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ボラティリティの種類と計算方法|ヒストリカル・インプライドの算出式とVIX・日経平均VI

ボラティリティの種類と計算方法|ヒストリカル・インプライドの算出式とVIX・日経平均VI

ボラティリティには、過去の値動きから計算するヒストリカル・ボラティリティ(HV)と、オプション価格から逆算するインプライド・ボラティリティ(IV)の2種類があります。HVは対数リターンの標準偏差を年率に直せば求まりますが、IVは式を変形しても答えが出ないため、数値計算で探し当てます。VIX指数や日経平均VIは、このIVの考え方を市場全体に広げた指数です。

この記事では、それぞれの算出式とExcel・Pythonでの計算、年率の数字を「明日どれくらい動くか」という値幅に直す方法を扱います。日経平均の903営業日で、その値幅の予想がどれだけ当たったかも実測しました。ボラティリティという言葉の意味や、何%なら高いのかという目安は「ボラティリティとは?意味と読み方、高い・低いの目安を実数で解説」で扱っています。

まとめ:ボラティリティの種類と計算方法の要点

種類 何から計算するか 計算方法 時間の向き
ヒストリカル(HV) 過去の終値 対数リターンの標準偏差×√年間日数 過去
Parkinson推定量 過去の高値・安値 ln(高値÷安値)の二乗平均から算出 過去
ATR 過去の高値・安値・終値 真の値幅の平滑平均(期間14日) 過去
インプライド(IV) 1本のオプション価格 ブラック・ショールズ式を数値計算で逆算 将来(満期まで)
VIX・日経平均VI 多数のオプション価格 2限月の分散を30日に補間 将来(30日)
  • HVは期間(20日か60日か)と年換算の日数(243日か252日か)で数字が変わります。比べるときはそろえてください。
  • 年率のボラティリティを√243で割ると1日の値動きの標準偏差になります。日経平均の年率27.8%は、1日あたり約1.78%(約1,165円)です。
  • ただし、この換算は大きな動きを過小評価します。日経平均の903日では、前日までの20日HVから求めた標準偏差の±3倍を超えた日が13日あり、推定誤差を織り込んだ基準(約6.6日)の約2倍でした。
  • IVは、ブラック・ショールズ式の理論価格が市場価格と一致するボラティリティをニュートン法などで探して求めます。
  • VIXと日経平均VIは、個別のIVの平均ではなく、アウト・オブ・ザ・マネーのオプション価格を重み付けして合計する方式で30日先の予想変動率を求めます。1990年以降の9,241日で、VIXはその後の実現ボラティリティを85.9%の日で上回りました。

ボラティリティの種類:過去を測るHVと価格から逆算するIV

ヒストリカル・ボラティリティ(HV):実際の値動きから算出

HVは、過去の一定期間に実際に起きた値動きのばらつきです。「実現ボラティリティ」とも呼ばれます。終値の列さえあれば計算でき、株価・為替・暗号資産のどれにも同じ式を使えます。2026年10月16日までの直近20営業日で計算した日経平均のHVは27.8%です。

弱点は、過去を測った値にすぎないことです。HVは決算発表や金融政策会合の日程を直接入力しません。ただし、イベントを警戒した値動きが既に起きていれば、その変動は計算に含まれます。

インプライド・ボラティリティ(IV):オプション価格に織り込まれた予想

「インプライド(implied)」は「暗に含まれた」という意味です。配当を無視したブラック・ショールズ式では、ヨーロピアン型オプションの理論価格を、原資産価格・行使価格・満期までの期間・金利・ボラティリティの5つから計算します。このうちボラティリティ以外の4つは市場で観察できるので、実際に取引されている価格から逆算すれば、市場が想定している将来の変動率が分かります。それがIVです。

同じ原資産でも、満期や行使価格ごとにIVは異なります。決算やイベントの前にはIVが上がり、通過すると急低下する動きがよく見られます。

VIXと日経平均VI:多数のオプションから作る市場全体の予想変動率

1本のオプションから求めたIVは、その行使価格と満期に固有の値です。市場全体の予想変動率を1つの数字で示すため、多数のオプションをまとめて計算したのがVIX(Cboe Volatility Index)と日経平均VI(日経平均ボラティリティー・インデックス)です。VIXは「恐怖指数」とも呼ばれ、相場が急落すると上昇します。

