タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことと、その時刻以降に改ざんされていないことを第三者が証明する仕組みです。ログの日時やYouTubeの再生位置も同じ言葉で呼ばれますが、契約書や請求書の文脈で使うのは、総務大臣の認定を受けた事業者が発行する「認定タイムスタンプ」のことです。この記事では、ハッシュ値を使った付与と検証の仕組み、電子署名との役割の違い、2026年3月時点で認定を受けている6つの時刻認証業務、電子帳簿保存法で付与が必要になる場面と期限、付与しなくて済む代替手段までを整理します。最後に、自社のシステムへタイムスタンプを組み込むべきかの判断基準も条件付きで示します。
まとめ:タイムスタンプは存在時刻と非改ざんの証明で電帳法では代わりの手段もある
認定タイムスタンプは、文書そのものではなく文書のハッシュ値に時刻を結びつけ、時刻認証局が電子署名を付けて返すデータです。これにより「その時刻に存在した」ことと「その後変わっていない」ことを、誰でも後から検証できます。
電子署名は「誰が作ったか」、タイムスタンプは「いつ存在したか」を示します。役割が違うため、電子契約では両方を付けるのが標準です。
電子帳簿保存法では、電子取引データとスキャナ保存の2区分でタイムスタンプが要件として登場します。ただし電子取引では、訂正削除の記録が残るシステムでの授受や事務処理規程の運用でも要件を満たせるため、必須ではありません。自社で開発するシステムにタイムスタンプを組み込むかどうかは、保存する書類の量と、既製サービスに預けられるかで決まります。
タイムスタンプの意味をIT用語の時刻記録と認定タイムスタンプの2つに分けて整理する
「タイムスタンプとは」で調べると、文脈の違う説明が混ざって見つかります。最初に意味を2つに分けておくと、以降の話が読み違えなく進みます。
存在証明と非改ざん証明という総務省が示す認定タイムスタンプの2つの役割
総務省のタイムスタンプのページは、タイムスタンプを「ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術」と説明しています。前者を存在証明、後者を非改ざん証明と呼びます。
紙の書類に例えるなら、確定日付のある書類を公証役場で受け取る行為に近い役割です。電子データは複製や書き換えの痕跡が残らないため、作成者が自分で付けた日時をそのまま信用できません。そこで、利害関係のない第三者の時刻認証局が時刻を刻印します。
ログやファイル・動画のタイムスタンプと証明用タイムスタンプが別物である理由
システム開発の現場では、データベースの作成日時列、サーバーログの各行に付く日時、ファイルの更新日時もタイムスタンプと呼びます。YouTubeの説明欄に書く「1:23」のような再生位置もタイムスタンプです。これらは記録した側のコンピュータの時計をそのまま書き込んだ値で、管理者権限があれば後から変更できます。
証明用のタイムスタンプとの違いは、時刻の出どころと改変の検知にあります。サーバーログの日時は「その会社がそう記録した」以上のことを示せません。認定タイムスタンプは第三者が発行し、電子署名で保護されているため、1ビットでも書き換えれば検証で必ず不一致になります。税務や契約の証拠として通用するのは後者だけです。
タイムスタンプの仕組みをハッシュ値と時刻認証局のトークン発行の流れで理解する
認定タイムスタンプの技術的な土台は、国際標準のRFC 3161です。部品はハッシュ値、正確な時刻、時刻認証局の電子署名の3つで、流れを追えば難しくありません。
利用者がハッシュ値を送り時刻認証局が署名付きトークンを返す4つの手順
付与は次の4段階で進みます。原本のデータは手元から出ていかない点に注目してください。
- 利用者のシステムが、対象ファイルからハッシュ値(データの要約値)を計算する
- ハッシュ値だけを時刻認証局(TSA)へ送り、タイムスタンプを要求する
- 時刻認証局が、受け取ったハッシュ値に正確な時刻と通し番号を結びつけ、自社の秘密鍵で電子署名する
- 署名済みのデータ(タイムスタンプトークン)を利用者へ返し、利用者は原本と一緒に保存する
ハッシュ値は、入力が1文字でも変わると全く別の値になる性質を持っています。この性質のおかげで、原本を渡さなくても「このデータが存在した」ことを特定できるわけです。ハッシュ関数の性質はハッシュ化とは?暗号化との違いと改ざん検知の仕組みで詳しく扱っています。
原本を事業者に渡さない設計とRFC 3161が定める時刻トークンの中身
