給与を1か所から受け、その給与の全部について所得税の源泉徴収または年末調整の対象になっている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下なら所得税の確定申告をしなくてよいとされています(所得税法121条1項1号)。要件は「183条(源泉徴収)又は190条(年末調整)」なので、年の途中で退職して年末調整を受けていない人も、規定自体は使えます。給与収入が2,000万円を超える人は対象外で、金額にかかわらず申告が必要です。

この20万円は所得税だけの取扱いです。端株の精算益が15万円で所得税の申告が不要でも、住民税の申告は市区町村に別途必要です(多摩市「住民税の申告」)。源泉徴収ありの特定口座で売った分と、申告不要を選んだ上場株式の配当は、住民税でも申告不要です。また、医療費控除や年の途中の退職による還付申告など別の理由で確定申告書を出す場合は、20万円以下の所得も申告書に載せます。配当や株式の譲渡所得は年末調整の対象外です。20万円の判定方法は副業の雑所得はいくらから確定申告?20万円ルールと控除・事業所得の区分【令和8年分】と同じ考え方です。

配当金の課税方式と、申告したほうが得になる所得水準

持株会の配当は、株式の名義人である理事長あてに一括して支払われ、源泉徴収後の金額がそのまま株式の追加購入に回るのが一般的です。それでも同ガイドラインは、配当は持分に応じて各会員に支払われるものなので各会員の配当所得として課税され、自分名義の株の配当と合算して配当控除を使えるとしています。現金を受け取っていなくても申告の対象です。

申告に使う金額は、理事長が会員に交付する「上場株式配当等の支払に関する通知書」に載っています。交付期限は配当の支払確定日から45日以内、1年分をまとめて作る場合は翌年2月15日までです(同ガイドライン)。確定申告の時期にこの通知書が手元にないときは、持株会の事務局に問い合わせます。

上場株式の配当で選べる3つの課税方式

上場株式等の配当に用意されているのは、総合課税・申告分離課税・確定申告不要制度の3つです(国税庁タックスアンサーNo.1330)。「源泉分離課税」と書かれることがありますが、それは私募公社債等運用投資信託の分配などに適用される別の仕組みで、上場株式の配当で申告せずに済ませる方式の正式な名前は確定申告不要制度です。

課税方式 税率 配当控除 株の売却損との通算 確定申告
確定申告不要制度 20.315%(源泉徴収のみ) なし 不可 不要
申告分離課税 20.315% なし 可能 必要
総合課税 累進税率 あり 不可 必要

源泉徴収されるのは所得税および復興特別所得税15.315%と住民税5%で、合計20.315%です。令和9年1月1日以後に生ずる所得からは復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税1%が加わりますが、源泉徴収の合計率は変わりません。配当控除を受けるなら総合課税、他の証券口座の上場株式等の売却損と損益通算するなら申告分離課税を検討します。同じ年の上場株式等の配当について、総合課税と申告分離課税を混ぜて選ぶことはできません。総合課税の仕組みそのものは総合課税とは?対象の8所得と税額の計算手順、配当で選ぶ分岐点【令和8年分】で詳しく扱っています。

配当の総合課税と695万円の目安・比較条件

総合課税を選ぶと配当控除が使えます。課税総所得金額等が1,000万円以下の部分は、配当所得の金額×10%が所得税から差し引かれます(国税庁タックスアンサーNo.1250)。住民税の配当控除は2.8%です。

復興特別所得税は配当控除を差し引いた後の所得税額に2.1%が乗るため、配当1円あたりの正味負担は所得税率の区分ごとに変わります。配当を足した後も課税総所得金額が330万円以上695万円未満の区分(所得税率20%)に収まるなら、所得税が(20%−10%)×1.021=10.21%、住民税が10%−2.8%=7.2%で、合わせて約17.4%となり、源泉徴収の20.315%より軽くなります。配当の全額が695万円以上900万円未満の区分(23%)にかかり、所得税の配当控除10%と住民税の配当控除2.8%が適用される場合は、正味負担が約20.5%となり、源泉徴収をわずかに上回ります。区分の境目は国税庁No.2260の所得税の速算表のとおり、20%は694万9,000円まで、23%は695万円からです。配当の一部だけが境目をまたぐ場合は、20%区分に入る部分と23%区分に入る部分を分けて計算します。所得税率10%以下の区分では、配当控除10%で配当にかかる所得税がほぼ相殺されます。

