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ストックオプションに関連する法律は?会社法・税制など5つの法令と令和6年度改正

ストックオプションは、会社法上の新株予約権を役員や従業員へ報酬として付与する制度です。導入と運用には会社法・租税特別措置法・所得税法・法人税法・金融商品取引法の5つの法律が関わり、どれを取りこぼしても税負担や手続きで支障が出ます。本記事では、関連する法律を法令ごとに整理したうえで、税制適格と非適格で手取りが約20%と最大約55%に分かれる課税の分岐点、令和6年度税制改正で2,400万円・3,600万円へ引き上げられた権利行使価額の限度額、信託型ストックオプションが給与課税となった国税庁見解までを、条文とあわせて解説します。

目次

まとめ:会社法と税法を軸とする5つの関連法令と税制適格という分岐点

ストックオプションの法的な正体は、会社法第2条21号が定める新株予約権です。導入と運用には、会社法・租税特別措置法・所得税法・法人税法・金融商品取引法の5つが関わります。会社法が発行と登記を、租税特別措置法と所得税法が個人の課税を、法人税法が会社側の損金を、金融商品取引法が上場前後の開示やインサイダー取引を担当します。

手取りを最も左右するのは、税制適格にできるかどうかです。税制適格なら売却時の譲渡所得20.315%に一本化されますが、税制非適格だと権利行使時に給与所得として最大約55%、さらに売却時に譲渡所得が課されます。令和6年度税制改正では、年間権利行使価額の限度額が会社の区分に応じて2,400万円・3,600万円へ引き上げられ、発行会社による株式管理や社外高度人材への付与もしやすくなりました。

一方で、信託型ストックオプションは令和5年の国税庁見解で行使時の給与課税が示され、既導入企業には遡及課税のリスクが残ります。実務では、まず会社法の発行手続きと税制適格要件を固め、金融商品取引法の対応は上場が視野に入る局面で詰めるのが堅実な順番です。

ストックオプションの法的な正体は会社法第2条21号が定める新株予約権

会社法第2条21号が新株予約権を株式交付請求権と定義する条文上の位置づけ

「ストックオプション」という言葉は、法律の条文には登場しません。会社法上の正体は新株予約権です。会社法第2条21号は新株予約権を、株式会社に対して行使することでその会社の株式の交付を受けられる権利と定義しています。会社が役員や従業員にこの権利を無償または有償で付与し、付与を受けた人はあらかじめ決めた行使価額を払い込むことで株式を取得します。たとえば行使価額が1株1,000円の権利を持つ人は、株価が1万円に上がっていても1,000円の払込で株式を得られ、差額9,000円が経済的な利益になります。報酬制度としての設計や導入目的はストックオプション制度の基本的な仕組みと導入目的で整理しています。

ストックオプションと新株予約権の包含関係と報酬目的での使い分けの違い

新株予約権とストックオプションは、包含関係にあります。新株予約権が上位の概念で、ストックオプションはその一部です。新株予約権は、投資家や提携先への発行による資金調達の手段としても使われます。これに対してストックオプションは、役員や従業員への報酬・インセンティブを目的に付与されたものを指す呼び方です。同じ会社法上の権利でも、誰に何のために発行するかで呼称と税務上の扱いが分かれます。この区別は、後述する税制適格の判定にも影響します。

付与から権利行使・株式売却までで利益が確定する権利行使価額の基本構造

ストックオプションの利益は、3つの段階を経て確定します。付与、権利行使、株式売却です。付与の時点では権利を受け取るだけで、まだ利益は生じません。権利行使で行使価額を払い込み株式を取得した時、行使時の株価と行使価額の差額が経済的利益となります。その株式を売却した時、売却価額と取得時の価額の差が譲渡損益になります。どの段階でいくら課税されるかは、税制適格か非適格かで大きく変わります。この課税のタイミングこそが、関連する税法を読み解く出発点です。

関連する5つの法律と各法令が定める守備範囲を整理した全体像マップ

会社法・租税特別措置法・所得税法・法人税法・金融商品取引法の5系統の役割分担

ストックオプションに関連する法律は、5つに整理できます。会社法、租税特別措置法、所得税法、法人税法、金融商品取引法です。会社法が発行と登記の手続きを、租税特別措置法と所得税法が個人の課税を、法人税法が会社側の損金を、金融商品取引法が上場前後の開示やインサイダー取引を扱います。実務でまず向き合うのは会社法と税法であり、金融商品取引法は上場が視野に入る局面で比重が増します。

