HubSpotとSalesforceの連携は、HubSpotが提供する標準コネクタをアプリマーケットプレイスから入れるだけで動き始めます。難しいのはその後で、同じ顧客の電話番号や担当者をどちらで直すのかを決めないまま接続すると、値が双方向に上書きされて元に戻らなくなるため注意が必要です。本記事では2026年10月時点のHubSpot公式ナレッジをもとに、標準コネクタの接続要件、4つの同期ルールの違い、項目ごとのマスタの決め方、APIコール上限の見積もり、kintoneや基幹システムを加えるときにiPaaSや個別開発で補う場面までを、併用を続ける前提で整理します。
まとめ:HubSpotとSalesforceの連携は項目ごとの正を決めてから接続する
標準コネクタは、HubSpotのいずれかのHubがProfessional以上で、SalesforceがAPIを使えるエディションなら導入できます。コンタクト・会社・取引を同期でき、同期の方向は項目ごとに4つのルールから選びます。設計の中心は、項目ごとにどちらのシステムを正にするかを決めることです。営業が商談の中で更新する項目はSalesforceを正にし、Webの行動やメールの反応のようにHubSpotで生まれる項目はHubSpotを正にする、という分け方が基本になります。
もう1つの制約がSalesforceのAPIコール上限です。コネクタはSalesforce側の1日の上限を他の連携と分け合うため、件数が多い組織では割り当てを決めないと同期が止まります。標準コネクタはHubSpotとSalesforceの2者を結ぶ仕組みで、kintoneや基幹システムを加えるとiPaaSか個別開発が必要です。連携先が3つ以上になり、同じ項目を複数のシステムが書き換えるようなら、併用をやめてどちらかに寄せる判断も検討してください。
HubSpotとSalesforceを併用する構成と標準コネクタの接続要件・同期範囲
併用の典型は、マーケティングをHubSpot、営業管理をSalesforceで行う構成です。見込み客の獲得と育成はHubSpotで行い、商談化した顧客をSalesforceの営業が引き取ります。両者の製品構成はHubSpotの料金|7つのHubの構造とシート・コンタクト二層課金の決まり方とSalesforceとは?CRMの機能・料金・認定資格から導入判断まで解説で扱っているため、ここでは連携そのものの条件に絞ります。
接続に必要なHubSpotとSalesforce双方のエディションと管理者権限の条件
HubSpotとSalesforceの接続手順を定めた公式ナレッジ(2026年10月2日更新)では、HubSpot側はMarketing Hub、Sales Hub、Service Hub、Data Hub、Content Hub、Smart CRMのいずれかがProfessionalかEnterpriseであることが条件です。無料版とStarterでは標準コネクタを使えません。
| 確認項目 | 条件 |
|---|---|
| HubSpot | いずれかのHubがProfessional以上 |
| Salesforce | API付きのエディションかProfessional |
| 対象外 | Salesforce Group Edition |
| 接続する人 | Salesforceのシステム管理者 |
| 接続できる数 | HubSpot1つにSalesforce1つ |
Salesforce側の接続者には、API Enabled、設定の参照、同期するオブジェクトへの「すべて変更」などの権限が求められます。情報システム部門がSalesforceを管理している会社では、マーケティング部門だけで接続を進められません。接続日の前に、権限を持つ担当者の予定を押さえておいてください。
標準コネクタで同期されるオブジェクトと約15分ごとに動く同期の仕組み
同期の対象は、HubSpotのコンタクトとSalesforceのリード・取引先責任者、会社と取引先、取引と商談、チケットとケース、それに活動履歴です。連携設定の管理に関する公式ナレッジでは、リードと取引先責任者は双方向に同期されると説明されています。
同期のきっかけは2種類あります。1つはフォーム送信やプロパティの更新といったイベントで、もう1つは定期確認です。Salesforceレコードの取り込みと同期に関する公式ナレッジによると、HubSpotはおよそ15分ごとに両方のアカウントの更新を確かめ、必要なら同期を走らせます。営業がSalesforceで直した値がHubSpotのメール配信に反映されるまで、最大で十数分の遅れがあると見込んでおきます。
項目マッピングで選ぶ4つの同期ルールとどちらをマスタにするかの判断
連携の品質は、項目の対応付け(マッピング)ごとに選ぶ同期ルールで決まります。ここを既定値のまま進めると、後から値の食い違いを1件ずつ調べることになります。
4つの同期ルールで変わる上書きの向きと削除がどちらへ伝わるかの違い
項目マッピングの公式ナレッジが定める同期ルールは、Prefer Salesforce unless blank(Salesforce優先・空欄のみ補完)、Always use Salesforce(Salesforce固定)、Two-way(双方向)、Don’t sync(同期しない)の4種類です。違いは「どちらの値が勝つか」と「削除が伝わるか」の2点にあります。
