電子契約は無料でも始められます。クラウドサインは月2件・1名、GMOサインは月5件・1ユーザー、freeeサインは月1通・3名まで、基本料0円で送信できます(2026年10月時点の各社公式料金ページ)。無料プランでも電子署名とタイムスタンプは付くため、締結した契約の法的効力が有料プランより弱くなるわけではありません。限界が来るのは通数よりも、契約書を7年間保存して検索できる状態に置く部分と、送信・承認を別の担当者に分ける部分です。この記事では、電子契約を無料で使う3つの方法、主要4サービスの無料プランで外れる機能、法人税法と電子帳簿保存法から見た無料運用のリスク、無料のまま続けてよい条件と有料へ切り替える境界を順に整理します。
まとめ:電子契約の無料利用が成立する範囲と保存・権限で有料化が要る境界
無料プランで運用が成立するのは、月の締結が2〜5通に収まり、送信から保管までを1人の担当者が完結させる事業者です。個人事業主や設立直後の法人で、年間の契約が数十件以下ならこの条件に当てはまります。締結の法的効力は有料プランと同じ立会人型の電子署名で担保されるため、「無料だから証拠力が弱い」という心配は要りません。
見落とされやすいのは保存側です。契約書は法人税法上、確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要で、電子契約で受け取った契約書は電子帳簿保存法の電子取引データとして電子のまま保存しなければなりません。無料プランには操作ログや閲覧制限が付かないものが多く、保管通数に上限を置くサービスもあります。無料で締結し、保管は自社の決めた場所に集約する、という分担を最初に決めてください。
有料への切り替えは、月の通数が無料枠を超えたときではなく、送信者と承認者を分ける体制になったとき、取引先から当事者型の署名を求められたとき、監査で操作履歴の提出を求められる規模になったときに判断します。
電子契約を無料で使える3つの方法と有料プランと法的効力が変わらない根拠
「無料で電子契約」と一口に言っても、使い方は3種類あります。どれを選ぶかで、続けられる期間と保存の手間が変わります。
無料プラン・無料トライアル・サービスを使わない締結という3方式の違い
1つ目は、期間の定めなく0円で使える無料プランです。クラウドサイン、GMOサイン、freeeサイン、Zoho Signが用意しており、送信通数とユーザー数に上限があります。2つ目は無料トライアルで、freeeサインはStandardプランを14日間、Zoho Signは有料プランを14日間試せます。期間が終われば有料契約に進むか無料プランに戻るかの選択になるため、継続運用の手段ではありません。
3つ目は、電子契約サービスを使わず、PDFの契約書をメールで送り合って合意する方法です。民法第522条第2項は、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面などの方式を要しないと定めています。メールでの合意でも契約自体は成立します。ただし電子署名もタイムスタンプも付かないため、改ざんされていないことや誰が合意したかを後から示す材料は、メールの送受信記録しか残りません。実務で選ぶのは1つ目、3つ目は相手方がサービスの利用を拒む場合の代替と位置づけるのが妥当です。
電子署名法第3条の推定効と無料プランの立会人型でも効力が変わらない理由
電子署名法は第2条で、電子署名を「本人が作成したことを示すもの」かつ「改変されていないかを確認できるもの」と定義し、第3条で、本人だけが行える電子署名が付された電子文書は真正に成立したものと推定すると定めています。無料プランの多くが採る立会人型(サービス事業者の署名鍵で署名する方式)がこの第3条に当たるかについては、所管するデジタル庁の電子署名のページに、2024年1月9日更新のQ&A(電子署名法第3条関係)が掲載されています。利用者側の認証と事業者内部の処理の両方で十分な水準の固有性が確保されていれば、立会人型でも第3条の電子署名に該当しうる、というのがその整理です。
この判断にプランの有償・無償は関係しません。クラウドサインの料金ページはFree Planについて「電子署名+タイムスタンプ:あり」と明記しており、GMOサインのお試しフリーも長期署名と認定タイムスタンプが利用可能です。署名の仕組みそのものは有料プランと同じで、差がつくのは通数・人数・管理機能です。立会人型と当事者型で証拠力がどう分かれるかは電子契約の署名方式・証拠力・保存要件の比較で条文に沿って整理しています。電子契約の定義そのものは電子契約の仕組みと電子署名法による法的効力を参照してください。
