納品書とは、商品やサービスを納めた受注者が、納品と同時に発注者へ渡す「何を・いくつ・いつ届けたか」を示す書類です。請求書が代金の支払いを求め、検収書が発注者の合格判定を示すのに対し、納品書は引き渡した事実の記録にとどまります。この記事では、納品書と請求書・検収書・受領書・領収書の違い、記載事項と納品書番号の付け方、インボイス制度で請求書と組み合わせる方法、法人7年の保存期間と電子データの保存、印紙が必要になる書き方までを整理します。最後に示すのは、Excelで作り続けてよい会社と販売管理システムで発行すべき会社の境目です。
まとめ:納品書は届けた事実の記録、記載事項・照合・7年保存が実務の軸
納品書は受注者が発行し、納品日・品目・数量・金額を発注者に伝える書類です。発行を一律に義務づける法律はありませんが、請求金額の根拠として発注者が照合に使うため、実務上はほぼすべての物販取引で発行されます。
押さえる順番ははっきりしています。まず納品書番号を振り、月まとめの請求書から番号で引ける形にすること。次に、インボイス制度の登録事業者なら、登録番号と税率ごとの消費税額を請求書と納品書のどちらで満たすかを決めること。最後に、法人は原則7年保存し、PDFで送受信した納品書は印刷せず電子データのまま保存することです。納品書に「代済」と書き込むと印紙税の課税文書に変わる点も、見落とされやすい落とし穴です。
納品書とは何か:受注者が納品と同時に発行する書類の役割と発行義務の有無
納品書の位置づけは、取引の流れの中で見ると分かりやすくなります。見積書と発注書で条件が決まり、受注者が品物を届けたところで納品書が発行されます。
納品書の定義:届けた品目と数量を発注者に示す受注者側の書類としての役割
納品書は、受注者(売り手)が作成し、品物と一緒に、または納品の直後に発注者(買い手)へ渡します。発注者は届いた現物と納品書を突き合わせ、発注書どおりの品目・数量かを確かめます。
役割は二つあります。一つは、発注者が受入検査をするときのチェックリストになること。もう一つは、後から届く請求書の金額が正しいかを確かめる根拠になることです。月末締めで請求書を1枚にまとめる取引では、請求書の明細は「どの納品書の分か」を指すだけになるため、納品書が明細の原本の役割を果たします。
なお、納品という行為そのものの意味や、システム開発で成果物を引き渡すときの考え方は納品とは?システム開発の成果物・検収との違いと契約別の扱いで解説しています。本記事は書類としての納品書に絞ります。
納品書の発行義務:法律での一律の義務はなく取引先との条件と商慣習で決まる
納品書の発行を、すべての事業者に一律で義務づける法律はありません。発行するかどうかは、取引基本契約や発注書の条件、業界の慣習で決まります。
ただし「義務がないから省いてよい」とは言えません。発注者の経理部門は、納品書・検収書・請求書の3点を照合して支払を承認する運用が一般的で、納品書が無いと支払処理が止まります。また、インボイス制度の登録事業者が納品書を適格請求書として使う設計にしている場合は、その納品書が税務上の交付書類そのものになります(後述)。
実務上の結論は単純です。継続取引の相手には毎回発行し、発行しない取引は契約書か発注書に「納品書の発行を省略する」と書いておく。口頭の省略は、照合の場面で必ず揉めます。
納品書と請求書・検収書・受領書・領収書の違いを発行者と発行時期で比較
納品から入金までに行き交う書類は5種類あり、名前が似ているため混同されがちです。違いは「誰が出すか」と「何を証明するか」で整理できます。
五つの書類の比較表:発行者・発行時期・証明する事実が異なる理由の整理
受注者が出す書類と発注者が出す書類を分けると、取引の流れと一致します。
| 書類 | 発行者 | 発行の時期 | 証明する事実 |
|---|---|---|---|
| 納品書 | 受注者 | 納品と同時 | 品物を届けたこと |
| 受領書 | 発注者 | 受け取った直後 | 品物を受け取ったこと |
| 検収書 | 発注者 | 受入検査の合格後 | 検査に合格したこと |
| 請求書 | 受注者 | 納品後または月末締め | 代金の支払を求めること |
| 領収書 | 受注者 | 代金を受け取った後 | 代金を受け取ったこと |