令和8年分は、もう一つ比べる項目があります。基礎控除は合計所得金額489万円以下なら104万円ですが、489万円超655万円以下では67万円、655万円超2,350万円以下では62万円に下がります(国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」)。申告不要なら配当は合計所得金額に入りませんが、総合課税で申告すると入るため、配当を足して489万円を超える人は、基礎控除が37万円減る分まで含めて比べます。

この線は以前は課税所得900万円でした。令和4年度税制改正で、令和6年度分(令和5年分の所得)以後は所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなり、「所得税は総合課税、住民税は申告不要」で住民税を5%に抑える組み合わせが使えなくなったためです。改正前の解説の900万円で判断すると誤ります。

非上場会社の持株会における配当課税と退会精算

持株会は上場会社だけの制度ではなく、非上場会社にも多くあります。自社株が上場していない場合、前の章の20.315%と3方式の話はそのまま当てはまりません。

非上場株式の配当は20.42%源泉と少額配当の申告不要

非上場株式の配当からは所得税および復興特別所得税20.42%だけが源泉徴収され、住民税は天引きされません(国税庁No.1330)。課税方式は総合課税だけで、申告分離課税は選べません。確定申告不要を選べるのは、1回に受け取る配当が「10万円×配当計算期間の月数÷12」以下の少額配当に限られます。年1回配当なら1回10万円、年2回の中間・期末配当ならそれぞれ5万円が目安です。

少額配当で所得税の申告を省いた場合でも、住民税では他の所得と合算して課税されるため申告が必要です。国税庁の確定申告の手引き(住民税・事業税に関する事項)も、確定申告不要制度を選んだ非上場株式の少額配当等について第二表への記入が必要としています。所得税の確定申告をする人は第二表の「非上場株式の少額配当等」欄に書けば住民税の申告を兼ねられ、所得税の申告をしない人は市区町村に住民税の申告をします。

退会時の買戻しは「一般株式等」の譲渡

非上場株式は市場で売れず、規約で会員名義への書換えを制限していることも多いため(日本証券業協会のガイドラインも制限を認めています)、退会すると持株会が規約で定めた価格で持分を買い戻し、現金で精算するのが一般的です。買戻し価格が取得単価と同じなら譲渡益は生じず、申告は要りません。買戻し価格が取得単価を上回った場合、その差額は一般株式等の譲渡所得として20.315%の申告分離課税の対象になり、上の20万円ルールで申告の要否を判定します。

注意したいのは損失の側です。上場株式等と一般株式等は別々の申告分離課税なので、一般株式等の譲渡損失は原則として上場株式等の譲渡益から差し引けません(国税庁No.1463)。上場株の売却損を抱えている人が非上場の持株会の精算益と相殺しようとしても、区分が違うためできません。また、次の章で触れる3年間の繰越控除は上場株式等の譲渡損失の制度なので、通常の非上場持株会の株式の損失には使えません(特定中小会社の株式など一定の株式には別の繰越制度があります)。

退会・引出しのときの口座選びと申告の要否

上場会社の持株会を退会すると、単元株(多くは100株単位)は自分の証券口座へ振り替え、単元未満の端株は現金で精算されるのが一般的です。振替そのものについて、同協会のガイドラインは「会員が持株会から株式を引き出した場合には、課税関係は生じない」としています。申告の要否を左右するのは、振替先の口座の種類と、端株の精算金です。

特定口座への振替と取得価額の引継ぎ

野村證券のFAQは、持株会から株式を振り替える先が特定口座であれば「持株会での取得コストは自動的に引き継がれ」、一般口座では「取得コストが引き継がれない為、ご自身で年間の譲渡損益等を計算の上、確定申告が必要」と説明しています(野村證券「持株会から振り替えた株式を売却する際、税金はかかりますか?」)。特定口座(源泉徴収あり)に入れておけば、売却時に証券会社が20.315%を源泉徴収して納税まで済ませるため、原則として確定申告は不要です(国税庁No.1476 特定口座制度)。

