マイナ保険証の顔認証は、カードのICチップに入っている顔画像と、顔認証付きカードリーダーのカメラが撮った顔を照合する仕組みです。照合に通らない患者には4桁の暗証番号か職員の目視確認で対応でき、受付が止まることはありません。この記事では、医療機関の受付側から見た顔認証の仕組みと資格情報の流れ、3つの本人確認の切り替え方、目視確認モードを使うための事前準備、設置と障害時の運用、レセコン・電子カルテへの取り込みで確かめる点を整理しました。受付の連携改修を外部に頼むべき条件も示します。
まとめ:マイナ保険証の顔認証を受付で止めないための準備と運用の結論
顔認証そのものは、カードリーダーとオンライン資格確認等システムの側で完結しています。医療機関が手を入れるのは、通らなかったときの切り替えの手順と、結果を受け取るレセコン側の取り込みです。
先に済ませておくべき準備は2つです。1つは、資格確認端末で目視確認用パスコードを発行し、カードリーダーを再起動して職員用ボタンを出しておくこと。もう1つは、顔認証→暗証番号→目視→代替書類と切り替える順番と回数を受付のルールとして決めておくことです。再来受付機や予約システムまで資格情報をつないでいる施設は、機器の入れ替えで連携が切れやすいため、カードリーダーの更新計画とあわせて連携範囲を見直してください。
マイナ保険証の顔認証が照合するデータとカードリーダー・資格確認端末の役割
受付で患者が操作するのはカードリーダーだけですが、裏では3つの機器とシステムが役割を分けています。
ICチップの顔画像とカメラ映像を照合し撮影データは即時に消す仕組み
顔認証付きカードリーダーは、置かれたマイナンバーカードのICチップから顔画像を読み出し、カメラで撮影した患者の顔と照合します。厚生労働省のマイナ保険証に関するよくある質問(Q25)によると、撮影した顔のデータは照合が終わるとすぐに削除され、カードリーダーにも医療機関にも残りません。
照合の相手はカードの中の画像で、国や医療機関のデータベースに登録された顔ではありません。医療機関が顔の画像を保管・管理する必要はなく、個人情報の管理規程に顔データの項目を足す必要もない、ということです。指紋や静脈など他の方式との違いを含めた技術の全体像は、生体認証とは?指紋・顔認証の仕組みと種類・企業の導入判断で解説しています。
顔認証付きカードリーダーから資格確認端末を経てレセコンへ届く資格情報の流れ
本人確認が通ると、カードリーダーにつながった資格確認端末(パソコン)が、オンライン資格確認等システムに患者の資格を照会します。返ってきた保険者・記号番号などの資格情報と、診療情報や薬剤情報の提供に同意したかどうかの結果が、院内のネットワークを通じてレセコンや電子カルテに渡ります。
つまり、顔認証が担うのは「カードを置いた人がカードの持ち主か」の確認だけです。資格が有効かどうかはその後の照会で決まり、窓口の画面に何が表示されるかはレセコン側の作りで決まります。資格情報がどの項目でレセコンに入り、請求までどう使われるかはレセコンとは?電子カルテとの違い・データ連携と選び方で整理しています。
顔認証・4桁の暗証番号・職員の目視確認という3つの本人確認と切り替えの条件
厚生労働省は、顔認証付きカードリーダーでの本人確認として、顔認証・4桁の暗証番号・職員による目視の3つを認めています(よくある質問のQ27)。受付では、この順番で切り替えるのが基本です。
顔認証が通らない患者に受付で声をかける4つの調整と暗証番号への切り替え
よくある質問のQ31は、顔認証がうまくいかないときの対処として次の4つを挙げています。
- カメラに近づきすぎない
- 前髪を上げる
- マスクを下げるか外す
- 帽子や眼鏡を外す
受付で最も多いのはマスクと前髪です。カードカバーを付けたままでICチップが読めていない例もあるため、声をかける順番に入れておくと手早く済みます。調整しても通らなければ、画面で暗証番号に切り替えるよう案内してください。ここで使うのは利用者証明用電子証明書の4桁の番号で、患者が別の番号と取り違えていないかを確かめると再入力の失敗が減ります。
