SharePointとOneDriveの違いは、機能の差よりも「ファイルの持ち主が組織か個人か」にあります。どちらもMicrosoft 365でファイルを保存し、共有し、共同編集できるため、社内で置き場所がばらばらになりがちです。この記事では、持ち主・容量・共有の起点という3つの軸で両者を比べ、Teamsのチャットとチャネルで保存先が変わる仕組みを整理します。そのうえで、退職者のOneDriveが何日後にどうなるのかをMicrosoftの公式資料の数字で示し、社内規程に書くべき保存先ルールと、OneDriveだけで運用してよい組織の条件まで言い切ります。
OneDriveは社員一人ひとりの作業場所で、持ち主は本人です。SharePointはチームや部署のサイトで、持ち主は組織です。この違いが最もはっきり表れるのが退職のときで、OneDriveは既定ではアカウント削除から30日の保持期間を経て削除に進みます。ライセンスだけ外して残す運用も、60日で読み取り専用、93日でアーカイブとなり、無料では保てません。
保存先のルールは一問で決められます。「自分以外の人が、半年後にそのファイルを開くか」。開くならSharePoint、開かないならOneDriveです。Teamsのチャットに添付したファイルは送信者のOneDriveに入るため、業務の正式な資料はチャットではなくチャネルかSharePointのサイトに置く、という一文も規程に入れておくと抜け漏れを防げます。
両者は同じ基盤の上で動いているため、できることはほとんど重なります。違いが出るのは、誰のものか、どこまで入るか、誰を起点に共有するか、の3点です。
ファイルの持ち主が個人か組織かで決まる、異動・退職後のファイルの扱い
OneDriveのファイルは、そのアカウントを持つ社員に属します。本人が異動しても手元に残る一方、退職してアカウントが消えれば、ファイルも一緒に削除の手続きに入る仕組みです。SharePointのサイトはチームや部署に属するため、担当者が入れ替わってもファイルは同じ場所に残り続けます。
Microsoft自身も、この線引きを明確にしています。OneDriveのサービスの説明には、部門や組織レベルのデータを含め、個人の作業ファイル以外の保存はサポートされていないと書かれています。チームや組織でのファイル管理にはSharePointを使うよう案内されており、部署の共有フォルダーをOneDriveに作る運用は、そもそも想定外の使い方です。
容量の考え方も違います。OneDriveはユーザーごとに枠が割り当てられ、SharePointは組織全体で1つの枠を分け合います。2026年10月時点の公式資料の値を並べると次のとおりです。
| 項目 | OneDrive | SharePoint |
|---|---|---|
| 容量の単位 | ユーザーごと | 組織全体で共有 |
| Business系プラン | 1人あたり1TB | 1TB+10GB×ライセンス数 |
| E3・E5 | 1TB(5TBまで増加可) | 同上 |
| F3 | 1人あたり2GB | 同上 |
| ファイルの持ち主 | 社員本人 | チーム・部署 |
OneDriveの値はOneDriveのサービスの説明、SharePointの値はSharePointの制限によります。50人の会社なら、OneDriveは各自1TB、SharePointは組織で1.5TBです。1人あたりで見るとOneDriveのほうが広いため、容量が足りないからとOneDriveに部署の資料を寄せる判断が生まれやすくなります。
共有と共同編集は同じ仕組みでも、権限の起点が個人かサイトかで変わる
共有リンクの発行、同時編集、版の履歴は、どちらでも同じように使えます。違うのは権限の起点です。OneDriveでは持ち主の社員が一つずつ共有相手を決めるため、誰に何を見せているかは本人しか把握していません。SharePointではサイトのメンバーに権限がまとめて付き、メンバーを入れ替えれば見られる人もまとめて変わります。
この差が表に出るのは、Microsoft 365 Copilotを入れたときです。Copilotは利用者が開けるファイルを横断して回答を作るため、個人が「組織内のすべてのユーザー」向けに発行したリンクの中身まで回答に混ざりえます。OneDriveの共有リンクを含めた過剰共有の洗い出し方は、Microsoft 365 Copilotの情報漏洩対策と過剰共有の洗い出しで手順を示しています。
