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ウィンザー効果とは?第三者から褒められると効く条件と由来の3つの誤解

ウィンザー効果とは?第三者から褒められると効く条件と由来の3つの誤解

ウィンザー効果(ウインザー効果)とは、本人が自分で語るよりも、利害関係のない第三者を経由して伝わった評価のほうが信頼されやすいという心理現象を指す言葉です。「課長があなたを褒めていたよ」と同僚から聞かされると、課長に直接褒められるよりうれしく感じる、というのが典型です。ただし、第三者を通せばいつでも効くわけではありません。社会心理学の古典実験では、効くのは「話し手に説得の意図や利害が見えない」ときで、しかも聞き手にとって自分に関わる話のときに差が大きく出ました。この記事では、その実験データと日本の調査データから効く条件と限界を示し、あわせて名称の由来をめぐる誤解を一次資料で正します。

まとめ:ウィンザー効果の要点

  • ウィンザー効果とは、当事者の自己申告よりも、利害関係のない第三者を経由した評価のほうが受け入れられやすいという現象の呼び名です。「口コミ効果」とも呼ばれます。
  • 成立の条件は「第三者であること」ではなく、「受け手から見て、発信者に伝える動機上の利害がないと判断できること」です。
  • 1962年の立ち聞き実験では、話し手が聞き手に気づいていない条件のほうが説得力が高く、その差はほぼ「自分に関わる話」を聞いた人だけに出ました。
  • 評判の低い話し手でも、自分の利益に反する主張をすると説得力が上がる結果が出ています(1966年の実験)。第三者の発言が信頼されるのは、この「予想される偏りがない」状態の一例と読めます。
  • 第三者を褒める側の印象も動きます。人が他人について語った特性は、語った本人の特性として受け手に結びつけられます(自発的特性転移)。
  • 「第三者なら信頼される」とは限りません。消費者庁の調査では、有名人やインフルエンサーの発信を信頼する人は20.3%で、販売事業者自身の発信(35.4%)より低い水準です。
  • 由来とされる台詞の主は「伯爵夫人」ではなくウィンザー公爵夫人で、原典は小説ではなく史実性に疑義のある回想録です。「消費者庁の指摘」とされる資料も、検討会の構成員が提出したものです。

ウィンザー効果の定義:第三者経由の評価が信頼される条件

成立条件:受け手から見た発信者の利害の有無

ウィンザー効果の説明で着目するのは、同じ情報でも「誰がそれを言ったか」によって受け取られ方が変わる点です。企業が自社商品を優れていると説明すれば、受け手は売り手の利益という動機を差し引いて聞きます。同じ内容を、売っても得をしない人が語れば、差し引く必要がないぶん、そのまま受け取られやすくなります。

したがって条件は「第三者であること」ではありません。「受け手から見て、発信者に伝える動機上の利害がないと判断できること」です。第三者でも、報酬を受け取っていると分かれば条件は崩れます。なお、ステルスマーケティング規制の判断対象は内心の動機ではなく、事業者の表示であることを一般消費者が判別できるかどうかです。

表記ゆれと学術用語としての位置づけ:出典4件に査読論文なし

この語は「ウィンザー効果」と「ウインザー効果」の両方の表記で流通しており、指す内容は同じです。

学術用語として扱う前に確認しておきたい点があります。日本語版ウィキペディアの当該項目の脚注は、日本経営心理士協会の用語集、マイナビニュースの記事、ビジネス書1冊(岸正龍『相手に響く伝え方人生を変える心理スキル99』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019年)、消費者庁の検討会資料の4件で、査読論文は含まれていません。同項目のノートには「英文での用例が全く見当たらない」という質問も出ています(2026年10月時点)。これは編集者の問題提起で、ウィキペディアの脚注やノートだけで英語圏での使用状況は判断できませんが、少なくともここに挙がる出典からは学術用語としての裏付けは得られません。

心理学の側で対応するのは、特定の効果名ではなく「情報源の信頼性(source credibility)」と、話し手の意図が説得に与える影響の研究です。ウィンザー効果は、その領域が扱ってきた現象に日本語圏で付けられた呼び名と理解するのが正確です。