暗証番号のロックや顔認証マイナンバーカードの患者に使う職員の目視確認
暗証番号を3回続けて間違えるとロックがかかりますが、マイナ保険証としては引き続き使えます。Q32は、ロックされた患者も顔認証か職員の目視確認で本人確認できるとしています。ロックの解除は市区町村の窓口での手続きになり、受付では対応できません。
目視確認が前提になる患者もいます。暗証番号の設定を不要にした「顔認証マイナンバーカード」です。東京都中央区の案内によると、このカードは本人確認を顔認証か目視に限ったもので、健康保険証としては使えますが、マイナポータルやコンビニ交付は使えません。顔認証が通らなければ暗証番号に逃げられないため、目視確認モードを準備していない施設では受付が止まります。
子ども・高齢者・介助が必要な患者を代理人や職員の操作で受け付ける方法
Q29によると、子どもが自分でカードリーダーを操作できない場合は、親などの代理人がカードを置いて暗証番号を入力できます。待合で職員が顔写真と本人を見比べる目視確認も認められています。障害のある患者は、本人が希望すれば家族や介助者、職員が操作を手伝ってかまいません(Q30)。
小児科や高齢者の多い診療所では、代理人の操作と目視確認が日常の手順になります。カードを預かって確認する場合、Q28は本人の了解があれば表面のコピーまでは可能とする一方、裏面のマイナンバーの書き写しやコピーは認めていません。預かる手順と返却の確認を、受付の作業手順書に書いておいてください。
目視確認モードを受付で使うための事前準備とカードリーダーでの立ち上げ
目視確認は、職員がカード券面の写真と患者本人を見比べる方法です。カードリーダーを目視確認モードに切り替えて使いますが、事前に準備をしていないと切り替えのボタン自体が画面に出てきません。
資格確認端末でアカウントごとに4桁の目視確認用パスコードを発行する手順
厚生労働省のリーフレット「顔認証付きカードリーダーの目視確認モードが改善されました」によると、以前は資格確認端末で操作が必要だった目視確認モードを、カードリーダーの操作だけで起動できるようになりました。使う前の準備と受付での流れは次のとおりです。
- 資格確認端末のメニューで「アカウント情報管理」から「目視確認用パスコード発行」を選ぶ
- オンライン資格確認等システムのユーザアカウントごとに、4桁のパスコードが発行される
- 受付では、カードリーダーの画面で職員用ボタンを押し、パスコードを入力する
- 職員がカード券面の写真と本人を目視で照合する
- 患者がカードをカードリーダーに置き、同意の画面へ進む
パスコードはアカウント単位です。受付担当が交代制なら、誰のアカウントで発行したパスコードを誰が使うかを決めておかないと、いざというときに番号を知っている職員がいない状況が起きます。
初回発行後の再起動など目視確認モードで受付が止まる3つのつまずき
同じリーフレットは、医療機関で初めてパスコードを発行した直後は職員用ボタンが表示されず、カードリーダーの再起動が必要だと注意しています。発行しただけで準備が済んだと思い込み、実際に使う場面でボタンが無いと気づく、というのが典型的なつまずきです。
ほかに起きやすいのは、パスコードを発行した職員の退職や異動で番号が分からなくなる例と、目視確認を使う条件が職員ごとにばらつく例です。リーフレットが挙げる使用場面は、顔認証が通らず暗証番号も忘れた・ロックされた場合、認知症や障害で操作が難しい場合、体調が悪く操作できない場合、機器のトラブルの場合です。目視確認は職員の判断で本人確認をする方法なので、この条件を受付のルールに書き写し、なりすましを防ぐ確認の仕方まで揃えておいてください。
顔認証の受付を止めないための設置場所・障害時モード・代替書類の運用
