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電子処方箋とは?仕組みと流れ、導入手順・補助金と電子カルテ改修の判断【2026年】

RPA開発

電子処方箋とは、医師が出した処方箋を紙ではなく電子データで薬局へ渡し、あわせて他の医療機関や薬局で直近に処方・調剤された薬の情報を参照できる仕組みです。2023年1月26日に運用が始まり、2026年夏には薬局の9割超が対応しました。一方で、医療機関の導入はまだ少数にとどまります。本記事では、処方から調剤までの流れ、電子カルテやレセコンのどこに改修が入るのか、電子署名の2つの方式、見積から運用開始までの手順、補助金と診療報酬の現状を、厚生労働省の資料をもとに整理しました。加算の施設基準の細部は電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準と届出の記事で扱っています。

まとめ:電子処方箋の仕組みと医療機関・薬局が導入前に押さえる5つの要点

  • 電子処方箋は、オンライン資格確認等システムを基盤にした「電子処方箋管理サービス」を介して、処方と調剤の情報をやり取りする仕組みです。紙の処方箋を出した場合でも、処方データは同サービスに登録されます。
  • 薬局の導入率は2026年7月5日時点で90.6%です。受け手の準備は整っており、残る課題は医療機関側の導入にあります。
  • 医療機関で改修が必ず入るのは電子カルテです。医事会計システムは運用次第で、リモート署名を選ぶとネットワーク機器の設定も加わります。
  • 医療情報化支援基金の補助は、2026年9月までの導入分が対象です。10月以降の導入分の扱いは、2026年10月5日時点で厚生労働省のページに示されていません。
  • 電子処方箋対応の電子カルテを使っているなら、残る作業は医師ごとの電子署名の申請と利用申請だけです。電子カルテの更新が近い医療機関は、更新と一体で選ぶほうが総額を抑えられます。

電子処方箋管理サービスを介して処方から調剤までが進む8つのステップの流れ

最初に、誰がどの画面で何をするのかを押さえます。流れが分かれば、どのシステムに手が入るのかも見えてきます。

医療機関での同意・処方登録から薬局での取得・調剤結果登録まで8段階の手順

令和8年度電子処方箋オンライン説明会の資料(2026年7月14日開催)は、運用を8つのステップで示しています。

  1. 患者がマイナ保険証で受付し、顔認証付きカードリーダーで過去の薬剤情報の提供に同意して、電子処方箋を選ぶ
  2. 医師が他院・薬局での処方・調剤情報と重複投薬等チェックの結果を参照する
  3. 医師が電子署名をして、処方箋を電子処方箋管理サービスに登録する
  4. 患者はマイナポータルや電子版お薬手帳アプリで処方内容を確認できる
  5. 薬局で患者がマイナ保険証か資格確認書で本人確認・同意をする
  6. 薬剤師が処方箋を電子処方箋管理サービスから取得する
  7. 薬剤師が処方・調剤情報と重複投薬等チェックの結果を参照する
  8. 薬剤師が電子署名をして、調剤内容を電子処方箋管理サービスに登録する

患者の手元には、引換番号が印字された処方内容の控えが渡されるのが基本です。マイナポータル等で引換番号を見られる患者には、控えを交付しない運用も認められています。資格確認書で受診した患者にも電子処方箋は発行できるため、マイナ保険証を持たない患者が来ても、受付で発行方法を選び直すだけで済みます。

紙の処方箋を出した場合でも重複投薬等チェックと情報登録が動く仕組み

見落とされやすいのが、電子処方箋に対応した医療機関では、紙で処方箋を出しても処方データが電子処方箋管理サービスに登録される点です。医療機関向け電子処方箋導入スターターキット(第1.2版)によると、処方内容を入力した時点でシステムが自動で重複投薬等チェックを行い、受付方法や処方箋の形式に左右されません。

チェックの規模も大きくなりました。同キットは、2025年の実績として重複投薬のアラートが9,901万件、併用禁忌のアラートが14.4万件発生したと示しています。取得した処方・調剤情報はXML形式で電子カルテに取り込めるため、患者ごとの処方歴を電子カルテの画面上で並べて確認する作りにもできます。

リフィル処方箋・院内処方・調剤済み処方箋の保存など段階的に増えた機能

基本機能の稼働後も、機能は段階的に足されてきました。主なものを時期順に並べます。

機能 開始時期 中身
リフィル処方箋 2023年12月 前回調剤日などを自動付加
医療扶助への対応 2024年4月 生活保護受給者にも発行可
調剤済み処方箋の保存 2024年7月 薬局向け・5年保存
院内処方等情報の登録 2025年1月23日 院内の投薬も登録

