薬局のDX加算と呼ばれてきた医療DX推進体制整備加算は、令和8年度調剤報酬改定で電子的調剤情報連携体制整備加算に名前を変え、2026年6月1日から区分のない月1回8点になりました。旧加算1〜3の10点・8点・6点と、2025年10月に引き上げられたマイナ保険証利用率の基準もあわせて振り返ります。そのうえで、施設基準をレセコン・オンライン資格確認端末・電子薬歴・電子処方箋のどれで満たすのかに分けて整理しました。最後に、算定に向けた改修で足りる薬局と、システムの入替を前倒しすべき薬局の線引きを示します。数値と取扱いは厚生労働省の告示・留意事項通知・疑義解釈(2026年9月25日のその13まで)で確認しています。
まとめ:薬局のDX加算で2026年6月以降に確かめる点数と体制の要点
- 2026年6月から名称は電子的調剤情報連携体制整備加算です。区分はなくなり、患者1人につき月1回8点を調剤基本料に加算します。
- 2026年5月31日時点で旧加算を届け出ていた薬局は、改めての届出が要りません。医科・歯科は届出のやり直しが必要なので、扱いが逆です。
- 今回の改定で、電子処方箋管理サービスの重複投薬等チェックを行う体制が施設基準に加わりました。求められる機能は2023年1月26日に稼働した基本機能で足ります。
- マイナ保険証利用率は算定月の3月前の値で30%以上が条件です。満たさない月は算定できないため、レセコンが加算を自動で付け続けない運用が要ります。
- 電子処方箋の運用開始と電子薬歴の導入が済んでいる薬局は、設定と掲示の見直しで足ります。紙の薬歴が残る薬局は、加算を理由にレセコンと電子薬歴の更新時期を前倒しする価値があります。
薬局のDX加算が医療DX推進体制整備加算から8点の一本へ変わった経緯
検索で「DX加算 薬局 10月から」と調べる人と「2026年」と調べる人では、見ている制度の時点が違います。まず旧加算の最終形と、2026年6月の変更点を時系列で並べます。
改定直前まで続いた旧加算1〜3の10点・8点・6点と利用率の基準
旧・医療DX推進体制整備加算は2024年度改定で新設され、その後マイナ保険証利用率の実績で3区分に分かれました。令和8年度改定の個別改定項目の現行欄によると、改定直前の調剤の点数は加算1が10点、加算2が8点、加算3が6点です。
2025年10月に変わったのは点数ではなく、区分を決める利用率の基準でした。厚生労働省の医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)は、従来の健康保険証の経過措置が2025年12月1日までに終わることを踏まえ、基準を2段階で引き上げています。
| 適用期間 | 加算1 | 加算2 | 加算3 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月〜9月 | 45% | 30% | 15% |
| 2025年10月〜2026年2月 | 60% | 40% | 25% |
| 2026年3月〜5月 | 70% | 50% | 30% |
利用率が横ばいの薬局は、2025年10月の時点で1段下の区分に落ちる計算でした。2026年3月の再引上げで加算3の下限も30%になり、これが新加算の基準へそのまま引き継がれました。
2026年6月からは区分を廃して月1回8点・届出のやり直しは不要
調剤点数表の告示は、調剤基本料の注14で「電子的調剤情報連携体制整備加算として、月1回に限り、8点を所定点数に加算する」と定めています。年1回1点の医療情報取得加算は、同じ改定で廃止されました。
届出の扱いは医科と逆です。疑義解釈その1(令和8年3月23日)は、2026年5月31日時点で旧加算を届け出ていた保険薬局が新加算を算定するのに、改めて届け出る必要は「不要である」と答えました。診療所や病院が同じ時期に届出をやり直している点は、医科の電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準と届出の記事で扱っています。
旧加算1の薬局は2点減・旧加算3の薬局は2点増になる損益の見方
一本化で、どの薬局も8点にそろいました。旧加算1を取っていた薬局は1人あたり2点の減、旧加算3だった薬局は2点の増です。
1点10円で計算すると、月の処方箋受付患者が実人数で1,500人の薬局なら、8点で月12万円です。旧加算1の10点なら15万円だったので、差は月3万円、年36万円になります。逆に利用率が伸び悩み加算3にとどまっていた薬局は、30%を維持できれば年36万円の増収です。利用率を上げる投資の回収期間を見積もるときは、この差額を基準にしてください。