RFC 3161(Time-Stamp Protocol)は2001年に公開された仕様で、時刻認証局へ送る要求と、返ってくる応答の形式を定めています。要求に入れるのは、対象データのハッシュ値とハッシュ関数の種類、再送攻撃を防ぐための乱数(nonce)が中心です。
応答のタイムスタンプトークンには、受け取ったハッシュ値、生成時刻(genTime)、トークンごとの通し番号、時刻認証局の運用ポリシーの識別子が含まれ、全体に時刻認証局の電子署名が付きます。原本が外部へ出ないため、未公開の契約書や個人情報を含む帳票にも付与できる設計です。社外秘の書類だから使えない、という心配は要りません。
検証で確かめる3点と保存期間を通じた検証に必要な電子証明書の扱い
検証では、次の3点を確かめます。手元の原本から計算し直したハッシュ値がトークン内の値と一致するか。トークンの電子署名が時刻認証局の電子証明書で正しく検証できるか。その電子証明書が認定を受けた業務のものか。3つとも成り立てば、トークンに書かれた時刻以降、原本は変わっていないといえます。
2点目の検証に使う電子証明書は、総務省のページで認定業務ごとにzipファイルとして配布されています。電子帳簿保存法の要件では、国税関係書類の保存期間を通じて変更がないことを確認できること、課税期間中の任意の期間に付したタイムスタンプを一括して検証できることの2つが求められます。7年分の証憑を後から一括で検証できるかは、製品を選ぶときに必ず確かめる項目です。
電子署名とタイムスタンプの役割分担と電子契約で両方を付けるべき理由
電子署名とタイムスタンプはどちらも公開鍵暗号とハッシュ値を使うため、混同されやすい技術です。何を証明するかで比べると違いがはっきりします。
誰が作ったかを示す電子署名といつ存在したかを示すタイムスタンプの比較
両者の違いを、証明する内容と署名する主体で並べます。
| 比較の観点 | 電子署名 | タイムスタンプ |
|---|---|---|
| 証明する内容 | 作成者と改変の有無 | 存在した時刻と改変の有無 |
| 署名する主体 | 本人または電子契約事業者 | 時刻認証局 |
| 根拠となる制度 | 電子署名法 | 令和3年総務省告示第146号 |
| 単独で足りない点 | 署名した時刻を証明できない | 誰が作ったかを示せない |
電子署名に入る署名日時は、署名者の端末の時計で書き込まれた値です。署名だけでは「いつ署名したか」を第三者に示せず、タイムスタンプだけでは「誰の意思か」を示せません。電子署名の定義と種類は電子署名とは?意味・仕組み・種類と法的効力で整理しています。
電子証明書の有効期限後も署名を検証できるようにする長期署名での位置づけ
電子署名に使う電子証明書には有効期限があり、マイナンバーカードの署名用電子証明書なら発行日から5回目の誕生日までです。期限が切れた後に署名を検証すると、証明書が無効と表示されてしまいます。ところが契約書の保存期間は、期限より長くなることが珍しくありません。
そこで、署名の直後にタイムスタンプを付け、「証明書が有効だった時刻に署名が存在した」ことを固定します。さらに検証に必要な証明書や失効情報を埋め込み、それら全体へ追加のタイムスタンプを重ねて有効期間を延ばす形式が、長期署名と呼ばれるものです。電子契約サービスの多くがこの処理を自動で行っており、電子契約全体の法的な位置づけは電子契約とは?電子署名法による法的効力と書面契約との違いで解説しています。
総務大臣認定の時刻認証業務と2026年時点で認定を受けている6つの事業者
タイムスタンプは誰でも発行できますが、税務で使えるのは国の認定を受けた業務のものに限られます。制度の成り立ちと、現在の認定業務を確認します。
令和3年総務省告示第146号による国の認定制度と民間認定制度からの移行
以前のタイムスタンプは、一般財団法人日本データ通信協会による民間の「タイムビジネス信頼・安心認定制度」で信頼性が担保されていました。国は「時刻認証業務の認定に関する規程(令和3年総務省告示第146号)」で総務大臣による認定制度を整え、日本データ通信協会は認定の調査を担う指定調査機関になっています。
税務の側では、令和4年4月1日以後に保存を行う書類とデータに付すタイムスタンプが、総務大臣が認定する時刻認証業務のものとされました。旧来の民間認定のタイムスタンプも令和5年7月29日までに保存したものに限って認める経過措置があり、民間の認定制度は令和6年3月に廃止されています。国税庁の電子帳簿保存法一問一答の電子取引関係(令和8年7月版)問60が、この経緯をまとめています。
認定時刻認証業務6件の一覧と製品選定で確かめる認定の有無と名称
総務省のページに掲載された認定時刻認証業務は、令和8年3月現在で次の6件です。
| 時刻認証業務の名称 | 業務を行う者 | 認定日 |
|---|---|---|