ヒストリカル・ボラティリティの計算方法:終値ベースと高値・安値ベース

終値ベースの算出式と年率換算

最も一般的な計算は次の3段階です。

  1. 日次の対数リターンを求める:ln(当日終値 ÷ 前日終値)
  2. 対数リターンの標本標準偏差を求める(分母はn−1)
  3. √年間日数を掛けて年率に直す

対数リターンを使うのは、日々のリターンを足し合わせると期間全体のリターンになり、年率換算の前提(日々の変動が独立で分散が足し算できる)と整合するためです。単純な騰落率でも日次なら値はほとんど変わりません。標準偏差そのものの手計算は「標準偏差の求め方|計算表でたどる5ステップとエクセル関数・分散との違い」で1段ずつたどれます。

年換算の日数は、市場の実際の立会日数に合わせます。日本経済新聞社が公表する日経平均の日次データで数えると、立会日数は2023年が246日、2024年が245日、2025年が243日でした。米国株では252日、24時間365日取引される暗号資産では365日を使うのが通例です。

Parkinson推定量:高値と安値の幅から求める方法

終値だけを使う方法は、1日の途中で大きく振れて元に戻った動きを捉えられません。Parkinsonが1980年にThe Journal of Business第53巻第1号で示した推定量は、1日の高値と安値の比を使います。

分散 = Σ(ln(高値 ÷ 安値))² ÷ (4 × n × ln2)

同じ号には、始値・高値・安値・終値の4本値を使うGarman-Klass推定量も掲載されています。どちらも日中の値幅を使うため、同じ日数でも終値ベースより推定のぶれが小さくなるとされます。ただし、取引時間外に起きた変動(前日終値から当日始値への窓)は、日中の値幅に入りません。

日経平均で比べた2つの推定値:夜間の窓が生む差

2026年10月16日までの日経平均の日次データで、終値ベースのHVとParkinson推定量を同じ期間・同じ年換算(√243)で計算しました。

計算期間 終値ベースHV Parkinson 比率
直近20営業日 27.8% 16.9% 0.61
直近60営業日 28.3% 20.6% 0.73
直近240営業日 28.6% 19.8% 0.69

どの期間でもParkinsonが3〜4割低く出ました。日経平均は前夜の米国市場の動きを受けて寄り付きで窓を開けることが多く、その変動が日中の高値・安値の幅に入らないためと考えられます。同じデータで前日終値から当日始値への変動だけを年率にすると、20日11.0%・60日11.3%・240日12.5%ありました。日本株のように取引時間外の変動が大きい市場で高値・安値ベースの推定量だけを使うと、リスクを低く見積もります。使うなら終値ベースと併記し、差の大きさ自体を夜間リスクの目安として読むのが安全です。

ATR(平均真の値幅):円やpipsの値幅で測る方法

FXや個別株の売買では、変動率(%)ではなく「1日に何円・何pips動くか」でボラティリティを見ることもあります。その代表がJ. Welles Wilder Jr.が1978年の著書New Concepts in Technical Trading Systemsで示したATR(Average True Range)です。

真の値幅(TR)= 次の3つのうち最大のもの:高値−安値、|高値−前日終値|、|安値−前日終値|

Wilderの方式では、期間14日のATRの最初の値を14日分のTRの単純平均とし、その後は「前日のATR×13+当日のTR」を14で割る平滑化を続けます。前日終値との差を含むので、Parkinson推定量が取りこぼす窓もTRには入ります。日経平均で計算すると、2026年10月16日のATR(14日)は1,413円で終値の2.16%でした。直近14日間の「高値−安値」の単純平均は1,189円、TRの単純平均は1,440円で、窓を含めると約21%大きくなりました。Wilder方式のATRとは平均の取り方が異なります。

ATRは年率に直さないため、価格水準が違う銘柄どうしでは比べられません。損切り幅を「ATRの2倍」のように決める、持ち高を値幅に合わせて調整するといった、1つの銘柄の中での使い方に向いています。

