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SAP Fieldglassとは?外部人材管理の機能・派遣法への対応とS/4HANA連携を解説

SAPシステム導入支援の手順

SAP Fieldglass(フィールドグラス)とは、派遣社員、業務委託の要員、フリーランスといった外部人材を、募集から契約、勤怠、請求、契約終了まで1つの仕組みで管理するSAPのクラウドサービスです。分類としてはVMS(ベンダー管理システム)にあたり、人材を受け入れる発注側の企業が使います。本稿では、主力のContingent Workforce ManagementとServices Procurementの守備範囲、労働者派遣法の期間制限や派遣先管理台帳に照らしたときに製品が受け持つ部分と社内に残る部分、SAP S/4HANAやSAP Aribaとの連携で知っておくべき制約を、2026年11月時点の公式情報で整理しました。後半では、Fieldglassを採るべき企業と、国内向けの仕組みで足りる企業を条件付きで示します。

まとめ:SAP Fieldglassが向く企業と導入前に決めておく派遣・業務委託の範囲

SAP Fieldglassは、派遣と業務委託の支出を発注側でまとめて見える化し、法令と社内規程に沿った手続きを強制するための製品です。対応国は180か国以上で、グループ全体の外部人材を同じ基準で管理したい大企業に厚い実績があります。

採るかどうかの分かれ目は3つです。派遣と業務委託を合わせた外部人材が複数拠点に散っているか、基幹がSAP S/4HANAで購買や人事もSAPにそろっているか、海外拠点を含めて管理を統一したいか。この3つがそろう企業には合います。国内の数拠点だけで派遣元が数社、受け入れ人数も限られる企業では、機能と費用が過剰になりやすく、派遣先管理台帳と抵触日の管理を国内向けの仕組みで固めるほうが早く立ち上がる、というのが本稿の結論です。

SAP Fieldglassの定義と、VMSという製品分類・SAPグループでの位置づけ

まず、どの立場の企業が何のために使う製品なのかを確認します。派遣会社が自社のスタッフや請求を管理する仕組みとは、利用者の側が逆になる点に注意してください。

1999年創業のFieldglassを2014年にSAPが買収した経緯と国内提供

Fieldglassは1999年に米シカゴで創業した企業で、2014年にSAPが買収し、製品名に「SAP」が付くようになりました。日本市場での提供開始は2018年4月と報じられています。クラウドWatchの報道によると、PFUは2019年7月に導入を始め、9か月後の2020年4月に派遣管理と業務委託の2つのプロセスの本格稼働を目指すと発表しました。

規模を示す数字は出典によって少し異なります。Contingent Workforce Managementの製品ページは「21言語と180カ国以上に対応」と書き、2026年2月のSAPジャパンの記事は180か国以上・22言語・118か国での請求業務に対応と紹介しています。比較資料に数字を引用するときは、出典と時点を併記してください。

派遣元向けの派遣管理システムと発注側VMSの違いを利用者の立場で比較

国内で「派遣管理システム」と呼ばれる製品の多くは、派遣会社がスタッフの登録、契約、給与、派遣先への請求を回すための仕組みです。こちらの全体像は派遣管理システムの種類と主要機能を整理した記事で解説しています。Fieldglassは反対側、人材を受け入れて代金を払う企業のための製品です。

観点 派遣元向けの派遣管理システム SAP Fieldglass(発注側VMS)
主な利用者 派遣会社の営業・事務 受け入れ企業の現場・購買・人事
管理の単位 自社のスタッフと派遣先 複数の派遣元・委託先と要員
扱う契約 労働者派遣 派遣・業務委託・フリーランス
お金の向き 請求する側 請求を受けて支払う側

SAPジャパンの連載第1回は、Fieldglassをバイヤーとサプライヤーの双方が使うシステムと説明し、サプライヤー側は無償で利用できるとしています。派遣元は自社の基幹システムとは別に、取引先ごとのFieldglassの画面に候補者や勤怠、請求を入力する形になります。

派遣社員と外部サービスを管理する2製品の機能範囲と管理単位の違い

Fieldglassの中核は、Contingent Workforce Managementによる人単位の管理と、Services Procurementによる案件単位の管理を担う2つの製品です。どちらを入れるかで、扱える契約の種類と画面の作りが変わります。

Contingent Workforce Managementの募集・評価と人単位管理

Contingent Workforce Management(CWM)は、時間単価で働く外部要員を1人ずつ管理する製品です。製品ページには、求人募集、候補者の選定、作業指図、タイムシート、費用、承認、支払いの自動化、契約終了時のオフボーディングと評価が並びます。事前に承認された単価と推奨ベンダーへ発注者を誘導する仕組みがあり、現場が単価交渉を個別に進めることを防げます。