口座の画面に表示される振替時の時価は取得費ではないため、一般口座の株を売るときに時価を取得費にすると、値上がりしていた分だけ譲渡益を少なく申告することになります。退会手続きの前に、持株会の事務委託先証券会社で特定口座(源泉徴収あり)への直接振替ができるかを確認し、必要な口座開設と振替先の指定を済ませておくと、売却後の申告の手間を減らせます。

持株会の株式をNISA口座へ直接移すことはできません。NISAは新規の買付けだけが対象のためです。非課税で持ちたい場合は、いったん売却してその資金でNISA口座内で買い直すことになり、その売却は課税されます。

端株の現金精算で生じる譲渡所得

端株の扱いは持株会の規約で決まります。大和証券の持株会FAQでは、時価で売却して現金で精算する方法のほか、臨時に入金して1単元まで買い増し、そのまま証券口座へ振り替える方法、株式累積投資口座へ移す方法が挙げられています(大和証券「1売買単位に満たない株式の精算について」)。現金で精算した場合は持株会の口座で売却されるため「原則、確定申告を行う必要があります」とされ、売却代金から取得費と売却手数料等を差し引いた額が譲渡所得になります。精算金に未投資の拠出金の返還額が含まれている場合、その返還額は売却代金から除外します。買い増しを選べば売却が起きないので、端株の申告は生じません。なお、累積投資口座へ移した株式は特定口座の計算対象にならないと同FAQは注意しています。

現金精算の場合、金額が数万円でも、同じ年に一般口座で売った株の譲渡益などがあれば合算して20万円を判定するので、端株分だけを除外すると計算が合いません。譲渡所得の年分は原則として株式の引渡日(受渡日)で判定し、契約の効力発生日(約定日)による申告も認められます。年末の退会では、精算金の入金日だけで判断せず、売却の受渡日・約定日を持株会に確認します。

退職金と同じ年に売却したときの税額

退職金と持株会の売却益は、どちらも他の所得と分離して計算するため、互いの税率を押し上げません。退職所得控除の調整がなく、所得控除を給与所得等から控除しきれる人について、勤続20年で退職金1,500万円、同じ年に一般口座で譲渡益200万円があると仮定すると、退職所得は(1,500万円−退職所得控除800万円)×2分の1=350万円で、所得税は(350万円×20%−427,500円)×102.1%=278,222円、住民税は350,000円です。譲渡益には20.315%で406,300円がかかり、総額は約103万円です。「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば退職所得だけを理由とする確定申告は原則不要ですが、譲渡益などを確定申告する場合は、退職所得とその源泉徴収税額も申告書に記載します。

上場株式の売却損と3年間の繰越控除

上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選んだ配当と損益通算でき、通算しきれない金額は翌年以後3年間繰り越せます(国税庁No.1474)。条件は、損失が出た年に「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」と計算明細書を添付して申告し、その後も株の売却がない年を含めて毎年続けて付表付きの申告をすることです。売却損が出た年でも、申告分離課税にした配当や他口座の譲渡益と通算できれば、源泉徴収された税金が還付されます。通算する相手がない年も、申告しておかなければ繰越しそのものができません。損益通算の順序は損益通算とは?対象は4所得だけ|通算の順序と第四表の書き方をわかりやすく解説で整理しています。

持株会株式の取得費と報告書による確認手順

一般口座での売却や端株の精算で必ず問題になるのが取得費です。持株会は毎月違う価格で買い付けているため、1株あたりの取得単価が自明ではありません。売却価額の5%を取得費とみなす概算取得費が知られていますが、その前に国税庁が持株会について示している取扱いがあります。