名称の由来をめぐる3つの誤解:称号・原典の性格・出典の帰属

由来として挙げられるのは、邦訳『伯爵夫人はスパイ』(講談社、1991年4月、小泉摩耶訳、381ページ)です。原著は『The Spy Went Dancing』で、国立国会図書館の書誌の原タイトル欄に記録されています。著者の第1作『The Spy Wore Red』とは別の本です。この書誌を押さえたうえで日本語の解説を読むと、三か所で食い違いが生じます。

誤解1:台詞の主は「伯爵夫人」ではなくウィンザー公爵夫人

台詞の主を「ウィンザー伯爵夫人」と書く解説が広く流通しています。検索上位の解説を確認すると、人材系メディア、マーケティング系ブログ、用語辞典など主要な解説の多くがこの表記です。しかしウィンザー家の当該人物の称号は公爵夫人(Duchess of Windsor)で、伯爵夫人ではありません。日本語版ウィキペディアも「ウィンザー公爵夫人」と表記しています。

混同の手がかりは邦題にあります。『伯爵夫人はスパイ』の「伯爵夫人」は、作中のウィンザー公爵夫人ではなく、著者のアリーン・グリフィス(日本語では通例アーリーン・ロマノネス。Aline, Countess of Romanones、1923年生、2017年没)を指します。書名の伯爵夫人と台詞の主は別人です。この二人の混同が「ウィンザー伯爵夫人」という誤表記の原因になった可能性はありますが、発生の経緯を示す資料は確認できていません。

誤解2:原典は小説ではなく回想録で、記述の史実性に疑義

この本を「ミステリー小説」と紹介する解説がありますが、国立国会図書館の分類は日本十進分類法936(記録・手記・ルポルタージュ)で、小説の933ではありません。第二次世界大戦中に諜報活動に従事したとする著者自身の回想録です。

その史実性には疑いがあります。英語版ウィキペディアの著者の項目によれば、著者がOSS(米戦略情報局)のマドリード支局で暗号事務職員だったこと自体は争われていません。一方で同項目は、情報史の研究者ルパート・アラソン(筆名ナイジェル・ウェスト)が『Historical Dictionary of Sexpionage』(2009年、326ページ)で諜報活動の記述を「完全に創作だった」としたこと、1991年に業界紙Women’s Wear Dailyが国立公文書館のOSSファイルをもとに「功績を脚色していた」と報じたことを紹介しています。著者は同年3月のロサンゼルス・タイムズで「私の話はすべて事実に基づいている」と反論しました。

由来の一節は、効果の根拠にはなりません。現象の妥当性は、由来と切り離して実験データで確かめる必要があります。

誤解3:消費者庁の見解ではなく、検討会に提出された構成員資料

「消費者庁もウィンザー効果を取り上げている」と書く解説があり、日本語版ウィキペディアも消費者庁がステルスマーケティングによる悪用を指摘していると記述しています。挙げられている出典は確かに消費者庁のサイトにありますが、ステルスマーケティングに関する検討会(令和4年10月24日)に構成員の弁護士・壇俊光氏が提出した資料1「ステルスマーケティングの問題点について」です。2ページに「ウィンザー効果「直接よりも、第三者や口コミを介して間接的に知る情報の方が信頼性が増す」」、12ページに「広告であるにも関わらず、広告であることを偽り・秘している時点で、バンドワゴン効果・ウインザー効果の悪用であり消費者を誤信させている」とあります。行政の検討過程で参照された用語であることは事実ですが、消費者庁の公式見解として引用するのは帰属が過ぎます。

第三者の言葉が効く条件:話し手の意図と利害を扱った古典研究

「ウィンザー効果」という名前の実験はありませんが、「話し手に説得の意図や利害が見えないと説得力は増すのか」は、1950〜70年代の社会心理学で繰り返し実験されています。結果を並べると、通説より狭い条件で効くことが分かります。

立ち聞きの実験(1962年):聞き手の存在への気づきと論題への関与

ウォルスターとフェスティンガーは、スタンフォード大学の心理学入門の受講生を観察室の見学に案内し、隣室にいる「大学院生の雑談」をイヤホンで聞かせました(Elaine Walster and Leon Festinger「The effectiveness of overheard persuasive communications」Journal of Abnormal and Social Psychology, Vol.65, No.6, 1962, pp.395-402)。雑談は録音した6分間の説得で、「喫煙が肺がんを起こすというのは誤解だ」と主張する内容です。半数の受講生には「見学者が来ると大学院生に伝えておく」と告げ(通常条件)、残りには「静かにすれば気づかれずに入れる」と告げました(立ち聞き条件)。