ExcelでのHV計算式:LN関数とSTDEV.S

A列に日付、B列に終値を古い順に並べた場合、C3セルに =LN(B3/B2) を入れて最終行までコピーし、先頭から20営業日分のHVは次の式で求めます(直近20営業日なら最終行を含む20行を指定します)。

=STDEV.S(C3:C22)*SQRT(243)

STDEV.Sは標本標準偏差(分母n−1)です。母集団標準偏差のSTDEV.Pを使うと、20日程度の短い期間では値が約2.5%小さくなります。日次の騰落率が大きい日を含むかどうかで結果が大きく変わるので、計算期間は目的に合わせて固定してください。

PythonでのHVとParkinson推定量の計算

次のコードは、6日分の終値・高値・安値(説明用の仮の数値)から2つの推定値を計算します。標準ライブラリだけで動きます。

import math, statistics

closes = [100.0, 101.5, 100.8, 102.3, 101.1, 103.0]
highs  = [100.9, 101.9, 101.7, 102.6, 102.4, 103.2]
lows   = [ 99.2, 100.3, 100.1, 100.9, 100.7, 101.4]
DAYS = 243  # 年換算の日数(日経平均の2025年の立会日数)

log_ret = [math.log(closes[i] / closes[i - 1]) for i in range(1, len(closes))]
hv = statistics.stdev(log_ret) * math.sqrt(DAYS)

hl = [math.log(h / l) ** 2 for h, l in zip(highs[1:], lows[1:])]
parkinson = math.sqrt(sum(hl) / (4 * len(hl) * math.log(2))) * math.sqrt(DAYS)

print(f"終値ベースHV = {hv:.1%}")
print(f"Parkinson    = {parkinson:.1%}")

実行結果は「終値ベースHV = 22.0%」「Parkinson = 15.5%」です。終値ベースの対数リターンは前日終値が必要で1日目からは作れないため、Parkinson推定量も2日目以降の5日分にそろえて計算しています。

年率ボラティリティを値幅に直す計算:1日・1か月の予想レンジ

√日数で割る換算式と日経平均での計算例

年率で表したボラティリティは、そのままでは「明日どれくらい動くか」が分かりません。分散が日数に比例するという前提を使い、√日数で割り戻します。

1日の変動率 = 年率ボラティリティ ÷ √243
n日間の変動率 = 年率ボラティリティ × √(n ÷ 243)

2026年10月16日の日経平均(終値65,324.29円、直近20営業日のHV27.8%)に当てはめると、1日の変動率は1.78%で約1,165円です。推定したHVを真の変動率とみなし、平均リターンをゼロ、対数リターンを単純騰落率で近似すると、翌日の終値の目安は約68%で±1,165円、約95%で±2,330円です。21営業日(約1か月)なら8.17%で±5,339円です。日経平均VIから30暦日の値幅を概算する場合は、指数値を100で割り、√(30÷365)と現在価格を掛けます。243営業日で年率化したHVとは日数の基準を区別してください。

日経平均903日の的中率:20日HVによる予測レンジの限界

この換算がどこまで当たるかを、日経平均の日次データで確かめました。2023年2月6日から2026年10月16日までの903営業日について、前日までの直近20営業日のHVから1日の標準偏差(σ)を求め、翌日の実際の変動(対数リターン)と比べています。データは日本経済新聞社が公表する日経平均の日次データ(CSV)です。

比べる基準は2つあります。真のσが分かっている正規分布の確率と、σを20日分のデータから推定することによる誤差を織り込んだ確率(自由度19のt分布)です。毎日のσは推定値なので、後者が実測と比べるべき基準です。

範囲 正規分布(σ既知) 推定誤差込み(t分布) 日経平均の実測
±1σ以内 68.3% 67.0% 67.6%
±2σ以内 95.4% 94.0% 92.8%
±3σ超 約2.4日 約6.6日 13日

±1σの中に収まる割合はほぼ基準どおりでしたが、外側ほど外れが増え、±3σ超は推定誤差を織り込んでも約2倍ありました。σそのものが数日で変わることも外れの原因に含まれます。±3σを超えた13日には、2024年8月5日(−6.81σ)、2025年4月7日(−5.66σ)が含まれます。直近では、2026年10月14日時点のHV(21.9%)から求めた1σは951円でしたが、翌15日の下落は3,318円(単純騰落率−4.90%、対数リターンで−3.58σ)でした。