法律 主に定める局面 具体的な内容
会社法 発行・管理 新株予約権の定義(2条21号)、募集事項の決定、株主総会特別決議、変更登記
租税特別措置法 個人の課税(優遇) 税制適格の要件(29条の2)、年間権利行使価額の限度額
所得税法 個人の課税 権利行使益の給与所得課税、売却益の譲渡所得課税
法人税法 会社の損金 適格は損金不算入(54条の2第2項)、非適格の損金算入(54条の2)
金融商品取引法 開示・規制 一定規模以上の募集の開示、インサイダー取引規制(166条)

この5系統のうち、発行を無効にしかねない会社法と、手取りを左右する税法が二本柱です。金融商品取引法は上場企業や上場準備企業で効いてきます。

発行局面・課税局面・開示局面で適用される法律が切り替わる時系列の整理

適用される法律は、ストックオプションのライフサイクルに沿って切り替わります。発行を準備する段階では、会社法の手続きが中心です。付与契約を結ぶ段階で、租税特別措置法の税制適格要件を満たすかが決まります。権利行使と株式売却の段階で、所得税法と法人税法の課税が現実化します。そして上場前後では、金融商品取引法の開示義務やインサイダー取引規制が加わります。同じ制度でも、時間軸のどこにいるかで向き合う法律が変わると押さえておくと、論点を取りこぼしません。

会社法が定める新株予約権の発行手続きと株主総会特別決議・登記の要点

募集事項の決定で非公開会社に株主総会特別決議が必須となる会社法238条・309条

新株予約権の発行は、会社法第238条が定める募集事項の決定から始まります。誰に、何個、どのような行使価額・行使期間で発行するかを決める手続きです。非公開会社では、この募集事項の決定に株主総会の特別決議が原則として必要です(会社法309条2項6号)。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。新株予約権の行使は将来の株式数を増やし、既存株主の持株比率を薄めるため、株主の同意を要件としています。発行の大まかな流れは次のとおりです。

  1. 募集事項の決定(株主総会の特別決議。取締役会へ委任する場合は会社法239条)
  2. 引受けの申込みと割当て、または総数引受契約の締結
  3. 払込み(有償の場合)と新株予約権の割当て
  4. 効力発生日から2週間以内の変更登記

公開会社では、募集事項の決定は取締役会が原則です(会社法240条)。ただし特に有利な条件での発行や、取締役報酬として付与する場合には、株主総会の決議が必要になります。

有利発行に該当する場合の取締役の説明義務と既存株主保護の手続き要件

行使価額を時価より低く設定するなど、付与を受ける人に特に有利な条件で発行する場合、追加の手続きが生じます。取締役は株主総会で、その条件で発行する理由を説明しなければなりません。無償発行であっても、職務の対価として相当でない有利な内容であれば、有利発行に当たり得ます。既存株主の利益を損なう発行を、株主自身の判断で承認させる趣旨です。税制適格を狙うストックオプションは行使価額を契約時の時価以上に設定するため、通常は有利発行に該当しません。一方、1円ストックオプションのように行使価額を極端に低くする設計では、有利発行の論点を避けて通れません。

発行から2週間以内の変更登記と登録免許税・専門家費用の実務の目安

新株予約権を発行したら、変更登記が必要です。効力が発生した日から2週間以内に、本店所在地で登記しなければなりません(会社法915条1項)。登記事項には、新株予約権の数や、行使価額・行使期間などの内容が含まれます。費用は、登録免許税が新株予約権の発行による変更登記で9万円、これに司法書士へ依頼する場合の報酬が数万円から十数万円ほど加わります。期限を過ぎると過料の対象になり得るため、決議から登記までを一連の工程として日程に落とし込んでおくと、漏れを防げます。

租税特別措置法と所得税法が決める税制適格・非適格の課税タイミングと税率差

租税特別措置法29条の2が定める税制適格の主要要件と累積充足の判断基準

税制適格ストックオプションは、租税特別措置法第29条の2が定める要件をすべて満たして初めて成立します。主な要件は、無償で発行されること、権利行使期間が付与決議日後2年から10年まで(設立5年未満の非上場会社は15年まで)であること、行使価額が契約時の株価以上であること、年間の権利行使価額が限度額以内であること、新株予約権を譲渡しないこと、取得株式を証券会社等に保管委託または発行会社が管理することです。これらは選べる選択肢ではなく、1つでも欠ければ非適格に転落する累積要件です。各要件と令和6年度改正の細目は税制適格ストックオプションの要件と改正のポイントで詳述します。