国税庁が示す簿価単価・拠出金額÷取得株式数・名義書換日の相場

国税庁の質疑応答「従業員持株会を通じて取得した株式の取得費等」は、手元の「投資等報告書」や「退会(引出)精算書」に記載された「簿価単価」を基に取得費を計算して差し支えないとしています。簿価単価の記載がない場合は、注3で「拠出金額」を「取得株式数」で除した金額とするとし、報告書がない場合や報告書では計算できない場合は、なお書きで名義書換日の相場(証券会社のデータベースや当時の新聞記事による終値)を基にできるとしています。

実務では、まず退会精算書か直近の投資等報告書の簿価単価を探し、無ければ同じ書類の拠出金額と取得株式数で割り、書類そのものが無ければ名義書換日の終値を調べる、という順に当たります。報告書を紛失している場合は、持株会の事務局や事務委託先の証券会社に再発行を依頼できることがあります。売却価額の5%を取得費とする概算取得費(租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-13)は、取得費が判明している場合にも選択できます。ただし、実際の取得費より低くなると税負担が増えるため、報告書などで確認できる取得費と比較して判断します。

5%概算取得費と実額による税負担の比較例

1,000万円で売却して概算取得費を使うと、取得費は50万円とされ、950万円が課税対象になります。奨励金や再投資した配当による買付けも含め、報告書で確認した取得費が500万円で、売却手数料等を考慮しない場合、実額で計算した譲渡益500万円との差は450万円です。20.315%を掛けると約91万4,000円、これがそのまま余分な税負担になります。5%で計算すると決める前に、必ず報告書を探してください。

退会精算書から申告書へ転記する記入例

ここでは、上場会社の持株会を令和8年中に退会した人の数字を使い、退会精算書から申告書までの書き写しを追います。数値は説明用の例です。

退会精算書の項目 記載の例
保有株数 563.5株
簿価単価 2,130円
証券口座へ振替(単元株) 500株
現金精算(端株) 63.5株
精算単価・売却代金 3,050円・193,675円

振り替えた500株は売っていないので、この年の申告には出てきません。特定口座へ振り替えた場合は、取得価額(この例なら500株×2,130円=1,065,000円)が登録されているかを証券会社の画面で確認します。源泉徴収ありの特定口座なら、後で売って利益が出たときに証券会社が源泉徴収します。

申告の対象になるのは端株63.5株の精算です。取得費は63.5株×2,130円=135,255円、譲渡益は193,675円−135,255円=58,420円です。精算書の簿価単価に1円未満の端数がある場合、措置法通達37の10・37の11共-14は1単位当たりの取得価額の端数を原則として切り上げるとしているので、計算前に単価の扱いを確認します。給与収入2,000万円以下で、1か所から受ける給与の全部が源泉徴収の対象となり、ほかに給与・退職所得以外の所得がなく、還付申告などもしない場合は、合計20万円以下なので所得税の確定申告は不要で、住民税の申告だけを市区町村にします。同じ年に一般口座の売却益が15万円あれば合計208,420円となり、確定申告が必要です。

申告する場合の書き写しは次の順です。

  1. 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の上場株式等の欄に、譲渡による収入金額193,675円と取得費135,255円を書き、差引きの所得金額58,420円を出します。精算書で売却委託手数料が差し引かれている場合は、差引き前の売却代金を収入金額に、手数料を「譲渡のための費用」に書きます。
  2. 申告書第三表(分離課税用)の「上場株式等の譲渡」には、計算明細書の収入金額193,675円を収入金額の欄へ、所得金額58,420円を所得金額の欄へ、それぞれ転記します。
  3. 第三表で税額を計算し、第一表と合わせて提出します。年の途中で退職して年末調整を受けていない人は、給与の源泉徴収票の金額も第一表・第二表に入れ、納めすぎた所得税の還付と一緒に精算します。

作成コーナーを使えば第三表への転記は自動です。手書きの場合は、計算明細書と第三表の数字が一致しているかを提出前に突き合わせます。

確定申告書等作成コーナーでの入力手順

国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、持株会に関係する配当と株の売却を同じ入口から入力します。e-Taxのヘルプデスクが公開している操作FAQ(作成コーナーで「配当所得(総合課税)」を入力したい・令和7年10月31日更新)に沿うと、流れは次のとおりです。令和8年分の画面で名称が変わることがあるので、入力時は画面の表示に従ってください。

