電子契約のやり方は、送る側と受け取る側で作業がまったく違います。送信側は契約書のPDFをサービスに上げ、宛先と署名欄を設定して送るまでを担い、受信側は届いたメールのリンクから内容を確認して同意するだけです。この記事では、クラウドサインの公式ヘルプ(2026年10月14日時点)に沿って、送信前に決めること、送信側の操作手順、受信側の同意までの流れ、締結後の保存を順に示します。あわせて、建設工事のように相手方の事前承諾が要る取引の確かめ方と、相手方が電子契約に慣れていない場合の進め方、紙に戻す判断まで整理します。
まとめ:電子契約のやり方を送信側と受信側の作業に分けて押さえる要点
送信側の作業は「署名方式を決める」「PDFを上げて宛先と入力欄を設定する」「送る」の3段階です。クラウドサインでは送信と同時に電子署名が施され、送った後は一切修正できません。宛先のメールアドレス、署名欄の割り当て、契約書の版の3点は送信ボタンの前に必ず見直してください。
受信側はアカウント登録も費用も要りません。確認依頼メールのリンクを開き、利用規約に同意して書類を確認し、「同意して確認完了」を押せば締結です。注意すべきはリンクの有効期限で、クラウドサインの書類確認URLは生成から10日間で切れます。
うまく進まない原因の多くは、操作ではなく事前の連絡不足にあります。相手方が初めて電子契約を受け取る場合は、送る前にサービス名・送信元・期限・操作の流れを伝えておく。建設工事の請負契約なら、建設業法上の事前承諾を取ってから送る。この2つを守れば、締結が止まる場面の大半は防げます。
電子契約を送る前に送信側が決めておく署名方式と相手方の事前承諾の有無
画面を開く前に決めておくことが2つあります。どの署名方式で送るかと、その取引で相手方の承諾が要るかです。ここを飛ばすと、送った後に相手方から「この方式では受けられない」と返され、送り直しになります。
立会人型と当事者型のどちらで送るかで相手方の準備が変わる理由
立会人型は、サービス事業者がメール認証などで本人を確かめ、事業者の署名鍵で電子署名を付ける方式です。相手方はメールを受け取れれば締結でき、事前の準備はほとんどありません。
当事者型は、署名する本人が認証局から発行された電子証明書を使って署名する方式です。証拠力は高い一方、相手方にも電子証明書の取得と費用が発生します。クラウドサインのヘルプも、高度な認証による署名を使う書類では受信者側にもアカウント登録が必要だと案内しています。相手方が当事者型を指定してこない限り、最初の1件は立会人型で送るのが現実的です。2つの方式の証拠力の差と選び分けは契約書の電子署名で当事者型と立会人型を選び分ける判断基準で詳しく扱っています。
建設工事や下請取引で相手方の承諾が要るかを法令ごとに確かめる手順
一般的な売買や業務委託の契約は、民法上、書面でなくても成立するため、電子契約で送ること自体に相手方の事前承諾は要りません。例外は、業法が書面の交付を義務づけ、電子化に条件を付けている取引です。
代表例が建設工事の請負契約です。国土交通省の電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン(令和7年9月30日)は、電子契約に際して、あらかじめ電磁的措置の種類と内容を示したうえで、書面または電磁的方法による相手方の事前承諾を得る必要があるとしています。示す内容は、使うサービスの名称、PDF等のファイル形式、電子署名またはタイムスタンプの形式などです。承諾は電子メールやクラウドサービスでも取れます。建設業の電子契約で求められる技術的基準は建設業法19条3項の技術的基準と注文書・請書の電子化を参照してください。
反対に、承諾が不要になった取引もあります。下請法を改正した取適法は2026年1月1日に施行され、公正取引委員会の取適法リーフレット(令和7年8月)は、発注内容を明示する書面の交付について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず電子メールなどの電磁的方法で行えるようになったと説明しています。旧法時代の「承諾書を取ってから電子化」という手順を、発注書にまでそのまま残している会社は見直してかまいません。
送信側の電子契約のやり方としてPDF準備から送信完了までの操作手順
ここからはクラウドサインの公式ヘルプ「書類を送信する」に沿って、1件の契約書を送るまでを追います。他のサービスでもボタン名が違うだけで、流れはほぼ同じです。
契約書PDFのアップロードから宛先と入力欄の設定までの7つの操作
先に契約書をWordなどで仕上げ、PDFに書き出しておきます。アップロードできるのはPDFで、1ファイル50MB、合計200MBまで、ファイル名は64文字までです。準備ができたら次の順に操作します。
- 画面左上の「新しい書類の送信」を押す
- 「新しく書類(PDF)をアップロード」を選び、契約書PDFを上げる
- 書類のタイトルを入力して「次へ」を押す
- 「宛先を追加」で相手方のメールアドレス・氏名・会社名を入れて「保存」する
- 押印欄・フリーテキスト・チェックボックスを書類上に配置し、誰が入力するかを割り当てる