税制非適格で権利行使時と株式売却時に課税が2回生じる総合課税の仕組み

税制適格の要件を満たせないストックオプションは、税制非適格として扱われます。非適格では、課税が2回発生します。1回目は権利行使時で、行使時の株価と行使価額の差額が給与所得などとして総合課税の対象になります(所得税法施行令84条等)。2回目は株式売却時で、売却価額と権利行使時の株価の差額が譲渡所得として課税されます。問題になりやすいのは1回目です。株式をまだ売っておらず現金を手にしていない段階で、累進税率の課税を受けるためです。含み益が大きいほど、納税資金を別途用意する負担が重くなります。

給与所得最大約55%と譲渡所得20.315%で手取りが変わる税率差の具体例

適格と非適格の差は、税率と課税回数に表れます。税制適格なら権利行使時は非課税で、売却時の譲渡所得20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)に一本化されます。税制非適格なら、行使時の給与所得が総合課税で最大約55%(55.945%)、加えて売却時に20.315%です。両者を整理すると次のようになります。

区分 権利行使時 株式売却時
税制適格 課税なし 譲渡所得 20.315%
税制非適格 給与所得(総合課税)最大約55% 譲渡所得 20.315%

同じ付与内容でも、適格にできるかどうかで手元に残る金額が大きく変わります。設計段階で要件を作り込む価値は、この税率差に集約されます。

確定申告が必要になる場面と権利行使益・譲渡益それぞれの申告区分

ストックオプションで利益が出たら、確定申告の要否を確認します。税制非適格の場合、権利行使時の給与所得は会社の源泉徴収と年末調整で精算されますが、他に所得があれば合算の結果、確定申告が必要になる場面があります。株式を売却した年は、譲渡所得を翌年の2月16日から3月15日までに申告します。税制適格でも、売却時の譲渡所得は申告分離課税として確定申告の対象です。源泉徴収ありの特定口座を使えば申告を省ける場合もあるため、口座区分とあわせて確認しておくと手続きを減らせます。

法人税法における損金算入の可否と税制適格が損金不算入となる仕組み

給与等課税事由が生じない税制適格が法人税法54条の2第2項で損金不算入となる理由

会社側の税務では、ストックオプションの費用を損金にできるかが論点になります。結論は、税制適格は損金不算入です(法人税法54条の2第2項)。税制適格では、権利行使時に個人へ給与所得などの課税が生じません。法人税法は、個人に給与等課税事由が生じない場合、発行会社はその役務提供に係る費用を損金に算入できないと定めています。会計上は付与時から権利確定までの期間にわたり株式報酬費用を計上しますが、税務ではこれを認めないため、税効果会計による差異の調整が必要になります。

税制非適格が権利行使時に損金算入される54条の2の特例と役員分の34条の別判定

税制非適格には、損金算入の余地があります。個人に給与所得などの課税事由が生じるためです。法人税法54条の2第1項は、給与等課税事由が生じた日に役務の提供を受けたものとして、その事業年度での損金算入を認めています。会計上は付与時から費用配分する一方、税務上の損金算入は権利行使時にずれ込むため、ここでも時期の差が生じます。注意したいのは役員への付与です。役員給与は法人税法34条の損金不算入規定が別途かかり、事前確定届出給与などの要件を満たさなければ損金にできません。従業員分と役員分で判定の道筋が異なる点を、申告前に整理しておくと安全です。

令和6年度税制改正で変わった権利行使価額の限度額と株式管理・社外人材要件

設立年数で2,400万円・3,600万円に分かれる年間権利行使価額の限度額引上げ

令和6年度税制改正は、税制適格の年間権利行使価額の限度額を引き上げました。改正前は、会社の規模を問わず一律1,200万円でした。改正後は、設立5年未満の株式会社が2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満の会社が3,600万円まで拡大されています。設立20年以上の会社は、従来どおり1,200万円です。非上場の段階では、私法上の権利行使価額を2または3で割った額を税法上の権利行使価額として限度額を判定します。改正は2024年4月1日以後に付与された新株予約権から適用され、令和6年分以後の所得税が対象です。レイター期に株価が上がった局面でも、適格のまま厚く付与できる余地が広がりました。