OneDriveとSharePointは別の製品に見えますが、仕組みとしてはOneDriveもSharePointの上に作られた個人用のサイトです。退職者のOneDriveが削除されると「サイトコレクションのごみ箱」に移る、と公式資料が書いているのはこのためです。SharePointそのものの役割や、Teamsとの関係を含めた全体像はSharePointとは?できることとOneDrive・Teamsとの違いで整理しています。ここで押さえるべきなのは、同じ基盤だから移し替えが容易で、だからこそ置き場所のルールを決めないと両方にファイルが散る、という点です。
保存先の混乱の多くは、Teamsから生まれます。同じTeamsの画面でファイルを送っても、チャットかチャネルかで保存先が変わるからです。
1対1・グループチャットの添付は送信者のOneDriveに保存される仕組み
1対1やグループのチャットに添付したファイルは、送った人のOneDriveにある「Microsoft Teams Chat Files」フォルダーに保存され、その会話の相手とだけ共有されます。Microsoft Teamsのファイルストレージの説明どおりの動きです。
実務で困るのは、持ち主が送信者になる点です。営業担当がチャットで顧客向け見積書を何度も送っていた場合、その見積書はすべて営業担当のOneDriveにあります。担当者が退職すると、チャットの履歴にファイルの名前は残っていても、中身は開けなくなります。チャットは一時的な受け渡しに限り、残すべき資料はチャネルに置く。これが規程に書くべき一文です。
チャネルに置いたファイルは、チームに紐づくSharePointサイトに保存されます(チームとサイトの関係の全体像は「TeamsとSharePointの関係」を参照)。TeamsとSharePointの統合の概要によれば、標準チャネルはチーム作成時にできる親サイトをすべてのチャネルで共有し、チャネルごとにフォルダーが分かれます。プライベートチャネルと共有チャネルの保存先は、それぞれ専用のSharePointサイトです。
プライベートチャネルを作るたびにサイトが1つ増えるため、チャネルを気軽に作る運用ではサイトの数が部署の数を大きく上回ります。どのサイトが正本か分からなくなる前に、プライベートチャネルを作れる人と用途を決めておくと、後からの整理が軽く済みます。
退職者のOneDriveはどうなるか:30日の保持期間と93日後のアーカイブ課金
SharePointとOneDriveの違いを最も強く意識させられるのが、退職者のファイルです。ここはMicrosoftの資料が日数まで定めているので、規程はその日数に合わせて組み立てます。
アカウント削除から30日の保持期間、7日前通知、ごみ箱93日という流れ
OneDriveの保持と削除によると、Microsoft Entra IDからユーザーを削除したときの流れは次のとおりです。
- ユーザーを削除すると、そのOneDriveが削除の対象として記録され、既定で30日の保持期間が始まる
- 既定の設定では、Entra IDにマネージャーが設定されていればマネージャーにOneDriveへのアクセス権が自動で付き、通知メールが届く
- 保持期間が切れる7日前に、削除を予告する2通目のメールが届く
- 保持期間が終わると、OneDriveはごみ箱に移って93日保持され、共有していた相手も開けなくなる
- ごみ箱からの復元はPowerShellでの操作が必要になる
注意点は2つ目の条件です。Entra IDにマネージャーが入っていない社員は、誰にも自動でアクセス権が渡りません。SharePoint管理センターでセカンダリ所有者を指定しておかないと、退職者のファイルを誰も取り出せないまま期限を迎えます。マネージャー属性の入力は、管理者の初期設定の段階で済ませておく作業で、Microsoft 365 管理センターの初期設定と権限設計の順番に組み込んでおくと漏れません。
保持期間を3650日に延ばしても、ライセンスなしなら93日でアーカイブされる
保持期間そのものは延ばせます。削除されたユーザーのOneDriveリテンション期間の設定では、SharePoint管理センターで30〜3650日の範囲を指定でき、PowerShellなら Set-SPOTenant -OrphanedPersonalSitesRetentionPeriod で同じ値を変えられます。
ところが、ここに落とし穴があります。ライセンスのないOneDriveは、保持期間で93日を超えて残す設定にしていても、93日目に自動でアーカイブされると公式資料に明記されています。アーカイブされたOneDriveは、本人も管理者もそのままでは開けません。保持期間を3650日にしたから10年は安心、とはならないということです。
2026年7月から始まった未払い365日の削除ルールとアーカイブの料金
