バイトテロを調べる人の関心は、言葉の意味より「あの事件のその後はどうなったのか」「加害者の実名は出たのか」「賠償はいくらだったのか」に集まっています。この記事では、セブン-イレブン・ジャパンが2019年2月11日に出した報道向け文書の原文、刑法・少年法の条文、判例、2026年1月に公表された企業調査をもとに、その3点に答えます。ネット上で流通する「実名」情報を扱う危うさも、条文で整理します。
まとめ:事例のその後・実名・賠償額の要点
先に結論を並べます。根拠は各章で公式文書・条文・報道にあたっています。
- セブン-イレブンの2019年の事件は、横浜高島台店の元従業員2名が加盟店オーナーにより2月9日付けで解雇され、本部が「法的措置を含む厳正な処分を検討」と表明したところまでが公式に確認できる事実です。賠償額や訴訟の結末は公表されていません。
- この記事で取り上げたセブン-イレブンを含む各事例の公式発表と報道に、加害者の実名は出ていません。ネット上の「実名」は第三者が特定したと称する情報で、真実だと証明できなければ、広めた側が名誉毀損やプライバシー侵害の責任を問われます。
- くら寿司守口店の件では、関わった少年3人が偽計業務妨害の容疑で書類送検され、2019年6月に家庭裁判所へ送致されたと報じられています。
- 賠償額が報じられている数少ない例が、そば店「泰尚」の1,385万円請求に対する計200万円の和解です。この記事で扱った事例に、請求額どおりの支払いが確認できたものはありません。
- バイトテロは過去の話ではありません。業務中のいたずらも含めて聞いたマイナビの調査では、2025年に発生したと答えた企業が26.3%あり、対策の必要性を感じながら未実施の企業が38.1%で最多でした。
バイトテロの定義と「バカッター」「客テロ」との線引き
従業員が加害者になる不祥事という定義
バイトテロは、アルバイトを含む従業員が勤務先で不適切な行為をおこない、その様子を自分でSNSや動画共有サービスに投稿して炎上する不祥事を指します。法令上の用語ではなく、2013年前後にネット上で広まった造語です。定義の核は「加害者が雇用関係にある人物であること」で、ここが企業の責任範囲を決めます。従業員が事業の執行について顧客に損害を与えた場合には、民法715条の使用者責任を企業が問われる可能性があります。一方で企業は、損害を受けた側として従業員に賠償を求めることもできます。
バカッターとの違いは投稿者の属性
バカッターは「バカ」と「Twitter」を組み合わせた俗称で、自分の非行をみずから投稿して墓穴を掘る利用者を指します。2013年に定着した言葉で、無免許運転の自慢など勤務先と無関係な行為も含みます。バカッターが上位概念で、バイトテロはそのうち職場で起きたものという関係です。両者を同義として扱うと、就業規則・懲戒・使用者責任といった企業側の議論が成り立たなくなります。
客テロとの違いは企業が請求する側か問われる側か
客テロは、来店客が店舗の備品や商品に迷惑行為をおこないSNSに投稿するものです。2023年1月に岐阜市のスシロー店舗で起きた醤油差しをなめる動画が代表例です。加害者が従業員でないため、その行為について民法715条の使用者責任が問題になる場面は基本的になく、企業は損害を請求する側に立つのが通常です。バイトテロでは、企業は被害者でありながら「教育・管理が甘かった」と批判され、場合によっては使用者責任も問われる二重の立場に置かれます。同じ衛生面の炎上に見えても、企業が置かれる立場は違います。
セブンイレブンのバイトテロ事例と公式発表で確認できる事実
2019年2月 横浜高島台店のおでん(しらたき)動画