リフィル処方箋のファイル形式の資料によると、2回目以降の調剤では、電子処方箋管理サービスが前回の調剤日や疑義照会の内容、前回の薬局名をファイルに付けて渡します。調剤済み処方箋の保存サービスは希望制で、利用料は年2,500円です。院内処方機能の概要案内(1.4版・2026年10月)は、2026年4月1日の改訂で本格運用の開始を反映し、10月の改訂では支払基金の改組に合わせて表記をDX審査支払機構に改めました。院内処方の情報を登録する際、電子署名は要りません。

薬局90.6%と医療機関1割程度という導入率の差と国が示した新しい導入目標

電子処方箋は、受け手と出し手で普及の速度が大きく違います。この差が、医療機関側の判断材料になります。

薬局の導入率9割超と調剤結果登録割合94.3%に達した2026年夏の到達点

説明会資料によると、オンライン資格確認を導入した薬局のうち電子処方箋の運用を始めた割合は、2026年7月5日時点で90.6%、準備中を含めると93.1%です。調剤結果の登録割合は2026年6月の推計値で94.3%に達しました。都道府県別や施設種別の最新値はデジタル庁の電子処方箋ダッシュボードで確認できます。

厚生労働省の2026年7月23日付の通知は、薬局に対して、紙の処方箋から入力した分も含め、調剤ごとに原則1回以上の重複投薬等チェックを行うよう求めました。薬局側はすでに「使う前提」の段階にあります。

電子カルテを更新する時期に情報共有サービスと一体で導入を促す国の方針

医療機関の導入は、2025年7月時点で1割程度にとどまっていました。これを受けて国は目標を組み替え、電子カルテを整備するすべての医療機関への導入を掲げています。電子カルテを導入済みの医療機関には、5〜7年の更新周期に合わせて電子カルテ情報共有サービスへの対応と一体で導入を促し、未導入の医療機関には、電子処方箋の機能を持つ標準型電子カルテか、共有サービスに対応したクラウド型電子カルテとの一体導入を促す方針です。

背景には、地域医療介護総合確保法第12条の3第4項が定める「令和12年12月31日までに電子カルテの普及率を約100%」という政府目標があります。電子処方箋は単独の施策ではなく、電子カルテ更新の計画に組み込む前提で語られるようになりました。

電子処方箋の導入で改修が入る電子カルテ・医事会計システムと署名環境の範囲

ここからは、医療機関のシステム担当者や院長が見積の前に知っておきたい範囲です。改修の中心は電子カルテですが、署名方式の選び方で周辺の費目が変わります。

電子カルテの機能追加は必須で医事会計システムは運用により追加となる費目

説明会資料の費目表では、電子カルテへの機能追加費用と保守費用が必須、医事会計システムへの機能追加は現場の運用により必要、という区分です。ハードウェアは、署名用のICカードリーダーが処方箋を発行する端末の台数分必要になることが多いとされています。

費目 ローカル署名 リモート署名
電子カルテの機能追加・保守 必須 必須
医事会計システムの機能追加 条件による 条件による
ICカードリーダー 必須 条件による
スマートフォン 発生しない 条件による
署名サービスと通信する機器 発生しない 条件による
ネットワーク機器・設定 発生しない 必須

見積書を受け取ったら、この表の行ごとに金額が入っているかを照らし合わせると、抜けや二重計上に気づけます。病院では処方を扱う部門システムやオーダリングも改修対象に入るため、診療所の見積とは桁が変わります。

HPKIカードを都度かざすローカル署名と1日1回認証のリモート署名の違い

電子処方箋の発行には医師の電子署名が要ります。方式は2つです。ローカル署名は、署名のたびにHPKIカード(医師資格を証明するICカード)をカードリーダーにかざし、PINを入れます。リモート署名は、1日1回本人であることを認証すれば、その有効期間中はクラウド上のシステムが自動で署名を付ける仕組みです。認証にはHPKIカードのほか、HPKIの電子署名と紐づけたマイナンバーカードやスマートフォンも使えます。

リモート署名は端末ごとのカードリーダーが要らない反面、クライアント証明書の申請と年会費がかかります。申請先は医師なら日本医師会電子認証センターかMEDIS(医療情報システム開発センター)、またはマイナポータルです。診察室が1〜2室で医師が固定している診療所はローカル署名で足り、複数の端末を医師が移動しながら使う病院ではリモート署名の運用負荷の低さが効いてきます。

医薬品マスタのダミーコード事故と2026年1月の接続停止措置が示す点検の要点

導入時に最も事故につながりやすいのは、署名ではなく医薬品マスタの設定です。一部の医療機関・薬局で、薬局側のシステムに医師の処方と異なる医薬品名が表示される事例が起き、主な原因はダミーコードでした。電子処方箋管理サービスは2025年8月28日にダミーコードを登録できない改修を行っています。