「2σの外はほぼ起きない」と読むのは誤りです。損失の上限を決めるなら、2σの値幅を最悪ケースとせず、過去の最大の動き(この期間なら7σ近く)も別に確認してください。日経平均の長期の値動きの癖は「アノマリーとは?株の経験則を日経平均77年分のデータで検証」でも扱っています。

インプライド・ボラティリティの計算方法:ブラック・ショールズ式の逆算

IVを決める5つの入力と逆算の考え方

ヨーロピアン型のコールオプションの理論価格は、ブラック・ショールズ式で次のように表されます(配当は無視)。

C = S × N(d1) − K × e−rT × N(d2)
d1 = (ln(S ÷ K) + (r + σ²÷2) × T) ÷ (σ√T)、d2 = d1 − σ√T

Sは原資産価格、Kは行使価格、Tは満期までの年数、rは金利、σはボラティリティ、N()は標準正規分布の累積分布関数です。σはd1とd2の中で正規分布の関数の内側に入っているため、「σ = …」の形に式を変形できません。

そこで、σを仮に置いて理論価格を計算し、市場価格との差が縮む方向にσを動かす作業を繰り返します。理論価格はσについて単調に増えるので、答えは1つに定まります。実際の日経平均オプションのIVを求める場合は、大阪取引所の価格に加え、配当利回りを考慮したモデルを使います。ストックオプションの公正価値評価も同じ式を使い、ボラティリティは入力側に回ります(「ストックオプションの評価単価とは?公正な評価単価の計算方法と6つの基礎数値」)。

ニュートン法でIVを求めるPythonコード

ニュートン法では、理論価格のσに対する傾き(ベガ)で差を割り、次のσを決めます。通常は数回で収束しますが、ディープ・アウト・オブ・ザ・マネーのようにベガが極端に小さいと発散するので、外れたときは二分法に切り替えます。配当なしのコールでは、市場価格がmax(0, S − K×e−rT)以下かS以上なら正の有限なIVは存在しません。次のコードは、その場合と、解が探索区間(0.0001〜5.0)の外にある場合にValueErrorを出して止まります。区間の端の値をIVとして返さないためです。配当を入れていない説明用のコードです。

import math

def norm_cdf(x):
    return 0.5 * (1 + math.erf(x / math.sqrt(2)))

def bs_call(S, K, T, r, sigma):
    d1 = (math.log(S / K) + (r + sigma ** 2 / 2) * T) / (sigma * math.sqrt(T))
    d2 = d1 - sigma * math.sqrt(T)
    return S * norm_cdf(d1) - K * math.exp(-r * T) * norm_cdf(d2)

def vega(S, K, T, r, sigma):
    d1 = (math.log(S / K) + (r + sigma ** 2 / 2) * T) / (sigma * math.sqrt(T))
    return S * math.exp(-d1 ** 2 / 2) / math.sqrt(2 * math.pi) * math.sqrt(T)

def implied_vol(price, S, K, T, r, lo=1e-4, hi=5.0, tol=1e-8):
    # 解が存在し、探索区間の中にあることを先に確かめる
    values = (price, S, K, T, r, lo, hi, tol)
    if not all(math.isfinite(x) for x in values):
        raise ValueError("入力に有限でない値があります")
    if min(S, K, T, lo, tol) <= 0 or hi <= lo:
        raise ValueError("入力値か探索区間が不正です")
    if not max(0.0, S - K * math.exp(-r * T)) < price < S:
        raise ValueError("この価格には正の有限なIVがありません")
    if not bs_call(S, K, T, r, lo) <= price <= bs_call(S, K, T, r, hi):
        raise ValueError("IVが探索区間の外にあります")
    sigma = min(max(0.3, lo), hi)
    for _ in range(50):
        diff = bs_call(S, K, T, r, sigma) - price
        if abs(diff) < tol:
            return sigma
        v = vega(S, K, T, r, sigma)
        if v < 1e-12:
            break
        sigma -= diff / v
        if not lo < sigma < hi:
            break
    # ニュートン法が外れたら二分法で確実に解く
    for _ in range(200):
        mid = (lo + hi) / 2
        if bs_call(S, K, T, r, mid) > price:
            hi = mid
        else:
            lo = mid
    return (lo + hi) / 2

iv = implied_vol(price=2000, S=65000, K=65000, T=30/365, r=0.005)
print(f"IV = {iv:.4f}")
print(f"検算 = {bs_call(65000, 65000, 30/365, 0.005, iv):.2f}")