実務で効くのは、全スタッフに付与される永続的なセキュリティIDです。入場用のゲートパスやノートPCといった貸与物の追跡、機密情報へのアクセス制限、再雇用の可否まで、同じIDで履歴が残ります。契約終了日に入館証とアカウントを止める作業を、担当者の記憶ではなく手続きとして強制できる点は、VMSを入れる大きな理由になります。

Services ProcurementのSOW単位の成果物管理と時間処理

Services Procurementの製品ページによると、こちらはコンサルティング、マーケティング、保守、プラント停止時の工事、セキュリティなどの外部サービスを、作業範囲記述書(SOW)単位で管理する製品です。PMO向けのダッシュボード、マイルストーンと成果物の追跡、サービス入力シート、複数のSOWにまたがる時間処理と、合意した契約レートに基づくベンダーへの請求が主な機能です。

同じページでは、外部人材全体のプロファイルを管理するWorker Profile Managementも製品群の1つとして紹介されています。CWMとServices Procurementを両方入れると、派遣と業務委託の要員を同じ一覧で数えられるようになります。どちらか一方から始める場合は、支出の大きい側を先に選ぶのが順当です。

設備保全の現場向けAssignment Managementとゲート入退構システムの連携

製造業や装置産業では、2021年3月に一般提供が始まったAssignment Managementが選択肢に入ります。SAPジャパンの発表によると、複数の保全工事に同時に割り当てられる協力会社の作業員について、作業と支払単価の割当を管理する製品で、標準勤務と時間外勤務を1日単位で追跡し、施設の入退構を管理するゲートシステムと連携して勤務時間の計算精度を上げるとしています。プラント停止の工事で数百人規模の協力会社が出入りする現場向けで、オフィスの事務派遣には不要です。

労働者派遣法の期間制限と派遣先管理台帳をFieldglassで管理する範囲

Fieldglassは日本の派遣管理に対応していると提供元は説明しています。ただし、連載第1回で示されているのは日本語UI、日本独自の推奨テンプレート、日本語での導入支援までで、条文ごとの機能の対応表は公開されていません。そこで、派遣先が法律で負う義務を並べ、製品に何を持たせるべきかを整理します。

事業所単位と個人単位の3年制限と抵触日の通知を設定で再現する方法

労働者派遣法40条の2は、派遣先の事業所ごとの業務について派遣可能期間を3年と定めています。延長するには、抵触日の1か月前までに過半数労働組合等の意見を聴き、延長したら派遣元へ新しい抵触日を通知しなければなりません。40条の3はさらに、同じ派遣労働者を同じ組織単位で3年を超えて受け入れることを禁じています。

VMSに持たせるべきなのは、事業所と組織単位の2つのマスタと、それぞれの受け入れ開始日です。Fieldglassの作業指図に事業所と組織単位を必須項目として持たせ、抵触日の数か月前に担当者へ通知する設定を組めば、期限切れの受け入れは防げます。一方で、意見聴取そのものや労働組合への説明は社内の手続きで、システムが代わりに行うものではありません。無期雇用派遣など期間制限の例外も条文に列挙されているため、例外区分をマスタで持たないと、不要な警告が大量に出ます。制度の細部は事業所単位と個人単位の期間制限を解説した抵触日の記事にまとめています。

派遣法42条の派遣先管理台帳11項目とタイムシートの記録で埋まる部分

同じ法律の42条は、派遣先に派遣先管理台帳の作成と3年間の保存、記載事項の派遣元への通知を義務づけています。記載事項は、協定対象派遣労働者か否か、無期雇用か有期雇用か、派遣元の名称、就業日、日ごとの始業・終業時刻と休憩時間、従事した業務の種類、苦情の処理、教育訓練の日時と内容などです。

このうち就業日と始業・終業時刻、休憩時間は、Fieldglassのタイムシートに承認付きで残る情報で、台帳の中で最も量の多い部分を埋められます。残るのは苦情の処理と教育訓練の記録で、これらは現場の運用で入力欄を設けない限り空欄のままです。監査の際に台帳として出力できる形式かどうかは、導入前のデモで必ず確かめてください。台帳の記載事項と通知の頻度は派遣先管理台帳の記載事項と3年保存を整理した記事で詳しく扱いました。

業務委託をFieldglassで管理するときに偽装請負を招かない設計の考え方

Services Procurementの製品ページは、SOWとスタッフの時間処理を自動化し、契約レートに基づいてベンダーへ請求する機能を前面に出しています。この時間精算を日本の請負・準委任にそのまま当てはめると、法律上の区分を崩す運用になりかねません。

