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医療機器管理システムとは?ME機器の貸出・保守点検記録と固定資産台帳連携の設計

RPA開発

医療機器管理システムは、輸液ポンプや人工呼吸器などのME機器について、どこにあるか、いつ点検したか、誰に貸し出したかを1つの機器台帳で管理する仕組みです。ME機器管理システムとも呼ばれ、主な利用者は臨床工学技士です。この記事では、令和3年7月の厚生労働省通知が保守点検計画と記録に求める項目をシステムのデータ項目へどう落とすか、貸出・返却と点検スケジュールの回し方、固定資産台帳との突合を順に整理します。最後に、無料のクラウド製品やパッケージで足りる病院と、受託開発を検討すべき病院の境界を示します。

まとめ:医療機器管理システムは通知の記録項目と貸出時の所在把握で選ぶ

医療機器管理システムの選定で最初に確かめるのは、通知が求める保守点検記録(機器名、製造販売業者名、型式・型番・購入年、点検と修理の記録)を、1台ごとに漏れなく残せるかどうかです。次に、貸出・返却をバーコードや二次元コードの読み取りで記録し、点検期限の来た機器を貸し出さない仕組みがあるかを見ます。この2つが回れば、法令対応と現場の機器探しの両方が片づきます。

システムの持ち方は規模と連携要件で決めます。機器台帳と点検記録が中心で他システムとつなぐ予定がなければ、無料のクラウド製品や医療向けパッケージで足ります。固定資産台帳と資産番号で突合したい、法人内の複数病院で台帳を統一したい、電子カルテや機器の稼働監視とつなぎたい。こうした要件があるなら、既製品の外側に連携部分を作る受託開発を検討する段階です。

医療機器管理システムが扱うME機器の範囲と在庫・資産管理システムとの境目

病院には「機器」を管理するシステムが複数あり、名前が似ているため導入時に範囲が混ざりがちです。まず、医療機器管理システムが何を対象にし、何を他に任せるのかを分けておきます。

臨床工学技士が中央管理する輸液ポンプ・人工呼吸器など対象機器の考え方

中心になるのは、臨床工学部門(ME室)が一括で保有し、病棟へ貸し出す機器です。輸液ポンプ、シリンジポンプ、人工呼吸器、除細動器、生体情報モニタ、低圧持続吸引器などが典型で、使用後はME室へ返却され、点検を経て次の貸出に回ります。

ただし法令上の管理対象はもっと広く取られています。厚生労働省の「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」(令和3年7月8日)は、病院等が管理する医療機器の全てを安全管理の対象とし、在宅で患者が使う機器と、病院に貸し出された機器も含むと明記しています。メーカーからのデモ機や短期レンタル機も台帳に載せる前提で設計しておくと、後から対象を広げる手戻りがありません。

診療材料の在庫管理・固定資産台帳・医療IoTと守備範囲が分かれる理由

カテーテルやガーゼのように使えばなくなる物品は、在庫管理システムの対象です。定数補充やSPDの運用は医療業界の在庫管理システム(SPD・定数管理・GS1バーコード)で扱っています。医療機器管理システムが持つのは、1台ずつ識別して繰り返し使う機器の状態と履歴です。

固定資産台帳は経理の帳簿で、取得価額と減価償却を管理します。医療IoTは機器からデータを取る通信の仕組みです。3つは別システムのまま、資産番号や機器管理番号でつなぐ構成が扱いやすくなります。機器台帳を固定資産台帳で代用すると、少額で資産計上していない機器が抜け落ちるため、両者は分けて持ちます。

医療法施行規則と令和3年通知が求める保守点検計画と記録のデータ項目

医療機器管理システムの画面とデータ項目は、通知の記載をそのまま写すと漏れがなくなります。根拠は医療法第6条の12と医療法施行規則第1条の11で、運用の細目を定めたのが前述の令和3年7月8日の通知です。この通知で平成30年6月の前通知は廃止されています。

医療機器安全管理責任者の3業務と貸出機器・在宅使用機器まで含む対象範囲

病院等の管理者は医療機器安全管理責任者を置く必要があります。資格は医師、薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士などのいずれかを持つ常勤職員で、病院では管理者との兼務はできません。

責任者の業務は、従業者への研修、保守点検計画の策定と実施、安全使用のための情報収集と改善策の実施の3つです。システムで支えるべきなのも、この3業務に対応する研修記録、点検計画と点検記録、添付文書と安全性情報の管理になります。研修記録には開催日時、出席者、研修項目、対象機器名を残すよう通知が定めているため、研修の画面も機器マスタに紐づけておきます。

