マーケットシェア(市場シェア)とは?計算式と相対的市場シェアの求め方・調べ方

マーケットシェア(市場シェア)とは?計算式と相対的市場シェアの求め方・調べ方

マーケットシェア(市場シェア)は、ある市場の売上高や販売数量のうち、1社が占める割合です。計算式は「自社の売上÷市場全体の売上×100」と単純ですが、数量で数えるか金額で数えるか、分母の市場をどこまで含めるかで数値も順位も変わります。この記事では、シェア率の出し方を計算例で示したうえで、相対的市場シェアの正しい比較相手、市場の集中度を測るHHIと公正取引委員会の基準、シェアデータの調べ方までを順に整理します。

まとめ:マーケットシェアの要点

指標 計算式 主な用途
市場シェア(絶対的) 自社の売上÷市場全体×100 市場での立ち位置
相対的市場シェア 自社シェア÷最大競合のシェア PPM・最大競合との比較
HHI 各社シェア(%)の2乗の合計 市場の集中度

数量ベースと金額ベースは別の数字として扱い、比較するときは定義をそろえます。相対的市場シェアは「競合他社」ではなく最大の競合で割るので、1.0を超えれば自社が首位です。何%を目指すかの目安はクープマンの目標値、市場全体の寡占度はHHIで見ます。

マーケットシェア(市場占有率)の意味と類語の違い

市場シェア・シェア率・市場占有率・売上シェアの関係

マーケットシェア、市場シェア、市場占有率、シェア率、業界シェアは、どれも「市場のうち自社が占める割合」を指す同じ概念です。公正取引委員会の統計では「事業分野占拠率」という用語も使われています。

違いが出るのは修飾語の部分です。「売上シェア」は売上金額で数えた割合を指し、「販売シェア」は販売金額か販売数量かの確認が必要です。「国内シェア」「世界シェア」は分母の市場の範囲を示します。数字を見るときは、呼び方ではなく「何を数えたか」と「どの範囲の市場か」を確認してください。

マインドシェア・取引先シェア・シェアアップとの違い

マインドシェアは、消費者の頭の中でそのブランドが占める割合です。販売実績ではなく、あるカテゴリで思い浮かぶブランド名など認知の指標で測ります。測り方は純粋想起の意味と具体例で詳しく扱っています。

営業の現場でいう「取引先のシェア」は、市場全体ではなく1社の顧客の購買額のうち自社が占める割合です。ある顧客が年間1,000万円分の部材を買い、そのうち300万円が自社からなら、その取引先での自社シェアは30%です。「シェアアップ」は、市場シェアでも取引先シェアでも、その比率を引き上げる取り組みを指します。

マーケットシェアの計算式と出し方

シェア率の基本の計算式

基本の式は次のとおりです。

市場シェア(%)=自社の売上高(または販売数量)÷市場全体の売上高(または販売数量)×100

たとえば市場全体の売上が500億円で自社の売上が75億円なら、75÷500×100で15%です。分子と分母は必ず同じ単位・同じ期間・同じ範囲でそろえます。分子を税込売上、分母を業界団体の税抜出荷額で取ると、比率が過大になります。ずれの大きさは税率と元のシェアによって異なり、売上と出荷額の集計段階もそろえる必要があります。

数量ベースと金額ベースで首位が入れ替わる計算例

同じ市場でも、数量で数えるか金額で数えるかで順位が逆転します。架空の3社で計算すると次のようになります。

企業 販売台数 単価 売上 数量シェア 金額シェア
A社 60万台 2万円 120億円 60.0% 36.4%
B社 30万台 6万円 180億円 30.0% 54.5%
C社 10万台 3万円 30億円 10.0% 9.1%
合計 100万台 - 330億円 100% 100%

低価格帯のA社は数量で首位、高価格帯のB社は金額で首位です。どちらも「シェアNo.1」を名乗れてしまうため、他社の発表と自社の数字を並べる前に基準を確認する必要があります。

公正取引委員会の企業結合ガイドラインは、市場シェアを原則として販売数量の百分比で算出し、商品にかなりの価格差があり金額で実績を数える慣行が定着している場合などは販売金額で算出するとしています。一方、調査会社のGartnerは売上高を主な基準とし、出荷台数は補助的な指標として使うと市場シェアの調査方法で説明しています。数量ベースは販売量の広がりを、金額ベースは売上規模を比べる指標です。価格差だけで決めず、分析目的と比較先の集計基準に合わせて選びます。