37号告示の区分基準と時間単価の精算がぶつかる典型的な失敗パターン

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)は、請負と認められるために、受託側が自ら労働者を管理し、業務を独立して処理することを求めています。発注側の現場責任者が委託先の要員のタイムシートを承認し、作業の進め方まで画面上で指示する運用は、この区分を崩す方向に働きます。

典型的な失敗は、派遣と同じテンプレートで業務委託の要員を登録し、人数と時間の積で毎月の代金を払う形にしてしまうケースです。システムの設定としては簡単に作れますが、実態が労働力の提供に近づき、偽装請負を疑われる構図になります。判断基準の詳細は偽装請負の4類型と37号告示の判断基準を解説した記事を参照してください。

SOWのマイルストーンと成果物で精算する形に寄せる設定と社内ルール

業務委託はCWMではなくServices ProcurementのSOWで管理し、精算の根拠をマイルストーンと成果物の受け入れに置くのが基本です。時間の記録が必要な準委任でも、承認するのは委託先の責任者とし、発注側は成果の確認に役割を限定します。Fieldglass上の承認ルートを派遣と業務委託で分けておかないと、現場は使い慣れた派遣の画面で業務委託も処理し始めます。

社内ルールとしては、業務委託のSOWテンプレートに作業指示の窓口を委託先側に置く旨を明記し、発注側の現場が委託先の要員へ直接タスクを割り当てる機能を使わない、と決めておくと線引きが保たれます。

SAP S/4HANA・SAP Aribaとの連携で受け渡すデータと既知の制約

Fieldglassの効果は、外部人材の支出が基幹の会計と購買に正しく載って初めて出ます。連携の方式は基幹がオンプレミスのS/4HANAか、S/4HANA Cloudかで変わります。

オンプレミス版S/4HANAとの請求書連携と原価センタなどマスタの複製

S/4HANA 1610版のSAPヘルプのドキュメントでは、Fieldglassで作られた請求書をS/4HANAで受け取り、誤りのない請求書は自動で計上し、誤りのあるものは保留や下書きにして手作業で処理する流れが説明されています。受け渡しはcXMLのInvoiceDetailRequestで行い、支払済みなどの状態はStatusUpdateRequestでFieldglass側のサプライヤーに返ります。

同じ文書によると、購買組織、プラント、内部指図、原価センタ、WBS要素はS/4HANAからFieldglassへ複製できます。接続方式はミドルウェアを使わない直接接続、SAP HANA Cloud Integration経由、PI経由の3つです。外部人材のコストをプロジェクト別に集計したい企業は、WBS要素をFieldglassの作業指図に必須で持たせる設計にしておくと、後から按分する手間がなくなります。

S/4HANA CloudとAriba Networkを結ぶ4R2シナリオの1品目制限

S/4HANA Cloudでは、Ariba NetworkとFieldglassを組み合わせたサービス調達の連携シナリオ「4R2」が用意されています。SAP Aribaのリリース情報(195755)によると、前提として「Ariba Networkによるソーシングから支払までの自動化(42K)」の実装が必要です。

制約も明記されています。SOWに対して送るサービス証明ドキュメントには1品目しか含められず、作成後は編集できません。商品明細と簡易サービス明細が混在するオーダーも対象外です。1つの発注で機器の購入と設置作業をまとめて頼む運用の企業は、発注を分ける業務変更が必要になります。購買側の製品の範囲はSAP Aribaの機能とS/4HANA連携を解説した記事、基幹の移行方式はSAP S/4HANAの導入形態と移行方式を整理した記事で扱っています。

SAP Fieldglassの費用の決まり方と、導入期間の目安を左右する前提条件

Fieldglassの価格表は公式サイトに載っておらず、製品ページのデモ依頼から個別に見積もる方式です。比較の前に、費用と期間を動かす前提を把握しておきます。

公開価格がない製品の見積もりで先に数えておく外部人材の人数と支出額

見積もりの前に、直近1年の派遣と業務委託の取引先数、月ごとの受け入れ人数、外部人材への支出額を拠点別に数えておくと話が早く進みます。サプライヤー側は無償なので、費用はすべて発注側の負担です。派遣元が自社の基幹とFieldglassに二重入力する負担を嫌い、協力を得にくいこともあるため、主要な派遣元への事前説明の工数も見込んでおきます。

ライセンス以外で膨らみやすいのは、事業所と組織単位のマスタ整備、承認ルートの設計、S/4HANAとの連携テスト、派遣元への操作説明です。ライセンス料だけで国内向けの仕組みと比べると判断を誤ります。

PFUの事例が示す9か月という期間と、連携範囲で延びる要因の整理

先のPFUの事例では、導入開始から本格稼働の目標までが9か月でした。派遣と業務委託の2プロセスを国内で先に立ち上げ、S/4HANAとの連携は後の段階に置いた計画です。

