ERP

ERP/CRM導入とは?Salesforce・SAP・Dynamicsの選定軸と進め方を解説

ERP/CRMの導入とは、会計や在庫といった基幹業務(ERP)と、顧客・営業の管理(CRM)を、専用のシステムに載せ替えて業務を回せるようにする取り組みです。製品名としてはSalesforce、SAP、Microsoft Dynamics 365がよく挙がりますが、名前で選ぶと自社の業務に合わず、入れたのに使われないという結果になりがちです。この記事では、ERP/CRM導入の全体像と、主要3製品をどの軸で選び分けるか、そして導入でつまずかないための進め方を、B2Bのシステム導入という視点から整理します。

まとめ:ERP/CRM導入の結論と製品選びの軸

先に結論を示します。ERP/CRM導入で失敗しないための鍵は、製品名から入らず、自社の課題と業務に合う軸で選ぶことです。おおまかな指針として、営業・顧客管理を軸にクラウドで素早く始めたいならSalesforce、会計から営業まで含めてMicrosoft製品と揃えたいならMicrosoft Dynamics 365、大規模・製造・グローバルで深い作り込みが必要ならSAPが候補になります。背景として、SAPの旧製品ERP 6.0の標準サポートが2027年末に終了する「2027年問題」や、2030年に最大79万人と試算されるIT人材不足があり、基幹システムの見直しを迫られる会社が増えています。ただし導入は製品選定より、要件整理と社内の定着のほうが難所です。痛みの大きい領域から段階的に進め、要件の整理段階から支援を得ることが、成功率を上げる現実的な進め方になります。以下で各論点を掘り下げます。

ERP/CRM導入とは何を導入することか

ERP/CRMの導入は、2つの異なる領域のシステム化をまとめて指すことが多い言葉です。ERP(統合基幹業務システム)は、会計・在庫・生産・人事といった社内のヒト・モノ・カネを一元管理する仕組みで、会社を動かす土台にあたります。CRM(顧客関係管理)は、顧客情報や商談、対応履歴を管理して顧客との関係を維持・拡大する仕組みで、売上をつくる最前線を担う存在です。両者は受注という一点でつながっており、CRM側で受注した案件がERP側の販売管理・請求へ流れると、営業から会計までが1本の流れになります。

ERPとCRMを分けて考えるか、一体で考えるか

導入の入口は2通りあります。1つは、営業や顧客管理の課題からCRMを先に入れる道。もう1つは、会計や在庫の非効率からERPを先に入れる道です。どちらを先にするかは、いま経営を圧迫している痛みがどちらにあるかで決まります。両方を同時に入れ替えると現場の負担が一度に膨らむため、痛みの大きい側から段階的に進め、受注データの受け渡し部分で連携させる設計が現実的です。製品によっては、ERPとCRMの両方を1つの基盤でカバーするものもあり、その場合は将来の連携を見据えて土台を選ぶ判断になります。

なぜ今ERP/CRM導入が検討されるのか

基幹システムの見直しが各社で進む背景には、避けにくい2つの事情があります。1つはSAPのサポート期限、もう1つはIT人材の不足です。

SAP 2027年問題

広く使われてきたSAPの基幹製品ERP 6.0(ECC 6.0)は、標準サポートが2027年末に終了する予定です。当初は2025年末とされていた期限が2020年に2年延長された経緯があり、追加の保守料を払えば2030年末まで延長できる選択肢も用意されています。とはいえ、いずれ後継のS/4HANAへ移行する必要があり、この移行には要件の再整理やデータの移し替えなど、相応の時間がかかるのが実情です。期限が近づくほど支援を頼む企業が集中し、人手の確保が難しくなるため、早めに計画を立てる会社が増えています。SAP環境の移行や刷新を検討する場合は、信頼できるSAPコンサルティング会社の選び方を先に押さえておくと、支援先の見極めで迷いにくくなります。