主要4サービスの無料プランで送れる通数・ユーザー数と付く機能の公式比較
無料プランの条件は改定されることがあります。以下は2026年10月14日に各社の公式料金ページで確認した内容です。比較サイトの数字は改定前のまま残っていることがあるため、申し込み前には必ず公式ページを見てください。
クラウドサイン・GMOサイン・freeeサイン・Zoho Signの無料枠の比較表
| サービス | 基本料 | 送信の上限 | ユーザー数 | 無料プランの主な制約 |
|---|---|---|---|---|
| クラウドサイン Free Plan | 0円 | 月2件 | 1名 | 電子署名+タイムスタンプは付く |
| GMOサイン お試しフリー | 0円 | 月5件 | 1ユーザー | 契約印タイプのみ・テンプレート5件まで |
| freeeサイン 無料 | 0円 | 電子サイン月1通 | 3名 | 文書保管月3通・API不可 |
| Zoho Sign 無料 | 0円 | エンベロープ月5件 | 1ユーザー | 監査証跡は付く |
出典はクラウドサインの料金プラン、GMOサインの料金プラン、freeeサインの機能詳細・プラン比較、Zoho Signの料金です。通数だけを見ればGMOサインとZoho Signの月5件が最も多く、人数ではfreeeサインの3名が唯一1人を超えます。送る件数が多いのか、関わる人が多いのかで選ぶサービスが変わります。
無料プランで外れる操作ログ・閲覧制限・API連携・当事者型署名の4機能
GMOサインの料金表では、お試しフリーで使えない機能が明示されています。実務で効くのは次の4つです。
- 操作ログ管理:誰がいつ書類を開き、送信し、取り消したかの記録。内部監査や紛争時に操作の経緯を示す材料になる
- 閲覧制限と役割・権限設定:営業担当には自分の案件だけ、法務には全件、という見せ分け
- Web API:販売管理や顧客管理のシステムから契約書を自動送信する連携(GMOサインはスタンダード以上、freeeサインはStarter以上)
- 当事者型署名(実印タイプ):署名者本人の電子証明書で署名する方式。GMOサインの無料プランは契約印タイプのみ
4つのうち最初に困るのは操作ログです。担当者が1人のうちは問題になりませんが、2人目が加わった時点で「誰が送ったのか」を画面上で追えなくなります。延長タイムスタンプもGMOサインの無料プランでは対象外で、ライト以上で1件30円の有料機能です。署名の検証可能期間を延ばす仕組みの考え方はタイムスタンプの仕組みと電子帳簿保存法での要否で解説しています。
無料トライアルの14日間を継続運用の前提にしてはいけない理由
無料トライアルは、有料プランの全機能を期間限定で試すための仕組みです。freeeサインはStandardを14日間、Zoho Signは有料プランを14日間無料で使えます。期間中に送信した契約書は、トライアル終了後にどのプランへ移るかで扱いが変わります。
freeeサインのヘルプでは、有料プランを解約すると無料プランへ移行し、アカウントを削除しない限り締結済みの文書は引き続き確認できると案内しています。一方で、送信時や相手方が添付したファイル、補足資料は移行前にダウンロードするよう求めており、無料プランのアカウント上限は3つです(freeeサインの有料プランを解約する・2026年9月7日更新)。トライアル期間中に本番の契約を大量に締結すると、終了後に添付資料の退避と利用者の削減という作業が残ります。トライアルは操作確認とテスト送信にとどめ、本番の締結は継続するプランを決めてから始めてください。
7年保存義務と電子帳簿保存法から見た無料プランで契約書を保管し続けるリスク
締結までは無料で済んでも、保存義務は無料になりません。ここが競合の比較記事で扱われていない論点です。
法人税法の7年保存と無料プランの保管機能・アカウント削除時の確認点
国税庁のタックスアンサーNo.5930 帳簿書類等の保存期間(令和8年4月1日現在法令等)によれば、法人は契約書を含む取引関係の書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年間です。
無料プランで締結した契約書を、そのサービスの中だけに置いておく運用はここで危うくなります。確認すべきは3点です。保管できる通数に上限があるか(freeeサインの無料プランは文書保管が月3通)、アカウントや利用者を削除したときに書類がどうなるか、サービスの終了や規約の改定時に一括ダウンロードの手段があるか。7年を超える期間を1つの無料アカウントに預ける前提は置かず、締結のたびにPDFを自社の保存先へ書き出す手順を決めておくのが安全です。電子契約書の記載事項と保存要件の全体像は電子契約書の原本性と電子帳簿保存法の保存要件で扱っています。