| セイコータイムスタンプサービス | セイコーソリューションズ | 令和5年2月16日 |
| タイムスタンプサービス DiaStamp | 三菱電機デジタルイノベーション | 令和5年2月16日 |
| アマノタイムスタンプサービス3161 | アマノ | 令和5年2月16日 |
| 認定タイムスタンプ byGMO | GMOグローバルサイン | 令和6年3月18日 |
| タイムスタンプサービス iScign | サイエンスパーク | 令和7年8月8日 |
| ウイングアークタイムスタンプサービス | ウイングアーク1st | 令和7年8月8日 |
DiaStampは令和8年1月13日まで「MINDタイムスタンプサービス」という名称で、検証用の電子証明書ファイルも新旧が並べて配布されています。会計ソフトや文書管理製品の多くは、この6件のいずれかと契約して機能を提供しています。製品のカタログに「タイムスタンプ対応」とだけ書かれている場合は、どの認定業務を使っているかを問い合わせて一覧と照合してください。
電子帳簿保存法でタイムスタンプが必要な場面と付与しなくてよい代替の手段
電子帳簿保存法には電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3区分があり、タイムスタンプが関わるのは後ろの2つです。制度全体の要件は電子帳簿保存法とは?3区分の要件と自社システム対応に譲り、ここではタイムスタンプに絞ります。
電子取引データ保存で選べる4つの措置とタイムスタンプを使わない選び方
メールで受け取った請求書PDFなど電子取引のデータは、電子帳簿保存法施行規則第4条第1項により、次のいずれかの措置で真実性を確保します。
- タイムスタンプが付された後に授受する(第1号)
- 授受の後、速やかにタイムスタンプを付す(第2号)
- 訂正削除の記録が残る、または訂正削除できないシステムで授受と保存を行う(第3号)
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、備え付けて運用する(第4号)
4つは選択式で、タイムスタンプは必須ではありません。国税庁の一問一答(電子取引関係)問32は、データの授受方法に応じて複数の措置を混在させてもよいとしています。受領件数が少ない会社なら、第4号の事務処理規程で対応可能です。規程の作り方は事務処理規程とは?真実性要件を満たす作成方法と国税庁サンプルで解説しています。
付与期限は7営業日以内で業務処理サイクル併用なら最長2か月と7営業日
第2号の「速やかに」は、おおむね7営業日以内に付与していれば満たすと扱われます。さらに、授受からタイムスタンプ付与までの事務の処理に関する規程を定めている会社は、自社の業務処理サイクル(最長2か月)を経過した後、おおむね7営業日以内に付与すればよいとされています。
一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)の問62は、最長2か月を暦の上の2か月と説明し、4月21日に受領したデータなら6月20日が業務処理サイクルの終わりで、そのおおむね7営業日後までに付与すればよいという例を示しています。休日をまたぐ、毎日出社しない担当者が処理する、といった事情も想定した幅です。月末締めで翌月にまとめて処理する会社なら、規程を整えればこの期限に十分収まります。
スキャナ保存で訂正削除履歴のシステムが代替になる条件と自社システムの壁
紙で受け取った領収書をスキャンして保存する場合、入力期間内のタイムスタンプ付与が原則の要件です。一問一答【スキャナ保存関係】(令和8年7月)の問31は、訂正削除履歴の残るシステムに保存するだけでは代替にならず、そのシステムが時刻証明機能を備え、入力期限内に入力したと確認できる場合に限り代替できるとしています。例示されているのは、NTPサーバーと同期したSaaS型クラウドのサーバーが保存時刻を記録し、その時刻が変更されていないと確認できる構成です。
見落とされやすいのが問32です。自社システムでは保存時刻の非改ざん性を完全には証明できないため、時刻証明機能を他社へ提供しているベンダー以外は、自社システムで代替要件を満たせないと回答しています。スキャナ保存の全体の手順はスキャナ保存制度とは?要件と始め方で扱っています。
自社システムにタイムスタンプを組み込むか代替措置で済ませるかを決める判断基準
ここまでの要件を踏まえると、タイムスタンプを自社で扱う必要がある会社は限られます。判断の線を具体的に引きます。
受領した請求書PDFの保存は事務処理規程か既製サービスで足りる会社の条件