退職者のアカウントは消さずにライセンスだけ外しておく、という運用をとる会社は少なくありません。この運用にも期限ができました。ライセンスのないOneDriveアカウントの管理によると、ライセンスのないOneDriveは60日で読み取り専用、93日でアーカイブになります。さらに2026年7月1日から、課金を有効にしていない未払いの状態が累積365日に達すると、保持設定や保持ポリシーがあっても削除される対象になりました。
| ライセンスを外してからの日数 | OneDriveの状態 |
|---|---|
| 60日目 | 読み取り専用 |
| 93日目 | アーカイブ(そのままでは開けない) |
| 275日目 | 電子情報開示で使えなくなる |
| 累積未払い365日 | 削除の対象 |
アーカイブを開くには、従量課金の設定をしたうえで1GBあたり0.60ドルの再アクティブ化料金がかかり、以後はライセンスのないアカウント全体に1GBあたり月0.05ドルの保管料金がかかります。1TB使っていた退職者を1人開くだけで約614ドルかかる計算になります。この数字を見れば結論は一つで、退職者のファイルはOneDriveに残さず、在職中にSharePointへ移すのが最も安い方法です。なお、教育機関向けや米国政府機関向けのテナントはこの変更の対象外です。
社内規程に書く保存先ルール:OneDriveに置いてよいもの・置いてはいけないもの
ルールが曖昧なまま利用を始めると、社員は手近なOneDriveに保存し、必要に応じて共有リンクを配る運用に流れます。最初に決めるべき項目は多くありません。
ファイルの保存先を決める判定基準は「自分以外が半年後に開くか」の一問
保存先の判断を社員に任せる場合、細かな分類表は守られません。判定は一問にします。自分以外の人が半年後にそのファイルを開く見込みがあるならSharePoint、無いならOneDriveです。契約書、見積書、手順書、議事録、顧客とのやり取りの記録はすべてSharePointに入ります。OneDriveに残るのは、作成途中の下書き、自分用のメモ、個人の研修資料程度です。
下書きをOneDriveで作り、完成したらSharePointへ移す、という二段階の流れも認めてかまいません。ただし「完成したら移す」は忘れられがちです。共有リンクを2人以上に配った時点で移す、と行動で決めておくほうが守られます。
規程に盛り込む5項目:置き場所・共有リンク・チャット添付・退職・棚卸し
保存先ルールとして文書にするのは、次の5項目で足ります。上から順に効果が大きい項目です。
- 置き場所:他者が参照するファイルはSharePointのサイトに保存し、OneDriveに部署の共有フォルダーを作らない
- 退職・異動:最終出社日の2週間前までに、業務ファイルをOneDriveから所属部署のサイトへ移す
- チャット添付:Teamsのチャットは一時的な受け渡しに限り、残す資料はチャネルに置く
- 共有リンク:「組織内のすべてのユーザー」向けリンクは原則発行せず、特定の相手を指定する
- 棚卸し:情シスが四半期に一度、OneDriveの外部共有と大容量のアカウントを確認する
5項目のうち、最初の2つだけでも退職時のファイル消失はほぼ防げます。残りの3つは、Copilotの導入や外部共有の監査を見据えて追加する項目です。
規程に書いた期限を守らせるには、人事の退職手続きのチェックリストに組み込むのが確実です。順序は次のとおりです。
- 退職が決まった時点で、本人と上長がOneDriveの中身を確認し、残すファイルを選ぶ
- 残すファイルを所属部署のSharePointサイトへ移し、共有リンクを配っていた相手に新しい場所を知らせる
- 情シスがEntra IDのマネージャー属性を確認し、空欄なら設定する
- アカウント削除後の30日間に、上長が取りこぼしを確認する
最後の30日は保険にすぎません。保持期間に頼る運用は、マネージャー属性の未設定や担当者の不在で簡単に崩れます。移管は在職中に終える前提で、期限を逆算してください。
すべての会社がSharePointのサイト設計から始める必要はありません。規模と文書の性質で、判断ははっきり分かれます。
OneDrive中心で足りる条件:10人未満で部署の共有文書がほぼ無い場合
社員が10人未満で部署の区切りが無く、共有する文書が少ない会社なら、OneDriveとTeamsのチャネルだけで当面は回ります。その場合も、会社の資料を置くチームを1つだけ作り、正式な資料はそのチームの「ファイル」に置く、と決めてください。これだけで裏側にSharePointのサイトが1つでき、退職者が出てもファイルが残ります。サイトの作り込みは後からでも間に合います。