セブン-イレブン・ジャパンは2019年2月11日付の報道向け文書「当社加盟店従業員による不適切行為について」でこの件を公表しています。原文には「フランチャイズ加盟店である『セブン‐イレブン横浜高島台店』の元従業員2名が、7日午前3時頃、店内において不適切行為を撮影した動画をSNSに投稿したもの」とあります。撮影されていたのは、報道によればおでんのしらたきを口に含んで吐き出す様子でした。処分は「当該元従業員2名は、同店の加盟店オーナーにより2月9日付けで解雇しており、今後法的措置を含む厳正な処分を検討してまいります」と書かれています。解雇したのは本部ではなく加盟店オーナーで、ここにフランチャイズ特有の構図があります。おでんは「画像投稿後に廃棄処分をしており、その後は販売されていないことを確認しております」とされ、本部は全国約2万店の信用回復に取り組むと結んでいます。
2023年1月 ポテトをかじる動画(店舗名は非公表)
セブン-イレブンのバイトテロは2019年で終わっていません。J-CASTニュース(2023年1月27日)によれば、店員2人がケースに陳列されたポテトを交互にかじる動画など計3本・22秒が、1月25日ごろにツイッターへ転載されて拡散しました。元の動画は、24時間で消えるインスタグラムのストーリー機能で投稿されたとみられています。セブン&アイ・ホールディングスは1月26日に投稿を把握し、地元の保健所に相談したうえでフライヤーの販売を一時中止しました。当事者のアルバイトはすでに退職しており、全員が未成年であることなどを理由に、詳細の回答は控えています。警察への通報や賠償請求の有無も回答していません。報道は店舗名を出しておらず、ネット上の「店舗特定」情報には公式な裏付けがありません。
「その後」が公表されない理由
「セブンイレブン バイトテロ その後」で検索しても続報が見つからないのは、セブン-イレブンが法的措置の結果を公表していないためです。2023年の件は当事者が未成年で、少年の保護事件になった場合、少年法22条2項により家庭裁判所の審判は公開されません。公式に追える最終地点は、2019年の件が「2月9日付け解雇と法的措置の検討表明」、2023年の件が「フライヤー販売の一時中止と当事者の退職」までです。それより先の経過を書いている情報を見かけたら、企業の発表・裁判所の記録・大手報道のどれに基づくかを確かめてください。
加害者の実名が公表されない理由と拡散側が負うリスク
企業の発表も報道も一貫して匿名
この記事で取り上げた事例の公式発表と報道には、加害者の実名は出ていません。セブン-イレブン・ジャパンの文書は「元従業員2名」としか書いておらず、氏名も年齢も学校名も出てきません。企業にとって従業員の氏名は個人情報で、公表すれば第三者提供の問題に加え、自ら名誉毀損の加害者に回るおそれがあります。少年が関わる事件で報道機関が実名を出さないのは、少年法61条が、家庭裁判所の審判に付された少年などについて「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真」を新聞紙その他の出版物に載せることを禁じているためです。ただし同法68条により、18・19歳の特定少年が起訴された場合は、略式手続の場合を除いてこの禁止が外れます。2023年のセブン-イレブンの件も、くら寿司守口店の件も、当事者は未成年でした。
特定情報を広める側が負う刑事・民事のリスク
刑法230条は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と定めています。書いた内容が事実でも成立します。例外を定めるのが230条の2で、公共の利害に関する事実について、目的が専ら公益を図ることにあり、真実であることの証明があった場合は罰しません。同条2項は、まだ起訴されていない人の犯罪行為に関する事実を「公共の利害に関する事実とみなす」ため、バイトテロが業務妨害罪にあたる行為なら公共性の要件は満たされ得ます。それでも免責には公益目的と真実性の証明が残ります。「この人物が動画の本人だ」という特定は、多くが顔の印象や過去の投稿からの推測で、真実だと証明できる材料を拡散者は持っていません。人違いなら、無関係の人を犯罪者扱いしたことになります。事実を示さない罵倒は231条の侮辱罪にあたり、法定刑は「一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