| 同期ルール | HubSpotからの書き込み | Salesforceの値 | 削除の扱い |
|---|---|---|---|
| Salesforce優先・空欄のみ補完 | Salesforceが空のときだけ | 常にHubSpotを上書き | Salesforceの削除がHubSpotに伝わる |
| Salesforce固定 | 書き込まない | 常にHubSpotを上書き | Salesforceの削除がHubSpotに伝わる |
| 双方向 | 新しい値が勝つ | 新しい値が勝つ | どちらの削除も相手に伝わる |
| 同期しない | 流れない | 流れない | 伝わらない |
HubSpotを正にするルールは用意されていない点に注意してください。HubSpotで生まれた値をSalesforceへ確実に渡したいときはTwo-wayを選び、Salesforce側でその項目を編集できないように項目レベルのセキュリティで閉じておきます。オーナー(担当者)だけは双方向のマッピングしか選べず、両システムの値が完全に一致している必要があります。
項目の種類別に見るマスタの置き方とSalesforce正・双方向の分け方
項目ごとの正は、その値を日常的に書き換えるのは誰か、で決めます。営業が更新する項目をHubSpotで直せる状態にすると、配信担当が良かれと思って直した値が商談の記録を上書きします。
| 項目の例 | 主に書き換える人 | 選ぶルール |
|---|---|---|
| 商談フェーズ、受注予定日、金額 | 営業(Salesforce) | Salesforce固定 |
| 会社名、住所、電話番号 | 営業・名刺取り込み | Salesforce優先・空欄のみ補完 |
| 流入経路、初回コンバージョン、スコア | HubSpotの自動記録 | 双方向(Salesforce側は編集不可) |
| 配信停止の状態 | 本人の操作(HubSpot) | 双方向(Salesforce側は編集不可) |
| 社内メモ、部署ごとの独自項目 | 片方のチームのみ | 同期しない |
迷う項目は、まずPrefer Salesforce unless blankに置くのが安全です。Salesforceの値を守りつつ、空欄だけをHubSpotの情報で埋められます。Two-wayは「最後に書いた方が勝つ」ルールなので、両側で同じ項目を更新する運用が残っている限り使いません。
マッピングできる項目型の組み合わせと選択肢の値をそろえる準備
マッピングは型が合う項目同士でしか組めません。HubSpotのドロップダウンはSalesforceの選択リスト、複数チェックボックスは複数選択リスト、日付は日付または日時、数値は数値型にそれぞれ対応します。1つのオブジェクトにつき対応付けは500件までです。
実務で手間がかかるのは選択肢の値の一致です。Salesforceの選択リストに「製造業」、HubSpotのドロップダウンに「製造」とあると、その値は同期できず同期エラーになります。接続の前に、選択肢型の項目だけを一覧にして、両側の内部値を同じ文字列にそろえてください。業種や地域のように集計に使う項目ほど、表記の揺れがレポートの数字を割ります。
コンタクト・リードと取引の同期で事前に決めておく作成条件と同期範囲
マッピングの次に決めるのは、どのレコードを同期するかです。既定では対象が広すぎ、Salesforceに見込みの薄いリードが大量に作られます。
同期対象セグメントで同期するコンタクトを絞るときの設定と落とし穴
HubSpotからSalesforceへ送るコンタクトは、同期対象セグメント(インクルージョンリスト)で絞ります。公式ナレッジでは、セグメントを選ばない場合はHubSpotの全コンタクトがSalesforceへ同期されると明記されています。メールマガジンの購読者や展示会の名刺まで営業のリード一覧に流れ込むため、本番の接続前に必ず設定しておく必要がありますので、確認してください。
条件の例は「ライフサイクルステージがMQL以上」「メールアドレスがある」「競合・退職者のフラグが無い」の組み合わせです。落とし穴は逆方向にあります。Salesforceでリードや取引先責任者を作成したとき、HubSpotにコンタクトを作る設定にしていると、そのコンタクトはセグメントの外でも作られます。ただし、その後の更新はどちらの方向にも同期されません。値が古いまま止まったコンタクトが増えたら、まずこの組み合わせを疑ってください。
リードと取引先責任者のどちらを作るかとSalesforce側で作られた場合の扱い
HubSpotでコンタクトが作られたり更新されたりしたとき、Salesforce側で「取引先責任者を作成・更新する」か「リードを作成・更新する」かを選べます。営業がリードを評価してから取引先責任者に変換する運用なら、選ぶ対象はリードです。リードを使わず取引先と取引先責任者だけで管理している会社なら、取引先責任者を選びます。
