バンドワゴン効果とは、多くの人が選んでいるという事実そのものが、さらに多くの人を引き寄せる現象です。行列のできている店に並びたくなる、ランキング上位の商品から選ぶ、優勢と報じられた候補に票が集まる、といった形で現れます。
この記事では、経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインによる定義と「楽隊車」という語源から始め、1万4千人規模の音楽市場実験や選挙の自然実験で測られた効果の大きさを紹介します。そのうえで、マーケティングで「人気」を訴求するときに景品表示法で問題になる条件と、スノッブ効果・アンダードッグ効果との違いを整理します。
まとめ:バンドワゴン効果の要点
- 定義:他人がその商品を買っている、その候補を支持しているという事実によって、自分の需要や支持が増える現象。経済学の用語として定義したのはライベンシュタイン(1950年)です。
- 語源:bandwagon はパレードの先頭で楽隊を乗せて進む車(楽隊車)。「jump on the bandwagon」は「時流に乗る」「勝ち馬に乗る」という意味です。
- 仕組み:多数派の選択を判断材料として使う(情報カスケード)、周囲に合わせたい(同調)という、動機の異なる複数の経路で起こりえます。利用者が多いほど実際に便利になるネットワーク外部性は、これと区別して扱います。
- 大きさ:音楽市場実験では、他人のダウンロード数を見せるとヒットの偏りと予測のつかなさがともに増えました。フランスの自然実験では、出口調査の結果を知った有権者ほど勝ちそうな候補に投票していました。
- 使うときの線引き:根拠の弱い「人気No.1」「顧客満足度No.1」は景品表示法の不当表示になりえます。消費者庁は2024年に、合理的な根拠と認められるための4つの条件を示しました。
- 反対向きの効果:人と同じものを避けるスノッブ効果、劣勢の側を応援するアンダードッグ効果があります。
バンドワゴン効果の意味と「楽隊車」の由来
ライベンシュタインによる経済学の定義
用語としての出発点は、ハーヴェイ・ライベンシュタインの論文「Bandwagon, Snob, and Veblen Effects in the Theory of Consumers’ Demand」(The Quarterly Journal of Economics 第64巻第2号、1950年、183〜207頁)です。ライベンシュタインはバンドワゴン効果を、他の人も同じ商品を消費しているという事実によってその商品への需要が増える度合い(the extent to which the demand for a commodity is increased due to the fact that others are also consuming the same commodity)と定義しました。
この論文は、商品そのものの性能から生じる需要(機能的需要)と、それ以外の要因から生じる需要(非機能的需要)を分け、後者の代表としてバンドワゴン効果・スノッブ効果・ヴェブレン効果の3つを並べました。他人の消費量に引きずられて需要が増えるのがバンドワゴン効果、減るのがスノッブ効果、価格の高さそのものに引かれるのがヴェブレン効果です。
bandwagon の語源と「jump on the bandwagon」
バンドワゴン(bandwagon)は、パレードやサーカスの行列で楽隊(バンド)を乗せて先頭を進む車で、日本語では「楽隊車(がくたいしゃ)」と訳されます。
英語の「jump on the bandwagon」は、ケンブリッジ英語辞典で「とても人気になった活動に加わる、あるいはその成功にあやかるために、人気になった意見へ考えを変える」と説明されており、日本語の「時流に乗る」「勝ち馬に乗る」にあたります。なお、この言い回しを1848年の米大統領選挙とサーカス芸人ダン・ライスに結びつける説明が英語版Wikipediaなどに見られますが、同時代の資料では確認できていないため、この記事では由来として扱いません。
人が多数派の選択に乗る仕組み
多数派の選択を情報として使う:情報カスケードとハーディング
一つ目の理由は、他人の選択を「自分の知らない情報を反映したもの」とみなすことです。Bikhchandani・Hirshleifer・Welch(Journal of Political Economy 第100巻第5号、1992年)は、前の人たちの行動を見た個人が、自分の持つ情報を無視してでも前の人に従うのが最適になる状態を「情報カスケード」と名付け、流行やファッションが局所的にそろい、しかも崩れやすいことをこれで説明しました。