民事でも、2022年10月に始まった発信者情報開示命令の手続で、投稿者の特定は以前より短期間で進みます。2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法は、大規模なSNS事業者に、侵害情報の調査(23条)、申出者への通知(25条)、削除基準の公表(26条)、削除した発信者への通知(27条)、実施状況の年次公表(28条)を義務づけました。「バカッター 実名 一覧」のようなまとめページも同じ構図で、氏名や学校名を並べて転載すれば、その1件ごとが名誉毀損やプライバシー侵害の請求対象になり得ます。
誤特定による無関係な人への中傷
特定作業には誤爆がつきものです。典型例がスマイリーキクチ中傷被害事件です。Internet Watch(2009年2月6日)によれば、1989年に足立区で起きた殺人事件に関与したという事実無根の書き込みが10年にわたって続き、警視庁は、誹謗中傷を繰り返したブログ閲覧者を一斉摘発するのは初めてとしています。「みんなが言っているから」と加担した投稿者が、刑事手続の対象になった事例です。投稿を削除しても転載やスクリーンショットは残り、デジタルタトゥーとして残るのは広めた側の投稿履歴も同じです。
主要なバイトテロ事例一覧と処分の結果
「その後」まで公表・報道されている事例を年代順に整理します。処分内容は各社の公式発表と報道で確認できた範囲に限っています。
| 発覚・公表 | 企業・店舗 | 行為 | 公表・報道された結果 |
|---|---|---|---|
| 2007年11月 | 吉野家 | 「テラ豚丼」の製造動画 | 12月3日に謝罪・関与者を処分 |
| 2013年7月 | ローソン 高知鴨部店 | アイスケースに寝そべる写真 | FC契約を解約・休業 |
| 2013年8月 | ブロンコビリー 足立梅島店 | 冷蔵庫に入る写真 | 8月12日に退店を決定 |
| 2013年8月 | そば店 泰尚(東京都内) | 食器洗浄機に入る写真 | 閉店・破産、約200万円で和解 |
| 2019年2月 | 無添くら寿司 守口店 | 捨てた切り身をまな板に戻す動画 | 退職処分、6月に家裁送致 |
| 2019年2月 | セブン-イレブン 横浜高島台店 | おでんのしらたきを口に含む動画 | 2月9日付け解雇・法的措置を検討 |
| 2021年6月 | CoCo壱番屋(福岡県内のFC店) | 休憩室で食品に不適切な動作 | 発覚当日に営業停止・翌日再開 |
| 2023年1月 | セブン-イレブン(店舗名非公表) | ポテトをかじる・店内で遊ぶ動画 | フライヤー販売の一時中止・当事者は退職 |
| 2025年10月 | ラーメン魁力屋 堺新金岡店 | 廃棄間際の食材を不衛生に扱う | 10月14日付で懲戒解雇・警察相談 |
企業側の被害は謝罪では収まらず、ローソンはフランチャイズ契約の解約と休業、CoCo壱番屋は2021年6月14日の発表で該当店舗を発覚当日に営業停止して清掃し翌日再開、ブロンコビリーは2013年8月12日の発表で「当該店舗がこのまま営業再開することは許されないと判断し、退店を決定いたしました」として店舗を閉め、泰尚は破産まで進みました。加害者側では、2019年のくら寿司の件のように刑事手続まで進んだ例があり、2025年の魁力屋の件では、10月9日の投稿に対して10月15日の第二報で、10月14日付の懲戒解雇と所轄警察署への相談、損害賠償請求の準備までが公表されました。
くら寿司守口店の事件の書類送検と家裁送致
2019年のくら寿司守口店の件は、刑事手続の段階まで報じられています。弁護士ドットコムニュース(2021年6月19日)は読売新聞2019年6月28日付の報道として、大阪府警が同年5月、当事者の従業員と動画を再投稿した知人の少年3人を偽計業務妨害の罪で書類送検し、地検が6月に17歳の少年2人を偽計業務妨害、まな板に魚を戻した19歳の少年を偽計業務妨害ほう助の非行事実で家庭裁判所に送致したと伝えています。罪名が「威力」でなく「偽計」だった点は、後述の刑事責任の章で扱います。少年事件のため、家裁での処分内容は公表されていません。