本人確認の手順を決めても、機器やネットワークが止まれば受付は進みません。設置と障害時の切り替えを先に決めておきます。
直射日光を避けた設置と定期的な再起動など顔認証の精度に効く設置条件
カメラで顔を撮る以上、照明の当たり方が照合の成否に響きます。直射日光が当たらない位置に置くと精度が上がるとされ、窓際の受付台や西日の入る玄関付近は避けたい場所です。資格確認端末とカードリーダーは、定期的な再起動も勧められています。
受付台の高さも見直しの対象になります。車いすの患者や子どもの顔がカメラの範囲に入らない高さだと、毎回職員が介助することになるためです。スマホのマイナ保険証に対応する場合は汎用カードリーダーや第2世代機の置き場所も要るので、配置はマイナ保険証のスマホ対応で医療機関がそろえる機器と受付手順とあわせて決めると、受付台の組み直しが1回で済みます。
システム障害時モード・災害時モードと資格確認できない患者の代替書類
厚生労働省のオンライン資格確認の案内ページ(医療機関・システムベンダ向け)は、目視確認モードと並べてシステム障害時モードの立ち上げ方法を示しています。大規模な災害のときは災害時モードに切り替わり、患者がカードを持っていなくても、氏名・生年月日・性別・住所などで資格情報を閲覧できます。
それでも資格を確認できない場合の扱いを示しているのはQ33です。マイナポータルの画面(ダウンロードしたPDFでも可)か資格情報のお知らせを見せてもらえば、通常の自己負担で受け付けられます。どちらもない場合、再診は医療機関が把握している情報で職員が口頭で確認し、初診は被保険者資格申立書に記入してもらいます。何回失敗したらこの代替手順に移るかを決めておくと、待ち時間が延びません。
レセコン・電子カルテとの連携で顔認証の受付結果を取り込む範囲の決め方
顔認証の受付が終わったあと、資格情報と同意の結果をどこまで自動で取り込むかは、レセコンや電子カルテの製品ごとに違います。受付画面の作りはメーカーの設計に任されているため、各メーカーに確かめるしかありません。
資格情報と同意結果の取り込み方をレセコンメーカーに確かめる4つの項目
導入時や機器の入れ替え時に、レセコンと電子カルテのメーカーへ次の点を確かめます。
- カードリーダーで本人確認した患者の資格情報が、受付画面に自動で表示されるか、職員が取り込みの操作をするのか
- 診療情報・薬剤情報の提供に同意したかどうかが、電子カルテの患者画面で見えるか
- 目視確認や暗証番号で受け付けた場合も、顔認証のときと同じ画面・同じ項目で取り込まれるか
- 資格が無効と返ってきた患者を、受付画面でどう知らせるか
4つ目は請求の差し戻しに直結します。資格の無効が受付の時点で分かれば、その場で資格確認書や保険者の確認を頼めるからです。マイナ保険証の利用実績は診療報酬の加算の要件にも関わるため、診療報酬改定2026の施行日とレセコン改修の段取りもあわせて確認しておくと、受付の整備と加算の届出を同じ計画に載せられます。
再来受付機・自動精算機・予約システムと顔認証付きカードリーダーの連携
病院や患者数の多いクリニックでは、資格確認端末の先に再来受付機や自動精算機、予約システムがつながっていることがあります。顔認証での受付を起点に、受付番号の発券や来院済みの表示まで自動で進める構成です。
この構成では、カードリーダーや資格確認端末を入れ替えるたびに連携の設定を見直すことになります。厚生労働省の案内によると、次期の顔認証付きカードリーダーは2026年4月から順次発売されています。保守期限を迎えた第1世代機を入れ替える時期が、連携の設定を見直す機会です。電子処方箋でも同じ資格確認端末を使うため、電子処方箋の仕組みと導入手順・電子カルテ改修の判断の計画と時期を揃えると、つなぎ直しが1回で済みます。
顔認証の受付まわりの改修を外部の開発会社に任せるべき医療機関の条件