分母となる市場の範囲の決め方

シェアの数字を最も大きく動かすのは分母です。「国内の業務用プリンター」と「国内のプリンター全体」では、同じ自社の売上でもシェアが何倍も違います。範囲を決めるときは、次の3点を明記しておくと後から比較できます。

  • 製品・サービスの範囲(どの用途・価格帯まで含めるか)
  • 地理的な範囲(国内のみか、世界か)
  • 輸入品や自社消費分の扱い

公取委のガイドラインは、国内の需要者向けの輸入品を国内への供給として市場シェアの計算に含めるとしています。国内メーカーの出荷統計だけを分母にすると輸入品が抜け、国内勢のシェアが実際より高く出ます。

相対的市場シェアの求め方

最大の競合のシェアで割る計算式

相対的市場シェアは、自社のシェアを競合のシェアで割った倍率です。日本語の解説では「競合他社のシェアで割る」とだけ書かれることが多いものの、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の資料「To Spend or Not to Spend」は「自社のシェアを最大の競合のシェアで割った値」と定義しています。比較相手を好きに選べると、弱い競合と比べて数字を大きく見せられるためです。

相対的市場シェア=自社のシェア÷最大の競合のシェア

自社が首位でなければ、最大の競合は首位企業です。先ほどの金額ベースの例でA社(36.4%)は首位B社(54.5%)で割るので約0.67倍になります。自社が首位なら、最大の競合は2位企業です。B社は2位A社で割って約1.50倍になります。つまり1.0を超えるのは首位企業だけで、値は、2位以下の企業なら首位に対する倍率、首位企業なら2位に対する倍率を表します。数量ベースで計算し直すと、A社は2.0倍、B社は0.5倍と立場が逆になります。

PPM(成長率・シェアマトリクス)での使い方

相対的市場シェアが最もよく使われるのは、BCGが考案したPPMです。BCGは、市場成長率と相対的市場シェアを2軸にして(BCGの成長率・シェアマトリクスの解説)、事業を花形(star)、金のなる木(cash cow)、問題児(question mark)、負け犬(BCGの原典ではpet)の4つに分けています。

絶対的なシェアではなく相対値を使うのは、市場によって「高シェア」の水準が違うからです。上位2社で市場を分ける業界の30%と、数百社が乱立する業界の30%では意味が違いますが、相対値なら最大競合に対する規模の倍率として比べられます。自社が首位の場合は、2位企業との比較になります。4象限の判断と資金配分の考え方はPPMの4象限の意味とやり方で解説しています。

マーケットシェアの目標値の考え方

シェアの目標設定では、73.9%(独占的)、41.7%(安定的)、26.1%(市場影響)など7つの水準を示したクープマンの目標値がよく使われます。ランチェスター協会は、41.7%を首位企業の安定目標値、26.1%を有力企業として存在感を持つ下限目標値と説明しています。いずれも同戦略における目安です。

ただし、この数値は市場の寡占度を問わない一律の目安です。数百社が乱立する市場で26.1%を目標にすると非現実的になり、上位2社で分ける市場では41.7%でも2位に甘んじることがあります。目標は、後述のHHIで見た市場の集中度と、最大競合との相対シェアを合わせて決めるほうが現実的です。弱者と強者で取るべき戦い方の違いはランチェスター戦略の解説を参照してください。

市場の集中度を測るHHIと公正取引委員会の基準

HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)の計算方法

個々の企業のシェアではなく、市場全体がどれだけ少数の企業に集中しているか(寡占度)を測る指標がHHIです。各社のシェア(%)を2乗して合計します。完全な独占なら100×100で10,000、多数の小さな企業が並ぶ市場ほど0に近づきます。

シェアが40%・30%・20%・10%の4社の市場なら、1,600+900+400+100でHHIは3,000です。ここで3位(20%)と4位(10%)が合併すると、合併後は40%・30%・30%でHHIは3,400になり、増分は400です。増分は必ず「2×20×10」、つまり合併する2社のシェアの積の2倍に一致します。

上位数社のシェア合計(累積集中度)でも集中度は見られますが、上位3社が33%ずつの市場と、1社が90%で残りが5%ずつの市場は、上位3社の合計ではほぼ同じになります。HHIならそれぞれ約3,300と8,150で、1社への偏りが数字に出ます。