1週間後、別の調査を装って意見を測ると、雑談を聞かなかった対照群の11.4に対し、通常条件は13.6、立ち聞き条件は14.5でした。得点は4問の合計で、高いほど主張に賛成していることを示します。ただし通常条件と立ち聞き条件の差はp=.08で5%水準では有意ではなく、その差のほとんどは喫煙者が生んでいました。非喫煙者では13.6対14.2で有意差がなく、喫煙者では13.6対15.3でした。

この偏りを確かめる2本目の実験では、学生の妻41人と寮に住む女子学生40人に「学生の夫はもっと家にいるべきだ」「上級生の女子は学外に住めるようにすべきだ」という2つの主張を聞かせました。自分に関わる論題では立ち聞き条件が通常条件を大きく上回り、関わらない論題では差がほとんど出ませんでした。

著者らは、自分に関わる話を、話し手が聞き手の存在を知ったうえで語ると、聞き手が下心を疑って効果が打ち消されると解釈しています。話し手の誠実さの評価も、立ち聞き条件で6.4(喫煙者)と6.1(非喫煙者)、通常条件で5.6と4.8でした。ただし著者ら自身が「理論的な説明は持っていない」と断っており、効果が確認されたのは聞き手が受け入れたい主張に限られます。

利益に反する主張(1966年)と予想外の主張(1978年):話し手の偏りの評価

ウォルスター、アロンソン、エイブラハムズは、評判の低い話し手でも、自分の利益に反する主張をすれば説得力が上がるかを試しました(Journal of Experimental Social Psychology, Vol.2, No.4, 1966, pp.325-342)。新聞記事を模した冊子で、犯罪者か検察官のどちらかが、検察や裁判所の権限を「強めるべきだ」または「弱めるべきだ」と主張します。中学1年生283人が参加した2本目の実験では、権限を弱めるべきだと言うときは検察官のほうが説得力が高く、強めるべきだと言うときは犯罪者のほうが説得力が高くなりました。著者らは「自分の利益に反する主張をするとき、普段は評判の低い話し手でも、同じ主張をする評判の高い話し手より説得力を持ちうる」と結論しています。

ただし差がはっきり出たのは「検察官はどの程度の権限を持つべきか」という最も一般的な質問だけで、刑期の長さなど個別の質問では有意差が出ていません。1本目の実験では、利益に反する主張をした犯罪者も検察官とほぼ同程度にとどまりました。

イーグリー、ウッド、チェイキンは、この現象を受け手の推論として整理しました(Journal of Personality and Social Psychology, Vol.36, No.4, 1978, pp.424-435)。受け手は、話し手の知識が現実からずれていると見る「知識バイアス」と、知っていても正確に伝える気がないと見る「報告バイアス」を予想しながら話を聞きます。どちらの予想の場合も、主張が予想に反すると受け手はより説得され、話し手を偏りの少ない人物と評価しました。報告バイアスの予想どおりの主張を聞いたときには、話し手の不誠実さや操作の意図が推論されていました。

ウィンザー効果に引き寄せて読むと、第三者の発言が信頼されるのは「利害がないので、報告バイアスを予想する理由がない」からです。裏を返せば、当事者であっても、自社に不利な事実を認める発言は予想を裏切るため、信頼を得やすくなると考えられます。第三者を立てられない場面では、この方向を検討する価値があります。

信頼性の高低と時間経過(1951年):直後23.0%対6.6%の純変化率

情報源の信頼性の古典であるホヴランドとワイスの研究(Carl I. Hovland and Walter Weiss「The Influence of Source Credibility on Communication Effectiveness」Public Opinion Quarterly, Vol.15, No.4, 1951, pp.635-650)では、提示直後の意見の純変化率は、高信頼性の情報源で23.0%、低信頼性で6.6%でした。これは主張に沿う変化から逆方向の変化を差し引いた値で、各条件のN=122は61人による回答事例数です。ところが4週間後には高信頼性の条件で賛同が10.7ポイント下がり、低信頼性の条件で7.4ポイント上がって、両者の純変化率はそれぞれ12.3%と14.0%になりました。18.1ポイント(Pdiff=.001)は、直後から4週間後までの変化量の条件間差です。この実験では信頼性による差が4週間後に縮まりましたが、第三者経由の称賛や広告で同じ推移になるかは、この実験からは分かりません。被験者はイェール大学の学部生、話題は4本に限られます。低信頼性の情報源の主張が後から効くこの現象は、スリーパー効果とは?信頼性の低い情報が後から効く条件と原典の実数値で詳しく扱っています。