IT人材の不足

もう1つの事情が、システムを担う人材の不足です。経済産業省のDXレポートでは、IT人材の不足は2030年に最大で約79万人に達するという試算です。基幹システムが老朽化したまま、それを保守できる人材が社内外で減っていくと、事業の継続そのものにリスクが生じます。新しいERP/CRMへ移行して運用を標準化し、特定の担当者に依存しない体制へ変えておくことは、この人材リスクへの備えにもなります。

主要3製品の選定軸(Salesforce・SAP・Dynamics)

ここが製品選びの核心です。3製品はいずれも実績のある選択肢ですが、得意とする領域と設計思想が異なります。それぞれの特徴と、どんな会社に向くかを整理します。

Salesforce

Salesforceは、営業支援と顧客管理を中心にしたクラウド専用の製品です。自社でサーバーを持たずにインターネット経由で使う前提で作られており、導入の立ち上がりが速く、機能追加もクラウド上で進みます。世界で広く使われ、外部サービスとの連携先が豊富な点も強みです。営業・顧客管理から着手したい会社、クラウドで素早く始めて改善を回したい会社に向きます。一方、会計や生産などの基幹業務は別のERPと組み合わせる前提になるため、ERPまで一気にそろえたい場合は連携設計を含めて考える必要があります。

SAP

SAPは、会計・生産・在庫を含む基幹業務に強く、大規模企業や製造業、グローバル展開する企業で広く使われてきた製品です。後継のS/4HANAはインメモリ型のデータベースを基盤に高速な処理を実現し、自社の業務に合わせた深い作り込みにも対応します。その分、導入と運用には専門知識と相応の投資が必要で、要件整理から定着までを支える体制が要る領域です。多拠点・多通貨のグローバル運用や、製造の複雑な業務をシステムに載せたい会社に向きます。前述の2027年問題を機に移行を検討する企業も多く、支援先の選定が成否を分けます。

Microsoft Dynamics 365

Microsoft Dynamics 365は、CRMとERPの両方を1つの製品群でカバーできる点が特徴です。2016年に営業・顧客管理と基幹業務の機能が統合され、クラウド基盤のAzureや、データ基盤のDataverseの上で動きます。中小規模の基幹業務にはBusiness Centralが用意され、規模に応じて選べます。ExcelやTeamsといったMicrosoft製品を日常的に使う会社であれば、画面や操作になじみやすく、データの受け渡しもスムーズです。営業から会計までをMicrosoftの環境で揃えたい会社、CRMとERPを1つの土台で将来つなげたい会社に向きます。

3製品の選定軸を比較

観点 Salesforce SAP Dynamics 365
得意領域 営業・顧客管理 基幹業務・製造 CRMとERPの両方
提供形態 クラウド専用 クラウド・オンプレ クラウド中心
向く規模 中小〜大企業 中〜大・グローバル 中小〜大企業
相性がよい会社 営業から素早く始めたい 製造・多拠点で深く作り込む Microsoft環境で揃えたい

表はあくまで大まかな傾向です。実際の選定では、自社の業種・規模・既存システムとの連携条件を重ねて、候補を2〜3製品に絞ってから詳細を比べます。

ERP/CRM導入の進め方

製品が決まっても、導入そのものには段取りが要ります。おおまかな流れは、課題の整理と要件定義、製品と支援先の選定、設計と設定、データ移行、テスト、社内への定着、という順です。とくに最初の要件定義が全体の質を決めます。現状の業務をそのままシステムに移すのではなく、この機会に無駄な手順を見直し、標準的な業務の形に寄せられるかどうかが、後の使いやすさを左右する分岐点です。データ移行では、既存データの表記ゆれや重複を整える手間を見込んでおく必要があります。