同じ年に Banerjee(The Quarterly Journal of Economics 第107巻第3号、1992年)も、一人ずつ順番に決める場面で合理的な個人が「他人と同じことをする」群集行動(ハーディング)に至り、その結果は社会全体として非効率になることを示しています。
ここで押さえておきたいのは、一人ひとりが合理的に判断していても、全体としては誤った方向に固まりうる点です。後に続く人が自分の情報を出さなくなるため、最初の数人の選択が偶然外れていても、流れを修正する材料が集まりません。
周囲に合わせたい:同調との関係
二つ目の理由は、正しさとは関係なく「多数派と違うことをしたくない」という動機です。アッシュの実験(Scientific American、1955年)では、明らかに誤った答えを言う多数派に囲まれた被験者は、多数派が誤答する試行での回答の36.8%で、その誤答に従いました。詳しい実験条件と数値は同調現象とは?意味・原因とアッシュ実験の実数|「味方が1人で同調率5%」は誤りで解説しています。
同調が目の前の集団からの圧力で起きるのに対し、バンドワゴン効果は、顔の見えない大勢の選択(販売数、得票予測、フォロワー数)を知るだけでも起きます。
使う人が多いほど便利になる:ネットワーク外部性
三つ目は、利用者の多さが実際の便利さにつながる場合です。メッセージアプリは相手が使っていなければ役に立たず、規格は普及しているほど対応製品が増えます。Katz・Shapiro(1985年)は、電話の利用者数や対応ソフトの供給などによって利用者の便益が増すネットワーク外部性を論じています。ここでは、この実利に基づく選択と、人気そのものに引かれる選択を区別します。性能が同じでも「みんなが使っている」こと自体に引かれるのが、狭い意味でのバンドワゴン効果です。
実験と選挙で測られたバンドワゴン効果の大きさ
14,341人の音楽市場実験:人気表示によるヒットの偏りの拡大
Salganik・Dodds・Watts(Science 第311巻、2006年、854〜856頁)は、ウェブ上に人工の音楽市場を作り、14,341人の参加者に無名のバンドによる48曲をダウンロードしてもらいました。参加者は、他人の選択が見えない「独立条件」と、ほかの参加者のダウンロード数が見える「社会的影響条件」に無作為に分けられ、後者はさらに互いに独立した8つの「世界」に分かれています。実験1では曲の並びを無作為にしてダウンロード数だけを示し、実験2では曲をダウンロード数の多い順に並べて、人気の情報をより強く見せました。
結果は、社会的影響条件のほうが独立条件より、成功の不平等(一部の曲への集中)と予測のつかなさ(同じ曲でも世界ごとに順位が変わる度合い)がともに大きく、差はいずれも統計的に有意でした。曲の質は成功を一部しか決めておらず、最も良い曲が大きく失敗することも、最も悪い曲が大きく成功することもまれでしたが、その中間ではどんな結果も起こりえたと報告されています。
売り手の側から見ると、初期の数字の小さな差が質の差以上に増幅されうる、ということです。
選挙:出口調査を知った有権者の投票行動
選挙でのバンドワゴン効果は、投票前の情報を操作できないため測りにくいテーマでした。Morton・Müller・Page・Torgler(European Economic Review 第77巻、2015年)は、フランスの投票制度改革を自然実験として使っています。改正前は、一部の海外領土の有権者が、本土の出口調査で結果がすでに報じられた後に投票していました。分析の結果、出口調査の情報を知ると投票率は約11ポイント下がり、投票に行った人は勝つと予想された候補に投票する傾向が有意に強まりました。
選挙以外でも、Nadeau・Cloutier・Guay(International Political Science Review 第14巻第2号、1993年)は、人工妊娠中絶とケベックの憲法上の将来という2つの争点で、世論の状況を伝えられた回答者が多数派の意見へ5〜7%動いたと報告しています。
一方で、研究ごとに「バンドワゴン効果」の指す範囲がずれている点には注意が必要です。Barnfield(Political Studies Review 第18巻第4号、2020年)は既存研究を見直し、人気を動機として個人の投票先や投票参加が変わることと定義したうえで、静的/動的、投票先の転換/投票への動員という軸で分類し直すよう提案しています。
日本では、公職選挙法第138条の3が「何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(中略)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない」と定めています。