- 送信内容を確認して「送信する」を押す
- 確認画面でもう一度「送信」を押す
手順5の入力欄は任意です。相手方に署名日や担当者名を書き込んでもらう必要がなければ、何も置かずに送っても締結できます。社内の上長が先に同意してから相手方へ回したい場合は、手順4で宛先を上長、相手方の順に並べます。前の宛先が同意すると次の宛先へ確認依頼が届く仕組みです。無料プランで送れる通数とユーザー数の上限は電子契約を無料で使う方法と無料プランの上限にまとめています。
送信後は修正できないため送る前に見直す3項目とアクセスコード
クラウドサインのヘルプは、送信と同時に改ざん不能な電子署名が施され、送信後の修正は一切できないと明記しています。誤りに気づいたら、取り消して作り直すしかありません。送信ボタンの前に見直すのは次の3項目です。
- 宛先のメールアドレス:1文字違いでも確認依頼が届かず、相手方は待ち続ける
- 入力欄の割り当て:相手方が書くべき欄が自社の担当者に割り当たっていないか
- 契約書の版:交渉中の修正前のPDFを上げていないか、条項番号と日付は最終版か
金額の大きい契約や、相手方の共有アドレスに送る場合は、宛先ごとにアクセスコードを設定しておくと安全です。コードはメールと別の経路、たとえばSMSや電話で伝えます。メールのリンクだけで書類が開ける状態を避けられます。
受信側の電子契約のやり方として確認依頼メールから同意完了までの流れ
電子契約を受け取る側の作業は短く済みます。ただし、リンクの期限と、担当者以外に届いたときの扱いを知らないと、締結が止まります。
アカウント登録なしで書類を開いて同意するまでの3つの画面操作
クラウドサインのヘルプのFAQによれば、受信者はアカウントを登録しなくても、利用規約に同意すれば書類の確認と同意ができます。費用もかかりません。操作は「受信した書類を確認、同意する」のとおり3段階です。
- 確認依頼メールのリンクを開き、「利用規約に同意して書類を開く」を押す
- 書類を読み、入力欄があれば記入して「書類の内容に同意」を押す
- 最後に「同意して確認完了」を押す
社内で押印申請が必要な会社は、ボタンを押す前に、紙の契約と同じ決裁を済ませておいてください。押してからでは取り消せません。
書類確認URLの有効期限10日と担当者が違うときに転送する方法
書類確認URLの有効期限は生成から10日間です。期限が切れたら、受信側では開き直せないため、送信側への再送依頼が必要です。送信側は「先方確認中」の一覧からリマインドを送れます。何度でも無料で、リマインドした時点から新たに10日間有効なURLが発行され、以前のメールのURLは使えなくなります。受信側が古いメールのリンクを開いて「無効」と表示されるのはこのためです。
確認依頼が契約の担当者ではなく営業の窓口に届いた場合は、「この書類を転送する」で担当者に回せます。ただし送信側が書類作成時に転送を許可していることが前提で、フリープランで送られた書類は転送できません。受信者の数とあわせて127件が上限で、転送した側はその後書類を操作できなくなります。転送できない場合は、送信側に宛先の変更を頼むのが確実です。
締結完了後に送信側と受信側がそれぞれ行う保存と締結済み書類の扱い
全員が同意すると、締結完了のメールが送信者とすべての受信者(転送先を含む)に届きます。ここで終わりにせず、双方が書類を手元に残すところまでが電子契約のやり方です。
締結後10日間の閲覧期限と締結済みPDFを自社の保存先へ移す手順
クラウドサインの通知メールのヘルプによれば、アカウントを持たない受信者が締結済み書類をオンラインで閲覧できるのは締結後10日間です。締結から5日後に、期限を知らせるメールが届きます。受信側は10日以内に締結済みPDFをダウンロードし、自社の保存先に置いてください。期限を過ぎると、送信側に頼んで送ってもらうしかなくなります。
茨城県企業局の建設工事における電子契約の案内も、締結完了のメールが届いたら電子契約システムから契約書をダウンロードして保管するよう受注者に求めています。電子契約で受け取った契約書は、電子帳簿保存法の電子取引データとして電子のまま保存する必要があり、紙に印刷して済ませることはできません。ファイル名に締結日・取引先名・金額を入れておくと、検索の要件を満たしやすくなります。保存要件の全体像は電子契約書の原本性と電子帳簿保存法の保存要件で解説しています。
相手方が電子契約に慣れていない場合の進め方と紙に戻す判断基準
電子契約が止まる原因は、操作の難しさより、相手方が「知らない送信元から来たメール」を開かないことにあります。競合の解説記事はこの部分をほとんど扱っていませんが、実務で時間を取られるのはここです。
送る前の事前連絡で相手方に伝える4項目と届かないときに確かめる順序
初めて電子契約を送る相手には、送信前に電話かいつものメールで次の4項目を伝えます。
- 使うサービス名と送信元:クラウドサインなら送信元ドメインは「cloudsign.jp」「mail.cloudsign.jp」
- 相手方の費用と登録が不要なこと
- リンクの有効期限が10日間であること
- 同意までの3つの操作と、社内決裁を先に済ませてほしいこと