基幹との連携を同時に作る場合や、海外拠点まで一度に広げる場合は、これより長くなると見ておくのが現実的です。期間を延ばす要因は、組織単位マスタの整理と、派遣元を巻き込んだ受け入れテストの2つにほぼ集約されます。

SAP Fieldglassを採用すべき企業と国内向けの仕組みで足りる企業の分かれ目

ここまでの事実から、採用の判断を言い切ります。見る条件は、外部人材の規模と分散、契約の種類、基幹の構成、海外拠点の有無の4つです。

派遣と業務委託が複数拠点に散り基幹がSAPなら採用を勧める条件

採用を勧めるのは、派遣と業務委託を合わせた外部人材が複数の事業所に散り、派遣元や委託先が数十社に及び、基幹がS/4HANAで購買にAriba、人事にSuccessFactorsを使っている、または使う予定の企業です。外部人材の支出を正社員の人件費と並べて把握でき、抵触日と貸与物の管理を全社で同じ手続きにそろえられます。海外拠点にFieldglassの利用実績があれば、グループで規程をそろえる効果も加わります。

S/4HANAへの移行とあわせて外部人材の管理や購買連携の範囲を検討したい場合は、一創のSAPコンサルティング・導入支援サービスで、移行計画と一体での進め方から支援しています。

国内数拠点で派遣元が数社なら見送る、二重入力が残る失敗パターン

反対に、国内の数拠点だけで、派遣元が数社、業務委託も少ない企業はFieldglassを見送ります。抵触日と派遣先管理台帳の管理が目的なら、勤怠システムと台帳の仕組みを国内向けに固めるほうが早く、費用も抑えられます。

よくある失敗は、グローバル標準だからという理由で入れ、日本の派遣法に必要な事業所と組織単位のマスタを作らないまま稼働させるケースです。抵触日の管理が結局Excelに残り、派遣元はFieldglassと自社システムの二重入力を続けます。もう1つは、業務委託を派遣と同じ時間精算のテンプレートで載せ、偽装請負に近い運用をシステムで固定してしまうケースです。どちらも、製品を選ぶ前に管理したい法定項目と契約の区分を決めていれば避けられます。

よくある質問

SAP Fieldglassについて、検索でよく調べられている疑問に答えます。

SAP Fieldglassは何をするためのシステムですか?

派遣社員、業務委託の要員、フリーランスなど、社外から受け入れる人材の募集、契約、勤怠、請求、契約終了までを発注側の企業が一元管理するためのクラウドシステムです。製品分類はVMS(ベンダー管理システム)で、人単位で管理するContingent Workforce Managementと、SOW単位で外部サービスを管理するServices Procurementが中核です。派遣会社が自社のスタッフを管理するシステムとは、使う側が逆になります。

SAP Fieldglassは日本の派遣法に対応していますか?

提供元は対応していると説明しており、日本語UI、日本独自の推奨テンプレート、日本語での導入支援を挙げています。ただし、条文ごとの機能対応表は公開されていません。派遣法40条の2・40条の3の期間制限と42条の派遣先管理台帳を満たすには、事業所と組織単位のマスタ、抵触日の通知設定、苦情処理や教育訓練の入力欄を導入時に設計する必要があります。デモで台帳の出力形式まで確かめてください。

SAP Fieldglassの料金はいくらですか?

公式サイトに価格表は掲載されておらず、デモ依頼から個別に見積もる方式です。サプライヤー側は無償で利用できると提供元が説明しているため、費用は発注側の負担になります。比較する際は、ライセンス料に加えて、組織単位マスタの整備、承認ルートの設計、S/4HANAとの連携テスト、派遣元への操作説明にかかる費用を含めて総額で見てください。

派遣会社側もSAP Fieldglassを使う必要がありますか?

取引先の企業がFieldglassを導入すると、派遣会社や委託先はサプライヤーとして、候補者の提示、勤怠の確認、請求書の提出をFieldglassの画面で行うことになります。サプライヤー側の利用は無償ですが、自社の基幹システムへの入力は別に残るため、取引先が増えるほど二重入力の負担が大きくなる構造です。取引開始の前に、入力の手順と勤怠・請求の締め日を取引先と確認しておくと混乱を防げます。

SAP以外のERPでもSAP Fieldglassは使えますか?

使うこと自体は可能です。ただし、S/4HANA向けに用意された請求書の自動計上やマスタの複製といった標準連携は使えないため、Fieldglassの請求データを自社の会計システムの取り込み形式に変換する仕組みを用意することになります。原価センタやプロジェクトのコードをどちらのシステムで正として持つか、計上日をいつにするかを先に決めておくと、連携開発の手戻りを防げます。

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