ERP/CRM導入でつまずく要因と対策

導入が失敗に終わるとき、原因の多くは製品選びそのものではなく、進め方にあります。代表的なつまずきと対策を整理します。第一に、要件を固めないまま製品を決めてしまい、後から自社の業務に合わないと判明するケース。対策は、痛みの大きい業務から要件を書き出し、そこに効く製品を選ぶ順番を守ることです。第二に、現場が入力せずデータが溜まらず、システムが形だけになるケース。対策は、誰が何をいつ入力するかの運用ルールを導入前に決め、現場の負担が軽い製品を選ぶことです。第三に、支援先の力量を見極められず、移行が長期化・迷走するケース。とくにSAPのような大規模移行では、支援先の選定が成否を大きく左右します。第四に、2027年問題のような期限が迫ってから慌てて着手し、人手が確保できないケース。対策は、期限から逆算して早めに計画を立てることです。要件整理から定着までを見据えて外部の支援を組み合わせたい場合は、ERP・CRM導入支援のようなサービスで、自社の業務フローに合わせた設計から進める方法があります。

ERP/CRM導入を成功させる進め方

最後に、成功率を上げるための要点をまとめます。第一に、製品名から入らず、自社のいちばん痛い課題を起点にする。第二に、その課題に効く製品を、業種・規模・既存システムとの連携条件で2〜3社に絞る。第三に、ERPとCRMを同時に入れ替えず、痛みの大きい側から段階的に進める。第四に、導入前に運用ルールを決め、現場が使い続けられる形にする。第五に、要件整理と支援先選定に時間をかけ、期限があるなら逆算して早く動く。ERP/CRM導入は、投資額も業務への影響も大きい取り組みです。だからこそ、製品の機能比較に労力を割く前に、自社が何を解決したいのかを言語化することが、遠回りに見えて最も確実な進め方になります。

よくある質問

ERPとCRMはどちらを先に導入すべきですか?

いま経営を圧迫している課題がどちらにあるかで決めます。営業の受注管理や顧客情報の分断に痛みがあるならCRMが先、会計や在庫など社内業務の非効率が大きいならERPが先です。両方を同時に入れ替えると現場の負担が集中するため、痛みの大きい側から段階的に進め、受注データの受け渡しで連携させる進め方が現実的です。

Salesforce・SAP・Dynamicsはどう選び分けますか?

得意領域で選び分けます。営業・顧客管理を軸にクラウドで素早く始めたいならSalesforce、会計から営業までMicrosoft環境で揃えCRMとERPを1つの土台に載せたいならDynamics 365、大規模・製造・グローバルで深い作り込みが必要ならSAPが候補です。最終的には自社の業種・規模・既存システムとの連携条件を重ねて絞り込みます。

SAPの2027年問題とは何ですか?

SAPの基幹製品ERP 6.0(ECC 6.0)の標準サポートが2027年末に終了する問題です。追加の保守料で2030年末まで延長できる選択肢はありますが、いずれ後継のS/4HANAへ移行する必要があります。移行には要件整理やデータ移行の時間がかかり、期限が近づくと支援先が混み合うため、早めに計画を立てることが要点になります。

ERP/CRM導入の費用はどのくらいかかりますか?

製品・規模・提供形態で大きく変わるため一概には言えませんが、クラウド型は利用人数に応じた月額課金が中心で、初期投資を抑えて始められます。大規模なオンプレミス構築や深い作り込みを伴う場合は、初期費用と支援費用が大きくなります。ソフトの利用料だけでなく、要件整理・データ移行・定着支援まで含めた総額で見積もることが要点です。

導入を外部に支援してもらう必要はありますか?

小規模で標準的な使い方なら自社だけでも始められますが、複数部門にまたがる導入や、SAPのような大規模移行では、要件整理から定着までを支える外部の支援があると成功率が上がります。とくに移行に期限がある場合は、経験のある支援先を早めに確保しておくことで、人手不足による遅延を避けやすくなります。

関連記事

資料請求

RELATED POSTS 関連記事