反対に、部署が3つ以上ある、取引先や顧客の文書を扱う、ファイルサーバーから移行する、Copilotの導入を予定している、のどれか一つに当てはまるなら、SharePointのサイト構成を先に決めてから使い始めるべきです。後回しにした会社で起きる失敗には型があります。ファイルサーバーの代わりに部長のOneDriveに共有フォルダーを作り、部員全員に編集権限のリンクを配る。その部長が異動や退職をした途端、部署の資料がまとめて開けなくなります。
SharePointとBoxの二択で迷っている場合はSharePointとBoxの比較を、ファイルサーバーやBoxなど、Microsoft 365以外の置き場所と比べて選び直したい場合は法人向けクラウドストレージの比較とファイルサーバー代替の判断を、保存期間や承認の管理まで求めるなら文書管理システムの機能とファイルサーバーとの違いも合わせて確認してください。
既存のOneDrive共有を整理して移すときに外部へ頼む範囲
すでにOneDriveに部署の資料が散らばっている会社の整理は、規程づくりより手間がかかります。どのアカウントにどの共有があるかの洗い出し、移し先のサイト構成、移行中の共有リンクの差し替え、退職予定者の優先対応、と作業が何層にも重なるからです。数人分なら社内で進められますが、数十人以上のOneDriveにまたがる場合や、Copilotの導入前に過剰共有を片付けたい場合は、設計だけでも外部の知見を入れると手戻りが減ります。当社では、サイト構成と保存先ルールの設計からOneDriveの棚卸し、SharePointへの移行、Copilotの導入準備までをMicrosoft 365・Copilot導入支援としてお受けしています。
よくある質問
SharePointとOneDriveの使い分けで、情シスや総務の担当者から多い質問に答えます。
どちらもMicrosoft 365の同じ基盤で動くため、製品の選び分けより運用の差のほうが大きく出ます。OneDriveは持ち主の社員が一人で共有相手を決めるため、管理者が把握しないまま外部へ共有されやすくなります。SharePointはサイト単位で権限をまとめて管理できるため、組織として見える化しやすい置き場所です。組織の文書を守る目的なら、SharePointに置くほうが管理の面で有利です。
退職者のOneDriveのデータはいつまで残りますか?
アカウントを削除した場合、既定では30日の保持期間のあと、ごみ箱で93日保持されて削除されます。保持期間はSharePoint管理センターで30〜3650日に変更できる設定です。ただし、ライセンスのないOneDriveは93日目にアーカイブされ、開くには従量課金の料金がかかります。2026年7月以降は、課金をしない状態が累積365日に達すると削除の対象です。残すべきファイルは在職中にSharePointへ移しておくのが確実です。
Teamsのチャットで送ったファイルはどこに保存されますか?
1対1やグループのチャットに添付したファイルは、送った人のOneDriveの「Microsoft Teams Chat Files」フォルダーに保存され、会話の相手とだけ共有されます。チャネルに投稿したファイルは、チームに紐づくSharePointサイトに保存されます。送信者が退職するとチャット添付は開けなくなるため、業務で残す資料はチャネルかSharePointのサイトに置くよう決めておくと安全です。
別々です。OneDriveはBusiness系プランで1人あたり1TB、E3・E5では5TBまで増やせる枠がユーザーごとにあります。SharePointは組織全体で1TBにライセンス1つあたり10GBを足した容量を、すべてのサイトで分け合います。50人なら1.5TBです。ライセンスのない退職者のOneDriveはSharePointの空き容量を使えず、アーカイブ後は使用量の全量に保管料金がかかります。
OneDriveの共有フォルダーをチームで使い続けてもよいですか?
おすすめしません。Microsoftのサービスの説明でも、部門や組織レベルのデータをOneDriveに保存する使い方はサポート外とされています。持ち主の社員が異動・退職すると、フォルダーごと開けなくなる危険があります。チームで使うフォルダーは、Teamsのチャネルか部署のSharePointサイトに移してください。移す際は、それまで配っていた共有リンクの相手に新しい場所を知らせる手順も忘れずに入れます。
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