それでも「届かない」と言われたら、クラウドサインのメールが受信できない場合のヘルプに沿って、宛先アドレスの誤り、迷惑メールフォルダ、上記ドメインの受信許可の順に確かめます。共有アドレスやメーリングリスト宛ての場合は、転送の過程で迷惑メールと判定されることもあります。原因が相手方のメールサーバーにあるときは、個人のアドレスに宛先を変えて送り直すのが早道です。
契約日と署名日のずれを防ぐ段取りと紙での締結に切り替える場面
茨城県企業局の案内は、確認依頼のメールが届いた日のうちに同意できないと、契約書の契約日と電子署名の日が一致しなくなると注意しています。契約書に日付を先に書いて送ると、相手方の同意が遅れた分だけ食い違います。契約日を本文に書かず、署名の日付を締結日とする条項にしておくか、相手方に同意予定日を確認してから送るかのどちらかに決めてください。受け取る側の負担を小さくする例として、板橋区の電子契約サービスのお知らせでは、令和8年10月1日以降に発注する工事請負契約などについて、受注者は入札時に電子契約利用申出書を出すだけで、事前登録も費用負担もなく締結できると案内しています。
それでも紙に戻すべき場面はあります。相手方が社内規程で紙の契約書しか認めていない、決裁者がメールを受け取れる環境にない、当事者型を求められたが自社が対応していない。この3つのどれかに当たるなら、説得に時間をかけずに紙で締結し、次の更新時に改めて打診します。1件の締結を遅らせてまで電子化を通す理由はありません。取引先ごとに打診の順序を決める進め方は電子契約の導入手順と取引先合意の進め方にまとめています。
月の締結件数が増えたときに手作業の送信と保存を見直す判断基準
ここまでの手順は、月に数件なら画面操作だけで回ります。件数が増えると、送信より締結後の作業が重くなります。
送信と保存の手作業をシステム連携に置き換える件数と台帳の目安
月5件程度なら、PDFのダウンロードとファイル名の付け替えは月30分もかかりません。この規模で連携を開発しても投資は回収できないため、命名規則と保存先を決めるだけで十分です。
見直しが要るのは、月数十件を超え、電子契約以外の経路でも契約書が届くようになったときです。メール添付のPDF、紙の契約書のスキャン、取引先のシステムからのダウンロードが混ざると、どの契約がどこにあるかを人の記憶で追えなくなります。この段階では、電子契約サービスのAPIで締結済み書類を取り込み、他の経路の契約書と同じ台帳に登録する仕組みが効きます。APIや基幹システム連携を前提にしたサービスの選び方は電子契約システムの認証方式・連携・費用による比較を参照してください。契約書の保存・検索・更新期限の通知を自社の業務に合わせて作る場合は、文書管理システム開発で要件整理から対応しています。
よくある質問
電子契約のやり方について、送信側と受信側の双方からよく挙がる質問に答えます。
電子契約を受け取った側に費用やアカウント登録は必要ですか?
立会人型で送られた契約なら、受け取る側に費用はかからず、アカウント登録も要りません。クラウドサインでは、確認依頼メールのリンクを開き、利用規約に同意すれば書類の確認と同意ができます。例外は高度な認証による署名を使う書類で、この場合は受信者側にもアカウント登録が必要です。当事者型を指定された場合は電子証明書の取得が別途必要になります。
確認依頼メールのリンクが期限切れになったらどうすればよいですか?
受信側からは開き直せないため、送信側に再送を頼んでください。クラウドサインの書類確認URLは生成から10日間有効で、送信側がリマインドを送ると、その時点から新たに10日間有効なURLが届きます。リマインドは何度でも無料です。リマインド後は以前のメールのリンクが無効になるため、必ず最新のメールから開きます。
電子契約で送った契約書を送信後に修正できますか?
できません。クラウドサインは送信と同時に改ざん不能な電子署名を施すため、送信後の修正は一切できない仕組みです。誤りに気づいたら送信を取り消し、修正したPDFで作り直して送ります。相手方が同意した後に誤りが見つかった場合は、修正内容を定めた覚書を別途締結するのが一般的な扱いです。
契約書に書く契約日は送信日と署名日のどちらにすればよいですか?
相手方の同意が遅れると、本文に書いた契約日と電子署名の日がずれます。茨城県企業局の案内も、確認依頼の当日に同意できないと両者が一致しなくなると注意しています。契約日を空欄にして署名完了日を締結日とする条項にするか、相手方の同意予定日を確認してからその日付で送るか、社内でどちらかに統一してください。
相手方が電子契約に応じてくれない場合はどうすればよいですか?
理由を聞いたうえで、規程上紙しか認めていない、決裁者がメールを受け取れない、当事者型を求められて自社が対応していない、のいずれかなら紙での締結に切り替えるのが妥当です。単に不安というだけなら、サービス名・送信元・費用不要・期限・操作の流れを事前に伝えると応じてもらえることが多くあります。断られた取引先は記録しておき、次の契約更新時に改めて打診します。
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