納品書と請求書はどちらも受注者が発行しますが、納品書は「届けた」、請求書は「払ってほしい」と目的が違います。振込先や支払期日を書くのは請求書の側です。発注者側が出す検収書の記載項目や運用は検収書とは?記載項目と納品書・請求書との違いで詳しく扱っています。
納品書兼請求書と納品書兼受領書:1枚にまとめてよい取引と避ける取引の条件
1回の納品ごとに代金を請求する取引なら、納品書と請求書を1枚にした「納品書兼請求書」で足ります。スポット取引や小口の物販がこの形です。
月末締めで複数回の納品をまとめて請求する取引では、兼用にしないほうが安全です。納品のたびに請求書が発生すると、締め日の請求書と二重計上になるためです。
「納品書兼受領書」は、受注者が2枚複写の納品書を作り、控えに発注者の受領印をもらって持ち帰る形式です。配送を伴う取引で、誰がいつ受け取ったかを残す目的で使います。受領印は受け取った事実を示すだけで、検査に合格したことまでは示しません。検収が支払条件になっている取引では、受領書とは別に検収の記録を残してください。
納品書の記載事項と書き方:必要な7項目と請求書と照合できる納品書番号
納品書の書式に法律上の決まりはありません。とはいえ、発注者が照合と経理処理に使う以上、欠けると差し戻される項目があります。
納品書に書く7項目:宛名と納品書番号から税率ごとの合計金額までの並べ方
一般的な納品書には、次の7項目を入れます。上から順に、発注者が照合で目にする順番です。
- 宛名(発注者の会社名。部署名・担当者名まで書くと社内の回付が早い)
- 納品書番号(請求書・発注書と突き合わせるための一意の番号)
- 納品日(発行日ではなく、品物を引き渡した日)
- 発行者の名称・所在地・連絡先(インボイスの登録事業者は登録番号も)
- 品目・数量・単価・金額(軽減税率の対象品目があればその旨)
- 小計・税率ごとの消費税額・合計金額
- 発注番号(発注書の番号。発注者側の照合キーになる)
見落とされやすいのは7番の発注番号です。発注者の購買部門は発注書の番号で検索するため、受注者の納品書番号だけでは照合に時間がかかります。発注書の書き方や注文書との違いは発注書と注文書の違いにまとめています。
納品書番号の採番規則:月まとめの請求書から番号で引ける形にする設計の工夫
納品書番号は、請求書の明細から逆引きできることを第一に設計します。年月と連番を組み合わせた「2611-0013」のような形式なら、何月の請求に含まれるかが番号だけで分かります。
避けたいのは、担当者ごとに別のExcelファイルで連番を振る運用です。番号が重複し、請求書の明細から一意に納品書を特定できなくなります。重複した番号はインボイス制度でも問題になります。次の章で触れるとおり、国税庁は「請求書に納品書番号を記載する」ことを複数書類で記載事項を満たす方法の例に挙げているため、番号の一意性がそのまま税務上の要件を支えるからです。
役務提供やシステム開発の納品書:成果物一覧と引き渡し日を特定する書き方
形の無いサービスやシステム開発でも納品書は発行されます。この場合、品目欄に「〇〇システム一式」とだけ書くと、何を引き渡したのかが後から分からなくなります。
ソースコード・設計書・テスト結果報告書のように成果物を一覧にし、版番号や提出日を別紙で特定するのが確実です。引き渡し日は、検収期間の起算日になることが多いため、契約書で定めた納品の方法(リポジトリへの登録、媒体の送付など)が完了した日を書きます。
インボイス制度と納品書:適格請求書の6記載事項を納品書と請求書で分担する方法
インボイス制度では、適格請求書は書類の名前ではなく記載内容で判断されます。国税庁のNo.6625 適格請求書等の記載事項は、対象を「請求書、納品書等」と書いており、納品書も条件を満たせば適格請求書になります。
納品書を適格請求書にする条件:登録番号と税率ごとの消費税額を加える6項目
No.6625(令和8年4月1日現在法令等)が示す記載事項は次の6つです。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