証券会社への保管委託に代わり発行会社が株式を管理できる新スキーム

改正では、取得株式の管理方法にも選択肢が加わりました。従来は、権利行使で取得した譲渡制限株式を証券会社等に保管委託することが税制適格の要件でした。令和6年度改正により、発行会社自身がその株式を管理する方法も認められています(令和6年経済産業省告示第69号)。証券会社の口座開設が難しい未上場の段階でも、自社で区分管理帳簿を整えれば適格を維持できます。発行会社は、特定株式等の異動状況に関する調書を毎年1月31日までに税務署へ提出する事務を担います。自社管理と委託のどちらが運用負担に見合うかは、行使開始前に決めておくと移行の手戻りを防げます。

社外高度人材の実務経験要件撤廃で外部協力者へ適格付与しやすくなった緩和

社外の協力者へ適格付与する道も、改正で広がりました。雇用関係のない顧問やアドバイザーへ無償でストックオプションを付与すると、原則は税制非適格です。中小企業等経営強化法に基づく社外高度人材活用新事業分野開拓計画の認定を受ければ、計画に記載した社外人材へ適格付与ができます。令和6年度改正では、国家資格保有者などに求めていた3年以上の実務経験要件が撤廃され、上場会社の役員経験者は経験年数が3年から1年に短縮、非上場会社の役員経験者や大学教授なども対象に加わりました。認定対象企業の資本金5億円未満・従業員900人以下という要件も廃止されています。認定には事業計画の作成と申請が必要で、準備から認定まで数か月単位を見込んでおくと計画が立てやすくなります。

信託型ストックオプションが給与課税となった国税庁見解と実務への影響

令和5年の国税庁ストックオプションQ&Aで行使時の給与所得課税が示された経緯

信託型ストックオプションは、課税の扱いが2023年に大きく動きました。発行会社の創業者などが信託会社に金銭を信託し、後から貢献度に応じて役職員へ権利を配る仕組みで、付与対象や時期を後決めできる柔軟さから約800社が導入していました。導入企業の多くは、行使時には課税されず売却時の譲渡所得課税で済むと理解していました。これに対し国税庁は、令和5年に公表したストックオプションに対する課税のQ&Aで、権利行使時に給与所得として課税されるとの見解を示しています(所得税法28条、36条2項、所得税法施行令84条)。役職員に金銭負担がなく、実質的に報酬として付与されている点が理由です。

譲渡所得20%想定が総合課税最大55%へ転じた既導入企業の遡及リスク

この見解は、すでに導入した企業に重い影響を及ぼしました。給与所得は総合課税で最高約55%(55.945%)、想定されていた譲渡所得は約20%です。税率が3倍近く変わります。国税庁は従来からの見解を明確化したものという立場をとっており、すでに権利行使済みの分についても、給与課税を前提とした源泉徴収もれが生じている扱いになります。会社は退職者を含めて源泉所得税を遡って納める負担を負い、不納付加算税や延滞税のリスクも抱えます。一括納付が難しい場合に原則1年以内の分割納付が案内されてはいるものの、設計時の前提が崩れた影響は小さくありません。

信託型を有償型や税制適格型へ組み替える制度見直しの実務対応と留意点

これから導入する企業は、信託型を避けるか組み替えるかの判断を迫られます。現実的な対応は2つです。1つは、付与の前提を見直し税制適格の要件を満たすよう設計し直す方法、もう1つは、付与対象者が発行価額を払い込む有償型へ切り替える方法です。実際に、信託型を廃止して有償型と税制適格型を組み合わせる制度へ移行した上場企業の例もあります。信託型をすでに発行し未行使の分があるなら、給与課税を前提に行使するか、別のインセンティブへ切り替えるかを早めに決めておくと、行使期間満了による失効を避けられます。

法律対応で着手すべき優先順位と税制適格を取り逃す典型的な失敗パターン

まず会社法手続きと税制適格要件を固め金商法対応は上場局面で詰める優先順位

法律対応に着手する順番には、実務上の優先順位があります。先に固めるべきは、会社法の発行手続きと租税特別措置法の税制適格要件です。この2つを外すと、発行そのものが無効になりかねず、税負担も最大約55%へ跳ね上がるためです。金融商品取引法の開示やインサイダー対応は、上場が現実的な視野に入る段階で詰めれば足ります。未上場で当面の上場予定もない企業が、最初から金商法の細目に時間をかけるのは過剰です。まず会社法と税制で土台を作り、金商法は局面に応じて上乗せする。この順番が、限られた専門家費用を無駄にしない進め方です。なお、大口株主や監査役のように適格付与が難しい相手には、株式を発行せず現金で報いるファントムストックの仕組みを代替として検討する余地があります。