2025年12月17日付の通知は、2026年1月8日17時までに点検報告を済ませていない医療機関・薬局を対象に、1月11日をめどに関連サービスの接続を止める措置を示しました。これから導入する医療機関も、マスタ設定が適切かをシステム事業者と確認し、点検報告とあわせて利用申請を出すよう求められています。設定できる担当者を限り、ダブルチェックと定期確認を運用に組み込むことが、通知の挙げる防止策です。

見積依頼から運用開始日の入力まで4ステップで進める電子処方箋の導入手順

厚生労働省は導入作業を4つのステップに分けています。スターターキットは、導入は1か月以内に完了するケースが多いとしつつ、早めの準備を勧めています。

システム事業者への見積依頼と医師ごとの電子署名申請を並行させる段取り

  1. 使っている電子カルテのシステム事業者に電子処方箋の見積を依頼し、発注する
  2. 医師ごとにHPKIカードか電子署名を申請し、必要ならカードリーダーを買う
  3. 医療機関等向け総合ポータルサイトで電子処方箋の利用申請をする
  4. ポータルサイトで運用開始日を入力する

1と2は並行して進める手順です。HPKIカードの発行には日数がかかるため、見積の段階で申請を出しておかないと、システムの準備が終わってもカード待ちで発行できない期間が生まれます。運用開始日を入力すると、電子処方箋対応施設として厚生労働省のサイトに掲載されます。

紙の処方箋のまま閲覧とチェックから始めて電子発行へ移る段階的な切り替え

説明会資料は、いきなり全員に電子処方箋を出すのではなく、段階的に移る方法を示しています。まず紙の処方箋だけを出しながら、他院の処方情報の閲覧と重複投薬等チェックを使い、職員が操作に慣れたところで、患者が電子と紙を選べる運用へ移るやり方です。

受付で発行方法を確認する声かけ、待合の掲示、薬局への引換番号の伝え方は、この段階で整えます。後払いサービスと組み合わせて会計待ちをなくした診療所の事例もスターターキットに載っており、受付から会計までの導線を見直す機会にもなります。

医療情報化支援基金の補助上限と2026年9月の導入期限・診療報酬で回収する見通し

費用面は、補助金・税制・診療報酬の3つで見ます。補助金は期限の問題があるため、最初に確認してください。

補助上限は診療所35.9万円・病院169.6万円で9月までの導入が対象という現状

令和8年度の医療情報化支援基金の資料によると、補助上限は次のとおりです。

区分 院外処方のみ 院内処方も同時 補助率
大規模病院 200.7万円 247.7万円 1/3
病院 135.3万円 169.6万円 1/3
診療所 27.1万円 35.9万円 1/2
薬局 27.7万円 30.2万円 1/2

対象は電子カルテやレセコンの改修費、カードリーダーの導入費、設定・テスト・立会いの作業費で、HPKIカードの取得費用は含みません。説明会資料は、補助対象を2026年9月までの導入分とし、10月以降の扱いは電子カルテと共有サービスの普及計画を踏まえて改めて検討するとしていました。薬局は9月までが最後の延長と明記されています。院内処方機能の概要案内では、補助の申請期限を2027年1月15日と案内しています。9月までに運用を始めた医療機関は、申請漏れがないかをいま確認してください。電子処方箋以外の電子カルテ導入に使える制度はデジタル化・AI導入補助金で電子カルテを入れる場合の記事にまとめています。

電子的診療情報連携体制整備加算など3つの加算と税制で導入費を回収する試算

令和8年度診療報酬改定で、電子処方箋は加算の要件に組み込まれました。外来初診時の電子的診療情報連携体制整備加算は4点・9点・15点の3段階で、電子処方箋の体制は加算2以上の条件のひとつです。オンライン診療で電子処方箋を発行した場合の加算(10点)と、救急外来で救急時医療情報閲覧機能などを使って診療情報を取得した場合の救急時医療情報取得加算(50点)も新設されました。改定全体の時系列は診療報酬改定2026の全体像とレセコン改修の記事で確認できます。

スターターキットの試算では、初診が月140人の医科診療所で導入費50万円のうち25万円が補助され、実質25万円です。加算区分が上がることによる増収は最大で月0.7万〜0.84万円、運用費は月0.1万円とされています。運用費を差し引いて単純計算すると、実質負担25万円は3年から3年半ほどで回収できる水準です。加算の届出には常勤医師2名以上が発行できる体制などの条件があり、細部は施設基準11項目を担当システムに置き換えた記事で整理しています。税制では、中小企業投資促進税制(税額控除7%か特別償却30%)なども使えます。