電子取引で受け取る請求書や領収書が月に数百件程度で、経理担当者がフォルダとファイル名で管理できる規模なら、タイムスタンプは不要です。第4号の事務処理規程を定め、取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態にしておけば要件を満たします。件数が増えて手作業の管理が限界なら、訂正削除の履歴が残る請求書受領サービスや会計ソフトの証憑保管機能に移すのが近道です。
スキャナ保存も同様に、既製のクラウドサービスを使う会社はサービス側の時刻証明やタイムスタンプに任せられます。この条件で自前のタイムスタンプ付与機能を開発するのは過剰です。
自社開発システムに認定タイムスタンプを組み込むべき場面と見送る場面
組み込みを検討すべきなのは、紙の証憑をスキャンして自社開発の業務システムに保存したい場合です。問32のとおり自社システムでは時刻証明による代替が認められないため、スキャナ保存を自社システムで行うなら、認定タイムスタンプの付与が事実上の前提になります。研究記録や知的財産の先使用を立証したい文書、長期保存する自社発行の証明書類も、時刻の証明を外部に頼る価値がある場面です。
組み込む場合は、認定業務の事業者が提供するAPIを呼び出し、保存処理の中でハッシュ値の送信とトークンの保管を自動化します。設計で詰めるのは、付与に失敗したときの再送と期限管理、課税期間ごとの一括検証の手段、事業者の電子証明書が更新されたときの対応の3点です。逆に、電子取引データしか扱わず、授受と保存を同じシステムで行い訂正削除の履歴を残せるなら、第3号で要件を満たせるためタイムスタンプは見送って構いません。どちらの構成が自社の書類の流れに合うかは、文書管理システム開発で保存対象の棚卸しから相談を受けています。
タイムスタンプとは何かについて意味・期限・電子帳簿保存法でよく寄せられる質問
タイムスタンプについて検索でよく調べられている疑問に、短く答えます。
タイムスタンプとは簡単にいうと何ですか?
電子データに付ける「この時刻にはもう存在していた」「その後は書き換えられていない」という2つの証明です。国の認定を受けた時刻認証局が、データのハッシュ値と正確な時刻を組み合わせて電子署名し、トークンとして発行します。紙の書類に公証役場で確定日付を付けてもらう行為を、電子データで自動化したものと考えると近いでしょう。ログやファイルの更新日時も同じ言葉で呼ばれますが、そちらは記録した側が変更できる値で、証明の力はありません。
タイムスタンプに有効期限はありますか?
タイムスタンプの検証には、時刻認証局の電子証明書を使います。この電子証明書には有効期限があるため、期限を過ぎると通常の方法では検証が難しくなります。長く保存する契約書は、検証に必要な情報を埋め込んだうえで、期限が来る前に新しいタイムスタンプを重ねる長期署名の形式で保存するのが一般的です。電子帳簿保存法では保存期間を通じて変更がないことを確認できることが要件なので、利用する製品が保存期間の終わりまで検証できる仕組みを持っているかを確認してください。
電子帳簿保存法ではタイムスタンプが必須ですか?
必須ではありません。電子取引データは、タイムスタンプの付与、訂正削除の記録が残るシステムでの授受と保存、事務処理規程の運用のいずれかを選べます。スキャナ保存はタイムスタンプが原則ですが、時刻証明機能を備えたクラウドサービスに入力期限内に保存したと確認できる場合は代替できます。ただし自社開発のシステムでは、この代替は原則として認められません。帳簿をシステムで作る電子帳簿等保存の区分には、タイムスタンプの要件はありません。
WordやExcelの請求書データにもタイムスタンプを付けられますか?
国税庁の一問一答(電子取引関係)問63は、PDFを台紙にしてWordやExcelのデータを添付し、そのPDFにタイムスタンプを付ける方法を認めています。相手方とやり取りしたファイルそのものに付与しなければならないわけではありません。パスワード付きPDFを受け取った場合も同じ方法が使えます。ただし検索要件を満たす必要がある会社は、取引先ごとに台紙を分けるなど、台紙そのものを日付・金額・取引先で探せるように保存しておく必要があります。
YouTubeのタイムスタンプとは何ですか?
YouTubeでいうタイムスタンプは、動画の再生位置を「1:23」のように書いた表記のことで、証明用のタイムスタンプとは無関係です。説明欄に書くと、その位置へ移動するリンクになります。YouTubeヘルプの動画チャプターの説明では、説明欄に00:00から始まる3つ以上のタイムスタンプを昇順で並べ、各チャプターを10秒以上にすると、動画がチャプターに分割されます。
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