検索要件が不要になる売上高5,000万円以下の条件と無料運用で残る作業
電子契約で締結した契約書は、電子帳簿保存法上の電子取引データです。令和6年1月以降、紙に印刷して電子データを消す保存は認められていません。保存には「可視性の確保」と「真実性の確保」が求められ、可視性の中心が取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態にする検索要件です。
国税庁のリーフレット「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」(令和5年12月)は、2課税年度前の売上高が5,000万円以下の事業者、または電子取引データをプリントアウトして日付と取引先ごとに整理している事業者は、税務調査の際に電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じられるようにしていれば検索要件は不要と説明しています。無料プランで足りる規模の事業者は、多くがこの売上高の条件に入ります。その場合に残る作業は、データを消さずに保存し続けることと、求められたときに取り出せる状態を保つことの2つです。売上高が5,000万円を超える事業者は、無料プランの検索機能で3項目の検索ができるかを確かめ、足りなければ保存先の側で検索できる仕組みを用意する必要があります。
サービスを使わずPDFとメールで締結する場合に事務処理規程で補う範囲
電子契約サービスを通さず、メールに添付したPDFで契約を交わした場合も、そのPDFは電子取引データです。タイムスタンプが付かないため、真実性の確保は別の方法で満たす必要があります。前述のリーフレットは、専用システムを入れていなくても、不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて守れば真実性を満たせると案内しています。
規程の雛形は国税庁の参考資料(各種規程等のサンプル)に「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」として掲載されています。自社の組織に合わせて管理責任者や訂正削除の手続きを書き換え、備え付けておけば、費用をかけずに保存要件を整えられます。とはいえ、規程を作っても署名の証拠力は補えません。PDFとメールの方式は、締結件数が年に数件で、かつ相手方との信頼関係が既にある取引に限るべきです。
無料プランのまま使い続けてよい事業者と有料プランへ切り替える4つの境界
ここまでの制約を踏まえ、無料で続ける条件と切り替えの判断線を言い切ります。
無料運用を続けてよい条件は月2〜5通・担当者1人・保存先を別に持つこと
無料プランのまま運用してよいのは、次の3条件をすべて満たす場合です。月の締結がクラウドサインなら2件、GMOサインやZoho Signなら5件以内に収まること。送信から保管までを1人で完結させていること。締結した契約書を自社の保存先へ書き出し、7年間取り出せる状態にしていること。
反対に、無料プランを複数サービスで掛け持ちして通数を稼ぐ運用は採りません。契約書の保管場所が分散し、税務調査でダウンロードを求められたときにどのアカウントに何があるかを追えなくなるためです。月の件数が1サービスの無料枠を超えたら、掛け持ちではなく有料化を検討してください。有料プランの月額と送信料、通数別の3年間の総額は電子契約の費用相場と無料プランの線引きで試算しています。
有料へ切り替える境界は承認者の分離・当事者型の要求・監査・通数超過
次の4つのうち1つでも当てはまったら、有料プランへ切り替える時期です。重い順に並べます。
- 送信者と承認者を分ける体制になった:営業が作成し、上長が承認してから送る流れは、ユーザー1名の無料プランでは組めない
- 監査や紛争に備えて操作履歴を残す必要が出た:操作ログと閲覧制限は多くの無料プランで対象外
- 取引先から当事者型の署名を求められた:GMOサインの無料プランは契約印タイプ(立会人型)のみ
- 月の締結件数が無料枠を超えた:クラウドサインなら3件目、GMOサインなら6件目から送れない
通数の超過を最後に置いたのは、件数より先に体制の変化で無料プランが合わなくなるケースが多いためです。月3件しか契約しない会社でも、法務の確認と役員の承認が入れば関係者は3人を超えます。社内の稟議や承認の流れまで含めた導入の段取りは電子契約の導入手順にまとめています。