日本の実測データ:発信者別の信頼度は40.9%・35.4%・20.3%

「第三者の情報は事業者の発信より信頼される」という説明は、日本の調査ではそのままの形では支持されません。消費者庁の令和7年度消費者意識基本調査は、発信者の種類別に信頼度を尋ねています。

情報の発信者 信頼している 信頼していない
一般人によるレビューやクチコミ 40.9% 45.8%
販売事業者自身が発信する情報 35.4% 50.6%
有名人・インフルエンサーの投稿 20.3% 64.6%

調査は令和7年11月の実施で、全国の満15歳以上の日本国籍を有する者を母集団とする層化2段無作為抽出(標本数10,000人、有効回収数5,473人、回収率54.7%)です。数値は問16(1)で、「信頼している」は「とても」と「ある程度」の合計です(リンク先PDFの28枚目、誌面34ページ・図5-1)。

一般人のクチコミが事業者自身の発信を上回る差は5.5ポイントで、クチコミですら「信頼していない」が「信頼している」を上回ります。有名人やインフルエンサーの発信は事業者自身より15.1ポイント低く、第三者の種類によっては事業者が自分で語るより信頼されません。ただし、この設問は報酬の推測や不信の理由を測っていません。信頼度の違いが、利害関係の認識によって生じたかどうかは、この結果だけでは判断できません。

似た心理効果との違い:着目点で見分ける4つの隣接概念

ウィンザー効果は他の効果と混同されやすいため、何に着目した概念かで区別すると整理できます。とくに「第三者効果」は名前が似ていますが、別の学術概念です。

用語 着目点 一言でいうと
ウィンザー効果 発信者の利害 誰が言ったかで信頼度が変わる
ハロー効果 目立つ一特徴 一点の印象が全体評価に広がる
バンドワゴン効果 支持者の数 多数派であること自体が動機になる
スリーパー効果 時間の経過 情報源への警戒が薄れていく
第三者効果 影響の自己認識 他人ほど影響されると考える

第三者効果(third-person effect)は、W. P. Davisonが1983年にPublic Opinion Quarterly誌で提唱した概念で、人は自分より他人のほうがメディアの影響を受けやすいと見積もる傾向を指します。第三者を介した情報の信頼度を扱うウィンザー効果とは別物です。各効果の詳細はハロー効果とは?1920年の原典データと具体例・防ぎ方をわかりやすく解説、バンドワゴン効果とは?意味・由来と実験データ、スノッブ効果・アンダードッグ効果との違い、スリーパー効果とは?信頼性の低い情報が後から効く条件と原典の実数値で解説しています。

職場・対人での使い方:人づての称賛が効く条件と逆効果の境目

効きやすい場面:リファレンスチェックと360度評価

最も手軽に使えるのは、直接褒める代わりに第三者を経由させる場面です。上司が部下に「よくやっている」と直接伝えると、受け手は励ますための社交辞令という可能性を差し引いて聞きます。同じ評価が同僚を経由して「課長があなたの仕事を評価していた」と届くと、伝えた同僚には褒める動機がないため、その割引が起きにくくなります。本人のいない場所で人を褒めておくことに意味があるのは、この非対称性のためです。

採用や評価の制度にも同じ構造があります。中途採用のリファレンスチェックは、応募者の自己申告ではなく前職の上司や同僚から働きぶりを確認する手続きで、評価の出所を本人から切り離しています。360度評価も、上司一人の判断ではなく同僚や部下の評価を集める点で同じ発想です。社員の紹介で人を採るリファラル採用では、応募者が会社について聞く話の出所が人事担当者から現場の社員に替わります。

陰で人を褒める側の評価:語った特性が話し手に移る自発的特性転移

第三者を褒める行為は、褒められた本人だけでなく、褒めた側の印象にも影響します。スコウロンスキーらは、人が他人について語った特性が、語った本人の特性として受け手に結びつけられる現象を自発的特性転移(spontaneous trait transference)と名付けました(Journal of Personality and Social Psychology, Vol.74, No.4, 1998, pp.837-848)。