原資産65,000円、行使価格65,000円、残存30日、金利0.5%のコールが2,000円で取引されている、という仮の条件で実行すると「IV = 0.2673」「検算 = 2000.00」と出ます。市場はこの価格に年率26.73%の変動を織り込んでいる、という読み方です。SciPyが使える環境なら、二分法の代わりに scipy.optimize.brentq で同じ根を求められます。

スマイルとスキュー:行使価格ごとにIVが違う理由

ブラック・ショールズ式が正しければ、同じ満期のIVは行使価格によらず一定になるはずです。実際には、株価指数オプションでは下の行使価格(プット側)ほどIVが高くなる右下がりの形が続いています。これをボラティリティ・スキューと呼び、両側が高くなる形をスマイルと呼びます。急落への備えとしてプットの買い需要が常にあり、前章の検証のように大きな下落が正規分布の想定より頻繁に起きることを、価格が織り込んでいるためです。

この歪みを数値にしたのがCboe SKEW指数です。CboeのSKEWホワイトペーパー(2011年)は「SKEW = 100 − 10 × S」と定義しています。SはS&P500の30日先の対数リターンの歪度をオプション価格から求めた値です。SKEWが100なら歪度はゼロで、同資料の確率近似では正規分布を基準としますが、歪度ゼロだけで正規分布とは断定できません。同資料の表では、2標準偏差以上下落するリスク調整後の確率(オプション価格から逆算した推定値で、実際の発生確率ではありません)が、SKEW100の2.3%からSKEW145では14.45%まで上がります。

Cboe公表データで1990年以降を見ると、最小は101.23(1991年3月19日)、最大は183.12(2025年2月18日)、中央値は119.94です。年ごとの中央値は2010年120.8、2020年131.3、2025年146.8と上昇傾向にあり(2022年は122.3と一時低下)、2026年10月16日は168.59でした。140を超えた日は2024年が81%、2025年が77%、2026年が78%あり、「140超は警戒」のような固定の目安で読むと、2024年以降は大半の日が警戒水準に入ってしまいます。

VIX指数(恐怖指数)の算出方法と日経平均VIとの違い

VIXの算出方法:SPXオプション価格から求める30日先の分散

Cboeの算出要領(Version 6.0、2026年2月26日改訂)によると、VIXはS&P500の30日先の予想ボラティリティです。1993年の導入時はS&P100指数のアット・ザ・マネーのオプションを使っていましたが、2003年にGoldman Sachsとの共同作業で現在の方式に改められました。現行方式の値は1990年1月まで遡って算出されています。

  • 対象:AM決済の月次SPXオプションと、週の最終取引日(通常は金曜日)に満期を迎えるPM決済のSPXW(週次)オプション。満期が30日を挟む2つの限月を選ぶ。算出例では満期24日と31日の組み合わせ。
  • 価格:Cboe Options Exchangeの買い気配と売り気配の仲値。
  • 金利:米国債の定満期利回り(CMT)を3次スプラインで補間した値。
  • 計算:各限月で、アウト・オブ・ザ・マネーのプットとコールの価格を行使価格の二乗で割って重み付けして合計し、分散を求める。2限月の分散を30日に補間し、平方根に100を掛ける。

ブラック・ショールズ式を1本ずつ逆算してIVを平均する方法ではありません。オプションの組み合わせで分散そのものを複製する考え方(バリアンス・スワップのフェア・バリアンス)なので、特定の価格モデルに依存しない指数として扱われます。

日経平均VIの算出方法:期近と翌限月を30日に補間

日本経済新聞社の算出要領(2025年1月27日適用版)によると、日経平均VIは2010年11月19日に算出・公表が始まり、2012年1月からリアルタイム算出(15秒間隔)になりました。1989年6月12日から2010年11月18日までの値は、同じ方法で遡って算出したものです。