前の章の7項目と比べると、納品書に足りないのは多くの場合「登録番号」と「税率ごとの消費税額」の2つです。納品書1枚で完結させたいなら、この2つを書式に加えれば済みます。小売業や飲食店業など不特定多数を相手にする業種では、最後の交付先名を省ける簡易インボイスの扱いがあります。
月まとめ請求の分担:納品書番号で請求書と結び2種類の書類で要件を満たす形
納品のたびに納品書を渡し、請求は1か月分をまとめる取引では、書類を分担させる方法があります。国税庁のインボイスQ&A 問65(令和5年10月改訂)は、記載事項は1枚の書類で満たす必要はなく、請求書に納品書番号を書くなど書類同士の関連が明確なら、複数の書類の全体で満たせると説明しています。
同じ問65は、対応を2通りに分けています。
- 請求書に6項目をすべて書く方法:納品書の様式は変えなくてよい
- 請求書に登録番号・税率ごとの消費税額・適用税率を書き、日々の取引内容は納品書に任せる方法:請求書と納品書の2枚で要件を満たす
どちらを選ぶかは、請求書の発行システムを変えやすいかで決めます。請求書側を作り替えられるなら前者が単純です。納品書の様式だけを変えられない事情がある場合でも、後者なら請求書に納品書番号の明細欄を足すだけで対応できます。ただし後者を選ぶと、納品書も適格請求書の一部になるため、受け取った側は請求書と納品書の両方を保存する必要があります。
納品書の保存期間と電子保存、印紙が必要になる記載で起きる失敗の落とし穴
保存の論点は、紙かデータかで扱いが分かれます。印紙は、書き込む文言しだいで要否が変わります。
保存期間は法人7年が原則:欠損金が出た年度は10年、個人事業主は5年か7年
法人は、国税庁No.5930 帳簿書類等の保存期間(令和8年4月1日現在法令等)のとおり、帳簿と取引に関して作成・受領した書類を、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。欠損金が生じた事業年度は10年間です。納品書は取引に関して受け取る書類にあたるため、受け取った側は同じ期間を前提に保管します。
インボイス制度で仕入税額控除を受ける買い手も、No.6625で受領した請求書等を7年間保存することになっています。納品書が適格請求書の一部を担っている場合は、この保存対象に納品書が含まれます。
個人事業主は、帳簿や書類の種類、課税事業者かどうかで5年と7年に分かれます。区分の一覧は個人事業主の帳簿の保存期間は7年と5年に分かれるで整理しています。
PDFで受け取った納品書は電子取引:印刷保存ではなく電子データのまま保存する
メール添付のPDFやWebの取引先ポータルから受け取った納品書は、電子帳簿保存法の「電子取引」にあたります。国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトが案内するとおり、取引情報を含む電子データをやり取りした場合は、そのデータの保存方法が法律で定められています。2024年1月以降は、印刷して紙で保存する方法では代えられません。
実務では、取引年月日・金額・取引先で検索できる状態で保存することが要件の中心です。ファイル名を「20261101_株式会社〇〇_11960」のように付けて共有フォルダに置く方法でも対応できます。3区分の要件の詳細は電子帳簿保存法とは?3区分の要件・対象書類を参照してください。
納品書に印紙は原則不要:代済や相済と書き込むと受取書として課税される場合
品目と数量を伝えるだけの納品書は、印紙税の課税文書にあたりません。印紙が問題になるのは、納品と同時に代金を受け取り、その事実を納品書に書き込んだ場合です。
国税庁のNo.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書は、請求書や納品書に「代済」「相済」「了」などと記入して受取事実を証明するものを、第17号文書(受取書)として扱うと説明しています。売上代金の受取書は、5万円未満なら非課税、5万円以上100万円以下で200円、100万円超200万円以下で400円です。代引きや現金集金の現場で、配送担当者が納品書の控えに「代済」と書いて渡す運用は、この条件にそのまま当てはまります。領収の証明が必要なら、納品書ではなく領収書を別に出すと線引きが明確になります。
納品書をExcelで作り続けてよい条件と販売管理システムで発行すべき条件