米国心理学会の発表によれば、4つの研究のうち3つは、顔写真に短い発言を添えて見せる手続きでした。「子犬を蹴飛ばした」という知人の話を語った人は、本人も「残酷」な人物として結びつけられました。写真と発言は無作為に組み合わせただけだと参加者に明言した研究でも同じ傾向が出ており、著者らはこの結びつきが論理的な推論ではなく単純な連合で起き、時間が経っても残ると報告しています(1998年3月の発表と論文要旨による)。

職場に当てはめると、同僚の仕事を「丁寧だ」と褒める人は自分も丁寧な人と結びつけられやすく、陰口を言う人は語った否定的な特性と結びつけられやすい、ということになります。ただし研究が測ったのは話し手と特性の結びつきで、職場での評価や信頼が実際に上がるかまでは確かめていません。

恋愛・人づての好意への応用:立ち聞き研究との違いと限界

共通の知人を通じて好意が伝わる場面は、立ち聞き実験から応用を考えられる例です。ただし実験は話し手の会話を直接聞く手続きで、知人からの伝言とは状況が異なります。そのうえで共通点を挙げると、「あの人があなたを良く言っていた」という話は受け手が信じたい内容で、しかも自分に直接関わります。1962年の実験で立ち聞きの優位がはっきり出たのは、この組み合わせでした。

同じ実験では、話し手が聞き手の存在を知っている通常条件では、自分に関わる論題で立ち聞き条件より説得力が低く出ました。著者らはこれを、聞き手が下心を疑うためと解釈しています。知人が頼まれて伝えに来たと分かる形では、この割引が働く可能性があります。なお、本記事で紹介した研究は恋愛場面での効果の大きさを測ったものではありません。

逆効果になる境目:伝達者の動機が見えるとき

最も起きやすい失敗は、伝達者の動機が見えてしまうことです。人事評価権を持つ人が伝える場合や、本人に頼まれて伝えていることが明らかな場合、受け手は「言わされている」と判断して、直接褒められたときと同じ割引を始めます。この段階では、第三者を経由させたぶんかえって不自然に映ります。伝達経路を設計するときは、伝える人にその評価を伝える理由がないことが受け手から見えるかどうかを基準にしてください。

同じ経路から好意的な話ばかりが届いて経路の中立性が疑われる場合や、伝聞の内容が本人の実感と大きく食い違う場合も効果は反転します。批判を第三者経由で伝えた場合に称賛と同じ作用が働くかは、本記事で紹介した研究では確かめられていません。説得がかえって反発を招く条件はブーメラン効果とは?意味・原因と具体例、心理学の実験データと再現性で扱っています。

マーケティングでの施策選別:発信者の利害と依頼関係の開示

施策別の検討軸:受け手から見た発信者の利害

ウィンザー効果を狙う施策は数多く紹介されますが、成立条件が「受け手から見て発信者の利害が見えないこと」である以上、対価の存在が推測されやすい施策ほど、この効果に頼れる余地は小さいと考えられます。下の表は、その観点で施策を並べた筆者の整理です。

施策 受け手から見た発信者の利害 適合度
利用者レビューの掲載 見えにくい 高
第三者機関の認証・受賞歴 見えにくい 高
報道・メディア掲載 見えにくい 高
導入事例インタビュー 依頼関係が明示される 中
インフルエンサー起用 対価が推測される 低

この表は施策の実測順位ではなく、利害関係を点検するための仮説的な整理です。消費者庁の調査は認証・受賞歴、報道、導入事例の効果を比較しておらず、この表から予算配分の順位は決められません。導入事例インタビューのように依頼関係が明示される施策は、隠すのではなく明示したうえで、語られる内容の具体性で信頼を取りにいくほうが筋が通ります。レビューや事例をどの導線に置き、どの指標で効果を測るかまで含めて設計する場合は、Webマーケティング戦略の立案支援でご相談いただけます。