受付がカードリーダー1台・資格確認端末1台・レセコンだけの診療所なら、外部の開発会社は要りません。目視確認用パスコードの発行と受付ルールの整備は院内で済み、取り込みの不具合はレセコンのメーカーが対応します。
外部に相談したほうがよいのは、次のどれかに当てはまる施設です。再来受付機や自動精算機、予約システムを独自に組み合わせて顔認証の受付と連動させている病院。複数の分院や診療科で受付の仕組みを共通化している医療法人。資格確認の結果を自院の患者ポータルや問診システムに流している施設。こうした構成は、メーカーごとの保守範囲の境目で不具合が起き、どこに問い合わせても「自社の範囲ではない」と返されがちです。
逆に、顔認証の通りが悪いという理由だけで受付の仕組みを作り替えるのは見送ってください。原因の多くは設置場所や患者への声かけで、改修では解決しません。一創の医療機関向けシステム開発では、レセコン・電子カルテと受付の周辺機器、予約システムとのつなぎ込みを、既存の製品を生かしたまま設計・改修しています。カードリーダーの更新に合わせて連携の見直しが要るかどうかの確認から相談できます。
よくある質問
マイナ保険証の顔認証について、医療機関の受付担当や事務長からよく挙がる質問を5つ取り上げます。
マイナ保険証の顔認証で撮影した顔写真は医療機関に保存されますか?
保存されません。厚生労働省のよくある質問(Q25)によると、顔認証付きカードリーダーは照合のために顔を撮影しますが、カードのICチップ内の顔画像と照合した後、撮影したデータはすぐに削除されます。医療機関が顔のデータを保管する仕組みにはなっていないため、患者から写真が残るのかと聞かれた場合は、この点を伝えれば足ります。照合の相手もカードの中の画像で、外部のデータベースではありません。
顔認証が何度やってもできない患者はどう受け付ければよいですか?
まずカメラに近づきすぎていないか、前髪・マスク・帽子・眼鏡が顔を隠していないかを確かめてもらいます。それでも通らなければ、画面で4桁の暗証番号による本人確認に切り替えてください。暗証番号も分からない場合は、職員がカード券面の写真と本人を見比べる目視確認モードを使います。いずれも難しいときは、マイナポータルの画面か資格情報のお知らせを提示してもらえば、通常の自己負担で受け付けられます。
暗証番号がロックされた患者もマイナ保険証で受け付けられますか?
受け付けられます。暗証番号は3回続けて間違えるとロックされますが、厚生労働省のよくある質問(Q32)では、ロックされていても顔認証か職員の目視確認で本人確認ができるとしています。受付ではそのまま顔認証を試してもらい、通らなければ目視確認モードに切り替えてください。ロックの解除は市区町村の窓口での手続きになるため、受付では解除の方法を案内するだけにとどめます。
顔認証マイナンバーカードを持つ患者は受付でどう扱えばよいですか?
通常のマイナ保険証と同じく、顔認証付きカードリーダーで受け付けます。違いは暗証番号が設定されていない点で、顔認証が通らない場合は暗証番号に切り替えられず、職員の目視確認で本人確認をすることになります。このため、目視確認用パスコードを発行して職員用ボタンが出る状態にしておくことが、受付に必要な事前準備です。準備していない施設では、この患者の受付だけが止まります。
子どもの受診で本人が顔認証できないときはどうすればよいですか?
親などの代理人がカードをカードリーダーに置き、子どものカードの暗証番号を入力して本人確認をする方法があります。暗証番号が分からない場合は、待合などで職員が顔写真と本人を見比べる目視確認も認められています(厚生労働省のよくある質問Q29)。小児科では日常的に起きる場面なので、代理人の操作と目視確認の手順を受付の手順書に入れておくと、職員ごとの対応の差がなくなります。
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