項目 VIX 日経平均VI
算出者 Cboe 日本経済新聞社
原資産 S&P500 日経平均株価
使うオプション SPX(月次)とSPXW(週次) 日経平均オプションの期近・翌限月
対象外 SPXと同日満期のSPXW ミニオプション
採用価格 気配の仲値 直近約定値を優先
予想期間 30日 30日
算出間隔 15秒 15秒
方式 フェア・バリアンス フェア・バリアンス

日経平均VIは、取引最終日の1営業日前に対象限月を翌限月へ移します。金利は前営業日付のTORF(東京ターム物リスク・フリー・レート)1か月物で、2021年12月10日まではユーロ円LIBORを使っていました。VIXが週次のSPXWも候補に入れて30日を挟む2限月を選ぶのに対し、日経平均VIは期近と翌限月を使うため、期近の満期が30日を超えると補間ではなく補外になります。

VXJ:大阪大学が公表するもう1つの日本版ボラティリティ指数

日経平均オプションから作るボラティリティ指数には、大阪大学数理・データ科学教育研究センター(MMDS)のVXJ研究グループが公表するVXJもあります。同グループは、VIXの計算式が理論上の積分を単純なリーマン和で近似しているため、離散化と行使価格の範囲の打ち切りによる誤差が生じ、金融危機の局面では大きな過小評価として表れたと指摘しています。VXJはこの近似を改良した計算法を使います。

VXJは2021年4月から直近2限月に加えて日経225 Weeklyオプションも使い、2022年5月に金利をCD3か月物からTORF(1か月物)へ移しました。2026年5月1日には各満期のボラティリティの計算法を改訂しています(満期の補間法は変更なし)。日経平均VIと同じ日でも値は一致しないので、過去と比べるときや複数の資料を並べるときは、どちらの指数かをそろえてください。

VIX9D・VIX3Mで見る期間構造

Cboeは同じ方式で予想期間を変えた指数も公表しています。9日先のVIX9D、3か月先のVIX3Mです。2026年10月9日の終値は、VIX9Dが11.26、VIXが14.84、VIX3Mが17.77で、期間が長いほど高い右上がりの並びでした。平常時はこの形が普通です。

急落局面では逆転します。2024年8月5日は、VIX9D 42.79、VIX 38.57、VIX3M 33.71と、目先の予想変動率ほど高くなりました。2026年10月16日はVIX9Dが20.12とVIXの19.99をわずかに上回り、VIX3Mは20.50で、9日先だけが逆転した状態です。Cboe公表データで2009年9月18日から2026年10月16日までの4,296営業日を数えると、VIXがVIX3Mを上回った日は7.5%です。2020年は253日中53日と多かった一方、2024年は252日中9日でした。VIXの水準だけでなく、どの期間で逆転が起きているかを見ると、市場が「目先の混乱」を織り込んでいるのかを区別できます。

IVとHVの差:VIXとその後の実現ボラティリティの36年比較

IVは将来の変動の予想なので、後から実際の変動(実現ボラティリティ)と答え合わせができます。Cboeが公表するVIXの日次データとS&P500の日次終値を使い、各日のVIXと、その翌日から21営業日のS&P500の実現ボラティリティ(対数リターンの二乗平均の平方根×√252)を比べました。対象は1990年1月2日から2026年9月17日までの9,241日です。

  • VIXの平均は19.43、その後の実現ボラティリティの平均は15.33
  • VIXが実現ボラティリティを上回った日は全体の85.9%
  • 差の中央値は4.71ポイント

予想変動率が高めに付く分は、オプションの売り手が受け取る保険料にあたり、ボラティリティ・リスク・プレミアムと呼ばれます。ただし外れるときは大きく外れます。最大の下振れは2020年2月20日で、VIX15.56に対し、その後21営業日の実現ボラティリティは87.51でした。新型コロナウイルスの感染拡大で相場が急落する直前です。この日の差は約72ポイントで、差の中央値4.71ポイントの約15倍でした。「IVはたいてい割高」という統計は、まれに起きる大きな下振れと同時に成り立ちます。