否定的な口コミの掲載判断:反論なしの両面提示が片面提示に劣るメタ分析

検索上位の解説のいくつかは「ネガティブな口コミも載せると信頼される」と勧めますが、研究の結論はもう一段条件付きです。片面提示と両面提示の説得力を比べたアレンのメタ分析(Mike Allen「Meta-analysis comparing the persuasiveness of one-sided and two-sided messages」Western Journal of Speech Communication, Vol.55, No.4, 1991)では、両面提示は全体として片面提示よりわずかに有利(r=.041、26研究・7,547人)でした。ところが内訳を見ると、反論を添えない両面提示は片面提示より説得力が低く(r=-.060、6研究・1,819人)、反論を添えた両面提示だけが片面提示を上回りました(r=.076、19研究・5,624人)。

アレンが比べたのはメッセージの説得力で、口コミへの信頼や返信の効果を測ったものではありません。それでも口コミの運用に当てはめるなら、否定的なレビューをただ並べるより、その指摘への回答や改善の記録を添える形のほうが「反論を添えた両面提示」に近く、検討の出発点になります。イーグリーらの整理に照らすと、自社に不利な口コミを消さずに残すことは、受け手が予想する報告バイアスを裏切る方向に働くと考えられます。両面提示の原典データは両面提示とは?原典1949年の実数値と「反駁なし」が逆効果になる境界で詳しく扱っています。

法的な線引き:令和5年10月1日からのステマ規制

第三者に語ってもらう働きかけは、景品表示法に触れないかを確認する必要があります。事業者が広告であることを一般消費者に分からない形で発信させる行為、いわゆるステルスマーケティングは、令和5年10月1日から景品表示法違反となりました。

消費者庁の説明では、規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)で、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。責任は依頼した側にあるため、施策を設計する事業者が広告表記の有無を管理する必要があります。詳細はステルスマーケティング(ステマ)とは?定義・規制・罰則と見分け方と景品表示法とは?優良誤認・有利誤認と景品規制をECの価格表示設計に落とす判断軸をご確認ください。

よくある質問

ウィンザー効果とハロー効果の違いは何ですか?

着目している対象が異なります。ウィンザー効果は「誰が伝えたか」という情報源の利害に着目し、第三者経由の情報が信頼されやすいことを指します。ハロー効果は「一つの目立つ特徴」に着目し、学歴や外見といった一点の印象が全体評価に広がる現象です。

ウィンザー効果とバンドワゴン効果の違いは何ですか?

ウィンザー効果は発信者の中立性が信頼を生むという構造で、支持者の人数は問いません。バンドワゴン効果は多数が支持していること自体が選択の動機になる現象で、発信者が中立かどうかは関係しません。レビューの内容を信頼するのが前者、レビュー件数の多さに動かされるのが後者です。

ウィンザー効果の具体例にはどんなものがありますか?

職場では、上司の評価が同僚を経由して本人に届く場面が典型です。採用では、応募者の自己申告より前職へのリファレンスチェックの結果が重く扱われる運用が同じ構造です。日常では、店の宣伝より友人の勧めや利用者のレビューで店を決める行動が当てはまります。いずれも、伝える人に得がないと受け手が判断できることが共通しています。

恋愛でウィンザー効果は使えますか?

共通の知人を経由して好意的な評価が伝わる場面は、ウィンザー効果の例としてよく挙げられます。ただし本記事で紹介した研究は恋愛場面での効果を測ったものではなく、知人が頼まれて伝えに来たと分かると、受け手が意図を疑って割り引く可能性があります。

ウィンザー効果についての論文や本はありますか?

「ウィンザー効果」という名前の査読論文は、日本語版ウィキペディアの出典4件にも含まれていません。現象に対応する研究としては、立ち聞きの説得力を測ったWalster and Festinger(1962)、自分の利益に反する主張の説得力を測ったWalster, Aronson and Abrahams(1966)、情報源の信頼性の古典であるHovland and Weiss(1951)、話し手のバイアスの予想を扱ったEagly, Wood and Chaiken(1978)があります。

ウィンザー効果の由来になった小説は何ですか?

邦訳『伯爵夫人はスパイ』(講談社、1991年)で、原著は『The Spy Went Dancing』です。ただし国立国会図書館の分類は936(記録・手記)で、小説ではなく著者の回想録にあたります。台詞の主の称号も伯爵夫人ではなくウィンザー公爵夫人で、邦題の伯爵夫人は著者ロマノネス伯爵夫人を指します。

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