おでんツンツン男の事件(客側)の処分と賠償
「おでんツンツン男 賠償金」と検索されることが多いのですが、この件はバイトテロではなく客側の事案で、セブン-イレブンの2019年の事件とも別です。デイリースポーツ(2023年9月16日)は、本人が出演した番組の内容として、同記事の7年前(2016年ごろ)にコンビニのおでんを指でつつく動画を投稿し、威力業務妨害容疑で逮捕されたのち不起訴になったと伝えています。同記事にも、ほかの公表情報にも、損害賠償を支払ったという記述は見当たりません。「賠償金はいくらか」に対する答えは「公表された金額はない」です。
損害賠償の実例と請求額との乖離
泰尚事件で報じられた和解額200万円
賠償額を知りたい人にとって最も参考になるのは、東京都内のそば店「泰尚」の事件です。2013年8月にアルバイトの学生が食器洗浄機に入る写真をツイッターに投稿し、報道によれば店は投稿から約3か月後に閉店し、破産当時の負債は約3,300万円でした。アサ芸プラス(2015年5月28日)によれば、店側は元従業員らに1,385万円の損害賠償を求めて提訴し、2015年3月に和解が成立しました。同記事は司法ジャーナリストの話として、和解額を食洗機に入った学生129万円、流し台に足をかけた学生30万円、ツイッターに投稿した学生21万円、一緒に楽しんでいた学生20万円の計200万円と伝えています。請求額の約7分の1で、負債の10分の1にも届きません。実際に支払われた額や時期までは報じられていません。「数千万円請求される」という話は請求額の話で、和解や判決で決まる額とは別物です。
スシロー訴訟の請求額6,700万円と調停による取り下げ
客側の事案ですが、金額の相場観として参考になります。あきんどスシローは2023年、店舗で醤油差しをなめるなどした少年に対し約6,700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。千葉日報オンラインが配信した共同通信の記事(2023年8月1日)によれば、この訴訟は7月31日付で大阪地裁で調停が成立し、訴えは取り下げられました。スシロー側は「(少年側の)責任を認めてもらい、納得できる相応の内容で和解した」とコメントしていますが、金額は公表されていません。高額請求は抑止のメッセージにはなりますが、この件では判決による確定額は残っていません。
使用者から従業員への賠償請求を制限する判例
請求額と和解額が離れる事情の一つに、使用者から従業員への請求そのものが判例で制限されていることがあります。業務中の交通事故の事案ですが、茨城石炭商事事件の最高裁判決(昭和51年7月8日第一小法廷)は、使用者が被用者に損害賠償や求償を請求できるのは「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」に限られるとし、この事案で損害額の4分の1を限度とした原審の判断を正当として是認しました。判断では事業の性格や規模、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防や損失の分散についての使用者の配慮の程度などが総合的に考慮されます。バイトテロの事案にそのまま割合が当てはまるわけではありませんが、教育や管理の体制は請求できる範囲を判断する材料の一つになります。さらに労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めており、「SNSに不適切投稿をしたら100万円」といった金額を誓約書に書くことはできません。
加害者が問われる刑事責任と生活への影響
成立しうる罪と法定刑