企業結合審査でのHHIの基準値

公取委の「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(第4の1(3)、注5〜注7)は、同業同士の企業結合(水平型企業結合)について、結合後の数値が次のいずれかに当てはまれば、通常は競争を実質的に制限することにはならないとしています。

結合後のHHI HHIの増分
1,500以下 問わない
1,500超2,500以下 250以下
2,500超 150以下

さらに同指針は、この基準に当てはまらなくても、過去の事例に照らして結合後のHHIが2,500以下で、当事会社グループの市場シェアが35%以下なら、競争を制限するおそれは小さいと通常考えられるとしています。先ほどの例(結合後3,400・増分400)は3つのどれにも当てはまらず、個別に審査される水準です。なお、基準内でも、競争上重要なデータや知的財産権など市場シェアに表れない潜在的競争力がある場合は、追加の検討が必要になることがあります。M&Aや業務提携を検討する段階で、自社と相手のシェアからこの数字を試算しておくと、審査の見通しを立てやすくなります。

マーケットシェアの調べ方

公的データの鮮度と注意点

かつては公取委の「生産・出荷集中度調査」が品目ごとの上位企業のシェア合計(累積集中度)とHHIを公表していましたが、公取委は累積集中度のページで、平成25年・26年調査以降は実施していないと明記しています。対象は2013年・2014年の実績で、公表は2016年5月です。過去との比較には使えますが、現在の市場シェアを示すデータとしては使えません。

公的統計で手に入りやすいのは、個社のシェアではなく分母となる市場全体の規模です。業界団体の出荷統計や官公庁の生産統計で市場規模を取り、分子には自社の実績を入れて自社シェアを計算する、という組み合わせが基本になります。

民間調査・業界地図・IR資料の使い分け

競合を含めたシェアの一覧が必要なら、民間の情報源を使います。

  • 日本経済新聞社の「主要商品・サービスシェア調査」(『日経業界地図』に掲載)
  • Gartner、IDC、矢野経済研究所などの調査会社レポート
  • 上場企業の決算説明資料・有価証券報告書に書かれた自社シェア

調査会社ごとに市場の定義と集計方法が違うため、同じ市場でもレポート間で順位が食い違うことがあります。複数の資料を並べる場合は、数値そのものより「どの定義でその順位か」を先に書き写してください。企業のIR資料のシェアは自社に有利な市場の切り方になっていることがあるので、分母の定義まで確認します。シェア一覧の実際の読み方はERP市場規模とシェアの読み方で具体例を示しています。

マーケットシェア単独での判断が適さない場面

シェアは市場の中での位置を示す数字で、事業の良し悪しそのものではありません。次の場面では、シェアの数字だけで判断しないでください。

  • 市場そのものが縮小している:シェアが上がっても売上は減っていることがあります。市場規模の推移と必ずセットで見ます
  • 値下げでシェアを取った:数量シェアは上がっても利益率が下がっていれば、首位の価値は目減りしています
  • 市場の定義を途中で変えた:前年と分母が違えば、シェアの増減は比較できません
  • 短期間の数値:新製品の発売月や大口受注の四半期は一時的に跳ねるので、年単位で見ます

市場が成長期にあるのか成熟期にあるのかによって、シェアを取りに行く価値も変わります。段階ごとの考え方はプロダクトライフサイクルの解説を参照してください。

よくある質問

市場シェアとは何ですか?

ある市場の売上高や販売数量のうち、1社(または1ブランド)が占める割合です。マーケットシェア、市場占有率、シェア率とも呼ばれ、どれも同じ意味です。

シェア率の計算式は?

自社の売上高(または販売数量)を市場全体の売上高(または販売数量)で割り、100を掛けます。分子と分母は単位・期間・市場の範囲をそろえてください。

相対的市場シェアはどの競合と比べればよいですか?

最大の競合です。自社が首位でなければ首位企業のシェアで、自社が首位なら2位企業のシェアで割ります。1.0を超えるのは首位企業だけです。

取引先のシェアとは何ですか?

1社の顧客が購入する同じ種類の商品やサービスのうち、自社から買っている金額の割合です。市場全体ではなく、特定の取引先の中での自社の比率を指します。

市場シェアの言い換えは?

マーケットシェア、市場占有率、シェア率、業界シェアが同じ意味で使われます。公正取引委員会の統計では「事業分野占拠率」という表記もあります。

関連記事

お気に入りに入れた記事の一覧

資料請求

RELATED POSTS 関連記事

目次