電子処方箋を今導入すべき医療機関と電子カルテの更新まで待つべき医療機関の判断

結論から言うと、電子カルテがすでに電子処方箋に対応しているかどうかで判断が分かれます。補助の対象期間(2026年9月までの導入)が過ぎた今、急いで単独導入する理由は、加算と医療安全の2つに絞られました。

電子処方箋対応の電子カルテを使う診療所は署名申請だけで先に進めてよい場面

使っている電子カルテが電子処方箋の機能をすでに持っていて、残る作業がHPKIの申請・利用申請・運用開始日の入力だけなら、迷わず進めてよい場面です。追加費用はカードリーダーと設定作業程度で、加算3から加算2への区分の引き上げで回収できます。薬局の9割超が受け手として待っているため、患者側の不便も起きにくくなりました。

反対に、処方の大半が院内処方で、院外処方箋をほとんど出さない診療所は、院外処方機能を急ぐ必要はありません。院内処方等情報の登録には電子署名が要らないため、HPKIの申請を後回しにして、院内処方機能だけを入れる選択も取れます。

電子カルテ未導入や更新が2年以内の医療機関は標準型やクラウド型と一体で選ぶ判断

電子カルテが電子処方箋に未対応で、更新まで2年以内なら、今の電子カルテを改修するより更新時に一体で入れるほうが総額は下がります。国の方針も、更新周期に合わせて電子カルテ情報共有サービスと一体で導入する形を想定しています。次の製品選定では、電子処方箋と共有サービスへの対応を必須条件に入れてください。比較軸は電子カルテの種類と比較軸を整理した記事で確認できます。

一方、更新まで3年以上ある病院で、オーダリングや部門システムが複数ベンダーにまたがっている場合は、電子カルテ側の改修だけでは処方データの流れが閉じません。院内処方等情報をどのシステムから登録するか、マスタをどこで一元管理するかを先に決めておく必要があります。院内システムの連携設計や電子カルテ更新に合わせた接続の作り込みは、医療機関向けシステム開発として構成の整理からご相談いただけます。

よくある質問|電子処方箋の使い方・薬局での流れ・補助金と義務化の5問

患者側の使い方から、医療機関・薬局の導入判断まで、よく寄せられる質問に厚生労働省の資料に沿って答えます。

電子処方箋の導入は医療機関や薬局に義務づけられていますか?

2026年10月時点で、医療機関に電子処方箋の発行を義務づける規定はありません。ただし国は、電子カルテを整備するすべての医療機関への導入を目標に掲げ、診療報酬の加算と補助金で導入を後押ししています。薬局については、導入した薬局に調剤結果の速やかな登録と重複投薬等チェックの実施を求める通知が出ています。

患者が電子処方箋を使うときは何を持って行けばよいですか?

マイナ保険証を持って受診し、受付の顔認証付きカードリーダーで電子処方箋を選べば発行されます。資格確認書でも受診時に口頭で希望を伝えれば発行が可能です。薬局ではマイナ保険証か、引換番号と資格確認書で処方箋を受け取れます。引換番号はマイナポータルや電子版お薬手帳アプリでも確認できるため、控えを失くしても困りません。

薬局では電子処方箋をどのような流れで受け付けて調剤しますか?

患者の本人確認と同意を受けたあと、薬剤師が電子処方箋管理サービスから処方箋を取得し、他院の処方・調剤情報と重複投薬等チェックの結果を確認して調剤します。調剤後は薬剤師の電子署名を付けて調剤結果を登録する流れです。紙の処方箋を受けた場合も調剤結果の登録が求められます。薬局側のシステム選びは調剤薬局のレセコン選び方の記事で扱っています。

HPKIカードが届く前でも電子処方箋の運用を始められますか?

閲覧と重複投薬等チェックは、カードが届く前から利用が可能です。電子処方箋を発行できない間は、引換番号付きの紙の処方箋を出します。加算の届出では、疑義解釈その8が、システム導入と利用申請を済ませてカードの取得を待っている場合は当面の間に限り要件を満たすとしています。カードを受け取ったら速やかに発行へ移ることが条件です。

2026年10月以降に導入しても電子処方箋の補助金は受けられますか?

2026年10月5日時点で、10月以降に導入した医療機関向けの補助の内容は厚生労働省の電子処方箋ページに示されていません。国は電子カルテと共有サービスの普及計画を踏まえて扱いを検討するとしており、電子カルテ更新と一体の導入を補助の軸に据える可能性があります。薬局は9月までの導入が最後と明記されています。

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