保守点検計画を機種別に策定すべき10品目と計画に書く具体的な4項目

通知は、保守点検が必要と考えられる医療機器として次の10品目を挙げ、機種別に保守点検計画を作るよう求めています。

  • 人工心肺装置及び補助循環装置
  • 人工呼吸器
  • 血液浄化装置
  • 除細動装置(AEDを除く)
  • 閉鎖式保育器
  • X線CT装置
  • 診療用高エネルギー放射線発生装置(直線加速器等)
  • 診療用粒子線照射装置
  • 診療用放射線照射装置(ガンマナイフ等)
  • 磁気共鳴画像診断装置(MRI装置)

計画に書く項目は、医療機器名、製造販売業者名、型式、保守点検の予定時期・間隔・条件の4つです。システム上は「機種マスタ」に点検間隔と条件を持たせ、同じ型式の機器が何台あっても計画は1つで済む形にします。CTやMRIは放射線部門が管理する病院が多いので、部署をまたいで同じ台帳に載せるかどうかを導入前に決めておきます。

個々の機器ごとに残す保守点検記録と修理記録の5項目をデータ項目に落とす

計画は機種ごとですが、記録は1台ごとです。通知は、保守点検が必要な機器について個々に次の事項が把握できるよう記録するよう定めています。

通知の記録事項 システムのデータ項目
医療機器名 機種マスタの一般的名称・販売名
製造販売業者名 機種マスタの業者コード
型式、型番、購入年 機器台帳の型番・製造番号・取得日
保守点検の記録 点検履歴(年月日・概要・点検者)
修理の記録 修理履歴(年月日・概要・修理者)

製造番号(シリアル)を必須項目にしておかないと、同じ型番が20台ある輸液ポンプのどれを点検したのかが区別できません。記録の保存期間は通知上「各病院等において適切な保存期間を定め」るとされ、年数の定めはありません。システム側で一律に削除する設定は避け、廃棄済み機器の履歴も参照できる状態で残します。

外部委託した点検の記録保存と添付文書・安全性情報の院内での一元管理

特定保守管理医療機器の点検をメーカーや修理業者へ委託する場合も、責任者は実施状況の記録を保存し、管理状況を把握する必要があります。委託先から届く点検報告書をPDFで機器台帳に添付できる機能があれば、紙の報告書を別ファイルで探す手間が消えます。

添付文書の管理も責任者の業務です。点検間隔は添付文書や取扱説明書の「保守点検に関する事項」に機種ごとに書かれており、通知の別添指針も、点検頻度はメーカーや機種で異なるため添付文書を参照するよう整理しています。添付文書はPMDAの医療機器 情報検索で販売名や一般的名称から引けるので、機種マスタに添付文書の参照先と改訂日を持たせ、改訂時に点検計画を見直す運用にします。

貸出・返却と点検スケジュールを回す医療機器管理システムの主要機能

法令対応の記録が揃っても、現場で使われなければ台帳はすぐ実態とずれます。日々の入力を貸出・返却と点検の動作そのものに組み込むのが、機能設計の要です。

二次元コードの読み取りで貸出・返却と所在を記録する中央管理の流れ

中央管理の基本は、機器1台ごとに管理番号のラベルを貼り、動かすたびに読み取る運用です。

  1. 病棟から貸出依頼を受け、ME室で点検済みの機器のラベルを読み取って貸出先の部署を登録する
  2. 病棟で使用し、使用終了後は返却棚または回収用の場所へ戻す
  3. ME室で返却を読み取り、状態を「点検待ち」に変える
  4. 使用後点検を行い、合格なら「貸出可」、不具合なら「修理中」に変える

この流れで所在は常に最後に読んだ場所として残ります。スマートフォンやタブレットで読み取れる製品なら、病棟側で返却登録まで済ませられる仕組みです。読み取りが1回でも抜けると所在がずれるため、返却時の読み取りを省略できない動線にしておきます。

使用前・使用中・使用後点検と定期点検を分けて登録する点検スケジュール設計

通知の別添指針は、人工呼吸器や人工心肺装置などの点検項目を「使用前」「使用中」「使用後」に分けて列挙しています。指針が取りまとめたのは毎日実施できる最低限の要求水準で、これとは別に、添付文書に基づく定期点検がかかり、その間隔は機種ごとに異なります。