削除は非対称です。Salesforceでリードや取引先責任者を削除したときにHubSpotのコンタクトも消すかどうかは選べますが、HubSpotでコンタクトを削除してもSalesforceのレコードは消えません。個人情報の削除依頼に対応するときは、両方のシステムで消す手順を別々に用意しておきます。
取引と商談を同期するためのパイプラインとレコードタイプの対応付け
取引と商談の同期に関する公式ナレッジでは、Salesforceの商談のレコードタイプをHubSpotの取引パイプラインに対応付ける方式が説明されています。同期の対象になるのは、対応付けたパイプラインにある取引だけです。取引と会社・コンタクトの関連付けは、双方向、SalesforceからHubSpotのみ、HubSpotからSalesforceのみの3方向から選べます。
併用の構成では、取引の正はSalesforceに置くのが基本です。HubSpotの取引パイプラインはSalesforceの商談フェーズを読み取って、マーケティング施策の成果を測るために使います。HubSpotで取引を統合してもSalesforceの商談は統合されないため、重複の整理はSalesforce側で行い、その結果をHubSpotへ流す順番にそろえます。
SalesforceのAPIコール上限と連携が止まる中断エラーを防ぐ見積もり
標準コネクタはSalesforceのAPIを呼び出して同期します。Salesforceの1日のAPI上限は組織全体で共有されるため、他の連携と取り合う形です。Salesforce側のAPI方式と上限の考え方はSalesforceのシステム連携とは?API方式の選定とコール上限の設計を実装目線で解説で詳しく扱っています。
1コンタクト最大4コール・一括再同期は件数の3倍で見積もる手順
公式ナレッジの数値は、コンタクト1件の同期で1レコードあたり最大4コール、セグメントを一括で再同期するときは「セグメントの件数×3」コールの空きが必要、の2つです。これを使うと、1日の消費量を次の順で見積もれます。
- 1日に更新されるコンタクトの件数を数える(フォーム送信、メール開封、営業の更新を合計)
- その件数に4を掛け、コンタクト同期の最大消費量とする
- 会社と取引の更新件数を同様に加える
- Salesforceの設定画面で、他の連携が使っているAPIコール数を確認する
- Salesforceの上限から他の連携分を引いた残りと比べる
たとえば1日に5,000件のコンタクトが更新される組織なら、コンタクトだけで最大20,000コールです。2万件のセグメントを再同期する日はさらに60,000コールが必要になります。大量のメール配信の直後は開封やクリックの記録が一斉に同期されるため、配信日だけ消費が跳ね上がる点も見込んでおきます。
HubSpotへの割り当て上限の設定と中断から自動で復帰するまでの動き
HubSpotの連携設定には、Salesforceのコールのうち何件をHubSpotに割り当てるかを入れる欄があり、直近24時間の使用量も表示されます。公式ナレッジの案内は、Salesforceの上限と現在の使用量をもとにこの値を決めるというものです。割り当てを決めずに運用すると、HubSpotの同期がSalesforceの上限を食い尽くし、基幹システムや他のSaaSの連携まで止めてしまいます。
上限に達すると連携は中断されます。中断エラーの解消に関する公式ナレッジでは、使用量は直近24時間のローリング計算で、空きが戻れば中断は自動で解除されると説明されています。自動で戻るとはいえ、その間に作られたリードは営業に届きません。配信を大量に行う日と一括再同期の日を重ねない運用ルールを、マーケティングと情報システムの間で決めておきます。
標準コネクタで足りない場面とiPaaS・個別開発で補う連携の設計
標準コネクタは、HubSpot1アカウントとSalesforce1インスタンスを結ぶ仕組みです。連携の相手が増えると、別の手段で補う必要が出てきます。
kintoneや基幹システムを加えた3者連携で標準コネクタが届かない範囲
よくあるのは、案件の後工程(見積、受注、請求)をkintoneや基幹システムで管理している構成です。標準コネクタはHubSpotとSalesforceの間しか同期しないため、kintoneの受注データをHubSpotのメール配信の条件に使いたい、といった要件には届きません。
このとき、kintoneとHubSpotを直接つなぐか、Salesforceを経由させるかを先に決めます。顧客の正がSalesforceにあるなら、kintoneの受注情報はSalesforceに入れ、HubSpotへは標準コネクタで流すほうが正の位置を1か所にそろえられる構成です。kintone側でどの方式を使えるかはkintoneのデータ連携を実装視点で選ぶ|4方式の判定表とAPI制限の設計にまとめています。3つ以上のシステムの関係を整理する考え方はCRM連携とは?MA・SFA・基幹をつなぐAPI連携の設計と選定基準を解説が参考になります。
iPaaSと個別開発のどちらで補うかを件数と処理の複雑さで決める基準
補う手段は、iPaaSと個別開発の2つです。判断の軸は、1日に流す件数と、途中で必要になる処理の複雑さです。
| 条件 | 向く手段 | 理由 |
|---|---|---|