  1. 「申告する所得の選択等」画面で「株式等の譲渡(売却)、配当、利子」にチェックを入れ、「次へ」を押す
  2. 「収入・所得の入力」画面で「金融・証券税制」を押し、「株式の売却・配当・利子等の入力方法選択」画面へ進む
  3. 「入力項目の選択」で、「特定口座での取引」と「特定口座以外での取引」のそれぞれについて、売却と配当の有無、課税方法を選ぶ
  4. 特定口座分は特定口座年間取引報告書の内容を、特定口座以外の分は取引ごとの金額を入力する

持株会の端株精算・配当の入力先

持株会の口座で売却された端株の精算と、持株会から受け取る配当は、どちらも証券会社の特定口座を通っていないので「特定口座以外での取引」に入れます。端株の精算は上場株式等の譲渡として、退会精算書の売却代金・取得費・手数料を入力し、配当は「上場株式等の配当等の入力」で理事長から届いた支払通知書の金額を入力します。非上場会社の持株会の配当なら「非上場株式等の配当等の入力」を選びます。証券口座へ振り替えた後に特定口座で売った分や、特定口座で受け取った配当は、特定口座年間取引報告書から入力し、マイナポータル連携を使えば報告書のデータを取り込めます。株式の譲渡を申告する場合は、入力内容に応じて計算明細書と第三表が作成されます。配当を総合課税で申告するだけなら、それだけを理由にこれらの書類を作成する必要はありません。

必要書類と令和8年分の申告期間

平成31年4月1日以後に提出する申告書から、給与の源泉徴収票、上場株式配当等の支払通知書、特定口座年間取引報告書などは添付が不要になりました。ただし内容は申告書第二表などに記載する必要があります(国税庁リーフレット「源泉徴収票等の添付が不要となりました」)。株の譲渡を申告する場合は「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」が必要で、申告する譲渡が1つの特定口座の分だけなら特定口座年間取引報告書の添付で代えられます(国税庁「確定申告書に添付する書類」)。端株の精算がある人は、この代替は使えず計算明細書を作ります。

手元に用意するのは、給与の源泉徴収票、退会精算書または投資等報告書、持株会の配当の支払通知書、特定口座年間取引報告書(特定口座を使っている場合)、マイナンバーカードです。令和8年分の申告期限は令和9年(2027年)3月15日(月)で、税務署の相談と申告書の受付は2月16日(火)からです(国税庁「暮らしの税情報」)。還付を受けるだけの申告なら、翌年1月1日から5年間提出できます。スマートフォンからの提出はスマホで確定申告するやり方とe-Taxの対応機種|2026年8月のマイナアプリ移行に対応で手順を説明しています。

申告する前に確認したい家族の控除ラインと住民税

持株会の所得を申告すると合計所得金額が増えます。還付額だけで判断すると、家族の控除額の減少や国民健康保険料の増加が、還付額を上回ることがあります。

令和8年分の扶養・配偶者の所得要件

国税庁の「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」によると、扶養親族と同一生計配偶者の所得要件は合計所得金額62万円以下に引き上げられました(改正前は58万円以下)。給与収入だけなら、給与所得控除の最低保障額が74万円になる令和8・9年分は136万円以下です。最低保障額は令和10年分以後、収入金額×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円)に変わるため、給与換算のラインもそこで動きます。

配偶者や子どもが持株会の売却益を申告すると、給与所得などを合算した合計所得金額で判定します。62万円を超えると配偶者控除や扶養控除の所得要件から外れますが、配偶者特別控除や19歳以上23歳未満の親族に係る特定親族特別控除を受けられる場合があります。本人の合計所得金額が1,000万円を超える年は配偶者控除自体が使えません。控除額と書き方は配偶者控除は令和8年分から配偶者の年収136万円まで|戻る税額と申告書の書き方にまとめています。