ボラティリティを使う投資戦略と採用すべきでない場面

ボラティリティ・ターゲティング:目標変動率に合わせた持ち高の調整

資産の変動率が上がったら持ち高を減らし、下がったら増やして、ポートフォリオ全体の変動率を一定に保つ方法です。持ち高の比率は「目標ボラティリティ ÷ 資産のボラティリティ」で決めます。目標を年10%とし、日経平均の直近60営業日のHV28.3%を使うと、日経平均に投じる比率は約35%、残りは現金になります。

この方法が効くのは、ボラティリティに持続性がある(高い時期が続く)ためです。一方で、急落の初日には過去のHVがまだ低いので、持ち高は減っていません。2020年2月のように平穏から一気に崩れる局面では、減らす判断が数日遅れます。

オプション売りでIVの割高分を取る戦略の落とし穴

前章のとおり、VIXは実現ボラティリティを85.9%の日で上回ってきました。この差を取るのが、プットやコールを売ってプレミアムを受け取る戦略です。85.9%はそのまま売り戦略の勝率ではありませんが、平時は利益が出やすい一方、損失は受け取ったプレミアムの何倍にもなりえます。採用すべきでないのは、損失の上限を決めずに売る場合と、証拠金の余力が小さく、急落時の追加証拠金に耐えられない場合です。売るなら、さらに外側のオプションを買って損失を限定する組み合わせを前提にしてください。

VIX短期先物の買い持ち型商品:長期保有に伴う減価リスク

VIXそのものは売買できないため、VIXに連動するとされるETFやETNの多くはVIX先物を使います。JPXの解説資料によると、VIX短期先物指数は、第1限月の先物を売って第2限月の先物を買う取引を日次で繰り返し、残存日数を1か月に保った場合のリターンを指数化したものです。同資料は、限月が長いほど先物価格は高いのが一般的だとしています。

平常時は先の限月ほど高いため、短期先物を買い持ちして入れ替える場合、順ざやが続き、保有先物が満期に近づくにつれて値下がりすると、VIXが横ばいでも先物指数は下落しえます。前章のVIX3MはSPXオプションから求める現物指数で、VIX先物の限月間の価格差とは別物です。順ざやがどれだけ続いているかは先物の価格で確認してください。VIX連動商品は急落時の短期的な備えとしては機能しますが、「VIXが低いうちに買って長く持つ」使い方には向きません。価格の方向を予想する材料としてボラティリティを使うことの限界は、「効率的市場仮説とは?3つの型と投資戦略への意味をわかりやすく解説」も参考になります。

よくある質問(ボラティリティの種類と計算方法)

インプライド・ボラティリティの計算方法は?

オプションの市場価格と、原資産価格・行使価格・残存期間・金利をブラック・ショールズ式に入れ、理論価格が市場価格と一致するボラティリティを数値計算で探します。式を変形して直接求めることはできないため、ニュートン法や二分法を使います。

ヒストリカル・ボラティリティとインプライド・ボラティリティの違いは?

HVは過去の終値から計算した実際の変動率、IVはオプション価格から逆算した将来の予想変動率です。HVは決算などの予定を直接入力せず、計算期間内に実際に起きた値動きだけを反映します。IVは予想なので外れることがあり、1990年以降のVIXはその後の実現ボラティリティを85.9%の日で上回っています。

VIX指数(恐怖指数)とは何ですか?

CboeがS&P500オプションの価格から算出する、S&P500の30日先の予想ボラティリティです。相場が急落すると上昇するため恐怖指数と呼ばれます。日経平均株価には、同じ考え方(フェア・バリアンス)で算出される日経平均VIがあります。

インプライドとはどういう意味ですか?

英語のimpliedで、「暗に示された」「含意された」という意味です。インプライド・ボラティリティは、オプション価格の中に暗に含まれている予想変動率を指します。金利の分野でも、債券価格から逆算した金利をインプライド・フォワード・レートと呼ぶなど、同じ使い方をします。

ボラティリティはExcelで計算できますか?

HVは計算できます。終値の列から =LN(B3/B2) で対数リターンを作り、=STDEV.S(C3:C22)*SQRT(243) のように標準偏差に√年間日数を掛けます。IVはExcelのゴールシーク機能でブラック・ショールズ式の結果を市場価格に合わせれば求められますが、多数の銘柄を扱うなら、Pythonなどで逆算処理と収束・入力条件の検査をまとめて自動化できます。

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