| 件数が少なく、項目を写すだけ | iPaaS | 画面の設定で組め、保守も担当者が行える |
| 名寄せや重複判定が必要 | 個別開発 | 照合の規則をコードで管理し、テストできる |
| 件数が多く、APIの上限に近い | 個別開発 | 一括APIでまとめて送り、呼び出し回数を抑えられる |
| 連携が止まったときの再送が必須 | 個別開発 | 失敗した行だけを再送する仕組みを持てる |
iPaaSは課金単位が処理件数や実行回数のことが多く、件数が増えると月額も増えます。料金の数え方とRPAとの違いはiPaaSとは?仕組み・RPAとの違い・料金の数え方と導入判断をわかりやすく解説で確認してください。どちらの手段でも、iPaaSや自作プログラムがSalesforceのAPIを使う点は標準コネクタと同じです。前の章で見積もったAPIの残りから、補う連携の分も差し引いて計画します。
受託開発の視点で見る、併用を続けるべき条件と片方へ寄せる判断基準
ここからは、CRMの連携開発を受ける立場から見た判断です。
標準コネクタだけで併用を続けてよい組織の3条件と管理者の運用分担
次の条件がそろう組織なら、標準コネクタだけで併用を続けて問題ありません。マーケティングと営業で担当者が分かれていること、項目ごとの正が表にできていること、連携先がHubSpotとSalesforceの2つで収まっていること、の3点です。
この場合の運用は、Salesforceの管理者が項目と権限、HubSpotの管理者がマッピングと同期対象セグメントを受け持つ形が回しやすいでしょう。項目を追加するときは両方の管理者が同じ日に設定を変える、という1行のルールを決めておけば、型や選択肢の食い違いによる同期エラーを接続前の段階で止められます。
連携をやめてHubSpotかSalesforceのどちらかに寄せるべき兆候
次のどれかが当てはまるなら、連携を作り込むより片方へ寄せる判断を優先します。
- 同じ項目を両方のチームが日常的に更新し、Two-wayでしか同期できない項目が10を超える
- APIの割り当てが常に上限に近く、配信日のたびに中断が起きる
- kintoneや基幹システムを含めて連携先が3つ以上あり、顧客の正がどこか説明できない
- 営業の人数が少なく、Salesforceのライセンス費が連携の保守費と釣り合わない
寄せる先は、商談管理の作り込みが深いならSalesforce、マーケティングと営業の担当者が同じ人ならHubSpotです。HubSpotへ寄せるときの移行手順はHubSpot導入の進め方|既存CRM・名刺データの移行設計とオンボーディングの必須条件で整理しています。併用を続けるか寄せるかの判断から、同期ルールの設計、kintoneや基幹システムとの連携開発までをまとめて相談したい場合は、HubSpot導入支援サービスで受け付けています。
よくある質問
HubSpotとSalesforceの連携を検討する段階でよく寄せられる質問に、2026年10月時点の公式情報をもとに回答します。
HubSpotの無料版やStarterでもSalesforceと連携できますか?
標準コネクタは使えません。いずれかのHubがProfessional以上であることが条件です。無料版やStarterのまま連携したい場合は、iPaaSや自作のプログラムで両者のAPIをつなぐ方法になり、同期ルールや重複の判定は自分たちで組み立てる必要があります。
連携した値はどのくらいの間隔で反映されますか?
イベントによる同期に加えて、HubSpotはおよそ15分ごとに更新を確かめて同期を走らせるため、十数分程度の遅れを見込んでおきます。大量の取り込みは、APIの使用量を抑えるために数時間かかることがあると公式ナレッジに記載されています。
複数のHubSpotアカウントを1つのSalesforceにつなげられますか?
つなげます。ただし、HubSpotアカウントごとに連携をインストールする必要があり、逆にHubSpot1アカウントに接続できるSalesforceは1インスタンスだけです。複数のHubSpotアカウントを1つのSalesforceにつなぐ場合、公式ナレッジは、SalesforceからHubSpotのコンタクトを自動で作らない設定を推奨しています。別のアカウントで作られたリードが他のアカウントにも流れ込むのを防ぐためです。
Salesforceの商談をHubSpotの取引として同期できますか?
商談を取引として同期することは可能です。商談のレコードタイプをHubSpotの取引パイプラインに対応付けると、そのパイプラインの取引だけが商談と同期されます。値の衝突を避けるには、取引の正をSalesforceに置き、HubSpotでは商談フェーズを読み取る使い方にそろえます。
kintoneとHubSpotはどのように連携すればよいですか?
HubSpotとSalesforceの標準コネクタはkintoneを対象にしていないため、iPaaSで項目を写すか、APIを使って個別に開発するかのどちらかです。件数が少なく項目を写すだけならiPaaS、名寄せや再送が必要なら個別開発が向いています。
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