電子的調剤情報連携体制整備加算の施設基準を薬局のシステムごとに分けた対応表
施設基準は、告示の大枠と特掲診療料の施設基準等の通知の第95の2で決まります。項目の多くは、薬局のどのシステムが担当するかで整理すると抜け漏れが見えます。
通知の施設基準とレセコン・オン資端末・電子薬歴の担当範囲の一覧
主な要件を、担当するシステムと届出前に確かめる作業に置き換えると次のようになります。
| 要件 | 担当 | 確かめる作業 |
|---|---|---|
| オンライン請求 | レセコン | 請求方法の設定 |
| オンライン資格確認 | オン資端末 | ポータルの運用開始日 |
| 取得した薬剤情報の閲覧 | オン資端末 | 投薬台からの閲覧導線 |
| 電子処方箋の受付と登録 | レセコン | 調剤結果の登録状況 |
| 重複投薬等チェック | レセコン | 紙処方箋でのチェック |
| 電子的な調剤録と薬歴 | 電子薬歴 | 紙保管の範囲 |
| 電子カルテ情報共有 | 当面みなし | 全国運用の時期 |
| 利用率30%以上 | レセコン集計 | 3月前の実績値 |
| 院内掲示とWeb掲載 | 自局サイト | 3事項の掲載 |
| サイバー対策 | 全システム | チェックリスト |
| マイナポータルの相談 | 運用 | 相談体制の整備 |
表のうちレセコンが担う行が4つあります。レセコンの更新時期と電子処方箋の対応範囲を先に確かめておけば、残りは端末の設定と局内の運用で片づく薬局がほとんどです。施設基準8項目を届出様式の順に1項目ずつ確かめる手順は、DX加算の薬局の要件チェックリストにまとめています。
今回の改定で追加された電子処方箋による重複投薬等チェックの体制
個別改定項目は、旧加算の「電子処方箋を受け付ける体制」と「調剤した薬剤の情報を登録する体制」に、有効成分の重複などの不適切な組合せを電磁的記録に基づいて確かめる体制を加えました。紙の処方箋で受け付けた場合も含め、調剤結果は原則として全件を速やかに電子処方箋管理サービスへ登録します。
機能の水準については、疑義解釈その7(令和8年5月29日)が、2023年1月26日に稼働した基本機能(発行・応需、処方・調剤情報の閲覧、重複投与・併用禁忌のチェック)に対応した電子処方箋を受け付けられる体制で足りると答えています。その6の同じ問の文言を訂正した版なので、社内資料はその7で引用してください。電子処方箋そのものの流れは電子処方箋の仕組みと導入手順の記事にまとめています。
マイナ保険証利用率30%の判定月と電子カルテ情報共有サービスのみなし
令和8年度改定の概要【調剤】は、算定する月の3月前のレセプト件数ベースの利用率が30%以上であることを条件に挙げています。通知では、その前月か前々月の値に置き換えることも認められています。6月に算定するなら、原則は3月の実績です。
電子カルテ情報共有サービスを使う体制は、当面の間は満たしているものとみなされます。ただし国が全国で運用を始めたら、速やかに導入するよう努めることが条件です。受付で利用率を上げる工夫は、マイナ保険証の顔認証と受付運用の記事で扱っています。
院内掲示とウェブサイト掲載の3事項とサイバー対策の体制づくり
掲示する事項は3つです。オンライン資格確認で得た情報を使って調剤を行うこと、マイナ保険証の利用促進を通じて質の高い医療を提供すること、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの導入に取り組むことの3点を、薬局内の見やすい場所に掲げます。自局のウェブサイトがあれば同じ内容を載せます。ホームページを持たない薬局は対象外です。
サイバー対策は、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインと薬局向けのチェックリストに沿った体制が求められます。規程類の整え方は安全管理ガイドライン第7.0版の読み方の記事が参考になります。
算定に向けた薬局システム整備の判断|改修で足りる条件と入替が要る条件
8点のために何を買い、何を直すかは、薬局の現状で答えが分かれます。ここでは判断を言い切ります。
電子処方箋の運用開始済みならレセコンの設定確認だけで足りる理由
電子処方箋の運用開始日を登録済みで、紙の処方箋分も含めて調剤結果を登録している薬局は、新たな投資は要りません。重複投薬等チェックは基本機能に含まれるため、レセコン側でチェック結果を確認する画面が使える状態かを見れば済みます。