恋愛・相手選び:他人の選択による交際への関心の変化
相手選びでも、他人の選択が判断材料になります。Place・Todd・Penke・Asendorpf(Evolution and Human Behavior 第31巻第5号、2010年、320〜325頁)は、実際のスピードデートを録画した映像を参加者に見せ、うまくいったと受け取ったデートの相手に対して、男女とも短期・長期の交際への関心が高まることを示しました。動物行動学で「配偶者選択の模倣(mate copying)」と呼ばれる現象で、観察する側とされる側の相対的な魅力によって、誰をまねるかが変わることも報告されています。
身近な具体例とマーケティングでの使い方
日常とSNSで見られる具体例
- 行列のできている飲食店に並ぶ、空いている店を避ける
- ECサイトで「売れ筋ランキング」上位やレビュー件数の多い商品から選ぶ
- SNSで「いいね」や再生回数の多い投稿ほど見られ、さらに拡散される
- 「累計販売数」「導入社数」「会員数」を広告の見出しに置く
- 選挙の情勢報道で優勢と伝えられた候補に支持が集まる
SNSやECでも、人気の数字や順位が次の選択に影響する場合は、Salganikら(2006年)の音楽市場実験と共通する構造があります。数字が伸びている理由が質なのか、表示位置による増幅なのかは、ランキングを見るだけでは区別できません。
人気の訴求が判断材料になる条件と希少性を損なう条件
人気の訴求を検討する場面としては、買い手が品質を自分で判断しにくい場合が挙げられます。ただし、商品別の広告効果をここで紹介した研究が直接検証したわけではありません。初めて契約するサービス、違いが見えにくい日用品、専門知識が要る商品では、「多くの人が選んでいる」ことが判断の近道として働きます。
逆に、希少さや人と違うことに価値がある商品では、同じ訴求が価値を下げます。高級品や限定品で「みんなが持っている」を強調するのは、ライベンシュタインが定義したスノッブ効果により、他人の消費が多いと知ることで、その商品への需要が減りうるためです。独自性を売りにするブランドでは、販売数の訴求は使わないほうがよいと判断できます。
もう一つの落とし穴は、実数が伴わないのに「人気」を名乗ることです。これは次の章で扱う法的な問題に直結します。
「人気No.1」表示とステマ:景品表示法での線引き
バンドワゴン効果を狙った表示の典型が「顧客満足度No.1」「人気No.1」です。消費者庁は2024年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しました。実際の広告から集めた368サンプル(No.1表示275件、「医師の○%が推奨」などの高評価%表示93件)、消費者1,000人へのウェブアンケート、広告主15社などへのヒアリングに基づくものです。
アンケートでは、No.1表示を見たことがある825人のうち、新しい商品を買うときの意思決定に「かなり影響する」が4.6%、「やや影響する」が44.4%で、合わせて49.0%でした。一方で、令和5年度に措置命令を受けた44事業者のうち13事業者がNo.1表示に関連しており、いずれもウェブサイトを見せた印象を聞くだけの「イメージ調査」を根拠にしていました。ヒアリングでは、調査会社から1フレーズ10万円〜数十万円で勧誘されたという回答が多く、質問項目や比較対象といった調査の中身を把握していた広告主は15社中1社だけでした。
報告書は、アンケートなどで調べた主観的評価によるNo.1表示について、合理的な根拠に基づくと認められるには次の4点を満たす必要があるとしています。
| 満たすべき条件 | 問題となる例(報告書より) |
|---|---|
| 比較対象の商品が適切に選ばれている | 市場の主要な競合が比較対象に含まれていない |
| 調査対象者が適切に選ばれている | 専門の異なる医師への調査で「医師の90%が推奨」 |
| 調査が公平な方法で行われている | 自社商品を選択肢の最上位に固定する |
| 表示内容と調査結果が対応している | イメージ調査だけで「顧客満足度No.1」と表示 |
公平性の例には、No.1になった時点で調査を打ち切ることも挙げられています。また、イメージ調査の結果である旨を注記しても、「顧客満足度No.1」という表示と調査結果が対応していないことに変わりはない、とされています。