システム上は、日常点検(使用前・使用後)と定期点検を別の種類として登録し、定期点検には「次回期限」を自動計算させます。期限を過ぎた機器を貸出の読み取り時に警告し、貸出をブロックできるかが製品選びの分かれ目です。点検表は指針の項目をもとに機種ごとのチェックリストとして持たせ、点検者が順に入力するだけで記録が残る形にします。

稼働率と貸出待ちの実績から機種ごとの台数の過不足を判断する分析指標

貸出・返却の記録が溜まると、機種ごとの台数が適正かを数字で判断できます。見る指標は次の2つで十分です。

  • 稼働率:期間中に貸出中だった時間 ÷(保有台数 × 期間の時間)
  • 貸出待ち件数:依頼時点で「貸出可」の在庫が0台だった回数

稼働率が低いのに貸出待ちが出る機種は、台数不足ではなく返却の遅れか、病棟での抱え込みが原因です。逆に稼働率が高止まりし貸出待ちも多い機種は、追加購入の根拠になります。部署別の貸出日数を集計すると、どの病棟が返却を滞らせているかも見えます。購入稟議の際に「足りない」という声だけでなく実績値を添えられる点が、分析機能の実利です。

2022年12月のバーコード表示義務化で製品コードを機器台帳の識別子に使う方法

令和元年の薬機法改正で、医療機器を特定する符号としてバーコードまたは二次元コードを容器等に表示することが令和4年12月1日から義務化されました(厚生労働省のバーコード表示に関する事務連絡(令和3年3月3日))。新しく購入する機器は、製品コードを読み取って機種マスタを引ける前提が整っています。

ただし表示される符号は製品を特定するもので、1台ごとの識別は製造番号の項目に依存します。院内の運用では、製品コードで機種マスタを自動選択し、製造番号を加えて院内の管理番号ラベルを発行する二段構えが現実的です。古い機器には表示がないものもあるため、院内ラベルの発行機能は外せません。

固定資産台帳と医療機器台帳を連携させる資産番号と更新計画の設計

医療機器は病院の固定資産の大きな部分を占めます。経理の台帳と臨床工学の台帳が別々に更新されると、廃棄した機器が帳簿に残る、移動した機器の設置場所が帳簿と違う、といったずれが毎年の実地照合で見つかります。

資産番号と機器管理番号の対応を持たせて除却・移動の漏れを防ぐ方法

機器台帳の各レコードに、固定資産台帳の資産番号を持たせます。1つの資産番号に複数台がまとめて計上されている場合もあるため、対応は「1資産番号に対して複数機器」を許す形にします。

連携で効くのは除却です。ME室が廃棄を登録した時点で、経理側に除却候補として通知が届く流れを作れば、帳簿に幽霊資産が残りません。固定資産台帳側の項目や減価償却との関係は固定資産管理システムの機能と固定資産台帳の解説にまとめています。資産計上されない少額の機器は資産番号を空欄とし、機器台帳だけで管理します。

法定耐用年数と保守部品の供給終了時期を分けて更新計画に使う考え方

更新計画を減価償却の耐用年数だけで立てるのは危険です。法定耐用年数は税務上の償却期間を表しており、機器が安全に使える期間とは区別して考えます。耐用年数の引き方は減価償却の耐用年数と省令別表の引き方で確認できますが、臨床側で効くのはメーカーが示す保守部品の供給期間と修理対応の終了時期です。

機種マスタに「保守対応終了予定日」を持たせ、修理履歴の件数・費用と並べて表示すると、更新の優先順位が決めやすくなります。帳簿上は償却済みでも点検で問題のない機器は使い続け、償却中でも保守対応が終わる機器は先に更新する。この判断を数字で示せるのが、2つの台帳をつなぐ利点です。

無料クラウド・パッケージ・受託開発を選び分ける病院規模と連携要件

医療機器管理システムには、無料で使えるクラウド製品、医療向けのパッケージ、受託開発の3つの選択肢があります。台帳と点検記録が目的であれば、多くの病院にとって既製品で十分です。開発が意味を持つのは他システムとの連携要件がある場合に限られます。

無料クラウドやパッケージで足りる病院の条件と見送るべき開発投資

既製品の選択肢は広がっています。MRT株式会社の2026年6月23日のプレスリリースによると、グループ会社のMedikikiが提供するクラウド型の「MMS」は医療機関向けに初期費用ゼロ・基本機能永年無料とされ、累計導入数は150施設(同日時点)です。収益はメーカー・卸向けの情報配信で得るモデルと説明されています。

次の条件に当てはまるなら、受託開発は見送り、既製品を比較します。

  • 管理対象がME室の中央管理機器と、通知の10品目の点検記録で完結する
  • 固定資産台帳とは年1回の照合で足り、自動連携までは求めない
  • 単独病院で、他院と台帳を統一する予定がない