旧加算を届け出ていた薬局は届出も不要なので、作業は掲示文の名称を新加算に直すことと、利用率の集計方法を3月前基準に合わせることの2つです。ここに追加の開発費をかける理由はありません。
電子薬歴が紙のまま・重複チェック非対応ならレセコン更新を前倒し
紙の薬歴が残っている薬局や、重複投薬等チェックの結果をレセコン上で扱えない古い製品を使っている薬局は、部分改修より更新の前倒しを選びます。電子的な調剤録と薬歴、電子処方箋の登録、チェック結果の表示が同じ製品系統で連動していないと、運用の手間が毎月の受付件数に比例して増えるためです。
更新を5年リース満了まで待つと、その間の8点は取れません。受付患者1,500人の薬局なら月12万円、1年で144万円の機会損失です。製品選びの比較軸は調剤薬局のレセコン選びと電子薬歴一体型の判断の記事で整理しています。
利用率が30%を割った月に加算を自動で付け続けない請求側の作り
利用率の要件は満たしていれば足り、月ごとの届出はありません。裏返すと、30%を割った月に算定すれば、届出が生きたままでも請求として誤りになります。レセコンが加算を自動で付け続ける設定のままだと、返還の対象が月単位で積み上がります。
対策は2つあれば十分です。月初に3月前・前月・前々月の利用率を並べて表示し、算定可否を薬局長が判断すること。そして算定しない月はレセコンの自動算定を止める手順を決めておくことです。
受託開発を選ぶのは複数店舗の利用率集計や掲示更新を自動化する場合
1店舗の薬局がこの加算のために独自のシステムを開発するのは過剰です。レセコンと電子薬歴の標準機能で要件は満たせます。加算に限らない薬局DX全体の進め方は薬局DXとは何かと進め方を解説した記事にまとめています。
受託開発が見合うのは、10店舗を超えるグループで各店の利用率を毎月集計し、算定可否を本部で一括判定したい場合です。各店のサイトに載せる掲示事項を名称変更のたびに一斉更新したい場合や、レセコンの異なる店舗が混在して集計の形式がそろわない場合も該当します。こうした店舗横断の集計や連携の作り込みは、医療機関向けシステム開発として要件の整理からご相談いただけます。
よくある質問|薬局のDX加算の点数・算定時期・届出に関する5問
薬局のDX加算について、検索でよく調べられている質問に答えます。
薬局のDX加算は今いくら算定できますか?
2026年6月1日からは電子的調剤情報連携体制整備加算として、患者1人につき月1回8点です。区分はありません。同じ月に2回以上調剤しても算定は1回に限られます。改定前の旧・医療DX推進体制整備加算は、加算1が10点、加算2が8点、加算3が6点でした。点数は1点10円で計算するため、8点は患者負担割合を掛ける前で80円にあたります。
DX加算は2025年10月から何が変わったのですか?
点数は変わらず、区分を分けるマイナ保険証利用率の基準が上がりました。2025年10月から2026年2月までは加算1が60%、加算2が40%、加算3が25%です。2026年3月から5月までは70%・50%・30%に再度引き上げられました。従来の健康保険証の経過措置が2025年12月1日までに終わることを踏まえた見直しです。
旧加算を届け出ていた薬局は新しい届出が必要ですか?
不要です。疑義解釈その1は、2026年5月31日時点で旧加算を届け出ていた保険薬局は、新加算の算定にあたって改めて届け出る必要はないと答えています。概要資料でも、名称が変わったが現に算定していた薬局については、新たな届出が要らない項目としての記載です。ただし院内掲示とウェブサイトの名称は新加算に直しておく必要があります。
特別調剤基本料の薬局でもDX加算を算定できますか?
特別調剤基本料Bを算定している薬局は算定できません。調剤点数表の留意事項通知の電子的調剤情報連携体制整備加算の項に、そのとおり書かれています。特別調剤基本料Aの薬局はこの除外に含まれていないため、施設基準を満たして届け出れば算定の対象になります。
新規開設の薬局が届け出る様式はどこで手に入りますか?
新たに届け出る場合に使う書類は、様式87の3の6です。様式は施設基準の通知の別添として厚生労働省の令和8年度診療報酬改定ページに掲載され、各地方厚生局のサイトからも取得できます。同じページに疑義解釈の最新版がまとまっており、2026年9月25日のその13まで公表されています。
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