もう一つの線引きが、2023年10月1日に施行されたステルスマーケティングの規制です。事業者が関与した広告であるにもかかわらず、一般消費者が広告であると判別しにくい表示は、景品表示法の不当表示として指定されました。規制の対象は商品を供給する事業者で、事業者でないインフルエンサーなどの第三者そのものは告示の対象ではありません。事業者が依頼したレビューや投稿で「売れている雰囲気」を作る手法はこれに当たりえます。規制の対象や措置命令の事例はステルスマーケティング(ステマ)とは?定義・規制・罰則と見分け方にまとめています。
実務上の結論ははっきりしています。「売れている」と伝えたいなら、販売数やレビュー件数などの実数を、集計期間と対象とあわせて示すことです。調査内容を自社で説明できない「No.1」は使わないほうが安全です。
スノッブ効果・ヴェブレン効果・アンダードッグ効果との違い
| 効果 | 何に反応するか | 需要・支持の動き | 典型例 |
|---|---|---|---|
| バンドワゴン効果 | 他人の消費・支持の多さ | 多いほど増える | 行列店、売れ筋ランキング |
| スノッブ効果 | 他人の消費の多さ | 多いほど減る | 限定品、人と被らない服 |
| ヴェブレン効果 | 価格の高さ | 高いほど増える | 高級ブランド品 |
| アンダードッグ効果 | 劣勢・不利という情報 | 劣勢の側への支持が増える | 判官びいき |
| ハーディング(群集行動) | 先に動いた人の行動 | 自分の情報より先行者に従う | 相場の急騰・急落 |
バンドワゴン効果とスノッブ効果は、同じ「他人がどれだけ消費しているか」に対して逆向きに反応する関係です。スノッブという言葉の意味や使い方はスノッブとは?意味・いい意味/悪い意味・語源とスノッブ効果をわかりやすく解説、価格に反応するヴェブレン効果はヴェブレン効果とは?ヴェブレン財の具体例とギッフェン財との違いで詳しく扱っています。
アンダードッグ効果は、選挙の予測報道などで劣勢と伝えられた側に同情票が集まる現象で、バンドワゴン効果とは逆向きです。両者を対にして定義したのが、ハーバート・A・サイモンの論文「Bandwagon and Underdog Effects and the Possibility of Election Predictions」(Public Opinion Quarterly 第18巻第3号、1954年、245〜253頁)で、勝つと予想されるほどその候補に投票しやすくなる反応をバンドワゴン、逆向きの反応をアンダードッグとしています。アンダードッグ効果の由来やマーケティングでの活用法はアンダードッグ効果とは何か?を参照してください。
ハーディングは、情報カスケードの章で見たように「他人の行動を情報として使う」側面を強調した言葉で、金融市場の投資行動を説明する文脈でよく使われます。人気そのものに価値を感じるバンドワゴン効果とは、動機の置き場所が違います。
よくある質問
バンドワゴン効果のデメリットは何ですか?
買い手の側では、最初の人たちの選択が外れていても後から修正されにくく、多数派ごと誤った方向に固まることがあります。売り手の側では、初期の数字の差が質以上に増幅されるため、良い商品でも立ち上がりでつまずくと埋もれやすくなります。また、根拠の弱い「No.1」表示で人気を演出すると、景品表示法上の不当表示に問われるおそれがあります。
恋愛におけるバンドワゴン効果とは何ですか?
他人から選ばれている人が魅力的に見える現象で、研究では「配偶者選択の模倣(mate copying)」と呼ばれます。2010年の研究では、スピードデートの映像でうまくいったと受け取った相手に対して、男女とも交際への関心が高まりました。
「jump on the bandwagon」はどういう意味ですか?
「楽隊車に飛び乗る」が直訳で、「時流に乗る」「勝ち馬に乗る」「流行に便乗する」という意味で使われます。ケンブリッジ英語辞典の例文も、減税を公約した政治家が何人か当選すると、ほかの政治家の多くも同じ主張に乗った、という選挙の場面です。
ハーディング現象とバンドワゴン効果の違いは何ですか?
どちらも多数派に従う行動ですが、ハーディングは先に動いた人の行動を「自分の知らない情報の表れ」として使う面を重視した言葉で、主に金融市場の分析で使われます。バンドワゴン効果は、他人が選んでいること自体が効用や支持を高める点を指します。
バンドワゴン効果とアンダードッグ効果は同時に起こりますか?
同じ選挙の中で、どちらの反応も起こりえます。サイモン(1954年)は両者を逆向きの反応として定義したうえで、有権者が予測の公表に反応するとしても、その反応が連続的であれば、反応を織り込んで結果と一致する予測を出すことは原理上可能だと論じました。実際にどちらが強く出るかは状況しだいで、フランスの自然実験では勝ちそうな候補への投票が増える方向が確認されています。