バイトテロで問われる罪の中心は業務妨害罪で、刑法233条(偽計業務妨害)と234条(威力業務妨害)のどちらも法定刑は「三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」です。くら寿司守口店の件は、報道によれば威力ではなく偽計業務妨害(とそのほう助)の非行事実で家庭裁判所に送致されました。商品や備品を壊した場合は261条の器物損壊罪にあたり、「三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料」です。2025年6月1日に懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたため、それより前に書かれた解説に残る「懲役」の表記は現行条文とずれています。刑事処分とは別に、被害者との民事上の合意(示談)が成立することもあります。未成年でも家庭裁判所の手続に乗ることは、くら寿司の件が示しています。
懲戒解雇のあとに残る、削除できない情報の非対称性
雇用面では懲戒解雇が典型です。くら寿司の2019年の件では従業員2名が退職処分となり、魁力屋の2025年の件では10月14日付の懲戒解雇が翌15日に公表されました。懲戒の種類と手続の重さの違いは譴責(けん責)とは?読み方・意味と戒告との違い|始末書と手続きを条文で解説で整理しています。影響は職を失うことにとどまりません。氏名や在籍校が第三者に特定され拡散されれば、その情報は検索結果に残り続けます。処分は数日で終わっても、検索結果に残る情報は終わりません。
2025年の発生率は26.3%という現在地
マイナビ調査の業種別発生率
マイナビが2026年1月21日に公表した「バイトテロの実態・対策に関する企業調査(2026年版)」によれば、アルバイト従業員による不適切なSNS投稿や業務中のいたずらなどを「バイトテロ」として聞いたところ、2025年に発生したと回答した企業は26.3%でした。SNSで炎上した件数だけを数えた値ではありません。調査は2025年12月5日から10日にインターネットで、直近1年以内にアルバイト採用業務に携わった20〜69歳の会社員(会社役員・自営業を含む)を対象に実施され、有効回答1,500サンプルは各業種100名ずつになるようウェイトバック集計されています。業種別では販売・接客(パチンコ・カラオケ・ネットカフェ)が42.9%で最も高く、製造ライン・加工(メーカー)が40.0%、接客(ホテル・旅館)が35.7%で続きました。飲食店の印象が強い問題ですが、この調査では娯楽サービスと製造現場のほうが高く出ています。2026年に発生すると見込む企業は24.8%で、2025年に発生を経験した企業に限ると42.1%、未発生の企業では18.7%でした。一度起きた職場ほど再発を警戒しています。
発生時刻に表れる共通点は「人が薄い時間帯」
本人の承認欲求だけで説明すると、対策が精神論に流れます。公表資料の時刻を並べたほうが実務的です。セブン-イレブンの2019年の事件は「7日午前3時頃」の撮影で、魁力屋の2025年の事件は公式発表によれば「営業終了間際、お客様が退店された店内の厨房」でした。どちらも深夜または閉店後です。監督者がその場にいたかどうかは公表されていませんが、客の目がない時間帯に起きている点は共通します。魁力屋が第二報で、研修の見直しと並べて終業時の複数名チェックとエリアマネージャーの巡回強化を挙げたのも、この時間帯の管理を意識したものと読めます。教育だけ、管理だけで片付けず、両方を組み合わせるのが各社の対応です。
企業が取るべき防止策と発覚後の初動
実施率トップは勤務中の携帯操作禁止
同じマイナビ調査では、実施されている対策は勤務中の携帯操作禁止が49.4%で最多、SNS投稿に関する契約書記載が37.4%、勤務中の携帯持ち込み禁止が30.9%でした。撮影機会そのものを断つ物理的な対策が上位を占めます。一方で、対策の必要性を感じつつ未実施の企業が38.1%で最も多い層でした。最も普及している対策でも実施率は5割に届いていません。ただし、ルールを書くだけでは止まりません。魁力屋の第二報は、店舗内への私物スマートフォンの持ち込みを「禁止しております」と書いたうえで、勤務中は施錠可能な個人ロッカーで保管することを再徹底し、終業時に複数名で食材の扱いや規律の遵守を確認するとしています。禁止規定があっても事件は起きたわけで、効くのは保管場所と終業時の確認者を決めて運用することです。