納品書の作り方は、Excelのテンプレート、会計・請求書ソフト、販売管理システムの3通りに大別できます。判断の基準は発行枚数よりも、納品と請求の対応関係がどれだけ複雑かです。
Excelとテンプレートで足りる条件:1回の納品ごとに請求し発行者が1人の取引
次の条件がそろう会社は、Excelのテンプレートで作り続けて問題ありません。
- 1回の納品ごとに請求が完結し、月まとめの請求が無い
- 納品書を作る担当者が1人で、番号の重複が起きない
- 分納(1つの注文を複数回に分けて納めること)や返品がほとんど無い
この場合、納品書番号の連番管理と、PDFで送った納品書の保存ルールさえ決めておけば、システム化の費用を回収できる場面は少ないと判断します。
販売管理システムで発行すべき条件:分納・返品と月まとめ請求の照合が多い会社
反対に、分納や一部返品が日常的に起き、月末締めで請求をまとめる会社は、Excel運用をやめる時期です。1件の注文に対して納品書が複数枚出て、そのうち一部が返品されると、請求書の金額を手で組み直すことになり、照合の誤りがそのまま請求ミスになります。インボイス制度で納品書と請求書を分担させている場合、番号の取り違えは税務上の記載事項の不備にもつながります。
販売管理システムでは、受注・出荷・納品書・請求書が同じ受注番号でつながるため、納品書番号の採番と請求書への明細の引き継ぎを人の手から外せます。受注から入金消込までの標準的な流れをまとめたのが、販売管理システムの業務フローとは?見積から入金消込までの標準形です。既製品のパッケージでは分納や独自の締め処理に合わない場合は、販売管理システム開発として自社の取引条件に合わせて作る選択肢があります。
納品書とは何かと請求書との違い・発行義務・印鑑に関するよくある質問
納品書について検索されることの多い質問に、本文の内容を踏まえて答えます。
納品書は必ず発行しなければならないのですか?
すべての事業者に納品書の発行を一律で義務づける法律はありません。発行の要否は、取引基本契約や発注書の条件、業界の慣習で決まります。ただし、発注者の多くは納品書・検収書・請求書を照合して支払を承認するため、納品書が無いと支払処理が止まることがあります。継続取引では毎回発行し、省略する場合は契約書や発注書に省略する旨を書いておくと、後の照合で揉めません。
納品書は領収書の代わりになりますか?
納品書は品物を届けた事実を示す書類で、代金を受け取った事実は示さないため、そのままでは領収書の代わりになりません。ただし納品書に「代済」「相済」などと書き込んで代金の受取を証明すると、国税庁No.7105のとおり受取書として扱われ、受取金額が5万円以上なら印紙が必要になります。領収の証明が必要なときは、領収書を別に発行するほうが扱いが明確です。
納品書に印鑑は必要ですか?
納品書への押印を義務づける法律はなく、印鑑が無くても書類としての効力は変わりません。発注者が社内規程で押印済みの納品書を求める場合や、納品書兼受領書として受け取りの印をもらう場合に押印する運用があります。PDFで送る場合は、押印の代わりに送信元のメールアドレスや電子署名で発行元を示す方法が一般的です。
納品書と請求書は同時に送ってもよいですか?
1回の納品ごとに代金を請求する取引なら、同時に送るか、1枚にまとめた納品書兼請求書で問題ありません。月末締めで複数回の納品をまとめて請求する取引では、納品のたびに請求書を出すと締め日の請求書と二重になるため、納品書だけを先に送り、請求書は締め日にまとめて送ります。その際は請求書に納品書番号の明細を載せ、どの納品分の請求かを特定できるようにします。
メールで受け取った納品書は印刷して保存すればよいですか?
メール添付のPDFなど電子データで受け取った納品書は、電子帳簿保存法の電子取引にあたり、2024年1月以降は印刷して紙で保存する方法では代えられません。電子データのまま、取引年月日・金額・取引先で探せる状態で保存します。紙で受け取った納品書は紙のまま保存できますが、スキャンして電子化する場合はスキャナ保存の要件を満たす必要があります。
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