住民税・国民健康保険料への波及

配当を総合課税や申告分離課税で申告すると、住民税でも同じ課税方式が適用され、合計所得金額が上がります。横浜市は、源泉徴収ありの特定口座の譲渡所得や上場株式等の配当は確定申告しなければ国民健康保険料の算定に含まれないが、申告すれば算定対象になると案内しています(横浜市「株式等の譲渡所得や上場株式等の配当所得などにより確定申告する方はご注意ください」)。そのため、退職後に国民健康保険へ移る年や、住民税非課税のラインに近い世帯では、還付額より負担増のほうが大きくなることがあります。申告前に総額で比べてください。

持株会を続けるかどうかの判断材料は持株会はやめたほうがいい?最新データで判断する加入の損得と続けるべき人の条件で整理しています。

申告漏れに気づいたときの手続き

申告すべき所得を申告していなかったなら期限後申告、提出済みの申告書に記載漏れがあったなら修正申告、控除や損益通算を忘れて払いすぎていたなら更正の請求です。更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内ですが、申告義務のない人が提出した還付申告については、原則としてその提出日から5年以内です。持株会の端株の売却代金は、理事長が会員ごとに「名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書」を翌年1月31日までに税務署へ提出する仕組み(日本証券業協会のガイドライン)なので、精算の事実は税務署に伝わっています。ただし、上場株式等の配当の課税方式は、確定申告で選んだ方法も選ばなかった方法も、後から修正申告や更正の請求で変えられません(国税庁No.1331)。申告不要にした配当を後から総合課税に切り替えて配当控除を取ることはできないので、方式は最初の申告で決め切ります。期限後申告や修正申告は、税務署の調査の通知前に自主的に行えば加算税が軽くなります。

よくある質問

持株会で確定申告が必要な金額はいくらからですか?

給与収入2,000万円以下で、1か所から受ける給与の全部が源泉徴収の対象となる会社員は、給与・退職所得以外の所得が合計20万円を超えると原則として確定申告が必要です。ただし、申告不要を選んだ上場株式の配当や源泉徴収ありの特定口座の譲渡所得などは、この判定に含めません。20万円以下でも、端株の精算益のように源泉徴収されていない所得は住民税の申告が必要です。医療費控除などで確定申告書を出す場合は20万円以下の所得も記載し、給与収入が2,000万円を超える人は金額にかかわらず申告が必要です。

持株会を退会したら確定申告は必要ですか?

単元株を証券口座へ振り替えただけなら課税されず、申告は要りません。給与収入2,000万円以下で、1か所から受ける給与の全部が源泉徴収の対象となる人は、端株の精算益とほかの給与・退職所得以外の所得が合計20万円を超えると、原則として申告が必要です。この条件に当てはまらない人は、20万円だけでは判断できません。特定口座(源泉徴収あり)へ振り替えた株式を後で売る場合は、源泉徴収で完結するため原則として不要です。

持株会の拠出金は源泉徴収票や年末調整に記載されますか?

拠出金は所得控除の対象ではないため、源泉徴収票の控除欄にも年末調整にも出てきません。奨励金は給与として支払金額に含まれて年末調整の対象になりますが、配当所得と譲渡所得は年末調整の対象外です。

持株会は節税になりますか?

拠出額に所得控除はないため、iDeCoのような拠出段階の節税効果はありません。税負担が下がる代表例は、配当を総合課税で申告して配当控除を受ける場合(基礎控除や保険料への影響まで比べて有利な人に限ります)と、売却損を申告して他の口座の利益と通算・繰越しする場合です。どちらも確定申告をして初めて効果が出ます。

持株会の買付記録がなくても確定申告できますか?

できます。国税庁は、投資等報告書や退会(引出)精算書の「簿価単価」を使う方法、簿価単価の記載がなければ拠出金額を取得株式数で割る方法、報告書がなければ名義書換日の相場による方法を示しています。売却価額の5%を取得費とする方法は税負担が増える場合があるため、まず持株会の事務局か事務委託先の証券会社に報告書の再発行を依頼し、確認できる取得費と比較してください。

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