誓約書・就業規則に書く禁止行為
誓約書に違約金の額は書けません(前述の労働基準法16条)。書けるのは、禁止行為の具体的な列挙と、違反時に懲戒処分および実際の損害の賠償請求の対象になるという告知です。「SNSへの不適切投稿の禁止」という抽象的な文言ではなく、「勤務中の撮影」「調理設備・什器に立ち入る行為」「商品への接触を伴う撮影」と行為ベースで書くほうが、懲戒の根拠として機能します。懲戒事由を就業規則のどこに置くかは就業規則とは?絶対的・相対的記載事項と勤怠・給与システムの設定項目を解説を参照してください。
発覚後に企業がたどっている初動の順序
公表された各社の対応を並べると、初動の順序はほぼ共通しています。第一に、対象となった商品・食材の廃棄です(セブン-イレブンはおでんを投稿後に廃棄、魁力屋は不衛生に扱われた食材を撮影後その場で廃棄したと公表)。第二に、保健所や警察への相談です(2023年のセブン-イレブンは地元保健所、魁力屋は所轄警察署)。第三に、当事者の処分と、事実関係を限定した公表です。事実確認より先に謝罪文を出すと、後から判明した事実で二次炎上を招きます。公表文の組み立て方はクライシスコミュニケーションとは?リスクコミュニケーションとの違いと危機対応の原則・事例で解説しています。魁力屋は第一報で確認済みの事実と調査方針を、第二報で処分日・警察への相談・再発防止策を出しており、確認できた事実と今後の方針を分けて段階的に公表しています。拡散を加速させる投稿の型は、レイジベイティングとは?炎上商法との違いと怒りが収益になる仕組みで解説しています。
よくある質問
セブンイレブンのバイトテロのその後はどうなりましたか?
2019年の横浜高島台店の事件では、元従業員2名が加盟店オーナーにより2月9日付けで解雇され、セブン-イレブン・ジャパンは法的措置を含む厳正な処分を検討すると公表しました。訴訟の有無や賠償額は公表されていません。2023年1月の件では、フライヤーの販売が一時中止され、当事者のアルバイトは退職していたと広報が回答しています。
バイトテロを起こすとクビになりますか?
この記事で取り上げた事例では、当事者は解雇・退職になっています。くら寿司は2019年に当該従業員2名を退職処分とし、セブン-イレブンの2019年の事案では2月9日付けで解雇、魁力屋の2025年の事案では10月14日付の懲戒解雇が15日に公表されました。くら寿司の件では、さらに偽計業務妨害で家庭裁判所に送致されたと報じられています。
バイトテロ加害者の実名は公表されますか?
この記事で取り上げた事例では、企業の公式発表にも報道にも実名は出ていません。セブン-イレブン・ジャパンの文書は「元従業員2名」という表記にとどまります。少年事件では少年法61条により本人を推知できる記事の掲載が禁じられ、18・19歳が起訴された場合だけ68条の例外があります。ネット上に出回る実名情報は第三者による未確認の特定で、拡散すれば刑法230条の名誉毀損罪や231条の侮辱罪、損害賠償請求の対象になり得ます。
バイトテロの損害賠償はいくらになりますか?
額が報じられている数少ない例が、そば店「泰尚」の事件で、1,385万円の請求に対し計200万円で和解したと報じられています。これとは別に、一般論として、茨城石炭商事事件の最高裁判決(昭和51年7月8日)は使用者から従業員への請求を信義則上相当な限度に制限しています。事前に賠償額を決める誓約書は労働基準法16条で禁じられています。
バカッターとバイトテロは同じ意味ですか?
同じではありません。バカッターはSNSに非常識な投稿をするユーザー全般を指す俗称で、勤務先と無関係な行為も含みます。バイトテロはそのうち、従業員が勤務先で起こしたものに限られます。従業員が事業の執行について起こした行為かどうかで、企業が民法715条の使用者責任を問われ得るかが変わります。