無料の電子契約と社内の文書管理を受託開発でつなぐ場合の判断基準
無料プランで締結し、保管は自社で持つ。この分担を続けると、書き出したPDFの置き場所と台帳の管理が次の課題になります。
無料プランの締結と社内保管をつなぐ連携を自社開発しないほうがよい場面
無料プランはAPIが使えないものが多く、締結済みPDFを自動で社内システムに取り込む連携は組めません。月5件以下の規模で、手作業でのダウンロードとファイル名の付け替えに月30分もかからないなら、連携を開発する投資は回収できないため採用しません。共有フォルダに「締結日_取引先名_金額」の命名規則を決め、事務処理規程に保存手順を書いておけば、検索要件が不要な規模の事業者はそれで足ります。
文書管理システムの開発投資が見合う月間の契約件数と台帳要件の目安
投資の検討に値するのは、有料プランに移行して月数十件以上を締結し、電子契約以外の経路(メール添付のPDF、紙の契約書のスキャン、取引先のシステムからのダウンロード)でも契約書が届いている場合です。電子契約サービスの保管機能は、そのサービスで締結した書類しか管理できません。経路が複数に分かれると、検索要件の3項目で横断検索できる台帳と、更新期限の通知、部署別の閲覧権限を社内側に持つ必要が出てきます。
この段階では、電子契約サービスのAPIで締結済みの書類を取り込み、他の経路の契約書と同じ台帳に登録する文書管理の仕組みを作る価値があります。契約書の保存と検索、権限管理を自社の業務に合わせて設計する場合は、文書管理システム開発で要件整理から対応しています。
よくある質問
電子契約を無料で使う場面で、検討時によく挙がる質問に答えます。
無料の電子契約でも法的効力はありますか?
あります。クラウドサインのFree PlanやGMOサインのお試しフリーは、有料プランと同じ立会人型の電子署名とタイムスタンプを付けて締結する仕組みです。電子署名法第3条の推定効が立会人型に及ぶかについては、デジタル庁が2024年1月9日更新のQ&Aで、利用者側と事業者内部の両方で固有性が確保されていれば該当しうると整理しています。プランが無料か有料かは効力に影響しません。差があるのは通数・ユーザー数・管理機能です。
電子契約の無料プランでは月に何件まで送れますか?
2026年10月14日時点の公式料金ページでは、クラウドサインが月2件、GMOサインが月5件、Zoho Signが月5件、freeeサインが電子サイン月1通です。ユーザー数はfreeeサインのみ3名で、他の3サービスは1名です。上限は改定されることがあり、比較サイトには古い数字が残っている場合もあるため、申し込み前に各社の公式ページで確認してください。
契約の相手方にも費用やアカウント登録は必要ですか?
立会人型で送る場合、受け取る側に費用は発生せず、アカウント登録も原則として要りません。届いたメールのリンクから内容を確認して署名する流れです。送信通数の上限は送る側のアカウントに対してかかるため、相手方が署名しても自社の無料枠は減りません。当事者型を求められた場合は双方に電子証明書が必要になり、GMOサインの無料プランでは対応できません。受信側が同意を完了するまでの操作は電子契約のやり方と送信側・受信側の締結手順で解説しています。
個人事業主やフリーランスでも無料プランで足りますか?
月の契約が数件で、自分1人で送信から保管まで行うなら足ります。注意したいのは保存期間です。個人事業主にも帳簿書類の保存義務があり、電子契約で受け取った契約書は電子帳簿保存法の電子取引データとして電子のまま保存します。前々年の売上高が5,000万円以下なら、ダウンロードの求めに応じられる状態にしておけば検索要件は不要です。締結のたびにPDFを手元に書き出しておく運用を組み合わせてください。
無料プランから有料プランへ移るとき契約書のデータは引き継げますか?
扱いはサービスごとにヘルプで定められているため、プラン変更の前に確認してください。参考になるのは逆方向の例です。freeeサインのヘルプは、有料プランを解約して無料プランへ移行してもアカウントを削除しない限り締結済み文書は確認できる一方、添付ファイルや補足資料は移行前にダウンロードするよう案内しています。別のサービスへ乗り換える場合は自動では移らないため、締結済みPDFを一括で書き出してから解約してください。
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