Excelや自作データベースで回している病院も、まずは既製品への移行で十分です。無料製品を使う場合は、データの書き出し形式と、契約終了時に機器台帳と点検履歴を引き取れるかを先に確認します。

電子カルテ・資産管理・IoT監視とつなぐ場合に受託開発を検討する条件

反対に、次のいずれかに当てはまる病院は、既製品の外側に連携部分を作る受託開発を検討する価値があります。法人内の複数病院で機器マスタと台帳を統一し、機器を病院間で融通したい場合。固定資産管理システムやERPと資産番号で自動連携し、除却と移動を双方向に反映したい場合。輸液ポンプなどの稼働状態をネットワーク経由で取得し、所在や稼働率を自動で記録したい場合です。院内IoTの構成は医療IoTシステムの院内構成と機器監視の設計で整理しています。

連携を作る際は、院内ネットワークに機器台帳をどう置くかを医療情報システムの安全管理ガイドライン第7.0版と照らし合わせて決めます。台帳本体は既製品のまま、連携部分だけを作る構成にすれば、費用を抑えることも可能です。どこまでを既製品に任せ、どこを作るかの切り分けから相談したい場合は、医療機関向けシステム開発の窓口で既存の台帳と運用を前提に検討できます。

導入前に棚卸しておく機器台帳・点検記録・紙の運用の具体的な移行範囲

どの選択肢を取る場合も、着手前に現物と台帳を突き合わせます。ME室のExcel台帳、経理の固定資産台帳、病棟が独自に持つ機器一覧の3つを並べると、台数が合わないのが普通です。実地照合で現物を確定させてから、管理番号ラベルを貼り直すのが移行の出発点になります。

紙の点検記録をどこまで電子化するかも決めておきます。過去分を全件入力するのは費用に見合いません。直近の定期点検と修理の記録だけを移し、それ以前は紙のまま保存期間まで保管する線引きが現実的です。工場設備の保全で使われるCMMSの考え方は設備保全管理システム(CMMS・EAM)の比較観点が参考になり、点検計画と履歴の持ち方は医療機器でも共通します。

医療機器管理システムの院内導入・運用に関するよくある質問と回答

臨床工学部門や医療安全管理室、情報システム部門から寄せられやすい質問をまとめました。

医療機器管理システムとME機器管理システムは同じものですか?

ほぼ同じものを指します。臨床工学技士が管理する輸液ポンプや人工呼吸器などをME機器と呼ぶことから、ME機器管理システムという名称が使われてきました。製品によっては、ME室の中央管理機器だけでなく、放射線部門の大型装置や病棟の常設機器まで台帳に載せられるものもあり、その場合は医療機器管理システムと呼ばれることが多くなります。

医療機器の保守点検記録の保存期間は何年ですか?

令和3年7月の厚生労働省通知では、保守点検の記録について「各病院等において適切な保存期間を定め、適切に保存すること」とされ、全国一律の年数は示されていません。院内の規程で期間を定め、システム上は廃棄した機器の履歴も含めて期間内は参照できる状態にしておきます。不具合や事故の調査で過去の点検記録を遡ることがあるため、短く設定しすぎないようにします。

Excelの台帳から医療機器管理システムへ移行する目安はありますか?

台数や病床数で一律に決まる基準はありません。目安になるのは、貸出中の機器の所在がすぐに分からない、点検期限切れの機器を貸し出してしまった、監査や立入検査の前に記録の集計で手間取る、といった事象が出ているかどうかです。Excelは1人が更新する前提の道具で、貸出・返却を複数人が随時記録する運用には向きません。

クリニックにも医療機器管理システムは必要ですか?

医療機器安全管理責任者の配置と保守点検の計画・記録は、病院だけでなく診療所にも求められています。ただし保有台数が少ない無床診療所なら、専用システムでなくても、機器ごとの点検記録をまとめた台帳で要件を満たすことが可能です。人工呼吸器や透析装置を多く持つクリニックでは、点検期限の管理に既製品の導入を検討する価値があります。

医療機器管理システムを固定資産管理システムで代用できますか?

代用はおすすめしません。固定資産管理システムは取得価額と減価償却を管理する帳簿で、貸出・返却の所在や、使用前・使用後の点検記録を持つ設計になっていないためです。また、資産計上されない少額の機器が台帳から抜けます。2つは別システムとして持ち、資産番号で対応づけて突合する構成が扱いやすくなります。

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