行使価額を契約時の時価未満に設定し税制適格を失う設計ミスの失敗例

税制適格を取り逃す失敗で最も多いのが、行使価額の設定ミスです。税制適格では、行使価額を契約時の株価以上にする必要があります。創業者が良かれと思って行使価額を時価より安く設定すると、その時点で適格要件を外れ、行使時の給与課税が確定します。未上場で株価がわからないからと感覚で決めるのも危険です。取引相場のない株式は、財産評価基本通達の例に沿って算定すれば適格と認められるセーフハーバーが示されています。配当還元方式や純資産価額方式で算定し、根拠を残しておくと、後の税務調査でも説明できます。

大口株主や監査役への付与で適格対象外となり総合課税を招くケース

付与対象者の選定でも、適格を落とす失敗が起きます。税制適格を使えるのは、自社や一定の子会社の取締役・執行役・使用人に限られます。発行済株式の3分の1超を持つ大口株主とその特別関係者は、対象外です。監査役や会計参与も、適格付与の対象になりません。創業社長が自分に適格ストックオプションを付与しようとしても、大口株主に該当して使えないケースが多くあります。監査役へ報いたい場合は、有償型を選ぶか、適格を諦めて非適格で付与するかの選択になります。誰に付与するとどの類型が使えるかを一覧化してから設計に入ると、こうした取りこぼしを防げます。

よくある質問

ストックオプションの法律に関して、検索で多く寄せられる疑問に回答します。

ストックオプションに法律上の規制はありますか?

あります。自由に発行できるわけではありません。会社法は募集事項の決定や登記の手続きを定め、租税特別措置法は税制適格の要件を、所得税法と法人税法は課税の扱いを定めています。上場前後では、金融商品取引法による開示義務やインサイダー取引規制も加わります。とくに既存株主の持株比率を薄める発行のため、非公開会社では株主総会の特別決議が原則必須です。これらの手続きや要件を外すと、発行の効力や税制優遇に支障が出ます。

ストックオプションの発行を決議する機関はどこですか?

原則は株主総会です。新株予約権の募集事項は、会社法第238条に基づき、非公開会社では株主総会の特別決議で決定します(会社法309条2項6号)。公開会社では取締役会が原則ですが(会社法240条)、特に有利な条件での発行や、取締役報酬として付与する場合は株主総会の決議が必要です。決議内容を取締役会へ委任することも会社法239条で認められています。自社が公開会社か非公開会社か、有利発行に当たるかで、必要な機関が変わります。

ストックオプションの権利行使は義務ですか?

義務ではありません。ストックオプションは株式を取得できる「権利(オプション)」であり、行使するかどうかは保有者の判断に委ねられています。株価が行使価額を上回っていれば行使して利益を得られますが、下回っている場合は行使せず見送る選択も合理的です。ただし、権利には行使期間が定められており、期間内に行使しなければ失効して権利は消滅します。税制適格では行使期間が付与決議日後2年から10年まで(設立5年未満の非上場会社は15年まで)と決められている点に注意が必要です。

税制適格の年間権利行使価額は1,200万円までですか?

会社の区分によります。改正前は一律1,200万円でしたが、令和6年度税制改正で引き上げられました。設立5年未満の株式会社は2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満の会社は3,600万円までです。設立20年以上の会社は、従来どおり1,200万円のまま据え置かれています。この限度額を超えて行使した分は税制適格の優遇を受けられず、超過した回の行使全体が非適格扱いになる恐れがあるため、行使計画の段階で年間の合計額を管理しておく必要があります。

ストックオプションと新株予約権の違いは何ですか?

包含関係にあります。新株予約権は、会社法第2条21号が定める「会社の株式の交付を受けられる権利」全般を指す広い概念で、資金調達のために投資家へ発行することもあります。ストックオプションは、その新株予約権のうち、役員や従業員への報酬・インセンティブを目的に付与されたものを指す呼び方です。つまりストックオプションは新株予約権の一種です。法律上の手続きは同じ会社法に基づきますが、付与目的や対象者の違いによって、税務上の扱いや設計が分かれます。

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